6 / 236
天界
1
しおりを挟む
鏡を抜けた先は、オレが思ってたような世界だった
雲の上に城やら神殿なんかがある
これぞ天界みたいな感じだ
周りには白い鳥の羽根の美少年がいる
こないだボコした奴らに似てるから、こっちは本当の天使なんだろう
天使って裸のイメージがあったけど、しっかり服着てるし、靴も履いてる
こないだボコにした堕天使が裸だったから、余計に裸のイメージがあったのかな…
天使「ミリアさん、お久しぶり」
ミリア「お久しぶり~!…神様に会いに来たのよ」
天使「神様ですか…どの神様ですか?」
ミリア「ガイアさま」
天使「ガイア様は今お仕事中ですよ…神殿でお待ちください」
ミリア「うん!…アーちゃんいこ!」
アレス「ああ…」
ミリアはオレの手を引き、神殿へと歩く
オレはこの小さな女の子のミリアに頼るしかなくて、ギュッと手を握った
神殿に着くと、椅子やソファーがあり、ミリアはソファーに座った
ミリア「アーちゃん、ここ、ここ…ポンポン」
アレス「うんw」
ミリア「フカフカw…ここで待ってよ」
アレス「うん…さっきの天使?」
ミリア「そうだよ~」
アレス「こないだやっつけた奴らは、あれの仲間?」
ミリア「仲間だった奴ら…時々ああやって、魔王にイタズラされて、悪い奴になるんだって」
アレス「…なに?…あれは魔王の仕業なのか?!」
ミリア「そう…みたい…ごめんね、アタシもよくわからないの…シュン」
アレス「あ、ごめんごめん…ちょっとキツく言ってごめん…ギュ…ごめんよ」
ミリア「ううん…アタシ、いつもちゃんと答えられなくてごめんね…難しい話とか、わからないの…」
アレス「いいんだよ…後で神様に聞くからさ」
ミリア「それがいいと思うの…アタシはバカだから」
アレス「バカなんかじゃない…ギュ…」
ミリア「アーちゃん…チュ」
アレス「おおw…もっかいw」
ミリア「チュゥゥ…」
アレス「ミリアっ!…ギュッ!」
ミリア「あう…苦し…」
アレス「あ、ごめん…あんまりにも愛しくて…///」
ミリア「えへへ、嬉しい///」
アレス「神様って1人じゃないんだな…」
ミリア「うん…何人かいる…ガイアさまは一番偉い神様」
アレス「…一番偉い神様が、いきなり会ってくれるもんなの?」
ミリア「うん!…きっと、ガイア様は今日ここにアタシたちが来るの知ってる」
アレス「マジか…すげえな」
ミリア「神様はなんでも知ってるのよ」
「なんでもってわけじゃないぞw」
突然後ろから声が聞こえて、ビックリした
オレはこんなにも知らない間に接近に気づかない事はなかった
ミリア「ガイアさま、こんちは!」
ガイア「こんにちはw…アレスもよく来たのw」
アレス「はい…はじめまして…オレを知ってるんですか?」
ガイア「そりゃそうだw…ワシが選んだ勇者だからの」
ミリア「ガイアさまはみんなの事知ってるのよ」
アレス「すげえな…神様って」
ガイア様は長い白髪と、立派な白く長い髭を生やしていて、人相はとても優しそうで穏やかで、それでいてとても頼りになるような…そんな外見だった
薄い青のローブを着ていて、本当、神様って感じだ
ミリアといると、優しいおじいちゃんと孫みたいに見える
ガイア「ミリア、アレスはミリアがワシの孫に見えるようじゃよ?w」
ミリア「まご?…おじいちゃん…ダキ」
アレス「あ…すいません…」
ガイア「いや、脅かしたかの?w…いろいろ質問があってきたようだの」
アレス「はい…あの…」
ガイア「その前に、妖精の国を救ってくれて礼を言うぞ」
アレス「あ、いえ…オレはああいうのムカつくんで…頼まれなくてもやりますよ…あ!…ガイア様の声だったのか!…妖精の国を救ってくれって言ったの…」
ガイア「ほっほっw…そうじゃw…おぬししか頼りになるの居なかったからのう」
アレス「へぇぇ…まあいいですけど…妖精に会えて嬉しいですし…それでまあ、ミリアが言うにはオレを勇者に選んだのはガイア様って聞いて…」
ガイア「なぜおぬしを選んだか?」
アレス「はい…あの…もっとオレより正義感強い奴とかいるのに…なんでかなって…ていうか、むしろオレはモテたいとかエッチしたいとか、そんな目的の…まあ、自分で言うのも何ですが、人間的に大した事ないと思うような…」
ガイア「正義感などは余計なものじゃ…人間というのは、どうも魔物や魔王は完全な悪で、自分たちは正しいと思ってるが…おぬしはどう思う?」
アレス「…オレは…昔からどうもその考えには同調出来なかったです…ひねくれ者なのかもしれないですが…」
ガイア「いや、おぬしの考えの方が正しい…魔物や魔王と人間の関係は、ただの食物連鎖の一環でしかないのだよ」
アレス「ですよね!」
ミリア「なにそれ?」
アレス「えっとね、獣…牛はわかる?」
ミリア「うん」
アレス「牛は草を食べるだろ?」
ミリア「うん」
アレス「で、その牛をさ、ライオンとかが食べる」
ミリア「うん」
アレス「ライオンは牛より強いから、牛を殺して食う」
ミリア「うん」
アレス「そんで、食われた牛の死骸とか、牛が食えないで飢えて死んだライオンの身体は、また他の生き物…鳥や虫とかが食べる」
ミリア「うん」
アレス「その鳥や虫がうんちしたり、死んだりすると、土が元気になる」
ミリア「へぇぇ!」
アレス「土が元気になると、草がいっぱい生える」
ミリア「うん」
アレス「そしたらそれをまた牛が食う…そんな感じにね、食べ物はぐるぐる回ってるの」
ミリア「そっかあ!」
アレス「弱肉強食って言ってね」
ミリア「うん」
アレス「弱い者は強い者の食べ物になる…でも、それが自然なの」
ミリア「そうなんだあ…」
アレス「そう…だからね、魔物や魔王からしたら、人間はただの食べ物だって事…食べ物だから、狩って食べる…それは当たり前の事なんだよ…人間だって他の獣より強いから、殺して食べるんだからね」
ミリア「言われたらそうだね!」
ガイア「そうw…だが人間はその理を考えず、魔物を悪と考え、自分たちはまるで聖なる存在かのように考える…そして、悪は敵だから、憎しみの感情を持って排除しようとするのだ」
アレス「やっぱそれ違いますよねえ?」
ガイア「ああw…正義感というのは、そういった理不尽な感情でしかない…感情で物事を判断する人間は勇者の資格などないのじゃ」
アレス「つまりオレは感情では判断しないと?」
ガイア「うむ…おぬしはこないだの堕天使たちに、相当腹を立てたであろう?」
アレス「はい…あんな怒った事はないです…感情的になりましたよ?」
ガイア「そうだな、それはしかし、当たり前でもある…おぬしも生きた人間だからな…だが、おぬしはそれでも誰も殺さなかった…それはなぜだ?…おぬしが元々殺しや残酷な事を好まないのは知ってるが、あの時の感情なら殺しも出来たはずじゃ…なのになぜ殺さなかった?」
アレス「…なぜですかね…たしかにあの時は…せめてゼルエルとかいうクソガキはぶっ殺したかったですよ…でも殺したらいけない気がして…やめました」
ガイア「それはおぬしが感情で生命を奪うのがいけないと、心で理解してるからだ…」
アレス「…そうなのですかね」
ガイア「おぬしはでは、殺しても仕方ないと思うのはどんな時じゃ?」
アレス「…食べる目的の時です…あ、でも…蚊とかに刺されたりしたら叩き潰したりもします」
ガイア「そうじゃな…それはつまり、『生きる』とか『守る』為の殺しじゃ…それは当たり前の事だ…全ての生き物は、『生きる』為に戦うのだ…そこに感情が入ってはいけない…それはただの殺戮だからだ…殺す為の戦いになるからじゃ…おぬしは心でそれがわかっておる…だからワシはおぬしを選んだのだ」
アレス「そうなんですか…ちょっとお待ちくださいね…ミリア…ごめんな?…退屈だよな?」
ミリア「…うん…難しくてわかんない…眠ってていい?」
アレス「うんw…じゃあソファーでさ、膝枕してあげるよ」
ミリア「やったあ!」
アレス「すいません、ガイアさま…ソファーに座らせていただきます」
ガイア「ほっほっw…かまわんよw」
アレス「ミリア、おいで」
ミリア「うん…」
アレス「ふふふw…ナデナデ…」
ガイア「ワシも座ろう」
アレス「ガイア様…オレを選んだ理由はわかったんですが、そうするとまた疑問が出てきます…魔物や魔王が人間より強い、食物連鎖の頂点だとしたら、なぜ、あなたはオレを勇者として戦わせるのですか?…人間が弱いなら、滅びればいいのではないですか?」
ガイア「そうじゃなあw…ただ、人間という存在を作ったのはワシらだからな…それがな?」
アレス「はい…」
ガイア「他の地上の生き物に負けて、食われるならばワシらも手を貸す事はないんじゃが…魔物や魔王というのは、魔界の生物じゃ…地上の生物ではないのじゃ…テリトリーが違うのだよ」
アレス「魔界…」
ガイア「そう…天界と地上と魔界…妖精の世界…ドラゴンの世界…世の中にはそういう複数の世界があっての」
アレス「は、はい…」
ガイア「それはお互いに侵略してはならないんじゃな…だからな?…ワシらが地上に降りて、魔物や魔王と戦うことも出来ん…また、そこまでしてやるほど、人間たちに価値はない」
アレス「…それはその通りだと思います」
ガイア「かと言ってな…ワシらが作ったからな…作っといてほったらかしもあまりに無責任じゃろ?…だからお前さんという存在を選んで、力を与えたのじゃ…お前さんを地上の生き物の希望としてな…」
アレス「オレが…希望…」
ガイア「おぬしは自分を大した事ないと思ってるようじゃが、それはなぜじゃ?」
アレス「うーん…オレの行動の動機が…モテたいとか、エッチしたいとか…そんなだからですね…あとは美味しいもの食べたいとか…とても崇高とは言えませんよね」
ガイア「では聞くが、崇高な動機とは?」
アレス「え?…うーん…」
ガイア「わからんじゃろ?w」
アレス「はい…」
ガイア「例えば普通はな…『困ってる人を助けたい』とかじゃな…なんか崇高な感じはするよな?」
アレス「ああ…そうですねえ…でも…」
ガイア「でも?」
アレス「オレも、目の前で理不尽な暴力とか…妖精たちみたいなかわいい子たちがいじめられてるの見たら…ボッコボコにしますけど…助けたいと思うし、助けますけど…」
ガイア「ふむ」
アレス「果たして助けるというのが、正しい事なのかはわからないんです…例えば誰か1人を助けたとして、その助けられた1人は助かった事で、その先何十年と生きたとしたら…そいつ1人が生きてく為に、そいつが食う為に、死んでいく多くの命があるって事になります…1人を生かした事で、多くの命を無くすと思うと、それが良い判断なのかはオレにはわからないんです」
ガイア「そうだなw…全くもってその通りじゃw…崇高に見えたとしても、それは崇高ではない…崇高な動機なんてものはないんじゃよ…みな、ただ自分の欲求で動く…それだけの事じゃ」
アレス「そうなのですか…」
ガイア「ああ…大事なのは動機じゃなく、結果なのだ…」
アレス「結果…?」
ガイア「そうじゃ…おぬしはモテたいと思う…だからカッコ良くいたいと思う」
アレス「は、はい///」
ガイア「おぬしはどうするのがカッコいいか考える…その一つは優しい事…その一つは誠実である事…その一つは愛する事…その一つは約束を守る事…そういうのがおぬしはカッコいいと思うじゃろ?」
アレス「はい///…モテる為にそうしてます///」
ガイア「ほっほっw…正直じゃなw…じゃが、おぬしが『モテる為』と一見軽い動機でした行動でも、事実、おぬしのその優しさや誠実さに心を打たれ、助かってる者はたくさんおる…おぬしの愛で幸せになった女もたくさんおる…おぬしの動機がどうあれ、おぬしは誰よりも結果を出しておる…それが大事なんじゃ」
アレス「…なるほど…果たしてオレがそんな結果出せてるかわかりませんが、その考えはわかりました」
ガイア「逆もまたある…さっき言った『誰かを救いたい』などの動機で動いたとしても、その力が足りず、知恵も足りず、結果が出せなかったら…それは例えどんな気高く見えようと、なんの意味もない」
アレス「うーん…厳しいですが、オレもそう言うかもしれない」
雲の上に城やら神殿なんかがある
これぞ天界みたいな感じだ
周りには白い鳥の羽根の美少年がいる
こないだボコした奴らに似てるから、こっちは本当の天使なんだろう
天使って裸のイメージがあったけど、しっかり服着てるし、靴も履いてる
こないだボコにした堕天使が裸だったから、余計に裸のイメージがあったのかな…
天使「ミリアさん、お久しぶり」
ミリア「お久しぶり~!…神様に会いに来たのよ」
天使「神様ですか…どの神様ですか?」
ミリア「ガイアさま」
天使「ガイア様は今お仕事中ですよ…神殿でお待ちください」
ミリア「うん!…アーちゃんいこ!」
アレス「ああ…」
ミリアはオレの手を引き、神殿へと歩く
オレはこの小さな女の子のミリアに頼るしかなくて、ギュッと手を握った
神殿に着くと、椅子やソファーがあり、ミリアはソファーに座った
ミリア「アーちゃん、ここ、ここ…ポンポン」
アレス「うんw」
ミリア「フカフカw…ここで待ってよ」
アレス「うん…さっきの天使?」
ミリア「そうだよ~」
アレス「こないだやっつけた奴らは、あれの仲間?」
ミリア「仲間だった奴ら…時々ああやって、魔王にイタズラされて、悪い奴になるんだって」
アレス「…なに?…あれは魔王の仕業なのか?!」
ミリア「そう…みたい…ごめんね、アタシもよくわからないの…シュン」
アレス「あ、ごめんごめん…ちょっとキツく言ってごめん…ギュ…ごめんよ」
ミリア「ううん…アタシ、いつもちゃんと答えられなくてごめんね…難しい話とか、わからないの…」
アレス「いいんだよ…後で神様に聞くからさ」
ミリア「それがいいと思うの…アタシはバカだから」
アレス「バカなんかじゃない…ギュ…」
ミリア「アーちゃん…チュ」
アレス「おおw…もっかいw」
ミリア「チュゥゥ…」
アレス「ミリアっ!…ギュッ!」
ミリア「あう…苦し…」
アレス「あ、ごめん…あんまりにも愛しくて…///」
ミリア「えへへ、嬉しい///」
アレス「神様って1人じゃないんだな…」
ミリア「うん…何人かいる…ガイアさまは一番偉い神様」
アレス「…一番偉い神様が、いきなり会ってくれるもんなの?」
ミリア「うん!…きっと、ガイア様は今日ここにアタシたちが来るの知ってる」
アレス「マジか…すげえな」
ミリア「神様はなんでも知ってるのよ」
「なんでもってわけじゃないぞw」
突然後ろから声が聞こえて、ビックリした
オレはこんなにも知らない間に接近に気づかない事はなかった
ミリア「ガイアさま、こんちは!」
ガイア「こんにちはw…アレスもよく来たのw」
アレス「はい…はじめまして…オレを知ってるんですか?」
ガイア「そりゃそうだw…ワシが選んだ勇者だからの」
ミリア「ガイアさまはみんなの事知ってるのよ」
アレス「すげえな…神様って」
ガイア様は長い白髪と、立派な白く長い髭を生やしていて、人相はとても優しそうで穏やかで、それでいてとても頼りになるような…そんな外見だった
薄い青のローブを着ていて、本当、神様って感じだ
ミリアといると、優しいおじいちゃんと孫みたいに見える
ガイア「ミリア、アレスはミリアがワシの孫に見えるようじゃよ?w」
ミリア「まご?…おじいちゃん…ダキ」
アレス「あ…すいません…」
ガイア「いや、脅かしたかの?w…いろいろ質問があってきたようだの」
アレス「はい…あの…」
ガイア「その前に、妖精の国を救ってくれて礼を言うぞ」
アレス「あ、いえ…オレはああいうのムカつくんで…頼まれなくてもやりますよ…あ!…ガイア様の声だったのか!…妖精の国を救ってくれって言ったの…」
ガイア「ほっほっw…そうじゃw…おぬししか頼りになるの居なかったからのう」
アレス「へぇぇ…まあいいですけど…妖精に会えて嬉しいですし…それでまあ、ミリアが言うにはオレを勇者に選んだのはガイア様って聞いて…」
ガイア「なぜおぬしを選んだか?」
アレス「はい…あの…もっとオレより正義感強い奴とかいるのに…なんでかなって…ていうか、むしろオレはモテたいとかエッチしたいとか、そんな目的の…まあ、自分で言うのも何ですが、人間的に大した事ないと思うような…」
ガイア「正義感などは余計なものじゃ…人間というのは、どうも魔物や魔王は完全な悪で、自分たちは正しいと思ってるが…おぬしはどう思う?」
アレス「…オレは…昔からどうもその考えには同調出来なかったです…ひねくれ者なのかもしれないですが…」
ガイア「いや、おぬしの考えの方が正しい…魔物や魔王と人間の関係は、ただの食物連鎖の一環でしかないのだよ」
アレス「ですよね!」
ミリア「なにそれ?」
アレス「えっとね、獣…牛はわかる?」
ミリア「うん」
アレス「牛は草を食べるだろ?」
ミリア「うん」
アレス「で、その牛をさ、ライオンとかが食べる」
ミリア「うん」
アレス「ライオンは牛より強いから、牛を殺して食う」
ミリア「うん」
アレス「そんで、食われた牛の死骸とか、牛が食えないで飢えて死んだライオンの身体は、また他の生き物…鳥や虫とかが食べる」
ミリア「うん」
アレス「その鳥や虫がうんちしたり、死んだりすると、土が元気になる」
ミリア「へぇぇ!」
アレス「土が元気になると、草がいっぱい生える」
ミリア「うん」
アレス「そしたらそれをまた牛が食う…そんな感じにね、食べ物はぐるぐる回ってるの」
ミリア「そっかあ!」
アレス「弱肉強食って言ってね」
ミリア「うん」
アレス「弱い者は強い者の食べ物になる…でも、それが自然なの」
ミリア「そうなんだあ…」
アレス「そう…だからね、魔物や魔王からしたら、人間はただの食べ物だって事…食べ物だから、狩って食べる…それは当たり前の事なんだよ…人間だって他の獣より強いから、殺して食べるんだからね」
ミリア「言われたらそうだね!」
ガイア「そうw…だが人間はその理を考えず、魔物を悪と考え、自分たちはまるで聖なる存在かのように考える…そして、悪は敵だから、憎しみの感情を持って排除しようとするのだ」
アレス「やっぱそれ違いますよねえ?」
ガイア「ああw…正義感というのは、そういった理不尽な感情でしかない…感情で物事を判断する人間は勇者の資格などないのじゃ」
アレス「つまりオレは感情では判断しないと?」
ガイア「うむ…おぬしはこないだの堕天使たちに、相当腹を立てたであろう?」
アレス「はい…あんな怒った事はないです…感情的になりましたよ?」
ガイア「そうだな、それはしかし、当たり前でもある…おぬしも生きた人間だからな…だが、おぬしはそれでも誰も殺さなかった…それはなぜだ?…おぬしが元々殺しや残酷な事を好まないのは知ってるが、あの時の感情なら殺しも出来たはずじゃ…なのになぜ殺さなかった?」
アレス「…なぜですかね…たしかにあの時は…せめてゼルエルとかいうクソガキはぶっ殺したかったですよ…でも殺したらいけない気がして…やめました」
ガイア「それはおぬしが感情で生命を奪うのがいけないと、心で理解してるからだ…」
アレス「…そうなのですかね」
ガイア「おぬしはでは、殺しても仕方ないと思うのはどんな時じゃ?」
アレス「…食べる目的の時です…あ、でも…蚊とかに刺されたりしたら叩き潰したりもします」
ガイア「そうじゃな…それはつまり、『生きる』とか『守る』為の殺しじゃ…それは当たり前の事だ…全ての生き物は、『生きる』為に戦うのだ…そこに感情が入ってはいけない…それはただの殺戮だからだ…殺す為の戦いになるからじゃ…おぬしは心でそれがわかっておる…だからワシはおぬしを選んだのだ」
アレス「そうなんですか…ちょっとお待ちくださいね…ミリア…ごめんな?…退屈だよな?」
ミリア「…うん…難しくてわかんない…眠ってていい?」
アレス「うんw…じゃあソファーでさ、膝枕してあげるよ」
ミリア「やったあ!」
アレス「すいません、ガイアさま…ソファーに座らせていただきます」
ガイア「ほっほっw…かまわんよw」
アレス「ミリア、おいで」
ミリア「うん…」
アレス「ふふふw…ナデナデ…」
ガイア「ワシも座ろう」
アレス「ガイア様…オレを選んだ理由はわかったんですが、そうするとまた疑問が出てきます…魔物や魔王が人間より強い、食物連鎖の頂点だとしたら、なぜ、あなたはオレを勇者として戦わせるのですか?…人間が弱いなら、滅びればいいのではないですか?」
ガイア「そうじゃなあw…ただ、人間という存在を作ったのはワシらだからな…それがな?」
アレス「はい…」
ガイア「他の地上の生き物に負けて、食われるならばワシらも手を貸す事はないんじゃが…魔物や魔王というのは、魔界の生物じゃ…地上の生物ではないのじゃ…テリトリーが違うのだよ」
アレス「魔界…」
ガイア「そう…天界と地上と魔界…妖精の世界…ドラゴンの世界…世の中にはそういう複数の世界があっての」
アレス「は、はい…」
ガイア「それはお互いに侵略してはならないんじゃな…だからな?…ワシらが地上に降りて、魔物や魔王と戦うことも出来ん…また、そこまでしてやるほど、人間たちに価値はない」
アレス「…それはその通りだと思います」
ガイア「かと言ってな…ワシらが作ったからな…作っといてほったらかしもあまりに無責任じゃろ?…だからお前さんという存在を選んで、力を与えたのじゃ…お前さんを地上の生き物の希望としてな…」
アレス「オレが…希望…」
ガイア「おぬしは自分を大した事ないと思ってるようじゃが、それはなぜじゃ?」
アレス「うーん…オレの行動の動機が…モテたいとか、エッチしたいとか…そんなだからですね…あとは美味しいもの食べたいとか…とても崇高とは言えませんよね」
ガイア「では聞くが、崇高な動機とは?」
アレス「え?…うーん…」
ガイア「わからんじゃろ?w」
アレス「はい…」
ガイア「例えば普通はな…『困ってる人を助けたい』とかじゃな…なんか崇高な感じはするよな?」
アレス「ああ…そうですねえ…でも…」
ガイア「でも?」
アレス「オレも、目の前で理不尽な暴力とか…妖精たちみたいなかわいい子たちがいじめられてるの見たら…ボッコボコにしますけど…助けたいと思うし、助けますけど…」
ガイア「ふむ」
アレス「果たして助けるというのが、正しい事なのかはわからないんです…例えば誰か1人を助けたとして、その助けられた1人は助かった事で、その先何十年と生きたとしたら…そいつ1人が生きてく為に、そいつが食う為に、死んでいく多くの命があるって事になります…1人を生かした事で、多くの命を無くすと思うと、それが良い判断なのかはオレにはわからないんです」
ガイア「そうだなw…全くもってその通りじゃw…崇高に見えたとしても、それは崇高ではない…崇高な動機なんてものはないんじゃよ…みな、ただ自分の欲求で動く…それだけの事じゃ」
アレス「そうなのですか…」
ガイア「ああ…大事なのは動機じゃなく、結果なのだ…」
アレス「結果…?」
ガイア「そうじゃ…おぬしはモテたいと思う…だからカッコ良くいたいと思う」
アレス「は、はい///」
ガイア「おぬしはどうするのがカッコいいか考える…その一つは優しい事…その一つは誠実である事…その一つは愛する事…その一つは約束を守る事…そういうのがおぬしはカッコいいと思うじゃろ?」
アレス「はい///…モテる為にそうしてます///」
ガイア「ほっほっw…正直じゃなw…じゃが、おぬしが『モテる為』と一見軽い動機でした行動でも、事実、おぬしのその優しさや誠実さに心を打たれ、助かってる者はたくさんおる…おぬしの愛で幸せになった女もたくさんおる…おぬしの動機がどうあれ、おぬしは誰よりも結果を出しておる…それが大事なんじゃ」
アレス「…なるほど…果たしてオレがそんな結果出せてるかわかりませんが、その考えはわかりました」
ガイア「逆もまたある…さっき言った『誰かを救いたい』などの動機で動いたとしても、その力が足りず、知恵も足りず、結果が出せなかったら…それは例えどんな気高く見えようと、なんの意味もない」
アレス「うーん…厳しいですが、オレもそう言うかもしれない」
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
【R18】黒髪メガネのサラリーマンに監禁された話。
猫足02
恋愛
ある日、大学の帰り道に誘拐された美琴は、そのまま犯人のマンションに監禁されてしまう。
『ずっと君を見てたんだ。君だけを愛してる』
一度コンビニで見かけただけの、端正な顔立ちの男。一見犯罪とは無縁そうな彼は、狂っていた。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
【R18】幼馴染の男3人にノリで乳首当てゲームされて思わず感じてしまい、次々と告白されて予想外の展開に…【短縮版】
うすい
恋愛
【ストーリー】
幼馴染の男3人と久しぶりに飲みに集まったななか。自分だけ異性であることを意識しないくらい仲がよく、久しぶりに4人で集まれたことを嬉しく思っていた。
そんな中、幼馴染のうちの1人が乳首当てゲームにハマっていると言い出し、ななか以外の3人が実際にゲームをして盛り上がる。
3人のやり取りを微笑ましく眺めるななかだったが、自分も参加させられ、思わず感じてしまい―――。
さらにその後、幼馴染たちから次々と衝撃の事実を伝えられ、事態は思わぬ方向に発展していく。
【登場人物】
・ななか
広告マーケターとして働く新社会人。純粋で素直だが流されやすい。大学時代に一度だけ彼氏がいたが、身体の相性が微妙で別れた。
・かつや
不動産の営業マンとして働く新社会人。社交的な性格で男女問わず友達が多い。ななかと同じ大学出身。
・よしひこ
飲食店経営者。クールで口数が少ない。頭も顔も要領もいいため学生時代はモテた。短期留学経験者。
・しんじ
工場勤務の社会人。控えめな性格だがしっかり者。みんなよりも社会人歴が長い。最近同棲中の彼女と別れた。
【注意】
※一度全作品を削除されてしまったため、本番シーンはカットしての投稿となります。
そのため読みにくい点や把握しにくい点が多いかと思いますがご了承ください。
フルバージョンはpixivやFantiaで配信させていただいております。
※男数人で女を取り合うなど、くっさい乙女ゲーム感満載です。
※フィクションとしてお楽しみいただきますようお願い申し上げます。
連続寸止めで、イキたくて泣かされちゃう女の子のお話
まゆら
恋愛
投稿を閲覧いただき、ありがとうございます(*ˊᵕˋ*)
「一日中、イかされちゃうのと、イケないままと、どっちが良い?」
久しぶりの恋人とのお休みに、食事中も映画を見ている時も、ずっと気持ち良くされちゃう女の子のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる