勇者と妖精の恋と冒険

ヨッシー

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天界

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鏡を抜けた先は、オレが思ってたような世界だった

雲の上に城やら神殿なんかがある

これぞ天界みたいな感じだ

周りには白い鳥の羽根の美少年がいる
こないだボコした奴らに似てるから、こっちは本当の天使なんだろう

天使って裸のイメージがあったけど、しっかり服着てるし、靴も履いてる
こないだボコにした堕天使が裸だったから、余計に裸のイメージがあったのかな…

天使「ミリアさん、お久しぶり」
ミリア「お久しぶり~!…神様に会いに来たのよ」
天使「神様ですか…どの神様ですか?」
ミリア「ガイアさま」
天使「ガイア様は今お仕事中ですよ…神殿でお待ちください」
ミリア「うん!…アーちゃんいこ!」
アレス「ああ…」

ミリアはオレの手を引き、神殿へと歩く
オレはこの小さな女の子のミリアに頼るしかなくて、ギュッと手を握った

神殿に着くと、椅子やソファーがあり、ミリアはソファーに座った

ミリア「アーちゃん、ここ、ここ…ポンポン」
アレス「うんw」
ミリア「フカフカw…ここで待ってよ」
アレス「うん…さっきの天使?」
ミリア「そうだよ~」
アレス「こないだやっつけた奴らは、あれの仲間?」
ミリア「仲間だった奴ら…時々ああやって、魔王にイタズラされて、悪い奴になるんだって」
アレス「…なに?…あれは魔王の仕業なのか?!」
ミリア「そう…みたい…ごめんね、アタシもよくわからないの…シュン」
アレス「あ、ごめんごめん…ちょっとキツく言ってごめん…ギュ…ごめんよ」
ミリア「ううん…アタシ、いつもちゃんと答えられなくてごめんね…難しい話とか、わからないの…」
アレス「いいんだよ…後で神様に聞くからさ」
ミリア「それがいいと思うの…アタシはバカだから」
アレス「バカなんかじゃない…ギュ…」
ミリア「アーちゃん…チュ」
アレス「おおw…もっかいw」
ミリア「チュゥゥ…」
アレス「ミリアっ!…ギュッ!」
ミリア「あう…苦し…」
アレス「あ、ごめん…あんまりにも愛しくて…///」
ミリア「えへへ、嬉しい///」
アレス「神様って1人じゃないんだな…」
ミリア「うん…何人かいる…ガイアさまは一番偉い神様」
アレス「…一番偉い神様が、いきなり会ってくれるもんなの?」
ミリア「うん!…きっと、ガイア様は今日ここにアタシたちが来るの知ってる」
アレス「マジか…すげえな」
ミリア「神様はなんでも知ってるのよ」

「なんでもってわけじゃないぞw」

突然後ろから声が聞こえて、ビックリした
オレはこんなにも知らない間に接近に気づかない事はなかった

ミリア「ガイアさま、こんちは!」
ガイア「こんにちはw…アレスもよく来たのw」
アレス「はい…はじめまして…オレを知ってるんですか?」
ガイア「そりゃそうだw…ワシが選んだ勇者だからの」
ミリア「ガイアさまはみんなの事知ってるのよ」
アレス「すげえな…神様って」

ガイア様は長い白髪と、立派な白く長い髭を生やしていて、人相はとても優しそうで穏やかで、それでいてとても頼りになるような…そんな外見だった

薄い青のローブを着ていて、本当、神様って感じだ

ミリアといると、優しいおじいちゃんと孫みたいに見える

ガイア「ミリア、アレスはミリアがワシの孫に見えるようじゃよ?w」
ミリア「まご?…おじいちゃん…ダキ」
アレス「あ…すいません…」
ガイア「いや、脅かしたかの?w…いろいろ質問があってきたようだの」
アレス「はい…あの…」
ガイア「その前に、妖精の国を救ってくれて礼を言うぞ」
アレス「あ、いえ…オレはああいうのムカつくんで…頼まれなくてもやりますよ…あ!…ガイア様の声だったのか!…妖精の国を救ってくれって言ったの…」
ガイア「ほっほっw…そうじゃw…おぬししか頼りになるの居なかったからのう」
アレス「へぇぇ…まあいいですけど…妖精に会えて嬉しいですし…それでまあ、ミリアが言うにはオレを勇者に選んだのはガイア様って聞いて…」
ガイア「なぜおぬしを選んだか?」
アレス「はい…あの…もっとオレより正義感強い奴とかいるのに…なんでかなって…ていうか、むしろオレはモテたいとかエッチしたいとか、そんな目的の…まあ、自分で言うのも何ですが、人間的に大した事ないと思うような…」
ガイア「正義感などは余計なものじゃ…人間というのは、どうも魔物や魔王は完全な悪で、自分たちは正しいと思ってるが…おぬしはどう思う?」
アレス「…オレは…昔からどうもその考えには同調出来なかったです…ひねくれ者なのかもしれないですが…」
ガイア「いや、おぬしの考えの方が正しい…魔物や魔王と人間の関係は、ただの食物連鎖の一環でしかないのだよ」
アレス「ですよね!」
ミリア「なにそれ?」
アレス「えっとね、獣…牛はわかる?」
ミリア「うん」
アレス「牛は草を食べるだろ?」
ミリア「うん」
アレス「で、その牛をさ、ライオンとかが食べる」
ミリア「うん」
アレス「ライオンは牛より強いから、牛を殺して食う」
ミリア「うん」
アレス「そんで、食われた牛の死骸とか、牛が食えないで飢えて死んだライオンの身体は、また他の生き物…鳥や虫とかが食べる」
ミリア「うん」
アレス「その鳥や虫がうんちしたり、死んだりすると、土が元気になる」
ミリア「へぇぇ!」
アレス「土が元気になると、草がいっぱい生える」
ミリア「うん」
アレス「そしたらそれをまた牛が食う…そんな感じにね、食べ物はぐるぐる回ってるの」
ミリア「そっかあ!」
アレス「弱肉強食って言ってね」
ミリア「うん」
アレス「弱い者は強い者の食べ物になる…でも、それが自然なの」
ミリア「そうなんだあ…」
アレス「そう…だからね、魔物や魔王からしたら、人間はただの食べ物だって事…食べ物だから、狩って食べる…それは当たり前の事なんだよ…人間だって他の獣より強いから、殺して食べるんだからね」
ミリア「言われたらそうだね!」
ガイア「そうw…だが人間はその理を考えず、魔物を悪と考え、自分たちはまるで聖なる存在かのように考える…そして、悪は敵だから、憎しみの感情を持って排除しようとするのだ」
アレス「やっぱそれ違いますよねえ?」
ガイア「ああw…正義感というのは、そういった理不尽な感情でしかない…感情で物事を判断する人間は勇者の資格などないのじゃ」
アレス「つまりオレは感情では判断しないと?」
ガイア「うむ…おぬしはこないだの堕天使たちに、相当腹を立てたであろう?」
アレス「はい…あんな怒った事はないです…感情的になりましたよ?」
ガイア「そうだな、それはしかし、当たり前でもある…おぬしも生きた人間だからな…だが、おぬしはそれでも誰も殺さなかった…それはなぜだ?…おぬしが元々殺しや残酷な事を好まないのは知ってるが、あの時の感情なら殺しも出来たはずじゃ…なのになぜ殺さなかった?」
アレス「…なぜですかね…たしかにあの時は…せめてゼルエルとかいうクソガキはぶっ殺したかったですよ…でも殺したらいけない気がして…やめました」
ガイア「それはおぬしが感情で生命を奪うのがいけないと、心で理解してるからだ…」
アレス「…そうなのですかね」
ガイア「おぬしはでは、殺しても仕方ないと思うのはどんな時じゃ?」
アレス「…食べる目的の時です…あ、でも…蚊とかに刺されたりしたら叩き潰したりもします」
ガイア「そうじゃな…それはつまり、『生きる』とか『守る』為の殺しじゃ…それは当たり前の事だ…全ての生き物は、『生きる』為に戦うのだ…そこに感情が入ってはいけない…それはただの殺戮だからだ…殺す為の戦いになるからじゃ…おぬしは心でそれがわかっておる…だからワシはおぬしを選んだのだ」
アレス「そうなんですか…ちょっとお待ちくださいね…ミリア…ごめんな?…退屈だよな?」
ミリア「…うん…難しくてわかんない…眠ってていい?」
アレス「うんw…じゃあソファーでさ、膝枕してあげるよ」
ミリア「やったあ!」
アレス「すいません、ガイアさま…ソファーに座らせていただきます」
ガイア「ほっほっw…かまわんよw」
アレス「ミリア、おいで」
ミリア「うん…」
アレス「ふふふw…ナデナデ…」
ガイア「ワシも座ろう」
アレス「ガイア様…オレを選んだ理由はわかったんですが、そうするとまた疑問が出てきます…魔物や魔王が人間より強い、食物連鎖の頂点だとしたら、なぜ、あなたはオレを勇者として戦わせるのですか?…人間が弱いなら、滅びればいいのではないですか?」
ガイア「そうじゃなあw…ただ、人間という存在を作ったのはワシらだからな…それがな?」
アレス「はい…」
ガイア「他の地上の生き物に負けて、食われるならばワシらも手を貸す事はないんじゃが…魔物や魔王というのは、魔界の生物じゃ…地上の生物ではないのじゃ…テリトリーが違うのだよ」
アレス「魔界…」
ガイア「そう…天界と地上と魔界…妖精の世界…ドラゴンの世界…世の中にはそういう複数の世界があっての」
アレス「は、はい…」
ガイア「それはお互いに侵略してはならないんじゃな…だからな?…ワシらが地上に降りて、魔物や魔王と戦うことも出来ん…また、そこまでしてやるほど、人間たちに価値はない」
アレス「…それはその通りだと思います」
ガイア「かと言ってな…ワシらが作ったからな…作っといてほったらかしもあまりに無責任じゃろ?…だからお前さんという存在を選んで、力を与えたのじゃ…お前さんを地上の生き物の希望としてな…」
アレス「オレが…希望…」
ガイア「おぬしは自分を大した事ないと思ってるようじゃが、それはなぜじゃ?」
アレス「うーん…オレの行動の動機が…モテたいとか、エッチしたいとか…そんなだからですね…あとは美味しいもの食べたいとか…とても崇高とは言えませんよね」
ガイア「では聞くが、崇高な動機とは?」
アレス「え?…うーん…」
ガイア「わからんじゃろ?w」
アレス「はい…」
ガイア「例えば普通はな…『困ってる人を助けたい』とかじゃな…なんか崇高な感じはするよな?」
アレス「ああ…そうですねえ…でも…」
ガイア「でも?」
アレス「オレも、目の前で理不尽な暴力とか…妖精たちみたいなかわいい子たちがいじめられてるの見たら…ボッコボコにしますけど…助けたいと思うし、助けますけど…」
ガイア「ふむ」
アレス「果たして助けるというのが、正しい事なのかはわからないんです…例えば誰か1人を助けたとして、その助けられた1人は助かった事で、その先何十年と生きたとしたら…そいつ1人が生きてく為に、そいつが食う為に、死んでいく多くの命があるって事になります…1人を生かした事で、多くの命を無くすと思うと、それが良い判断なのかはオレにはわからないんです」
ガイア「そうだなw…全くもってその通りじゃw…崇高に見えたとしても、それは崇高ではない…崇高な動機なんてものはないんじゃよ…みな、ただ自分の欲求で動く…それだけの事じゃ」
アレス「そうなのですか…」
ガイア「ああ…大事なのは動機じゃなく、結果なのだ…」
アレス「結果…?」
ガイア「そうじゃ…おぬしはモテたいと思う…だからカッコ良くいたいと思う」
アレス「は、はい///」
ガイア「おぬしはどうするのがカッコいいか考える…その一つは優しい事…その一つは誠実である事…その一つは愛する事…その一つは約束を守る事…そういうのがおぬしはカッコいいと思うじゃろ?」
アレス「はい///…モテる為にそうしてます///」
ガイア「ほっほっw…正直じゃなw…じゃが、おぬしが『モテる為』と一見軽い動機でした行動でも、事実、おぬしのその優しさや誠実さに心を打たれ、助かってる者はたくさんおる…おぬしの愛で幸せになった女もたくさんおる…おぬしの動機がどうあれ、おぬしは誰よりも結果を出しておる…それが大事なんじゃ」
アレス「…なるほど…果たしてオレがそんな結果出せてるかわかりませんが、その考えはわかりました」
ガイア「逆もまたある…さっき言った『誰かを救いたい』などの動機で動いたとしても、その力が足りず、知恵も足りず、結果が出せなかったら…それは例えどんな気高く見えようと、なんの意味もない」
アレス「うーん…厳しいですが、オレもそう言うかもしれない」
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