母ちゃんとオレ

ヨッシー

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母ちゃんと三度目のオレと二度目のユウトくん

7話

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翌日
学校に着いて、上履きに履き替えようと、下駄箱のフタを開けた
すると、上履きが切られていて、中には泥が入っていた
まるでいじめのテンプレみたいだw

全然イライラはしてない
むしろほくそ笑んでる
しかもフタの内側には泥の着いた手で触った、指の痕跡があった
指紋が一部残ってる
バカだな…さすが小学生だ

オレはバッチリ画像に収めた

上履きが使えないから、靴下のまま教室に向かった
教室に入って、オレはまず机の中を見てみた
案の定、中には画びょうやら、わけのわからない液体…匂い的にマヨネーズだと思う…そんなのが仕掛けられていた

「あ、ねえ…」
「なあに?」
「ちょっとここに立ってもらえる?」
「ここ?…こう?」
「うん」

オレは奴らから見えないようにする為、隣の席の女の子を立たせて、画像を収めた

「カオルくん、それ…」
「シ-…ごめん、内緒にしといて?」
「う、うん…もしかして机の中…」
「うん…見ててごらん」

オレは雑巾でマヨネーズとついでに画びょうも、拭き取った

「アイツらだね?」
「だねw」
「カオルくん、余裕だね…怖くないの?」
「全然だよw」
「わたし手伝える事あったら言ってね」
「ありがとう…もうすでに手伝ってくれたよ…こんどジュース奢るね」
「いいよ…立ってるだけだもん」
「でも、君が巻き込まれるのは嫌だから、あまり話しかけない方がいい…」
「…うん…でも…」
「ありがとうね」

オレはもう一枚、拭き取った雑巾もカメラに収めてから、雑巾を捨てた
けっこうまだヌルヌルしてるし、臭う

「カオルくん、これあげる…」
「ありがとう…」

隣の子はそう言ってポケットティッシュをくれた
プリキュアの絵がプリントされたティッシュだ

「全部貰ってもだいじょぶ?」
「うん!」
「このお礼はいつか絶対に返すね…優しいね」
「ううん///…そしたらさ、夏休み一緒に宿題見てほしい///…カオルくん頭いいから」
「いいよw…そんな事でいいなら」
「うん///」

オレは拭きながら、隣の子とヒソヒソと話した

この子の名前はなんだろう
オレは初めて他の子に少し興味が湧いて、それで気付いた
誰の名前も覚えてない事に
これはいけない事だ
あのアホの名前も覚えてないし

チラッと隣の子の席を見ると、ノートに名前があるのが見えた
『夏木リク』という名前だった

「ありがとう、リクちゃん」
「ううん///…へへ///」

オレは自惚れるわけじゃないけど、前回の人生ではそれなりにモテてたからわかる
リクちゃんのこの態度は、オレに好意を持ってる
リクちゃんには少し時間を割いて、味方にしておく方がいいかもしれない

「あれ、カオルくん、上履きは?」
「あ、すいません先生…洗って持ってくるの忘れてしまいました…」
「待ってな?…今スリッパ持ってきてあげる」
「ありがとうございます」

「はいよ」
「ありがとうございます」
「どういたしましてw…じゃあ授業を始めます」

そして授業が終わり、先生に話しかけた
先生も味方につけておく為だ

「先生、スリッパどうもありがとうございます」
「ああ、うんw…明日は持ってこれる?」
「それが…もう上履きが小さくて、靴ずれになりかけていて、痛いんです…ですが、うちは事情があって、上履き一つ買うのも大変なのです…なので、もしも良かったら、このまましばらく借りていても良いでしょうか」
「うん…そういうことなら仕方ない…いいよ!…でも、スリッパでいたらからかわれないかな」
「それは全然かまいません…そんな事を気にするオレではないですし、先生の優しさが嬉しかったので、オレはこれがいいです」
「そう…ウル…わかった…カオルくんがからかわれてたら、叱ってあげるね」
「だいじょぶですw…贔屓と捉えられたら、先生に迷惑がかかりますから…気になさらないでください」
「カオルくん…ほんと大人だねぇ」
「恐縮ですw…では、また小説の続きを書きます」
「うんw…楽しみにしてるw」
「ありがとうございますw」


「カオルくん…ごめんね、話しかけて…いつもそうやって勉強してて偉いね」
「ああ…リクちゃんは勉強は嫌い?」
「あんまり好きじゃない…」
「オレはたまたま好きで、リクちゃんはそうじゃなかっただけだよw…だから偉いってわけじゃないよ」
「でも、勉強出来たらいいな」
「そう思うなら、やるしかないけど…でも、リクちゃんはリクちゃんの、好きな事を見つけるのが先だよ」
「どうして?」
「好きな事があれば、頑張れるから…勉強もついでに頑張れるようになるよ」
「ほんと?」
「うん…リクちゃん、ごめんね…オレの方を見て話さない方がいいよ…オレもリクちゃんを見ないから…仲良くしてるといじめられてしまうよ」
「カオルくん…優しいね」
「オレのせいでリクちゃんがつまらない思いをすることないって思うだけw」
「ありがと…でも、カオルくんと一緒ならいじめられてもいいよ」
「ありがとう…でも、いつか顔見て話せる時がくるから、それまではね」
「うん…わかった」
「授業そろそろ始まるよ」
「うん…ごめんね邪魔して」
「いいんだよ」

小説が全然進まない…
でも今日は仕方ない
夕方から家で書けばいい

給食を食べながら、今後どうするかを考える
やつらがオレに暴行を働いたとして、それをどうやって撮影するか…

でも、それがもし出来たとして、証拠を集めてやつらを追い詰められたとしても、クラスの責任者である担任に迷惑をかける

迷惑どころか、転勤や免職になる可能性がある
担任には話しておいた方がいいかもしれない

オレは4時間目の授業の時に、先生宛てに

『給食を食べ終わったら、何かしらの用事を言いつけて、職員室に呼んでください
給食の最中は知らん顔していてください』

という手紙を書いた

給食は先生も教壇で食べる
オレの席が教壇に一番近いので、手を伸ばせばすぐに渡せた

先生はそれを読んで、給食の後、オレを職員室に連れて行く

「先生、職員室ではなくて、屋上でも良いですか?…秘密の相談です」
「わかった…小説の事?」
「いえ、違います」
「よし、行こう」

そして屋上に着いた

「どうしたの?カオルくん」
「先日、先生がオレの小説ノートを見せてと言った時の事です…先生は『ケンカか?』と言ってましたよね?」
「ああ…あの子にノートを取られたんだよな?」
「そうです…その後、オレは悪い予感がしたので、父からスマホを借りていました…これを見てください」

オレは今日撮影した、下駄箱と上履きの様子と、録画した机の中の様子を見せた

「これはひどい!!…だから上履きがなかったんだね…」
「はい、しかし、この二つだけでは証拠能力が低いです…こっちの下駄箱の方は、指紋があるので、確実に一人は追い詰められますけど」
「た、たしかに」
「なのでオレは自分がやつらに直接嫌がらせや、暴行を受ける場面みたいな、決定的な証拠を撮影しようと思いました…でも、そうしてやつらを追い詰める事は出来ても、かなりの確率でクラスの責任者である先生にも処罰があると思います…それはオレとしては嫌だから、こうして相談をしてます」
「そうだったのか…ありがとう、カオルくん…嬉しいよ…でも、どうしたらいじめを止められるかな…カオルくんとしては、どういう結末になれば、納得できる?」
「オレは…やっぱりかなり腹は立ってます…うちは本当に貧乏で、上履きを買うのもそう簡単に出来ない程」
「そうなのか…」
「その理由は話せませんが、母ちゃんが無理して買ってくれるものなのです…ほら、オレの服もサイズが合ってないし、いつも同じようなカッコですよね」
「…たしかに!」
「でも母ちゃんは、いつも頑張ってオレを養ってくれてます…まる一日休みだった事なんて、年に数回程です…その母ちゃんが一生懸命買ってくれたものを壊されたので、ただ単に弁償しただけではオレは収まりません」
「そうだよなあ!」
「でも、オレの小説を楽しみにしてくれ、スリッパを貸してくれた先生に迷惑もかけたくないです」
「カオルくん…」
「なので…先生には面倒で大変だと思いますけど、オレを見張っていてもらいたいのです…そして、やつらがオレに何かをしてきた時、現行犯で止めてもらいたいのです…証拠としては弱いですが、いじめを止めた事実があれば、先生が責められる事はないです」
「わかった!!」
「オレは、2時間目の後の20分休憩と、お昼休憩の時間にトイレに行くことにします…先生にはその時間と、あと下校時だけ見守っていてもらえますか?」
「うん…カオルくんて…一体なんなの?…先生には子どもに見えないよ…」
「それには答えようがないですよw…生意気なだけです」
「生意気といえばそうなのかもしれないけど、先生にとってはとても良い子だ」
「ありがとうございますw…スマホは没収しないでください…たぶん、まだ証拠はとれます」
「うん、もちろん没収なんてしない…オレもカオルくんを助けたい」
「ありがとうございます…それでもう一つお願いがあって」
「なんだい?」
「今日のこの後の授業の途中で、早退させてもらいたいのです…今日の放課後はまだやつらにやられるわけにはいかないので…」
「わかった…どうする気?」
「父親に頼んで、弁護士さんに相談しに行きます」
「おお…すごいね、カオルくんw」
「いえ…では、明日から見張り、お願いします」
「わかった!…任せてくれ」
「では、教室に戻りますね」
「ああ、先生も一旦職員室に戻らないとだw」
「では…ありがとうございました」

そうして教室に戻り、5時間目の授業の最中に、具合が悪いと言って、早退した
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