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魔導機物?
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「今日のトール様…いつもよりも覇気がない気が…」
夕飯後のトールの嫁ーずミーティングで、お茶で舌を湿らせたメリルが、ぽそりとそう呟いた。
「あ、それ判ります! 何を聞いても上の空って言うか…」
メリルの言葉に、ミルシェも同意した。
「大人しかった…ですよね…」
ミレーラもそう言って頷く。
「お仕事はしっかりと熟してましたが、生気が感じられませんでしたね」
「何? マチルダ…お前、執務室でトール様と普段は精器を感じているのか!?」
マチルダが執務の時のトールの様子を伝えようとしていると、イネスがおかしな事を言い出した。
「なるほど…。それで、具体的には、どう生気を感じなかったのですか?」
が、メリルはイネスを丸っと無視して話を続けた。
「そうですねえ…。書類をただ淡々と右から左へと処理するだけって感じで…」
イネスが何やら騒いでいるのを、チラリと横目で見ながらマチルダが答える。
「執務中、ずっとですか?」
同じくイネスを横目で見ながらミルシェがマチルダへと問いかけると、
「ええ、ずっと同じリズムで…です」
「と、トール様…魔導機物に…なった?」
ミルシェが不安気に呟いた。
『………………』
その呟きに、全員が思わず黙り込んでしまった。
この世界には、魔導機物という物体が存在する。
物体とは言ったが、それが機械なのか生物なのか、未だ王国の偉い学者先生にも分からない存在だ。
一見すると、ダンジョンなどで稀に見かける事のあるゴーレムによく似ているが、出現する場所はダンジョンとは一切関係のない森の中や草原と言った場所であり、大きさも小型の犬程度しかない。
ゴーレムでは、最低限の知性や社会性がその行動から見て取れるため、魔導生物と位置付けられ、生物の1種とみなされている。
だが、魔導機物にはそう言った行動は見られない。
何故か、ただ一定の行動を延々と繰り返しているだけの存在なのだ。
例をあげると、ただ延々と地面を掘り続ける…や、何故か樹木に突進を繰り返す、同じ場所をグルグルと回り続ける…などと言った行動だ。
さらに不思議な事に、その魔導機物の観察者が目を逸らした瞬間に、いきなり消えていなくなってしまうのだ。
何の為に存在し、何の為にその行動を繰り返すのか、全く解明されていない機械の様に同じ動作を繰り返し続ける不可思議な存在。
それが魔導機物だ。
ミレーラの、トールが魔導機物になったという発言に根拠など全く無いのだが、そう言われると全員が何故か納得できてしまう。
別に意味不明な行動を延々と繰り返し続けていたわけではないが、目覚めた時から就寝までの間に、トールが日々行っている行動を一定の行動としてとらえた時、この魔導機物と同じく機械の様に同じ動作を繰り返していると言えなくもない。
だが…。
「いえ、それはあり得ませんわ! た、ただ単に体の調子が悪かっただけです!」
「そうね、メリルさんの言う通り、きっと何か考え事をしていただけです!」
「執務中も、幾らかは会話しましたので、魔導機物ではないと思いますよ」
「ふむ。マチルダが執務中に、どの様にトール様の精器を感じるのか、そっちの方が私は気になるぞ」
メリルとミルシェが、慌ててミレーラの言葉を否定しようとし、マチルダがそれに続き魔導機物との違いを主張した。
イネスの思考だけは、やはりどっか斜め上の方向に向いているようだが…。
「だ、だったら…魔導機物しゃ…無いとして…どこがお悪いの…でしょうか? 何を…考えて…られるのでしょう…か?」
そのミレーラの問いに答えられる者は、この場には居なかった。
いや、普通に直接トールに聞けばいいだけなのだが、何故か誰もそれに気づかないのは、もしかすると全員揃って天然なのかもしれない。
※ 前話 親指姫 関連は、また後の話で出てきます。
夕飯後のトールの嫁ーずミーティングで、お茶で舌を湿らせたメリルが、ぽそりとそう呟いた。
「あ、それ判ります! 何を聞いても上の空って言うか…」
メリルの言葉に、ミルシェも同意した。
「大人しかった…ですよね…」
ミレーラもそう言って頷く。
「お仕事はしっかりと熟してましたが、生気が感じられませんでしたね」
「何? マチルダ…お前、執務室でトール様と普段は精器を感じているのか!?」
マチルダが執務の時のトールの様子を伝えようとしていると、イネスがおかしな事を言い出した。
「なるほど…。それで、具体的には、どう生気を感じなかったのですか?」
が、メリルはイネスを丸っと無視して話を続けた。
「そうですねえ…。書類をただ淡々と右から左へと処理するだけって感じで…」
イネスが何やら騒いでいるのを、チラリと横目で見ながらマチルダが答える。
「執務中、ずっとですか?」
同じくイネスを横目で見ながらミルシェがマチルダへと問いかけると、
「ええ、ずっと同じリズムで…です」
「と、トール様…魔導機物に…なった?」
ミルシェが不安気に呟いた。
『………………』
その呟きに、全員が思わず黙り込んでしまった。
この世界には、魔導機物という物体が存在する。
物体とは言ったが、それが機械なのか生物なのか、未だ王国の偉い学者先生にも分からない存在だ。
一見すると、ダンジョンなどで稀に見かける事のあるゴーレムによく似ているが、出現する場所はダンジョンとは一切関係のない森の中や草原と言った場所であり、大きさも小型の犬程度しかない。
ゴーレムでは、最低限の知性や社会性がその行動から見て取れるため、魔導生物と位置付けられ、生物の1種とみなされている。
だが、魔導機物にはそう言った行動は見られない。
何故か、ただ一定の行動を延々と繰り返しているだけの存在なのだ。
例をあげると、ただ延々と地面を掘り続ける…や、何故か樹木に突進を繰り返す、同じ場所をグルグルと回り続ける…などと言った行動だ。
さらに不思議な事に、その魔導機物の観察者が目を逸らした瞬間に、いきなり消えていなくなってしまうのだ。
何の為に存在し、何の為にその行動を繰り返すのか、全く解明されていない機械の様に同じ動作を繰り返し続ける不可思議な存在。
それが魔導機物だ。
ミレーラの、トールが魔導機物になったという発言に根拠など全く無いのだが、そう言われると全員が何故か納得できてしまう。
別に意味不明な行動を延々と繰り返し続けていたわけではないが、目覚めた時から就寝までの間に、トールが日々行っている行動を一定の行動としてとらえた時、この魔導機物と同じく機械の様に同じ動作を繰り返していると言えなくもない。
だが…。
「いえ、それはあり得ませんわ! た、ただ単に体の調子が悪かっただけです!」
「そうね、メリルさんの言う通り、きっと何か考え事をしていただけです!」
「執務中も、幾らかは会話しましたので、魔導機物ではないと思いますよ」
「ふむ。マチルダが執務中に、どの様にトール様の精器を感じるのか、そっちの方が私は気になるぞ」
メリルとミルシェが、慌ててミレーラの言葉を否定しようとし、マチルダがそれに続き魔導機物との違いを主張した。
イネスの思考だけは、やはりどっか斜め上の方向に向いているようだが…。
「だ、だったら…魔導機物しゃ…無いとして…どこがお悪いの…でしょうか? 何を…考えて…られるのでしょう…か?」
そのミレーラの問いに答えられる者は、この場には居なかった。
いや、普通に直接トールに聞けばいいだけなのだが、何故か誰もそれに気づかないのは、もしかすると全員揃って天然なのかもしれない。
※ 前話 親指姫 関連は、また後の話で出てきます。
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