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親指姫
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トールが宇宙の遥か果てにある壁を突きまわしていた丁度その頃、トールヴァルド邸では、そろそろ昼食の時間になろうとしていた。
「お疲れ様です、トールさま。もうすぐ昼食が出来るそうなので、汗でも流していらしたらいかがです?」
少しだけ薄暗い邸の廊下で、マチルダは所在無さげに歩くトールへと声を掛けた。
「あ、ああ…うん、そうさせてもらうよ」
俯き加減で、何時になくやる気の無い声のトールであったが、すれ違いながらマチルダは、『今日の鍛錬は、それほど激しかったのかな?』と思っただけだった。
ここで、トールの顔を覗き込むなどしていれば、もしかしたらもっと違った感想になっていたかもしれない。
いや、そもそも本日の鍛錬を見学していたら、もっと早い段階で気付いただろう。
鍛錬へと向かった早朝のトールヴァルドと、今すれ違ったトールヴァルドが、見た目は何もかも同じなのに、何処かが違うという事に。
『つまり、俺達が存在する宇宙って…閉じられた空間だって事か?』
膨らましたゴム風船の様な感触の無色透明(にしか見えない)を突っつきながら、トールはひよこへと訊ねた。
『うむ。お主が触っておる壁がこの次元宇宙を取り囲んでおる。じゃが、その壁の先は、何も無い…つまりは虚無の空間が広がっておるだけじゃ。閉じられたというよりも、閉じ込められていると言った方が正解かもしれぬな』
閉じ込められている…って、
『誰が俺達を閉じ込めてるんだ?』
『無論、輪廻転生管理局の局長じゃよ』
この答えは予想通り。
『お主も、興味深い動物や虫などを捕まえれば、檻や飼育ケースに閉じ込めて観察するじゃろう? それと同じ事じゃよ』
確かに前世で小学生の事、捕まえたカブトムシを飼育ケースに入れたり、夏休みの自由課題でアリの観察日記のために薄っぺらい蟻の飼育セットに捕まえたアリを何匹も入れたりした事がある。
つまりは、局長はあの時の俺と同じ感覚で人をある一定の空間に閉じ込めて観察しているって事なのか。
『いや、だけど…虫と人とじゃ、大きさも思考や技術的な能力だって全然違うと思うんだけど、そこんとこどうよ?』
『あ奴らにとっては、所詮人など蟻の様なものだよ』
ああああっ! 確かに転生の時には、局長に摘まみあげられた気がしたな!
『って事は、局長って結構な巨人なんだなぁ』
そんなつまらない感想を俺がこぼすと、
『???』
ひよこには、俺の言いたい事が、上手く伝わらなかった様だ。
『いや、俺達を無視みたいに観察するって事は、局長ってでっかいんだなぁって』
もう一度、端的に分かり易く言ってみた。
『お主…、まさかとは思うが、地球の頃の肉体と今の肉体との違いに気付いて無いというのか?』
ん?
『いや、前世では確かに普通の人よりも幾分鍛えてたし身体も大きかったけど、今の方が断然でかいしバキバキの体脂肪率極低の細マッチョメンだとは思うけど?』
広背筋を見せ付ける様に、フンッ! っと力を入れつつ、バックダブルバイセップスを極める俺…だけど、服を着てたら分からんよな。
とは言っても、俺の1.5倍は父さんの方が筋肉ギッチリのマッチョメンだけどさ。
『そういう事ではない。もっと分かり易く言うぞ? 地球とお主の住む世界の人とでは、身体の大きさが根本的に違うのに気付いて無いのか?』
……………どゆこと?
『親指姫や親指トムやコロボックルを知っておるか? 一寸法師、かぐや姫………これに共通する事は?』
えっ?
親指姫や親指トムやコロボックルは身長3cmほどの小人が主人公だった気がする。一寸法師、かぐや姫も生れた時は小さかったけど、物語終盤では大きく…。
『ガリバー旅行記やジャックと豆の木は?』
はっ?
ガリバーは小人の国に、ジャックは巨人の国…に?
『地球にも様々な巨人や小人の物語があったであろう?』
いや、ちょっと待て、そしたら俺達って…。
『お主の今現在の身長は、地球人と比較したら1/20程じゃぞ?』
「お疲れ様です、トールさま。もうすぐ昼食が出来るそうなので、汗でも流していらしたらいかがです?」
少しだけ薄暗い邸の廊下で、マチルダは所在無さげに歩くトールへと声を掛けた。
「あ、ああ…うん、そうさせてもらうよ」
俯き加減で、何時になくやる気の無い声のトールであったが、すれ違いながらマチルダは、『今日の鍛錬は、それほど激しかったのかな?』と思っただけだった。
ここで、トールの顔を覗き込むなどしていれば、もしかしたらもっと違った感想になっていたかもしれない。
いや、そもそも本日の鍛錬を見学していたら、もっと早い段階で気付いただろう。
鍛錬へと向かった早朝のトールヴァルドと、今すれ違ったトールヴァルドが、見た目は何もかも同じなのに、何処かが違うという事に。
『つまり、俺達が存在する宇宙って…閉じられた空間だって事か?』
膨らましたゴム風船の様な感触の無色透明(にしか見えない)を突っつきながら、トールはひよこへと訊ねた。
『うむ。お主が触っておる壁がこの次元宇宙を取り囲んでおる。じゃが、その壁の先は、何も無い…つまりは虚無の空間が広がっておるだけじゃ。閉じられたというよりも、閉じ込められていると言った方が正解かもしれぬな』
閉じ込められている…って、
『誰が俺達を閉じ込めてるんだ?』
『無論、輪廻転生管理局の局長じゃよ』
この答えは予想通り。
『お主も、興味深い動物や虫などを捕まえれば、檻や飼育ケースに閉じ込めて観察するじゃろう? それと同じ事じゃよ』
確かに前世で小学生の事、捕まえたカブトムシを飼育ケースに入れたり、夏休みの自由課題でアリの観察日記のために薄っぺらい蟻の飼育セットに捕まえたアリを何匹も入れたりした事がある。
つまりは、局長はあの時の俺と同じ感覚で人をある一定の空間に閉じ込めて観察しているって事なのか。
『いや、だけど…虫と人とじゃ、大きさも思考や技術的な能力だって全然違うと思うんだけど、そこんとこどうよ?』
『あ奴らにとっては、所詮人など蟻の様なものだよ』
ああああっ! 確かに転生の時には、局長に摘まみあげられた気がしたな!
『って事は、局長って結構な巨人なんだなぁ』
そんなつまらない感想を俺がこぼすと、
『???』
ひよこには、俺の言いたい事が、上手く伝わらなかった様だ。
『いや、俺達を無視みたいに観察するって事は、局長ってでっかいんだなぁって』
もう一度、端的に分かり易く言ってみた。
『お主…、まさかとは思うが、地球の頃の肉体と今の肉体との違いに気付いて無いというのか?』
ん?
『いや、前世では確かに普通の人よりも幾分鍛えてたし身体も大きかったけど、今の方が断然でかいしバキバキの体脂肪率極低の細マッチョメンだとは思うけど?』
広背筋を見せ付ける様に、フンッ! っと力を入れつつ、バックダブルバイセップスを極める俺…だけど、服を着てたら分からんよな。
とは言っても、俺の1.5倍は父さんの方が筋肉ギッチリのマッチョメンだけどさ。
『そういう事ではない。もっと分かり易く言うぞ? 地球とお主の住む世界の人とでは、身体の大きさが根本的に違うのに気付いて無いのか?』
……………どゆこと?
『親指姫や親指トムやコロボックルを知っておるか? 一寸法師、かぐや姫………これに共通する事は?』
えっ?
親指姫や親指トムやコロボックルは身長3cmほどの小人が主人公だった気がする。一寸法師、かぐや姫も生れた時は小さかったけど、物語終盤では大きく…。
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はっ?
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『地球にも様々な巨人や小人の物語があったであろう?』
いや、ちょっと待て、そしたら俺達って…。
『お主の今現在の身長は、地球人と比較したら1/20程じゃぞ?』
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