母ちゃんとオレ

ヨッシー

文字の大きさ
上 下
4 / 41
母ちゃんとオレ

4話

しおりを挟む
それから何日かして
母ちゃんとゲームする時間は減ったけど
たまにユウトくんとハルさんが遊んでくれた
オレはきっと覚えが悪かったけど
店長もオオタさんも、優しく教えてくれた
慣れてくると、最初より疲れなくなった
そんで給料日になって

初めて自分で稼いだ4万円

オレはまず、ユウトくんに千円を返した
その時にユウトくんに、ATMの使い方を教えてもらった

「ユウトくん」
「ん?」
「スマホってどこで買えるの?」
「ああ…ケータイショップとかデカい電気屋で買えるけど…」
「うん」
「オレらまだガキだから、母ちゃんと一緒に行きな?」
「そうなの」
「そうなの」
「わかったw」
「スマホ買ったら教えろよw」
「うん」
「教えろよ~?」
「うん…いつもありがとう」
「おうw」
「LINEしようね~」
「うん…やる」

そんで次の日に、母ちゃんにケータイショップに付き合ってもらって
初めてのスマホを持った
かなり嬉しかった

「カオくん、このGoogleっていうのでね、なんでも調べられるし、いろんなの見れるんだけどね」
「うん」
「でも、たまに見るだけでお金とろうとしたりするのとかあってね…いろいろ危険もいっぱいあるのね」
「うん…こわい」
「そう…でもカオくん、きっとあんまりわからないよね…」
「うん…じゃあ、オレがやって大丈夫なのだけ教えて?」
「あ、そうだね、それがいいねw」

母ちゃんはオレのスマホに、LINEとYouTubeと Googleを入れてくれた

「カオくん、こういう広告でゲームとかあるけど、やりたきゃやってもいいんだけど、課金ってのはしないでね?」
「課金て?」
「えっとね、母ちゃんもよく知らないんだけど、ガチャっていうのとか、たぶんアイテムとか買うやつ?…それは実際にお金かかるのよ…バカみたいにたくさんしなきゃいいけど、中には百万円とか平気で使う人も居るんだって」
「ええ~…オレやらない…そんなのより、母ちゃんとゲームしたい」
「カオくん、ほんとかわいいw」
「あと母ちゃん、これ…少ないけど」

オレは1万円の入った封筒を渡した

「カオくん…それはいいの…グス…気持ちだけ貰っとくから…カオくんの稼いだ金はカオくんが使って?…グス」
「自由に使っていいの?」
「うん!」
「じゃあ、はい」
「え?」
「オレの使いたいように使うなら、母ちゃんにあげたいから」
「…カオくん…ギュ…」
「少ないけどw」
「そんなことないよ…」
「母ちゃん…オレこれで母ちゃんと写真撮る」
「うんw」

オレは母ちゃんと一緒に写真を撮った
待ち受けにしたいと言ったら
『カオくんがマザコンて思われちゃうからダメw』と言った
それでもいいと言ったけど
母ちゃんは『ダメw』と言って泣いていた

それからまた何日かすると
オレが働いてるとこに母ちゃんがきた
それはとても珍しい事だった
母ちゃんには休みの日はなかったから

「母ちゃん、どうしたの?…お仕事は?」
「今日は向かってたんだけど、休みにしてもらったのw…カオくんが頑張ってるの見たくてw」
「母ちゃん、オレ恥ずかしい///」
「そうだよね…ごめんねw…店長さんはいる?」
「あの人」

母ちゃんは店長のところに行った

「うちの子がお世話になってます」
「ああ!…カオルくんのお母さん?」
「はい…何かご迷惑はおかけしてませんか?」
「いえいえw…カオルくんは真面目でかわいいですw」
「ありがとうございます///」
「正直なとこ、仕事の要領は良いとは言えないとこありますけど…素直で優しい子だから、カオルくんの事嫌いなやつはいませんよ」
「良かった…ウル」
「カオルくんは初日に泣いたんですよ」
「え?」
「なんで泣いてるの?って聞いたら『母ちゃんはいつもこんな疲れる事してたのに、オレは怒ったりした』って…聞きましたか?」
「グス…わたしに『いつもありがとう』って言ってくれました…グス…でも、ここで泣いたのは知りませんでした…」
「そうですかw…よっぽどお母さんが大切なんだと思います」
「ヤバいです…泣いちゃいますから…」
「ごめんなさいw」
「いえw…ありがとうございます」

母ちゃんはオレに照れくさそうに笑って
オレも照れくさくて笑って
『あの外にいる2人がユウトくんとハルさん?』と聞いたから
『うん』と言ったら
2人のところに行った

「ユウトくんとハルさんですか?…カオルの母です」
「あ!…どうも…」
「ど、どうも…」
「急に話しかけてすみません…あの子の友達になってくれて…ほんとにありがとうございます」
「いえ…カオルくんはいいやつですから」
「ですです」
「よくお2人の事話してくれます『優しくてカッコいい』ってw」
「そんなことないですけどw…オレもカオルくんのママさんの事、カオルくんが話してくれますよw…『いつも優しくて、あったかい』って…」
「マザコンだと思われるよ~?って言っても、『いいんだ』って言ってますw」
「…グス…クゥ…ご、ごめんなさい…ズズ」
「オレ、最初はママさんには悪いけど、『暗くて、変なやつ』って思ってました…でも、今はカオルくんが好きです…いろいろと知らないけど、なんつうか…こんな事言うと生意気ですけど、素直でかわいくてw…信用できる友達です」
「カオルくん、とっても良い子」
「ありがとうございます…グス…どうかこれからもよろしくしてあげてください」
「はいw」
「はい!」
「カオルくん、ママさんのと自分の証明写真をテープでくっつけて、財布に入れてるんですよ…知ってます?」
「いえw…グス…どこやったの?って聞いても『秘密』ってw…そうだったんだw」
「そんなふうにされたらやっぱり嬉しいですか?」
「とってもw…泣いちゃうくらいw」
「じゃあアタシもパパンの写真入れとこうかなw」
「おう、そうしろよw」
「やってあげてくださいw」
「あ、オレが写真の事バラしたの、秘密ですよ?」
「はいw…それじゃ、またいつか…ボロいアパートで恥ずかしいですが、いつか遊びに来てください」
「はいw」
「行く行く!w」
「それではw」

2人と話し終わった母ちゃんがもう一度来て
『すごくいいお友達だねw』と言った
オレは『うん』と答えて
母ちゃんは帰っていった

そうしてさらに2年が経って、オレは18になった
18になれば、深夜でも働ける
オレはシフトを6時から深夜3時までに変えてもらった
それを週に5日働けば、バイトとはいえ、結構稼げる
稼いだお金の7割は母ちゃんに渡していた
ユウトくんとハルさんも、2年前から、2人で一緒のとこでバイトを始めた
あまり遊ぶことが出来なくなったけど、毎日LINEはしていて、一週間に一度会うか会わないかくらいだ
会う時はファミレスが多い

「カオくん、よく稼いだお金、そんなに渡せるねえ…」
「ほんとだよなw…オレなんか全部使っちまうよw」
「うーん…逆に、何にそんなに使うの?」
「んー…化粧品とかあ、バッグとかあ、服とか」
「オレは時計とか靴とか服とか」
「ああ、そっか…それは仕方ないね…オレ、いつもだいたい同じカッコでごめんね…ダサいよねw」
「まぁ、ダサいっちゃダセえけど…それがカオくんだし…なあ?」
「うんうんw…別に気にしてないし…ていうかむしろ、色気づいたカオくんは見たくないし」
「言えてるww」
「あはははw…オレはね…小さい頃欲しかったのはある」
「へぇぇ…何?」
「自分の部屋」
「ああ~…カオくんちないもんね」
「うんw…けどもう母ちゃんと一緒に過ごすの好きだし、もういらね」
「オレは嫌だけどなあw…おふくろは好きだけどさ」
「うんw…ユウトがママンと寝てたらアタシ別れるw」
「ふぅん…」
「カオくんも彼女欲しかったら、母ちゃんと一緒は引かれるからな?」
「うん…だね…アタシはそれがカオくんて知ってるし、甘ったれのマザコンじゃないのも知ってるけど、普通は嫌だよ」
「そっかあ…」
「ま、好きな女出来たら考えなよ」
「うん…あ、オレ欲しいもんあと『風呂場』だ」
「ああ~w…それはいるねw…けど、欲しい物ってさ、普通は服とか趣味のものとかだよw」
「…しいて言えば、3DSが2つ欲しい」
「なんで今時3DSw」
「母ちゃんと通信するの?w」
「そうw」
「まぁ、いいんじゃない」
「カオくん、どうしてそんなに欲がなくなっちゃったの?」
「うーん…なんつうかね」
「うん」
「ユウトくんの時計って3万円だよね?」
「ああうん」
「オレのは2000円…でもさ、時間知るだけなら同じじゃない…バッグもさ、一つか二つあれば足りるし」
「ああ、そういう考えねw」
「でも、女はそうもいかないよ~?」
「うん…わかってる…これはオレの考え方…ユウトくんはユウトくん、ハルさんはハルさんの考え方でいい」
「カオくん、時々大人だよねw」
「そんなことないw…ユウトくんとハルさんがいろいろ教えてくれたから」
「カオくんかわいいw」
「カオくん…ダチってのはそういうもんじゃん?…オレだってカオくんから教わってるんだぜ?」
「え?…ユウトくんカッコいい」
「うん、かっけぇ///」
「出たw…まあさ、具体的に何を教わってるか聞かれたらちょっと困るけどよ、オレが遊ぼうとするダチの優先順位はカオくんが一番だよ」
「へぇぇw」
「そうなの?…どうして?…オレいつも思うよ…ユウトくん、カッコいいのに、どうしてオレなんかと遊ぶんだろって」
「じゃあカオくん、オレが遊ぶのやめてもいいんか?」
「嫌だよ…」
「だろ?…オレもだよ…だからだよw」
「おお~男の友情!」
「うるせぇなあ///」
「照れるなよ~チュ」
「お前さ…ミラノ風ドリア食った口でチュウするなよw…せめて拭けw…ギトギトじゃねえかw」
「やっちまったか…」
「あはははw」
「カオくん、3DS買えよ…たまには自分の為に使えよ…その方が母ちゃんもきっと嬉しいよ」
「そうだよw…たぶん」
「うん…そうすっかな…母ちゃんとモンハンやる」
「モンハンかあ…じゃあオレもやろっかな」
「なにそれ?…面白いの?」
「わかんねえけど、人気あるよ」
「うん…オレもやったことないけど…一緒に力合わせて倒すんだって…そういうのがいい…対戦より」
「カオくんらしいねw」

そんなわけで
もうすぐ母ちゃん誕生日だし
3DSを2つと、モンハンのソフト2つ買って用意した
喜ぶかなあって不安だったけど
母ちゃんはすごく喜んでる
ていうか、オレよりハマってるし
母ちゃん、超つええw
うちにはインターネットはないけど
テザリングってので、ユウトくんたちとも遊ぶようになった
文字のチャットで会話出来る
ユウトくんたちと母ちゃんも仲良くなった
4人だし、ちょうどいい
オレは派手な人生じゃないけど
この時が一番楽しかったな
しおりを挟む

処理中です...