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夜のトンネル
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「おっと、忘れるところであった!」
あ、ひよこも今日の修行の事に気付いたみたいだ。
「その褌は越中褌であるから、比較的占めるのは簡単であるぞ」
「そうじゃない!」
違うだろうが!
「お? ああ、そうであったか。安心せよ、それは新品であるぞ」
もっとどうでも良いわ! あ、いや中古か新品かは、結構大事ではあるが。
「そうじゃ無いってんだよ! 今日の修行の事だよ!」
「……………おぉ!」
完璧に忘れてたろ、こいつ!
「しからば、本日の修行を説明いたす」
何も無かったかのように話し始めたぞ、ひよこ…。
「まず、その布の恥にある紐を腰に結び、布を後ろに垂らすのだ」
ふむふむ…って、この布長いな!
「うむ、それで良い。その布は長さが奥方が手にしている越中ふんどしの5倍程の長さがある」
うん、その情報はどうでも良いな。
「まずは、その布が地に付かぬように走るのじゃ」
な、なるほど…。
確か忍者の修行でそんなのあった気がする。
「それが出来たならば、次の修行に移るので、出来たら報告せよ」
あ、基本的に放置なんすね…。
「おお、良い忘れておった。布が地に付かぬ様に走る距離は如何ほどでも良いが、少なくとも1刻はその状態を維持するのじゃぞ?」
「1刻!?」
つまり、1刻は走り続けなきゃならないって事か?
結構な全力で走り続けるって事だよな? な?
「当然であろう? 簡単に登れる頂上など、何の目標にもならぬわ」
そりゃそうだけど…。
「では、また来週会おうぞ!」
こいつ、宿題だけ出して帰る気かよ…。
まあ、いいけど。
「そうそう。次回はちゃんと六尺褌も用意しておくので、奥方達も楽しみにまっておられよ」
『ほう? ろくしゃくふんどーし?』
嫁ーず、めっちゃ喰いついたけど、俺は言いたい。
「持ってくんなーーーー!」
あれ、結構締め方難しいんだよ!
しかも、お尻の所、捻じり捻じりしてTバックになるし…。
『え~~~~~!』
嫁ーずは、残念そうにしないの!
「では、また来週!」
そう言い残し、ひよこはその場から消えて行った。
「んじゃ、とりま課題をこなすとすっかね!」
あのひよこが残した課題は、越中褌の5倍の長さの布切れを地面に付かない様な速度で1刻走り続ける事…なんだけど…。
結構無茶な課題だよな?
えっと、越中ふんどしの長さって、大体1mぐらいだから…この布5mもあんの?
んでそれが地面に付かない様に1刻って…直線距離でどんだけ必要なんだ?
え~っと、ネス湖の周囲が約3km程だっけ? そこをグルグル回れば良い様な気もするけど、湖の周囲は全部が走れる様な状態じゃない。
街側は結構拓けてるけど、反対側は小高い丘と樹々が茂った森だ。
まあ、これはネス湖造成時の土砂を積み上げて、ドワーフやエルフ達の住む森の防壁代わりにしたからなんだけど…あそこは走れないよなぁ。
直線と言えば、人魚さん達が住む海の砂浜も広いけど…砂の上だと走りにくい。
あとは…あっ! 一か所だけあった!
でも、あそこって、昼間は一通り多い気がするけど…大丈夫かなぁ?
直線で誰にも迷惑を掛けずに走りやすい場所。
俺が思いついたのは、俺の領地と父さんの領地の間に聳える山脈を貫通する、長~~いトンネルの中。
昼間は人の往来があるので、それを止めて走るわけにも行かないが、実はトンネルは夜は通行止めとなっている。
夕方にはトンネルへの立ち入りが禁止されていると言った方が正確だな。
人が多く行き来するトンネルだが、誰もが自由気ままに好き勝手にトンネルを使用して行き来出来るわけでは無い。
トンネル使用にはちゃんとしたルールがあるのだ。
その一つは、トンネル通行料金の徴収。
通行料金とはいっても、大した額ではないのだが、これがトンネルの維持整備費用と警備の人件費などに充てられている。
その警備は何をしているかというと、街の出入りの人や商人のチェックだ。
これは、俺の街では主にエルフさんが担当していて、人物だけでなく、積み荷や手荷物に不審な物が無いかなどを検査している。
実際にはこの巨大トンネルのある山脈をう回してくるルートもあるのだが、そっちはあまり警備の手は割いていない。
そのルートって、かなりの難所だし、ほとんど人が行き来してないからね。
過去に、一族と家畜全部を引き連れて魔族さんご一行がやってきた道なんだけど、それを誰にも見つからなかったぐらい、酷道なのだ。
今思えば、魔族さん達よくあんな道をやってきたなぁ…ご苦労様です。
そして、今回一番大事なルールが、トンネルの通行時間だ。
実はトンネルの出入り口の扉が開くのは、大凡朝の8時ぐらいで、夕方の5時には扉が閉まります。
結構な距離があるけど、今はアルテアン商会で運営している蒸気自動車によるバスのピストン便があるので、その最終便の時刻表に合わせて、トンネルの営業時間は終了ってわけ。
たまに歩いてトンネルを抜けようとする剛の者もいるけど、そのルールには従ってもらう様に、ちゃんと説明してある。
商人の馬車とかだと、お昼ぐらいまでにトンネルに入る事が出来れば、どんなにゆっくり進んでもトンネルを抜ける事は出来る程度に時間の余裕を持っている。
8時から17時までがトンネル営業時間。
ま、そうしないと警備とか大変じゃん?
アルテアン領トールヴァルド地区は、ブラックだ…なんて言われたくないしね。
そんなわけで、夜のトンネルならば、気兼ねなく走る事が出来る!
1刻も走り続けられるほどの距離は無いかも知れないけど…。
それでも、ここでなら修行が出来るわけだ!
んじゃ早速今夜から走り込みをしましょうかね!
「ふんどーしの披露も忘れないでくださいね?」
………え? 何か言いましたか、メリルさん?
「トールさま、忘れたとは言わせませんよ? 絶対に今夜披露して頂きますので」
ま、マチルダさん…マジっすか?
「楽しみです」
ああ、ミレーラさんまで…そうですか…。
「私にも着付けを教えて欲しいです」
「確かに! 是非とも、お願いします!」
ミルシェさんもイネスさんも、褌付けたいんですか?
ああ、そうですか…そうですか…。
どうしよう。
もうすでに疲れてしまったんですけど…。
あ、ひよこも今日の修行の事に気付いたみたいだ。
「その褌は越中褌であるから、比較的占めるのは簡単であるぞ」
「そうじゃない!」
違うだろうが!
「お? ああ、そうであったか。安心せよ、それは新品であるぞ」
もっとどうでも良いわ! あ、いや中古か新品かは、結構大事ではあるが。
「そうじゃ無いってんだよ! 今日の修行の事だよ!」
「……………おぉ!」
完璧に忘れてたろ、こいつ!
「しからば、本日の修行を説明いたす」
何も無かったかのように話し始めたぞ、ひよこ…。
「まず、その布の恥にある紐を腰に結び、布を後ろに垂らすのだ」
ふむふむ…って、この布長いな!
「うむ、それで良い。その布は長さが奥方が手にしている越中ふんどしの5倍程の長さがある」
うん、その情報はどうでも良いな。
「まずは、その布が地に付かぬように走るのじゃ」
な、なるほど…。
確か忍者の修行でそんなのあった気がする。
「それが出来たならば、次の修行に移るので、出来たら報告せよ」
あ、基本的に放置なんすね…。
「おお、良い忘れておった。布が地に付かぬ様に走る距離は如何ほどでも良いが、少なくとも1刻はその状態を維持するのじゃぞ?」
「1刻!?」
つまり、1刻は走り続けなきゃならないって事か?
結構な全力で走り続けるって事だよな? な?
「当然であろう? 簡単に登れる頂上など、何の目標にもならぬわ」
そりゃそうだけど…。
「では、また来週会おうぞ!」
こいつ、宿題だけ出して帰る気かよ…。
まあ、いいけど。
「そうそう。次回はちゃんと六尺褌も用意しておくので、奥方達も楽しみにまっておられよ」
『ほう? ろくしゃくふんどーし?』
嫁ーず、めっちゃ喰いついたけど、俺は言いたい。
「持ってくんなーーーー!」
あれ、結構締め方難しいんだよ!
しかも、お尻の所、捻じり捻じりしてTバックになるし…。
『え~~~~~!』
嫁ーずは、残念そうにしないの!
「では、また来週!」
そう言い残し、ひよこはその場から消えて行った。
「んじゃ、とりま課題をこなすとすっかね!」
あのひよこが残した課題は、越中褌の5倍の長さの布切れを地面に付かない様な速度で1刻走り続ける事…なんだけど…。
結構無茶な課題だよな?
えっと、越中ふんどしの長さって、大体1mぐらいだから…この布5mもあんの?
んでそれが地面に付かない様に1刻って…直線距離でどんだけ必要なんだ?
え~っと、ネス湖の周囲が約3km程だっけ? そこをグルグル回れば良い様な気もするけど、湖の周囲は全部が走れる様な状態じゃない。
街側は結構拓けてるけど、反対側は小高い丘と樹々が茂った森だ。
まあ、これはネス湖造成時の土砂を積み上げて、ドワーフやエルフ達の住む森の防壁代わりにしたからなんだけど…あそこは走れないよなぁ。
直線と言えば、人魚さん達が住む海の砂浜も広いけど…砂の上だと走りにくい。
あとは…あっ! 一か所だけあった!
でも、あそこって、昼間は一通り多い気がするけど…大丈夫かなぁ?
直線で誰にも迷惑を掛けずに走りやすい場所。
俺が思いついたのは、俺の領地と父さんの領地の間に聳える山脈を貫通する、長~~いトンネルの中。
昼間は人の往来があるので、それを止めて走るわけにも行かないが、実はトンネルは夜は通行止めとなっている。
夕方にはトンネルへの立ち入りが禁止されていると言った方が正確だな。
人が多く行き来するトンネルだが、誰もが自由気ままに好き勝手にトンネルを使用して行き来出来るわけでは無い。
トンネル使用にはちゃんとしたルールがあるのだ。
その一つは、トンネル通行料金の徴収。
通行料金とはいっても、大した額ではないのだが、これがトンネルの維持整備費用と警備の人件費などに充てられている。
その警備は何をしているかというと、街の出入りの人や商人のチェックだ。
これは、俺の街では主にエルフさんが担当していて、人物だけでなく、積み荷や手荷物に不審な物が無いかなどを検査している。
実際にはこの巨大トンネルのある山脈をう回してくるルートもあるのだが、そっちはあまり警備の手は割いていない。
そのルートって、かなりの難所だし、ほとんど人が行き来してないからね。
過去に、一族と家畜全部を引き連れて魔族さんご一行がやってきた道なんだけど、それを誰にも見つからなかったぐらい、酷道なのだ。
今思えば、魔族さん達よくあんな道をやってきたなぁ…ご苦労様です。
そして、今回一番大事なルールが、トンネルの通行時間だ。
実はトンネルの出入り口の扉が開くのは、大凡朝の8時ぐらいで、夕方の5時には扉が閉まります。
結構な距離があるけど、今はアルテアン商会で運営している蒸気自動車によるバスのピストン便があるので、その最終便の時刻表に合わせて、トンネルの営業時間は終了ってわけ。
たまに歩いてトンネルを抜けようとする剛の者もいるけど、そのルールには従ってもらう様に、ちゃんと説明してある。
商人の馬車とかだと、お昼ぐらいまでにトンネルに入る事が出来れば、どんなにゆっくり進んでもトンネルを抜ける事は出来る程度に時間の余裕を持っている。
8時から17時までがトンネル営業時間。
ま、そうしないと警備とか大変じゃん?
アルテアン領トールヴァルド地区は、ブラックだ…なんて言われたくないしね。
そんなわけで、夜のトンネルならば、気兼ねなく走る事が出来る!
1刻も走り続けられるほどの距離は無いかも知れないけど…。
それでも、ここでなら修行が出来るわけだ!
んじゃ早速今夜から走り込みをしましょうかね!
「ふんどーしの披露も忘れないでくださいね?」
………え? 何か言いましたか、メリルさん?
「トールさま、忘れたとは言わせませんよ? 絶対に今夜披露して頂きますので」
ま、マチルダさん…マジっすか?
「楽しみです」
ああ、ミレーラさんまで…そうですか…。
「私にも着付けを教えて欲しいです」
「確かに! 是非とも、お願いします!」
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ああ、そうですか…そうですか…。
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もうすでに疲れてしまったんですけど…。
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