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実は乙女のリリアちゃん
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『それっ!』
ガッ!
『なんの!』
『そこっ!』
ガガッ!
『ちょいや!』
『もらいましたわ!』
ズガガガガガッ!
『ふんぎゃーーーー!』
ここはネス湖の湖底のそのまた地下にある、秘密のロボット格納庫。
直立不動でメイド型の巨大ロボットが静かに2機佇むこの格納庫の照明は、ロボを照らし出している場所以外は薄暗い。
別に省エネの為というわけでは無い。
元より電力で点灯する様な照明などこの格納庫には存在せず、火の精霊さん達の協力と明かりの魔道具によって照らされていただけであり、今は単に日の精霊さん達がお寝んねしているため、これ程暗くなっているのである。
最初にトールがこの格納庫をイメージして想像した時、『巨大ロボは照明で照らし出されるべき! だって、その方が格好いいから!』という、意味不明なロマンのせいで照明の魔道具はロボの周囲にしか配置されていなかったからだ。
今日は、普段ロボの整備をしているコボルトもゴブリンもほとんどこの格納庫に居ないため、火の精霊さん達もお寝んねしているというわけだ。
さて、そんな薄暗い格納庫の片隅で、人よりも大きな物が激しく動き回っていた。
それは、普段はメイド型ロボの影に隠れているウルスラグナの2機だ。
『ぐぅ…まだまだ! かかってこいやー!』
人よりも遥かに大きいウルスラグナの1機は地に膝を付き、長い木刀(日光山の焼き印有り)を支えに立ち上がろうとしていた。
『かかって来いって…貴女、もうこれでひっ飛ばされるの5度目ですわよ?』
そんなウルスラグナを見つめるのも、また手に木刀(洞爺湖の焼き印付き)を持つウルスラグナだ。
『へっへーん! まだまだサラちゃんは戦えるもんねー!』
木刀を支えに漸く立ち上がったウルスラグナから、そんな声が聞こえる。
『いや、これ木刀ですからね? きちんとした武器なら、貴女すでに5回死んでるんですよ?』
木刀を空に担いでポンポンとしながらサラ機を見つめているウルスラグナからは、誰もが予想した通り、リリアの声が響いた。
『まあ、それはそうなんだけどぉ…。でも、あれで戦闘訓練とかしたら、とんでもない事にならん?』
『まぁ、そりゃぁね。ボーディ様達に毎度毎度パンゲア大陸に送ってもらって訓練するのもそうですが、訓練の度にコボルトさんやゴブリンさん達に整備してもらうのも大変ですし…』
『でしょでしょ!? それに比べてこっちなら、相当手荒に扱っても壊れる事も無いし、そもそもあっちと比べたらちっこいから場所も取らないし!』
こっちとはつまりはウルスラグナの事で、その大きさはメイド型ロボと比べても半分にも満たないのだから、たしかにちっこいのま間違いない。
『まあ、操縦方法の基本的なシステムとしては、かなり簡略化されているとはいえ似通っていますから、訓練には適してはいますが…』
ウルスラグナは脳波で操縦する。
巨大メイドロボは、サラとリリアと完全にシンクロする事で操縦できる。
操縦という点だけで考えるならば、かなりその方法は近しい物がある。
とはいえ…、
『が?』
何か気になる事があるのかと、サラがリリアに問いかけた。
『いえ…ここって、かなり薄暗いじゃないですか。何かでしょうな気が…』
どうやらリリアは、照明が足りない事が気になる様だ。
『夜間戦闘訓練だと思えば、結構明るい様な気がするっすけど?』
『それはそうですけど…。何か出そうじゃないですか?』
リリア機が、不安げな動きで辺りを見回す。
『出るって…? ああ、お化けっすか?』
同じように辺りを見回したサラ機が、
『もしかして、リリア…お化けが怖いんすか?』
ウルスラグナに表情など無いが、明らかに今のサラの声は楽しそうだった。
思いっきり小馬鹿にした様なサラの顔が、リリアの脳裏にありありと浮かんだ。
『こ、怖いなんて言ってないでしょう!』
『ぷぷぷ! あのリリアがお化けが怖いとか! ウケる!』
『誰がそんな事を言いましたか! 怖くなんて無い!』
『強がり~! 本当は怖いのに強がっちゃってぇ~! ドSとか言ってて、実は乙女のリリアちゃんだったんでちゅねぇ~。サラちゅわぁ~ん、リリア、お化け怖いのぉ~!』
『ぐぐぐぐぐぐぐぐ……黙れー!』
『あらぁ~、図星でちたかぁ~? はいはい、ではお化けが出たらサラちゃんが追い払ってあげまちゅよ~?』
サラのウルスラグナは、くねくねとおかしな動きをしている。
それが不快な動き…いや、もう明らかにリリアを馬鹿にした動きにしか見えない。
『だ・ま・れ…と言っているのが…分からんのかーーーー!』
あの嫌らしいウルスラグナの動きを見れば、キレない者など居ないだろう。
リリア機は、どこから取り出したのか模造刀(清水寺の刻印有り)を開いていた方の手で握っていた。
『ちょ、二刀流なんて反則! って、それ刀じゃん! 刀身が金属! 木刀じゃないじゃん!』
リリア機を見たサラ機が、いやさサラが慌てふためく。
『安心しなさい…この模造刀の刃は、コボルトさん達がきちんと焼き入れも焼き戻しもして、更に丁寧に研磨してもらっています。ウルスラグナのコクピットを貫く事も可能ですよ…ふっふっふっふっふっふっふっふっふ…』
そんなサラの抗議など気にもせず、ちょっと逝っちゃってるリリア機が、模造刀(警察に捕まる奴)を振りかぶりながら一歩また一歩とサラ機に歩み寄る。
『いや、ちょ、ま…あ…あああーーーーーーーーーーーー!』
ネス湖の湖底のそのまた地下にある秘密の基地の片隅で、2機のロボ凄惨な追いかけっこがあったらしいが…地上では誰もそれに気付いたものは居なかったそうな。
めでたしめでたし。
ガッ!
『なんの!』
『そこっ!』
ガガッ!
『ちょいや!』
『もらいましたわ!』
ズガガガガガッ!
『ふんぎゃーーーー!』
ここはネス湖の湖底のそのまた地下にある、秘密のロボット格納庫。
直立不動でメイド型の巨大ロボットが静かに2機佇むこの格納庫の照明は、ロボを照らし出している場所以外は薄暗い。
別に省エネの為というわけでは無い。
元より電力で点灯する様な照明などこの格納庫には存在せず、火の精霊さん達の協力と明かりの魔道具によって照らされていただけであり、今は単に日の精霊さん達がお寝んねしているため、これ程暗くなっているのである。
最初にトールがこの格納庫をイメージして想像した時、『巨大ロボは照明で照らし出されるべき! だって、その方が格好いいから!』という、意味不明なロマンのせいで照明の魔道具はロボの周囲にしか配置されていなかったからだ。
今日は、普段ロボの整備をしているコボルトもゴブリンもほとんどこの格納庫に居ないため、火の精霊さん達もお寝んねしているというわけだ。
さて、そんな薄暗い格納庫の片隅で、人よりも大きな物が激しく動き回っていた。
それは、普段はメイド型ロボの影に隠れているウルスラグナの2機だ。
『ぐぅ…まだまだ! かかってこいやー!』
人よりも遥かに大きいウルスラグナの1機は地に膝を付き、長い木刀(日光山の焼き印有り)を支えに立ち上がろうとしていた。
『かかって来いって…貴女、もうこれでひっ飛ばされるの5度目ですわよ?』
そんなウルスラグナを見つめるのも、また手に木刀(洞爺湖の焼き印付き)を持つウルスラグナだ。
『へっへーん! まだまだサラちゃんは戦えるもんねー!』
木刀を支えに漸く立ち上がったウルスラグナから、そんな声が聞こえる。
『いや、これ木刀ですからね? きちんとした武器なら、貴女すでに5回死んでるんですよ?』
木刀を空に担いでポンポンとしながらサラ機を見つめているウルスラグナからは、誰もが予想した通り、リリアの声が響いた。
『まあ、それはそうなんだけどぉ…。でも、あれで戦闘訓練とかしたら、とんでもない事にならん?』
『まぁ、そりゃぁね。ボーディ様達に毎度毎度パンゲア大陸に送ってもらって訓練するのもそうですが、訓練の度にコボルトさんやゴブリンさん達に整備してもらうのも大変ですし…』
『でしょでしょ!? それに比べてこっちなら、相当手荒に扱っても壊れる事も無いし、そもそもあっちと比べたらちっこいから場所も取らないし!』
こっちとはつまりはウルスラグナの事で、その大きさはメイド型ロボと比べても半分にも満たないのだから、たしかにちっこいのま間違いない。
『まあ、操縦方法の基本的なシステムとしては、かなり簡略化されているとはいえ似通っていますから、訓練には適してはいますが…』
ウルスラグナは脳波で操縦する。
巨大メイドロボは、サラとリリアと完全にシンクロする事で操縦できる。
操縦という点だけで考えるならば、かなりその方法は近しい物がある。
とはいえ…、
『が?』
何か気になる事があるのかと、サラがリリアに問いかけた。
『いえ…ここって、かなり薄暗いじゃないですか。何かでしょうな気が…』
どうやらリリアは、照明が足りない事が気になる様だ。
『夜間戦闘訓練だと思えば、結構明るい様な気がするっすけど?』
『それはそうですけど…。何か出そうじゃないですか?』
リリア機が、不安げな動きで辺りを見回す。
『出るって…? ああ、お化けっすか?』
同じように辺りを見回したサラ機が、
『もしかして、リリア…お化けが怖いんすか?』
ウルスラグナに表情など無いが、明らかに今のサラの声は楽しそうだった。
思いっきり小馬鹿にした様なサラの顔が、リリアの脳裏にありありと浮かんだ。
『こ、怖いなんて言ってないでしょう!』
『ぷぷぷ! あのリリアがお化けが怖いとか! ウケる!』
『誰がそんな事を言いましたか! 怖くなんて無い!』
『強がり~! 本当は怖いのに強がっちゃってぇ~! ドSとか言ってて、実は乙女のリリアちゃんだったんでちゅねぇ~。サラちゅわぁ~ん、リリア、お化け怖いのぉ~!』
『ぐぐぐぐぐぐぐぐ……黙れー!』
『あらぁ~、図星でちたかぁ~? はいはい、ではお化けが出たらサラちゃんが追い払ってあげまちゅよ~?』
サラのウルスラグナは、くねくねとおかしな動きをしている。
それが不快な動き…いや、もう明らかにリリアを馬鹿にした動きにしか見えない。
『だ・ま・れ…と言っているのが…分からんのかーーーー!』
あの嫌らしいウルスラグナの動きを見れば、キレない者など居ないだろう。
リリア機は、どこから取り出したのか模造刀(清水寺の刻印有り)を開いていた方の手で握っていた。
『ちょ、二刀流なんて反則! って、それ刀じゃん! 刀身が金属! 木刀じゃないじゃん!』
リリア機を見たサラ機が、いやさサラが慌てふためく。
『安心しなさい…この模造刀の刃は、コボルトさん達がきちんと焼き入れも焼き戻しもして、更に丁寧に研磨してもらっています。ウルスラグナのコクピットを貫く事も可能ですよ…ふっふっふっふっふっふっふっふっふ…』
そんなサラの抗議など気にもせず、ちょっと逝っちゃってるリリア機が、模造刀(警察に捕まる奴)を振りかぶりながら一歩また一歩とサラ機に歩み寄る。
『いや、ちょ、ま…あ…あああーーーーーーーーーーーー!』
ネス湖の湖底のそのまた地下にある秘密の基地の片隅で、2機のロボ凄惨な追いかけっこがあったらしいが…地上では誰もそれに気付いたものは居なかったそうな。
めでたしめでたし。
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