33 / 38
図星か
しおりを挟む
時は少しだけ遡る。
ヴィーはエルをはぐれ妖精達の元へと向かう様、指示を出し、そして別れた。
すでにお仕事モードへと移行したエルにとって、妖精狩り風情ごときに傷1つ負う事など無い事をヴィーは知っている。
そして、きっと傷つき恐怖に震えているはぐれ妖精達を守る事ぐらい、どうという事もない事も。
なので、ヴィーは獲物に向かい森を疾走した。
「おらぁ! どこ隠れたんだぁ!」
「逃がしゃしねぇぞ、ごらぁ!」
「ほらほら、可愛い可愛い羽虫ちゃん~。俺達のお財布を膨らますためにも出ておいでぇ~」
いかにもな悪人面な、ヴィーよりはるかに体格の良い男達が6人、目標を見失ったのかキョロキョロと辺りを見回し、手にしていた長い木の棒で乱暴に茂みを探っていた。
樹々の枝は折れ、葉は飛び散り、茂みに隠れていた小動物たちは逃げ惑った。
その姿は、どう見てもヴィー達と同じ職業…つまり、森の獣を狩る狩人などでは、決してない。
反吐が出る様な下衆な言葉を吐き連ね、周囲の無害な獣への配慮など一切しない乱暴な行動。
それら全てが、この下衆達が妖精狩りである事の証明である。
いや、そもそもヴィーにとって、誰かにこの男達が妖精狩りである事の証など必要としない。
妖精女王の騎士たるヴィーにとっては、ヴィーが妖精狩りであるという確信が持てればそれでいいのだ。
それだけでヴィーの行動は決まっているのだから。
つまりは、殲滅…それだけの事だ。
樹々の合間から、気配の一切を殺して男達の様子を窺っていたヴィーだが、こ奴らが妖精狩りであると断定した。
一番後ろで手下たちが茂みを漁る様子を見ていた、この中で最も悪人面で一際体格の良い男の背後に、ヴィーは気配なく近づき声を掛けた。
「あんた、何探してんだ?」
不意に声を掛けられた男は、腰の剣を振り向きざま抜き、ヴィーにその剣先を向け構えた。
「お前何もんだ?いつからそこに居た?」
威勢の良いでかい声で、半ばヴィーに叩きつける様に声を放つ男。
その声に、手下の男達が振り返った。
「何を探しているんだ?」
男の問いかけなど無視し、再度ヴィーは男に話しかける。
「オイ、こっちの質問にこ… 「 何を探しているんだ?」…たえろ!」
再度の男の言葉にかぶせて、ヴィーは繰り返す。
「何だっていいだろ! ガキは帰りやがれ!」
周囲に散らばっていた手下の男達も、徐々に集まって来る。
「お前達、表の請負人じゃないだろ。こんな奥地まで来て、そんな棒きれで狩れる得物なんて居ないもんな。大方裏の依頼の請負人…そうだな…はぐれ妖精狩りか?」
冷めたヴィーの言葉に、男の頭も冷えた。
どうやら自分たちがここに居る理由がバレている様だと。
ただのガキでは無さそうだと判断すると、ヴィーと話していた男は、仲間の男達に、
「オイ、殺せ(やれ)!」と、言葉短かに命令した。
全員、その身に帯びていた刃物を抜くと、ゆっくりヴィーを包囲するような位置取りを始めた。
「図星か」
ヴィーも担いでいた愛用の強弓を左手に持ち、右足を半歩引き、背中の矢筒から1本矢を抜き取った。
すでに確信を得てはいたのだが、万が一にも間違えてはいけないと問いかけたのだが、言葉を掛けるだけ無駄であった様だ。
弓遣いは接近戦など出来ない、不利だ、という常識に凝り固まった頭の奴しか居ないのだろう。
弓と矢を持ったヴィーに、背後の男が無造作にヴィーに近寄ろうとした。
そもそも本当に接近戦が苦手で不利なのだとしたら、姿を見せる見せないは別として、弓の射程から声を掛けれるはずであり、こんな数歩で手が届く所に出てくる必要が無い。
いや、離れた位置から弓を射るだろう。
つまり接近戦の範囲に出てきたという事は、接近戦も出来るのだという事に他ならないのを、男達は気付かない。
見た目はまだ少年と言っても良いヴィーだからこそ、そこまで男達も考えなかったのかもしれないが。
背後から無造作に近づき剣を振りかぶった男は、右足を軸に右回転したヴィーの持つ矢によって目を貫き押し込まれ、その矢じりは脳髄にまで達し即死した。
そのまま回転を続け、左手でクルリと弓を回し逆に握りなおし、強靭な弦で左側面に居た男二人を切り裂き、元の位置まで戻り弓を構えなおした時には、左側で二人の男の上半身と下半身が、どさりと分かれて落ち、噴き出した血が地面を染めた。
3人もの人間を一瞬で殺めたというのに、ヴィーのその目は冷めていた。
「一人は生かしておいてやる」
残りの男達に向かって呟くと、ヴィーは矢筒からもう1本矢を抜き出し構えた。
妖精狩りは、総数8人。
だが、その程度の人数では、ヴィーに傷1つ付ける事など出来なかった。
そして、ヴィーの言葉の通り、最後の最後に頭を張っていたと思われる男の意識を刈り取った。
ヴィーが小さくため息をつくと、それが戦いの終焉であったかのように、森はまたいつもの静けさを取り戻したのであった。
ヴィーはエルをはぐれ妖精達の元へと向かう様、指示を出し、そして別れた。
すでにお仕事モードへと移行したエルにとって、妖精狩り風情ごときに傷1つ負う事など無い事をヴィーは知っている。
そして、きっと傷つき恐怖に震えているはぐれ妖精達を守る事ぐらい、どうという事もない事も。
なので、ヴィーは獲物に向かい森を疾走した。
「おらぁ! どこ隠れたんだぁ!」
「逃がしゃしねぇぞ、ごらぁ!」
「ほらほら、可愛い可愛い羽虫ちゃん~。俺達のお財布を膨らますためにも出ておいでぇ~」
いかにもな悪人面な、ヴィーよりはるかに体格の良い男達が6人、目標を見失ったのかキョロキョロと辺りを見回し、手にしていた長い木の棒で乱暴に茂みを探っていた。
樹々の枝は折れ、葉は飛び散り、茂みに隠れていた小動物たちは逃げ惑った。
その姿は、どう見てもヴィー達と同じ職業…つまり、森の獣を狩る狩人などでは、決してない。
反吐が出る様な下衆な言葉を吐き連ね、周囲の無害な獣への配慮など一切しない乱暴な行動。
それら全てが、この下衆達が妖精狩りである事の証明である。
いや、そもそもヴィーにとって、誰かにこの男達が妖精狩りである事の証など必要としない。
妖精女王の騎士たるヴィーにとっては、ヴィーが妖精狩りであるという確信が持てればそれでいいのだ。
それだけでヴィーの行動は決まっているのだから。
つまりは、殲滅…それだけの事だ。
樹々の合間から、気配の一切を殺して男達の様子を窺っていたヴィーだが、こ奴らが妖精狩りであると断定した。
一番後ろで手下たちが茂みを漁る様子を見ていた、この中で最も悪人面で一際体格の良い男の背後に、ヴィーは気配なく近づき声を掛けた。
「あんた、何探してんだ?」
不意に声を掛けられた男は、腰の剣を振り向きざま抜き、ヴィーにその剣先を向け構えた。
「お前何もんだ?いつからそこに居た?」
威勢の良いでかい声で、半ばヴィーに叩きつける様に声を放つ男。
その声に、手下の男達が振り返った。
「何を探しているんだ?」
男の問いかけなど無視し、再度ヴィーは男に話しかける。
「オイ、こっちの質問にこ… 「 何を探しているんだ?」…たえろ!」
再度の男の言葉にかぶせて、ヴィーは繰り返す。
「何だっていいだろ! ガキは帰りやがれ!」
周囲に散らばっていた手下の男達も、徐々に集まって来る。
「お前達、表の請負人じゃないだろ。こんな奥地まで来て、そんな棒きれで狩れる得物なんて居ないもんな。大方裏の依頼の請負人…そうだな…はぐれ妖精狩りか?」
冷めたヴィーの言葉に、男の頭も冷えた。
どうやら自分たちがここに居る理由がバレている様だと。
ただのガキでは無さそうだと判断すると、ヴィーと話していた男は、仲間の男達に、
「オイ、殺せ(やれ)!」と、言葉短かに命令した。
全員、その身に帯びていた刃物を抜くと、ゆっくりヴィーを包囲するような位置取りを始めた。
「図星か」
ヴィーも担いでいた愛用の強弓を左手に持ち、右足を半歩引き、背中の矢筒から1本矢を抜き取った。
すでに確信を得てはいたのだが、万が一にも間違えてはいけないと問いかけたのだが、言葉を掛けるだけ無駄であった様だ。
弓遣いは接近戦など出来ない、不利だ、という常識に凝り固まった頭の奴しか居ないのだろう。
弓と矢を持ったヴィーに、背後の男が無造作にヴィーに近寄ろうとした。
そもそも本当に接近戦が苦手で不利なのだとしたら、姿を見せる見せないは別として、弓の射程から声を掛けれるはずであり、こんな数歩で手が届く所に出てくる必要が無い。
いや、離れた位置から弓を射るだろう。
つまり接近戦の範囲に出てきたという事は、接近戦も出来るのだという事に他ならないのを、男達は気付かない。
見た目はまだ少年と言っても良いヴィーだからこそ、そこまで男達も考えなかったのかもしれないが。
背後から無造作に近づき剣を振りかぶった男は、右足を軸に右回転したヴィーの持つ矢によって目を貫き押し込まれ、その矢じりは脳髄にまで達し即死した。
そのまま回転を続け、左手でクルリと弓を回し逆に握りなおし、強靭な弦で左側面に居た男二人を切り裂き、元の位置まで戻り弓を構えなおした時には、左側で二人の男の上半身と下半身が、どさりと分かれて落ち、噴き出した血が地面を染めた。
3人もの人間を一瞬で殺めたというのに、ヴィーのその目は冷めていた。
「一人は生かしておいてやる」
残りの男達に向かって呟くと、ヴィーは矢筒からもう1本矢を抜き出し構えた。
妖精狩りは、総数8人。
だが、その程度の人数では、ヴィーに傷1つ付ける事など出来なかった。
そして、ヴィーの言葉の通り、最後の最後に頭を張っていたと思われる男の意識を刈り取った。
ヴィーが小さくため息をつくと、それが戦いの終焉であったかのように、森はまたいつもの静けさを取り戻したのであった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
追放された聖女の悠々自適な側室ライフ
白雪の雫
ファンタジー
「聖女ともあろう者が、嫉妬に狂って我が愛しのジュリエッタを虐めるとは!貴様の所業は畜生以外の何者でもない!お前との婚約を破棄した上で国外追放とする!!」
平民でありながらゴーストやレイスだけではなくリッチを一瞬で倒したり、どんな重傷も完治してしまうマルガレーテは、幼い頃に両親と引き離され聖女として教会に引き取られていた。
そんな彼女の魔力に目を付けた女教皇と国王夫妻はマルガレーテを国に縛り付ける為、王太子であるレオナルドの婚約者に据えて、「お妃教育をこなせ」「愚民どもより我等の病を治療しろ」「瘴気を祓え」「不死王を倒せ」という風にマルガレーテをこき使っていた。
そんなある日、レオナルドは居並ぶ貴族達の前で公爵令嬢のジュリエッタ(バスト100cm以上の爆乳・KかLカップ)を妃に迎え、マルガレーテに国外追放という死刑に等しい宣言をしてしまう。
「王太子殿下の仰せに従います」
(やっと・・・アホ共から解放される。私がやっていた事が若作りのヒステリー婆・・・ではなく女教皇と何の力もない修道女共に出来る訳ないのにね~。まぁ、この国がどうなってしまっても私には関係ないからどうでもいいや)
表面は淑女の仮面を被ってレオナルドの宣言を受け入れたマルガレーテは、さっさと国を出て行く。
今までの鬱憤を晴らすかのように、着の身着のままの旅をしているマルガレーテは、故郷である幻惑の樹海へと戻っている途中で【宮女狩り】というものに遭遇してしまい、大国の後宮へと入れられてしまった。
マルガレーテが悠々自適な側室ライフを楽しんでいる頃
聖女がいなくなった王国と教会は滅亡への道を辿っていた。
【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。
王命を忘れた恋
須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』
そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。
強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?
そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。
幻想神姫ヴァルキュリア・ミラージュ
黒陽 光
ファンタジー
――――守りたいヒトたちの、守りたい笑顔の為に。
戦部戒斗は幼馴染みのアンジェリーヌ・”アンジェ”・リュミエールや、居候している記憶喪失の乙女・間宮遥とともに実家の喫茶店を手伝う日々を送っていた。
ある日、学園に通うアンジェのクラスに真っ赤な髪の転入生が訪れる。その名はセラフィナ・”セラ”・マックスウェル。新しい友達が出来たと喜ぶアンジェと、そして満更でもない様子のセラ。戒斗や遥とも知り合い、そうして皆は幸せな日々を送っていた。
――――だが、その平穏な日々は何の前触れもなく崩れ去ることになる。
戒斗たちの前に突然姿を現した異形の怪物・バンディット。誰も太刀打ち出来ないまま、人々が襲われていく。
そして、バンディットは戒斗とアンジェまでもを毒牙に掛けようとした。
「…………お二人を守れるのなら。誰かの笑顔を、戒斗さんやアンジェさんの笑顔を守れるのなら……私は、戦います」
「――――チェンジ・セイレーン!!」
その瞬間――――間宮遥は人ならざる存在へと生まれ変わる。人類の進化形、乙女の秘めた可能性の具現化。人間の守護者たる、武力を司りし神の遣い――――神姫ウィスタリア・セイレーンへと。
蒼の乙女が人を超えた戦乙女へと覚醒する時、物語の歯車は回り出す。神姫とバンディット、人智を越えた超常の戦いが、今まさに始まろうとしていた――――。
異世界で生き残る方法は?
ブラックベリィ
ファンタジー
第11回ファンタジー大賞が9月30日で終わりました。
投票してくれた方々、ありがとうございました。
200人乗りの飛行機で、俺達は異世界に突入してしまった。
ただし、直前にツアー客が団体様でキャンセルしたんで、乗客乗務員合わせて30名弱の終わらない異世界旅行の始まり………。
いや、これが永遠(天寿を全うするまで?)のサバイバルの始まり?
ちょっと暑さにやられて、恋愛モノを書くだけの余裕がないので………でも、何か書きたい。
と、いうコトで、ご都合主義満載の無茶苦茶ファンタジーです。
ところどころ迷走すると思いますが、ご容赦下さい。
アリスと女王
ちな
ファンタジー
迷い込んだ謎の森。何故かその森では“ アリス”と呼ばれ、“蜜”を求める動物たちの餌食に!
謎の青年に導かれながら“アリス”は森の秘密を知る物語──
クリ責め中心のファンタジーえろ小説!ちっちゃなクリを吊ったり舐めたり叩いたりして、発展途上の“ アリス“をゆっくりたっぷり調教しちゃいます♡通常では有り得ない責め苦に喘ぐかわいいアリスを存分に堪能してください♡
☆その他タグ:ロリ/クリ責め/股縄/鬼畜/凌辱/アナル/浣腸/三角木馬/拘束/スパンキング/羞恥/異種姦/折檻/快楽拷問/強制絶頂/コブ渡り/クンニ/☆
※完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる