システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児

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幻影の中

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 ひよこにドナドナされて幾星霜…嘘です、体感的に約5分。
 もの凄いスピードで前から後ろへと流れてゆく光の奔流…は、多分星だな。
 まるで某宇宙戦艦がワープした時の様な光景だ。
 いや、真っ暗な空間に無数の光の線が奔ってるだけで、俺自身は実は全く動いて無いのかもしれないけど。
 ほらアレだ…車に乗って洗車機の中に入った時、洗車機自体が動いてるのに、まるで自分の車が動いている感じになるって表現したらわかるかな?
 そもそも、星の光が一直線にしか見えなくなるほどの勢いで移動してるのに、全くGがかかって無いんだから、自分の置かれている状況に現実味がないって言うか…。
 
 そんな幻想的って言うか、アニメ的っていうか、SF的な不思議な光景は、唐突に終わりを告げた。
 っていうか、元の宇宙空間に戻っただけなんだけど。
 
『さあ、着いたぞ。ここがこの宇宙の果てだ』
『へっ?』
 ひよこに言われて周りを見回したが、これと言って壁も何も無い。
 いや、そもそも360°変わり映えしない、だだっ広い宇宙空間なんだけど?
『手を伸ばしてみるがよい』
 ひよこにそう言われ、俺はゆっくりと右手を前に突き出した。
『えっと…え?』
 まだ半分ほどしか伸ばしていない俺の右手は、何かにぶち当たり止まった。
『こ、これ何だ?』
 俺の右手は、何か柔らかい…そう、まるで風船の様なブニョっとした変な何かに阻まれ、これ以上前に出す事が出来なかった。 
 正確には、その前にブニョっとした変な弾力のある何かを押す事は出来るのだが、ある程度から先には伸ばす事が出来ない。
 やっぱりこれってゴムの感触に似てるな。

『わかるか? それがこの宇宙の果てだ。そして、この宇宙を取り囲んでいる壁だ』
『これが…って、俺が住んでた星からここまでって、どれぐらいなんだ?』
 些か抽象的ではあったが、ひよこに尋ねると、
『ふむ…君が理解しやすい単位で答えると、約0.5光年といったところだな』
『0.5光年!?』
 って、えっと…1光年が約9.5兆kmだったっけ?
 ちなみに、光年って単位は、単に光が1年で進む距離の事だぞ。
 年って付くけど、決して時間の単位の事じゃない。
 え、そんな事は常識だ…って? そりゃすんまそ。
 まあ、9.5兆kmって言っても、それを実際に計測出来た人はいないらしい。
 計測開始地点から光と同じ速度で一緒に1年間進み、到達点までを正確に計測できるはずも無いけどさ。

 おっと、話がちょっとずれたな…0.5光年って事は、つまりは4.7兆kmぐらい?
 俺には想像も出来ん距離だな。
 あれ? そう言えば、ここまで5分ぐらいで来たけど、それだと80兆km/hぐらいのスピードだったってこと? 計算合ってる?

『この壁が球状に広がり、お主が暮らす星もその内側にあるのじゃよ』
 ひよこさん、あんた簡単に言うけど…この風船みたいな壁が直系1光年もあるの?
『まあ、多くの次元世界は、全てこうした形をしておる』
 え?
『もしかして…地球も?』
『ああ、あの星か。当然だな。まあ、この次元宇宙と同じ大きさである』
 ちょっと待て。
 確か科学雑誌で昔読んだことあるけど、宇宙空間にはハッブル宇宙望遠鏡ってのが浮かんでいて、何十億年光年も先を観察できるって…。 
 なら、たった…9.5兆kmをたったって言うのはおかしな表現だけど、それでもその先まで観測出来てたはずなんだけど…地球では。
『君の目には、この壁の向こうにも宇宙が広がっている様に見えるじゃろう?』
 そ、そうだよ! 透明な壁がある様にしか見えないよ!
『残念じゃが、実はこれは映像だ』
『えいぞう? あ、映像か! え、これ、偽物なの!?』
 この壁…宇宙空間を遮る透明な壁とかじゃないの?
『尤も、ほとんどの次元世界に内包されている星でも、ここまで到達できる様な乗り物を建造する文化は育っておらぬがな。育っている星でも、この壁に到達した時点で普通は記憶がこの先の宇宙を旅行している様に書き換えられてしまうのじゃよ』
『えっと、光学的な観測とか、その他の高等技術での宇宙観測とかだと…』
『その取得した情報そのものが自動的に書き換えられる。この先の世界を観測した様にの。つまり、次元世界の中に住む人々は、幻影の中で生活しておるわけじゃな』
 メガゾ〇ン23かよ! 
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