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図星か

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 時は少しだけ遡る。
 ヴィーはエルをはぐれ妖精達の元へと向かう様、指示を出し、そして別れた。
 すでにお仕事モードへと移行したエルにとって、妖精狩り風情ごときに傷1つ負う事など無い事をヴィーは知っている。
 そして、きっと傷つき恐怖に震えているはぐれ妖精達を守る事ぐらい、どうという事もない事も。
 なので、ヴィーは獲物に向かい森を疾走した。
 
 「おらぁ! どこ隠れたんだぁ!」
 「逃がしゃしねぇぞ、ごらぁ!」
 「ほらほら、可愛い可愛い羽虫ちゃん~。俺達のお財布を膨らますためにも出ておいでぇ~」
 いかにもな悪人面な、ヴィーよりはるかに体格の良い男達が6人、目標を見失ったのかキョロキョロと辺りを見回し、手にしていた長い木の棒で乱暴に茂みを探っていた。
 樹々の枝は折れ、葉は飛び散り、茂みに隠れていた小動物たちは逃げ惑った。
 その姿は、どう見てもヴィー達と同じ職業…つまり、森の獣を狩る狩人などでは、決してない。
 反吐が出る様な下衆な言葉を吐き連ね、周囲の無害な獣への配慮など一切しない乱暴な行動。
 それら全てが、この下衆達が妖精狩りである事の証明である。
 いや、そもそもヴィーにとって、誰かにこの男達が妖精狩りである事の証など必要としない。
 妖精女王の騎士たるヴィーにとっては、ヴィーが妖精狩りであるという確信が持てればそれでいいのだ。
 それだけでヴィーの行動は決まっているのだから。
 つまりは、殲滅…それだけの事だ。

 樹々の合間から、気配の一切を殺して男達の様子を窺っていたヴィーだが、こ奴らが妖精狩りであると断定した。
 一番後ろで手下たちが茂みを漁る様子を見ていた、この中で最も悪人面で一際体格の良い男の背後に、ヴィーは気配なく近づき声を掛けた。
「あんた、何探してんだ?」
 不意に声を掛けられた男は、腰の剣を振り向きざま抜き、ヴィーにその剣先を向け構えた。
「お前何もんだ?いつからそこに居た?」
 威勢の良いでかい声で、半ばヴィーに叩きつける様に声を放つ男。
 その声に、手下の男達が振り返った。
「何を探しているんだ?」
 男の問いかけなど無視し、再度ヴィーは男に話しかける。
「オイ、こっちの質問にこ… 「 何を探しているんだ?」…たえろ!」
 再度の男の言葉にかぶせて、ヴィーは繰り返す。
「何だっていいだろ! ガキは帰りやがれ!」
 周囲に散らばっていた手下の男達も、徐々に集まって来る。
「お前達、表の請負人じゃないだろ。こんな奥地まで来て、そんな棒きれで狩れる得物なんて居ないもんな。大方裏の依頼の請負人…そうだな…はぐれ妖精狩りか?」
 冷めたヴィーの言葉に、男の頭も冷えた。
 どうやら自分たちがここに居る理由がバレている様だと。
 ただのガキでは無さそうだと判断すると、ヴィーと話していた男は、仲間の男達に、
「オイ、殺せ(やれ)!」と、言葉短かに命令した。
 全員、その身に帯びていた刃物を抜くと、ゆっくりヴィーを包囲するような位置取りを始めた。
「図星か」
 ヴィーも担いでいた愛用の強弓を左手に持ち、右足を半歩引き、背中の矢筒から1本矢を抜き取った。
 すでに確信を得てはいたのだが、万が一にも間違えてはいけないと問いかけたのだが、言葉を掛けるだけ無駄であった様だ。

 弓遣いは接近戦など出来ない、不利だ、という常識に凝り固まった頭の奴しか居ないのだろう。
 弓と矢を持ったヴィーに、背後の男が無造作にヴィーに近寄ろうとした。
 そもそも本当に接近戦が苦手で不利なのだとしたら、姿を見せる見せないは別として、弓の射程から声を掛けれるはずであり、こんな数歩で手が届く所に出てくる必要が無い。
 いや、離れた位置から弓を射るだろう。
 つまり接近戦の範囲に出てきたという事は、接近戦も出来るのだという事に他ならないのを、男達は気付かない。
 見た目はまだ少年と言っても良いヴィーだからこそ、そこまで男達も考えなかったのかもしれないが。

 背後から無造作に近づき剣を振りかぶった男は、右足を軸に右回転したヴィーの持つ矢によって目を貫き押し込まれ、その矢じりは脳髄にまで達し即死した。
 そのまま回転を続け、左手でクルリと弓を回し逆に握りなおし、強靭な弦で左側面に居た男二人を切り裂き、元の位置まで戻り弓を構えなおした時には、左側で二人の男の上半身と下半身が、どさりと分かれて落ち、噴き出した血が地面を染めた。
 3人もの人間を一瞬で殺めたというのに、ヴィーのその目は冷めていた。
「一人は生かしておいてやる」
 残りの男達に向かって呟くと、ヴィーは矢筒からもう1本矢を抜き出し構えた。

 妖精狩りは、総数8人。
 だが、その程度の人数では、ヴィーに傷1つ付ける事など出来なかった。
 そして、ヴィーの言葉の通り、最後の最後に頭を張っていたと思われる男の意識を刈り取った。
 ヴィーが小さくため息をつくと、それが戦いの終焉であったかのように、森はまたいつもの静けさを取り戻したのであった。
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