システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

目的地

　呼吸も出来ない無重力空間で、じたばたと藻掻く事、数十分…ぐらいだと思う。
　漸くこの空間にも慣れて来て、俺も色々と落ち着いてきて周囲を見回す事が出来るようになった。
　周囲を見回す程に余裕が出来た…と言う事は、自分の置かれている状態も冷静に捉えられるようになって来たって事だ。
　確か空気も無い宇宙空間では会話など出来ず、－270度の世界だとか昔聞いた事。
　まあ、絶対零度だとかいう世界であっても、空気が存在しない世界では即凍るという事は無いとかともその時に聞いた記憶があるが、理屈は分からん。
　んで太陽光に直接触れた物体の表面温度は、余裕で100度を超えるとも聞いた。
　ん～～？　でも、そんなに熱くも寒くも感じないなあ。
　確か…心臓も止まってるんだっけ？　
　あ、マジだ！　胸に手を当てても鼓動を感じない！
　でもひよこ曰く、俺は死んでないとか。
　呼吸もしないで心臓が止まってる生物って、生きてると言えるんだろうか？
「じゃから、お主は生命体の常識の枠を外れた存在なのじゃぞ？　忘れるな」
　ひよこさん、俺の心を読むのは止めてもらえませんかね…。
　…そういや、宇宙空間で普通に会話してるけど、これってどうなってんだろうか？
　もしや、ア〇ロとラ〇アみたいな、人類の革新によるものなのか？
　俺もひよこも覚醒済みなんだから…やっぱこれって、神的な共感による時空を超えた非言語的コミュニケーション能力なんだろうか？
　確かに便利だけど、良く分からん…。

　俺がそんな風に深く現状について考えていると、ひよこがすぅ～っと近付いて来て、俺の手を握った。
　え～っと、俺には妻も子もいるので、そういった事はちょっと…、っと考えていたら、思いっきりハリセンで頭を叩かれた。
　痛くも無いけど、なぜか宇宙空間には、すぱーーーん！　と良い音が響いた。
　って、どっからそれ出した！？　って、なんで宇宙で音が響くんだよ！

『いらん事を考えるな、馬鹿者が！　今から行くのが今日の目的地じゃ』
　お？　急に頭の中にひよこの声が…。
『声帯を使っての会話は難しいじゃろうから、思念で会話しておるのじゃ。残り少ない灰の中の空気程度では、碌には会話など出来まい？』
　…前世でも肺活量7000ml（今世は測定できません）を誇った俺様でも、確かに何時迄もは無理だな…。
『え～あ～ん～…っと、これで良いのか？』
　頭の中ではひよこに向かって話しかける様にしてみると、
『もう習得したか。それで良い』
　うん、出来てたらしい。
『で、今から向かう所が目的地なのか？』
　この宇宙でどこに行くつもりなんだろう？
『うむ。今から向かうのが、この宇宙の果てだ』
　へっ？