勇者と妖精の恋と冒険

ヨッシー

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フラナ

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妖精の城から、クロードの城に転移し、夕飯にはまだ早かったし、クロードの剣術の稽古を見ることにした

おそらく稽古を見るのは、これで当分の間はないだろう

クロードもそれをわかっているみたいで、一生懸命に集中していた

アレス「クロード…あまり無茶するなよ…バテてんじゃねえか」
クロード「うん…ハァ…ハァ…」
アレス「だいじょぶか?」
クロード「…たまらなく寂しいよ…ウル」
アレス「かわいい奴だなw」
クロード「う…グス」
ミリア「クロードちゃん…ウル」
クロード「ごめんね…情けないよねw」
アレス「いいってw…ギュ…ナデナデ」
クロード「う…う…」

クロードはオレの胸に頭をくっつけて、泣いていた

クロードの両親はすでに病気で他界していて、それでまだ若いのに王様にならざるを得なかった

オレと違って心優しく、世間知らずのクロードが何も心の準備も出来ないままに、王という重責に孤独に耐えてきたのだ

クロードの周りには、常にたくさんの人が居る

だが、だからこそ孤独なのだ

誰も同じ境遇の奴は居ない
居るわけがない

クロード「アレス…ごめん…こんなに情けない姿を見せて…嫌いにならないで欲しい…」
アレス「なるもんかよ…ナデナデ…もっと泣け」
クロード「うう…グス…き、きみ…とは…まだ…あっ…会って…すう…数日…なのに…グス」
アレス「無理に喋るなよ…心細いんだろ?…わかるよ」
ミリア「うっ…グス」
クロード「……ズズ」
アレス「かわいそうになぁ…ナデナデ」

クロードはしばらくの間、オレにしがみついて泣いた

子どものようだった

しばらく泣いて、ようやく落ち着いたのか、顔を上げて、照れくさそうに笑った

その目は真っ赤になっていた

クロード「ほんとごめんw」
アレス「気にするなw…オレはきっと、お前が1人でどうにもならなくなった時は、助けに来るからさw」
クロード「…また泣いてしまうよw」
アレス「わりぃw」
ミリア「…グス」
クロード「ボクにも君の強さの十分の一もあればな…」
アレス「オレの十分の一ならオレ以外には負けないくらい強いなw」
クロード「そうだねw」
アレス「オレの十分の一強くなりたかったら、それはやっぱりクロードが自分で頑張るしかないけどさ…」
クロード「うん…」
アレス「お前ならきっとなれるよ…そう信じてる…ダチだからな」
クロード「うん…ウル…ボクも、アレスとミリアちゃんの友達だって自慢したいから頑張るよ」
アレス「おうw…じゃ、そろそろメシ食おうぜ?…頑張るならメシは食わねえとな」
クロード「うんw…その前に顔を洗ってくるよ」
アレス「ああ」

オレはテーブルについて、他の重臣たちと話しながら待っていると、いつもの優しげな顔で、クロードは戻ってきた

そして、一緒に夕飯を食べ、その後少し話し、それからバスケットに帰った

ミリア「クロードちゃん、なんだかかわいそうだったね」
アレス「だなぁ…時々は遊びに行ってやらないとな」
ミリア「うん!…もう明日行くの?」
アレス「うーん…それなんだけどさ」
ミリア「うん」
アレス「前々からずっと考えてた事あってね」
ミリア「うん」
アレス「オレさ、風の魔法が使えるじゃん?」
ミリア「うん」
アレス「でさ、荷車みたいなの乗って、後ろに風吹かせたら、歩いたりしなくても進めるなぁってね…まあ、上手くいくかはわからないけどさ…待ってね…」

オレは想像している事を、絵で描いて見せた

ミリア「おお!…すごい!!」
アレス「前から考えてたけど、山道とか道が悪いとこじゃ使えないし、持って行くのも出来ないからさ…だけどミリアがいれば小さくして持って行けるだろ?」
ミリア「うんうん!!」
アレス「上手く行けば今後が楽になる…クロードにもちょっと頼ってみる」

そうして翌日の朝

城に転移したオレは、クロードに会いに行った

クロード「やあ、おはよう…もう行ってしまうのかい?」
アレス「…そう思ってたんだけどね…その前にちょっとやってみたい事あってね…なんか、クロードとお別れの雰囲気出させといて申し訳ないけど…手伝ってほしいんだ」

オレは昨日ミリアに説明した事と、その時に描いた絵を見せた

クロード「へぇぇ!…すごいな!w」
アレス「だろ?…それでまあ、これ作るにあたって、クロードに協力してもらいたいなって思ってね」
クロード「あははw…もう行くって思ってたから、嬉しいよ…ボクに出来る事ならなんでもするよw」
アレス「…なら一緒にやってみないか?…作るの」
クロード「やるw」

クロードはそれから、材料や職人、工具などを揃えてくれて、職人に習いながら、風力車の製作を始めた

簡単に言うと、乗る為の板に車輪を四つ取り付けて、前輪は舵をとれるようにし、オレが出す風を後ろに吹けるような筒を取り付けるというものだ

しかし、職人さん(名前はビリー)が言うには、ただ板に車輪をつけただけでは、地面が真っ平らなところしか走らせられないという

衝撃を和らげる装置を取り付けないと、乗り心地も最悪だし、車輪や車輪の軸に負担がかかって、すぐに壊れてしまうらしい

まあ、もっともな話しだ

それに、出来るだけ軽量にしないと、吹き付ける風の魔力にも負担がかかる

前輪は左右に舵を取れるように工夫をした

オレとビリーで、ああでもないこうでもないと相談しながら、知恵を出し、作った

クロードも空いてる時間は手伝いに来てくれた

そしてついに、試作機が出来上がり、試運転する事になった

車幅は80センチ程で、1人乗り

その椅子にオレは座り、左に取り付けてある筒に手を添えて、風を徐々に強めながら送っていった

風力車は少しずつ前進し始めて、風を強く送るとスピードも上がっていく

めちゃくちゃ楽しいw
こんなに感動したのはいつ以来だろうか

右に取り付けたハンドルで、左右に操作出来る

しかし、二つの問題が発生した

ハンドルを回すのはけっこうな力が必要だったが、走り始めてから回すのは楽だった…それはいい

しかし、思ったよりも曲がらない

なぜなら、右に曲がる場合、右の前輪と左の前輪が、同じ回転数だと右の回転が強すぎるからだ

そしてもう一つの問題は、止まる事だ

当初の予定だと、筒から手をずらして、前に風を吹いて止めればいいと思っていた

しかし、加速のついた車を止めるには、相当な強さで風を出す必要があったし、止まる為の距離も思ったより必要だった

もしも前に誰か居たりしたら、オレの出す風で吹っ飛んでしまうだろう

そういう問題点を一つずつビリーと一緒に解決していくのも面白かった

舵を切ると、歯車で左右の回転数を変える装置を作った

その装置と舵の歯車の設置はものすごく大変だったが、完成した

止まる事に関しては、足元のペダルを踏むと、前後の車輪の軸につけた円盤を挟んで、摩擦力で止める装置を作って対応した

各部品の耐久力を上げる為に、金属も使った為、結構な重量になったが、ミリアに大きさを半分にしてもらうと、軽快に走れるようになった

これが出来上がるのに、一ヶ月もかかった

アレス「おし、みんな準備はいいか?」
クロード「はいw」
ビリー「楽しみ!」
ミリア「ヤッホー!」

みんなを小さくして一緒に乗り、風力車を発進させた

半分の大きさになった事で、魔力もかなり抑えられて、スピードも速い

オレは何度も試運転してるから慣れてきてたけど、3人はめちゃくちゃ興奮していた

クロード「すごいw…これは速い!」
ビリー「完璧ですね!!」
ミリア「楽し~!!」
アレス「これなら速いし楽だぜw」

ついに風力車は完成し、みんなでお祝いをした

この日はオレも、少しだけ酒を飲んだ

普段全然飲まないからか、少しでも身体がかあっと熱くなってくる

アレス「いや~…これは素晴らしい…」
ビリー「名前つけたらどうだい?…風力車よりカッコいい名前」
アレス「名前ぇ?…いいよ、なんか恥ずかしいよ」
クロード「いいじゃないかw」
ミリア「つけてあげようよ~」
アレス「うーん……ア…ク…ビリー…アクビリア!…ってどう?」
ビリー「え?…アクビリア?」
アレス「アレスのア、クロードのク、ビリーのビとミリアのリア…でアクビリア」
クロード「なるほど~w…いいと思う!」
ミリア「アクビリア!٩(*❛⊰❛)۶」
ビリー「自分の名も入れてくれたんですね…」
アレス「当たり前だよ、ビリーが居なかったら出来てねえよw」
ビリー「いやいや///…ところでアレスさん」
アレス「ん?」
ビリー「このアクビリアで開発した技術の数々は、今後オレが何か作る時に役立てていいかい?…この衝撃吸収とか、止まる装置とか」
アレス「当然だよw…たしかに考えたのはオレも手伝ったけど、ほとんどはビリーが考えて作ったモンじゃん」
クロード「ほんとすごいよ…お金はもちろん出すから、ボクの新たな馬車を作ってくれないかい?」
ビリー「ほんとですか?!…ぜひやらせていただきます!!」
アレス「おお~、良かったなあw」
ビリー「やったw」
ミリア「良かったね٩(*❛⊰❛)۶」
ビリー「うんw」
アレス「クロード…」
クロード「ん?」
アレス「オレは早速明日…旅立つよ…」
クロード「うん…」
アレス「まあ、しばらくは会えなくなるけど…ちょいちょい来るからさ」
クロード「わかったw」

そうして、ささやなかお祝いの宴会を終わらせた

明日からアクビリアで、また旅に出る
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