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森を抜けて
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実際の所、この森は間接的ではあるが、妖精達を守っているとも言えるだろう。
自由気ままに森を飛び回る妖精達。
そんな妖精達を古より手にしようとする者は数知れず。
悪意を持って妖精を捕まえようとする者は、絶えずこの森に足を踏み入れて来た。
人種である妖精狩り達を、この森の木々は見逃さない。
無論、樹々が人種を嫌い襲うのは、人種によって過去多くの樹木の精霊が伐採され乱獲されたからだ。
妖精狩り達も同じ人種。
妖精の花園は、この白の森の中心にある。
つまり、妖精狩り達は樹木の精霊を倒さない限り、妖精達の元にたどり着くことはできないと言う事。
すなわち、この白の森の存在が、はからずも妖精達にとって自然の要塞となっているのだ。
ただ、悪意や害意が有ろうと無かろうと、人種であれば等しく攻撃するのは、少々問題ではあるのだが。
ちなみに、妖精に認められた印を持つヴィーですら、運び樹木の精霊に認められるようになるまで、随分と苦労したらしい。
樹木の精霊の長老の横を通り抜けて森に入ったヴィーは、肺いっぱいに長くゆっくりと空気を吸い込んだ後、腹に力を込めフッ!と短く息を吐くと、地面すれすれまで体を倒して一気に駆けだした。
まだ中天に日が昇るまで時間があるとはいっても、長老は日が沈むまでに森を抜けろと言ったのだ。
のんびり構えているわけにはいかない。
残像すら残らない速度で、ただキーンッという耳障りな音だけを残して、ヴィーは樹々の合間を走って行く。
右手に持ち前方に突き出した弓の先端が、空気を切り裂く時に弦が鳴いている…音の正体はそれだ。
そんな途轍もない速度で走りながらも、落ち葉や土が大きく舞い上がったりすることは無い。
地面と接する部分を最小限の面積でとどめる走法を見れば、いかにヴィーの技量が高いかが分かるだろう。
どっかの力任せなアホの子とは大違いである。
ちなみに、何故先ほどの様に木々の枝の上を跳ばないのかと思うだろうが、それは樹木の精霊達を足蹴にするのと同じであり、あっという間に森の全ての精霊達をの怒りを買ってしまうからだ。
そういった分けで、障害物の多い森の中ではあるが、その視力と集中力と運動能力で、出来るだけ木々の中にある一直線に抜けられるルートを見定め、避けるべき障害物は体捌きで最小限のルート変更を行い、最速で最短距離をヴィーは走る。
日が傾き始めた頃、途轍もない集中力を発揮し続けたヴィーが漸く足を止めたのは、一面の花畑を目にした時だった。
「…ふう。毎度疲れるなこれ」
そう呟き地に座ったヴィーは、右手に持っていた弓を横に置いて、愛用の鉈と共に腰帯に括っていた皮袋を手にした。
そして、その中にある小さな水石を起動して革袋を満たすと、それを飲んでヴィーは喉の渇きを潤した。
ヴィーの肩に座るエルも喉が渇いたと訴えるので、少しの水を飲ませてやる。
短い時間ではあるが、呼吸が整ったヴィーは、エルに向かって、「さてそれじゃ行こうか」と言うと、花園の中にあるトンネルへと真っすぐに進んだ。
◇
昼であれば神秘的にゆらゆらと光が揺らめく天井は、今はすでに暗くなりつつあり、この村に夜が到来した事を告げていた。
村の中に等間隔で設置されている小さな光石がぼんやりと辺りを照らす中、妖精の女王はトンネルの前をウロウロと落ち着きなく歩き回っていた。
『ねえ遅くない? 何かあったのかしら? 何かあったらどうしよう! そうだ、きっと何かあったんだわ!』
エルとヴィーの帰郷を待っていた妖精達は、この落ち着きのない女王にいい加減イライラしていた。
面と向かっては言い辛いが、『ウザい!』『面倒くさい!』などと、ヒソヒソと言いあっていた。
妖精達は、トンネルに向かって自らの精神の安寧のため、『2人共、早く帰ってきて』と願って止まなかったそうだ。
自由気ままに森を飛び回る妖精達。
そんな妖精達を古より手にしようとする者は数知れず。
悪意を持って妖精を捕まえようとする者は、絶えずこの森に足を踏み入れて来た。
人種である妖精狩り達を、この森の木々は見逃さない。
無論、樹々が人種を嫌い襲うのは、人種によって過去多くの樹木の精霊が伐採され乱獲されたからだ。
妖精狩り達も同じ人種。
妖精の花園は、この白の森の中心にある。
つまり、妖精狩り達は樹木の精霊を倒さない限り、妖精達の元にたどり着くことはできないと言う事。
すなわち、この白の森の存在が、はからずも妖精達にとって自然の要塞となっているのだ。
ただ、悪意や害意が有ろうと無かろうと、人種であれば等しく攻撃するのは、少々問題ではあるのだが。
ちなみに、妖精に認められた印を持つヴィーですら、運び樹木の精霊に認められるようになるまで、随分と苦労したらしい。
樹木の精霊の長老の横を通り抜けて森に入ったヴィーは、肺いっぱいに長くゆっくりと空気を吸い込んだ後、腹に力を込めフッ!と短く息を吐くと、地面すれすれまで体を倒して一気に駆けだした。
まだ中天に日が昇るまで時間があるとはいっても、長老は日が沈むまでに森を抜けろと言ったのだ。
のんびり構えているわけにはいかない。
残像すら残らない速度で、ただキーンッという耳障りな音だけを残して、ヴィーは樹々の合間を走って行く。
右手に持ち前方に突き出した弓の先端が、空気を切り裂く時に弦が鳴いている…音の正体はそれだ。
そんな途轍もない速度で走りながらも、落ち葉や土が大きく舞い上がったりすることは無い。
地面と接する部分を最小限の面積でとどめる走法を見れば、いかにヴィーの技量が高いかが分かるだろう。
どっかの力任せなアホの子とは大違いである。
ちなみに、何故先ほどの様に木々の枝の上を跳ばないのかと思うだろうが、それは樹木の精霊達を足蹴にするのと同じであり、あっという間に森の全ての精霊達をの怒りを買ってしまうからだ。
そういった分けで、障害物の多い森の中ではあるが、その視力と集中力と運動能力で、出来るだけ木々の中にある一直線に抜けられるルートを見定め、避けるべき障害物は体捌きで最小限のルート変更を行い、最速で最短距離をヴィーは走る。
日が傾き始めた頃、途轍もない集中力を発揮し続けたヴィーが漸く足を止めたのは、一面の花畑を目にした時だった。
「…ふう。毎度疲れるなこれ」
そう呟き地に座ったヴィーは、右手に持っていた弓を横に置いて、愛用の鉈と共に腰帯に括っていた皮袋を手にした。
そして、その中にある小さな水石を起動して革袋を満たすと、それを飲んでヴィーは喉の渇きを潤した。
ヴィーの肩に座るエルも喉が渇いたと訴えるので、少しの水を飲ませてやる。
短い時間ではあるが、呼吸が整ったヴィーは、エルに向かって、「さてそれじゃ行こうか」と言うと、花園の中にあるトンネルへと真っすぐに進んだ。
◇
昼であれば神秘的にゆらゆらと光が揺らめく天井は、今はすでに暗くなりつつあり、この村に夜が到来した事を告げていた。
村の中に等間隔で設置されている小さな光石がぼんやりと辺りを照らす中、妖精の女王はトンネルの前をウロウロと落ち着きなく歩き回っていた。
『ねえ遅くない? 何かあったのかしら? 何かあったらどうしよう! そうだ、きっと何かあったんだわ!』
エルとヴィーの帰郷を待っていた妖精達は、この落ち着きのない女王にいい加減イライラしていた。
面と向かっては言い辛いが、『ウザい!』『面倒くさい!』などと、ヒソヒソと言いあっていた。
妖精達は、トンネルに向かって自らの精神の安寧のため、『2人共、早く帰ってきて』と願って止まなかったそうだ。
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