母ちゃんとオレ

ヨッシー

文字の大きさ
上 下
28 / 41
母ちゃんと三度目のオレと二度目のユウトくん

2話

しおりを挟む
母ちゃんも働き始めて、オレも小学校に再び通い始めた
ボロボロアパートから小学校の距離は、父さんの家からの距離と変わらないんだけど、ボロボロアパートは本来なら学区内ではなかった
だけど、小学校は変わらずに済んでいた
元々、友達も居なかったし、学校が変わっても全然良かったけど、面倒じゃないのは助かる

一度目の世界では、ユウトくんは私立の中学校に通ってたから、会わなかったのは当然だったけど、ハルちゃんと違う中学だったのは、学区が違ってたからだ

だから、このボロボロアパートからユウトくんの小学校までの距離は、父さんちからの距離の倍はある

しかも、自転車も買えないほど貧乏だから、子どもの足じゃ、40分はかかる
子どもってのは、いつも元気で活発だけど、案外体力はない
運動が得意じゃないオレはなおさらだ

40分歩いて、帰りもまた40分歩く
まあ、体力的な問題は頑張るとしても、それだけで1時間20分も使っちゃう
実際には1時間半は見ないとダメだ
母ちゃんは夕方5時に帰ってきて、ご飯とか準備して、7時にはまた違うパートに行く
だからなるべく5時か、少し過ぎるくらいで帰らないと、母ちゃんに無駄に心配かけてしまう…

ユウトくんに会いに学校終わった足で行っても、40分も経ってたら、ユウトくんも家に帰ってるはずだし、会えたとしても、そんなに時間もない

それに、ユウトくんに今会うのは、だいぶ人生が変わってしまうだろう

だけど、それでもユウトくんに確実に会えるとしたら、小学生のうちだと思う
ユウトくんが行ってた私立の中学校は知ってるけど、その中学校を選ぶかはわからないし
16歳になったとして、ハルちゃんちのセブンで会える保証もない

それなら、今すぐ会いに行った方がいいと思った

…というより、いろいろ理屈をこねて、会いに行く理由を無理矢理つけてるだけだけど…

ユウトくんと会えたら、オレはだいぶ安心出来ると期待してる
いつもそうだから

もう一つ不安なのは、この世界のユウトくんが大人なのか、子どもなのかって事

子どもでも嬉しいんだけど、オレは出来れば大人のユウトくんに会いたい

そうするとなると、午後の授業を早退しないといけない
しかも、早くしないと夏休みが始まってしまう
夏休みになったら、会える確率は低い

そう思いたったオレは、翌日の学校の午後の授業は『お腹が痛い』という理由で、早退させてもらった

オレの小学校では『置き勉』が許されないから、ランドセルが重い
でも、仕方ないからユウトくんの小学校に歩いた

あっつくて、ランドセルが重くて、ハァハァと息を荒くしながら、一生懸命歩く

セミがうるさい
うるさいのはミンミンゼミだ
『ミーンミンミンミンミンミー』の『ミンミンミンミン』の部分がとくにうるさい
一旦気になると、余計に耳に入ってきて、イライラしてくる

オレは虫は触れないほど苦手ではないけど、セミって下手な飛び方で、やたらめったら暴れながら飛ぶから、結構オレの方にも飛んできたりする
苦手じゃなくても、セミに急襲されたらさすがに怖い

ユウトくんの小学校の生徒たちが、叫び声や奇声を上げて、友達たちと帰っていく
どうして小学生って、ああいう声出すんだろう
あと、気に入ったセリフがあると、何度も何度も繰り返すの
でも、大人にはすごくつまらないから、無視する
そうすると、反応してくれるまで繰り返すから、余計にうるさい
かと言って、相手すればしたで、内容がほとんどなくて、反応に困るし

ユウトくんは子どもでもそんな事しなかったな…
普段、言葉遣いは不良っぽくしてても、大人にはちゃんと敬語で話してたし
やっぱりユウトくんは違う

そんなふうにユウトくんを思い浮かべて、頭お花畑で歩いてたら、セミが襲ってきた
オレは慌てて避けようとして、ガードレールに突っ込んじゃって、お腹打って、ランドセルの重みも加わって、前のめりに倒れそうになった

うわぁ!!って思ったその時

ガシッと受け止めてくれた男の子

オレは顔が見えなかったけど、絶対にユウトくんだと、なぜか思った

「大丈夫か?w…ほら」

ああ、やっぱり!!
ほらね…いっつもこうして助けてくれるんだ
オレは泣きそうになったけど、ユウトくんからしたら初対面だから、ぐっとこらえた

「あ、ありがとう!」
「おうw…セミムカつくよなw」
「…ユウトくん」
「…誰だ?…お前…」
「…トンネル5つ目…」
「…!!…もしかして…カオくん?!」
「うん!…ユウトくん!!…ギュ!」
「あ、おい…やめってw…こんなとこでよ」
「あ、ごめん///」
「…マジかよ」
「うん」
「オレの知ってるカオくんと全然違うんだが…」
「ワルだった?」
「…なんで知ってる?」
「聞いたんだよ…前に」
「どういうことよ…まあ、いい…とりあえずオレんチ来いよ」
「うん!」
「あ…お前が本当にカオくんなら、オレんチ知ってる…よな?」
「うん」
「じゃあ、その証明に、先に歩いてくれ」
「わかった…でもなんか悲しいよ…」
「なんで?」
「だってユウトくんに疑われてるんだもん」
「…だってオレの知ってるカオくんはさ…たしかに信用できる奴だったけど、ワルだからさ…」
「そっか…オレがワルだなんて、どういう人生でそうなるのかわからないよ」
「うーん…たしかに…お前全然弱っちそうだもんなあ」
「ユウトくんの知ってるオレは、ケンカとかもしたの?…強かった?」
「いや、ケンカはしなかったよ…めちゃくちゃ頭良くてさ、度胸もあって、口で収めるんだよ…それがカッコ良くてな…オレたち下っ端のワルから憧れられてた」
「へぇぇw…そっかw…ハルちゃんは今日は?」
「ハルは今日学校休んでる…風邪だとよ…ほんとはお見舞い行こうとしてたわけ…わかった…もう信じるよ…隣歩くわ」
「うん!」
「なんかかわいいカオくんだなあw」
「あははw…良かった…ユウトくんはよくそう言ってくれたんだよ」
「オレにかわいいって言われて嬉しいのか?w」
「嬉しいんだよ…とっても…」
「変なカオくんだなw」
「それもよく言われる…ユウトくんはさ」
「うん」
「今は医者を目指してるの?」
「…そんなのまで知ってるのか?」
「うん」
「カオくんはさ…おそらくオレに聞かされて、やり直したんだろ?」
「そう」
「…それでその教えたオレってのは、今のオレに似てるオレか?」
「うん…そう」
「ちょっと待て…カオくんよ…お前はこれからオレがどんなふうに生きるか、知ってるわけだよな?」
「うん」
「知ってても絶対に教えるなよ?」
「うん、もちろんだよ」
「オレがカオくんの知ってるオレと違う選択をしても、黙ってろよ?」
「うん…でも…その選択にもよるかな…もしもユウトくんが悪い事とかしそうだったら、オレは止める」
「わかったw…それでいい…約束だぞ?」
「うん」
「カオくん…ハルのとこ行くか?」
「え?…お見舞いに知らない人が行ったら、ハルちゃんビックリするよw」
「…それもそうかw」
「それに、ユウトくんちもうすぐだ」
「ああ」

オレたちはユウトくんの住んでるマンションに着いた

「部屋の番号知ってる?」
「うん…1012でしょ?」
「そうw」

オレはユウトくんちに入ると、ユウトくんのママに挨拶をして、ユウトくんの部屋に入った

「すごい参考書だね…」
「まあねw…前はワルだったからやってなかったけど、今回勉強やってみたら、案外嫌いじゃなかったんだw」
「うん、ユウトくん頭良いもん」
「カオくんは勉強は?」
「オレは前は〇〇高校だったよ」
「げえw…すげ~w…でも、そうすると、なんでやり直したのかわからねえな…もったいなくねえか?」
「オレはね、母ちゃんが大事なんだ…マザコンて思うかもだけど」
「…母ちゃん死んじゃったとか?」
「うん…二回ね」
「え?…それどういう?…もしかしてカオくん…3回目の人生なのか?」
「うん」
「お前…寿命は?」
「23」
「ふざけんなよ?…てめぇ…なんでそんな早死にする人生で、オレに会いにくんだよ?!…グッ…オレはカオくんとそれしか付き合えないのかよ!!」
「う…ご、ごめん…グス」
「ちっ、泣くなよ…悪かったよ…ナデナデ…」
「いや…ごめん…謝るのはオレだ…オレは自分の事しか考えてなかった…グス…ユウトくんに会えば…オレは安心出来ると思って…グス」
「もういいよ…もう会っちまったんだからさ…手遅れだ」
「ご、ごめん…グス…ごめんね…」
「いいって…ナデナデ…乱暴にして悪かったよ…きっと、今日会いに来なくても…オレたちはいつか出会ってたさ」
「そうかな…」
「そんな気がするよ…」
「そうだね…ユウトくん、ギュッとしていい?」
「え?…オレそんなゲイとかじゃねえぞ?…まさかカオくん、そうなのか?」
「ううんw…でも、前もよくそうしてくれたんだ…安心するから」
「うーん…とは言えさ、カオくんはオレを良く知ってるからそう思うんだろうけど、オレは今のかわいいカオくんは初対面だぜ?…まだそんなハグする仲には思えねえって…わりいけど」
「そっか…言われたらそうだ…ほんと、自分の事しか考えてないね、オレ」
「気にするなよw…そのうちそうするだろ」
「へへw」
「へへwってw…ほんと違うもんだなw」
「そんなに違う?」
「うーん…でも、まだわからないけど、今のところはなんとなくさ…なんつうの?…芯は同じな感じはするよ」
「たぶんね、そうだと思う…ユウトくんがそうだったから」
「そっかw…前のオレとか、カオくんとかハルの事、聞かせてくれよ」
「あ、うん…そうしたいとこだけど、そろそろ帰らないとなんだよ」
「そうなの?…まだ来たばっかりじゃん」
「うん…ごめん、母ちゃんに心配かけたくないんだ」
「わかった…明日はハルが休みだったらお見舞い行くから、明後日また会うか?」
「うん…そしたらね、オレ、あんまり時間とれないから、ユウトくん、ハルちゃんのセブンの近くのサイゼわかる?」
「ああ」
「そのサイゼの辺りに来てもらえる?」
「いいよ」
「たぶん、オレの学校と、ユウトくんの学校の中間くらいだから」
「うん…わかった」

そして、ユウトくんにマンションの出入り口まで見送られて、家に帰った
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

作り物のお話

MEIRO
大衆娯楽
【注意】特殊な小説を書いています。下品注意なので、タグをご確認のうえ、閲覧をよろしくお願いいたします。・・・ 作り物のお話です。

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...