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まぁ…頑張ってくれ
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「小難しく語った所で理解するのは難しいだろう」
いえ、何となくは理解できましたけど?
もしかして、まだこの話続くの?
もう、いい加減に帰ってくれないかなぁ。
午前中の執務が全然手付かずなんで。
「君が前世で好きだった物で例えるならば…」
別に例えてまで説明してくれなくてもいいんですけど…。
「聖女や聖者や魔王で考えてくれたまえ」
「はぁ…」
「聖女や聖者というのは、一体誰に対してのものかね?」
えらく俗っぽい話になったな、おい!
「えっと、そりゃぁ…人族…っていうか、異世界召喚とかだったら、間違い無く召喚した側だよな?」
俺の答えに満足したのか、うんうんと頷くひよこ師匠。
「そうだ、人に対しての聖女であり聖者だな。では、こいつらは聖人君子なのか?」
…聖女ってぐらいだから…そうなんじゃね?
「答えはNOだ」
「え?」
「考えてみ給え。それならば、敵対する勢力…便宜的に魔族としようか。それらの行為によって傷ついた人達を癒したり、人々を奮い立たせたり、希望を持たせたりする旗印が彼等なんだろう? だが、それが本当に善なる存在であり聖人君子であるならば、敵対勢力である魔族の行いは全て許さなければならない。なぜならば、魔族が悪だというのは、人の身勝手で一方的な考えだからだ」
…メタ視的な考えの事だろうか?
「一方が他方の行いの善悪を決めるというのは間違っている。客観的に俯瞰してみれば、魔族にとっては人族を根絶やしにしようとするのは、別に間違いではない。人族が逸れに抗うのも、また間違いではない。よって、どちらが善でありどちらが悪であるかを決めつけるのはおかしな事なのだよ」
「立場が違えば…って奴か」
「その通り。人を殺したから悪? だったら、魔族を殺すのは悪では無いのか? 一方だけを癒す者が、果たして善なる存在であり、聖人君子と言えるのか? おかしいだろう? 絶対なる前世を持つ聖人君子であれば、敵味方問わず、全ての行いを是とせねばならない。全てを受け入れ全てを赦す。それこそが絶対なる善だ」
なるほどな。
「異世界の物語でよく目にする勇者など、一番おかしな存在だ。なんせ、魔王を倒すために存在しているのがほとんどだからな。それは単なる兵器と変わらない。だが、最悪の敵を倒したとすれば、彼は最上の善の存在でなっければおかしいよな? なのに、君は勇者が解脱した話を聞いた事があるか?」
「な、無い…。そう言えば、魔王を倒した勇者って、大抵はどっかのお姫様と恋仲になって…ってのがほとんどだな…」
最近は色んなパターンもあるらしいけど、それでも王道って言えばこの形だよな。
「だろう? だから君も私達も聖人君子などでは無い。だが、悟りに至り輪廻転生の輪から解脱する事が出来た。煩悩も欲望も持ってはいるが、それでもこの世界の理を知るに至ったのだよ」
なるほどなぁ…。
「だったら、管理局長を討とうとしてるのは…」
悪だからではない?
「別に悪の親玉だからとか、ラスボスだから…ではない。奴の行動によってこの世界が壊れてしまうから、奴を止めようとしているに過ぎない」
あれ?
「んじゃ、無理に討つ必要は無いって事?」
「うむ。別に奴が難いわけでは無いからな。奴がこの世界の外に新たな世界を創造する…などという暴挙に出なければ、別に何の問題も無い奴だ」
局長のイメージが崩れていく。
「私達の最終目標は、管理局長に現実を思い出させる事だ。まあ、多分無理だろう」
「無理…とは?」
「あ奴は、己の思考以外の全ての情報をシャットダウンしておる。簡単に言えば、誰の言葉も奴の耳には届かない…という所だ」
ふむ…聞く耳持たないって事なの? 結構、面倒くさい奴じゃん!
「何故そうなったのかは分からん。だが、奴の目を覚まさせねば、間違い無くこの世界は消滅する。それは私が望むところでは無いんだよ」
「っと、言うと?」
「この世界の片隅でにあった私の生きた場所は、私が愛した妻が生きた世界だ。子供や孫達も生きていたし、皆の墓標もある。私もこの世界を愛している。だからこそ、壊したくないのだよ、この世界を…」
このひよこにも妻と子供と孫がいたのか。
当たり前といえば 当たり前だけど、ちょっと吃驚。
「君だって同じだろう? 愛する妻や子がいるこの世界を壊したくは無いだろう?」
「そりゃ、当然壊したくないさ」
「だが、元凶を倒す事は難しい」
局長って、そんなに強いのかな?
「何故なら、局長も君であり私だからだ。倒した所で君が彼を吸収するだけの事。そして倒されれば君が彼に吸収されるのだよ。元は1個の存在だったのだから」
そこまで話すと、不意にひよこは立ち上がり、
「少し話し過ぎた様だ。君が完全に覚醒すれば、いずれこういった事も全て理解できるだろう…。だから、まぁ…頑張ってくれ」
そう言うと、俺の返事も聞かずに、すぅっとその姿が消えて行った。
そして俺の視界には、美しいネス湖の煌めきだけが残った。
いえ、何となくは理解できましたけど?
もしかして、まだこの話続くの?
もう、いい加減に帰ってくれないかなぁ。
午前中の執務が全然手付かずなんで。
「君が前世で好きだった物で例えるならば…」
別に例えてまで説明してくれなくてもいいんですけど…。
「聖女や聖者や魔王で考えてくれたまえ」
「はぁ…」
「聖女や聖者というのは、一体誰に対してのものかね?」
えらく俗っぽい話になったな、おい!
「えっと、そりゃぁ…人族…っていうか、異世界召喚とかだったら、間違い無く召喚した側だよな?」
俺の答えに満足したのか、うんうんと頷くひよこ師匠。
「そうだ、人に対しての聖女であり聖者だな。では、こいつらは聖人君子なのか?」
…聖女ってぐらいだから…そうなんじゃね?
「答えはNOだ」
「え?」
「考えてみ給え。それならば、敵対する勢力…便宜的に魔族としようか。それらの行為によって傷ついた人達を癒したり、人々を奮い立たせたり、希望を持たせたりする旗印が彼等なんだろう? だが、それが本当に善なる存在であり聖人君子であるならば、敵対勢力である魔族の行いは全て許さなければならない。なぜならば、魔族が悪だというのは、人の身勝手で一方的な考えだからだ」
…メタ視的な考えの事だろうか?
「一方が他方の行いの善悪を決めるというのは間違っている。客観的に俯瞰してみれば、魔族にとっては人族を根絶やしにしようとするのは、別に間違いではない。人族が逸れに抗うのも、また間違いではない。よって、どちらが善でありどちらが悪であるかを決めつけるのはおかしな事なのだよ」
「立場が違えば…って奴か」
「その通り。人を殺したから悪? だったら、魔族を殺すのは悪では無いのか? 一方だけを癒す者が、果たして善なる存在であり、聖人君子と言えるのか? おかしいだろう? 絶対なる前世を持つ聖人君子であれば、敵味方問わず、全ての行いを是とせねばならない。全てを受け入れ全てを赦す。それこそが絶対なる善だ」
なるほどな。
「異世界の物語でよく目にする勇者など、一番おかしな存在だ。なんせ、魔王を倒すために存在しているのがほとんどだからな。それは単なる兵器と変わらない。だが、最悪の敵を倒したとすれば、彼は最上の善の存在でなっければおかしいよな? なのに、君は勇者が解脱した話を聞いた事があるか?」
「な、無い…。そう言えば、魔王を倒した勇者って、大抵はどっかのお姫様と恋仲になって…ってのがほとんどだな…」
最近は色んなパターンもあるらしいけど、それでも王道って言えばこの形だよな。
「だろう? だから君も私達も聖人君子などでは無い。だが、悟りに至り輪廻転生の輪から解脱する事が出来た。煩悩も欲望も持ってはいるが、それでもこの世界の理を知るに至ったのだよ」
なるほどなぁ…。
「だったら、管理局長を討とうとしてるのは…」
悪だからではない?
「別に悪の親玉だからとか、ラスボスだから…ではない。奴の行動によってこの世界が壊れてしまうから、奴を止めようとしているに過ぎない」
あれ?
「んじゃ、無理に討つ必要は無いって事?」
「うむ。別に奴が難いわけでは無いからな。奴がこの世界の外に新たな世界を創造する…などという暴挙に出なければ、別に何の問題も無い奴だ」
局長のイメージが崩れていく。
「私達の最終目標は、管理局長に現実を思い出させる事だ。まあ、多分無理だろう」
「無理…とは?」
「あ奴は、己の思考以外の全ての情報をシャットダウンしておる。簡単に言えば、誰の言葉も奴の耳には届かない…という所だ」
ふむ…聞く耳持たないって事なの? 結構、面倒くさい奴じゃん!
「何故そうなったのかは分からん。だが、奴の目を覚まさせねば、間違い無くこの世界は消滅する。それは私が望むところでは無いんだよ」
「っと、言うと?」
「この世界の片隅でにあった私の生きた場所は、私が愛した妻が生きた世界だ。子供や孫達も生きていたし、皆の墓標もある。私もこの世界を愛している。だからこそ、壊したくないのだよ、この世界を…」
このひよこにも妻と子供と孫がいたのか。
当たり前といえば 当たり前だけど、ちょっと吃驚。
「君だって同じだろう? 愛する妻や子がいるこの世界を壊したくは無いだろう?」
「そりゃ、当然壊したくないさ」
「だが、元凶を倒す事は難しい」
局長って、そんなに強いのかな?
「何故なら、局長も君であり私だからだ。倒した所で君が彼を吸収するだけの事。そして倒されれば君が彼に吸収されるのだよ。元は1個の存在だったのだから」
そこまで話すと、不意にひよこは立ち上がり、
「少し話し過ぎた様だ。君が完全に覚醒すれば、いずれこういった事も全て理解できるだろう…。だから、まぁ…頑張ってくれ」
そう言うと、俺の返事も聞かずに、すぅっとその姿が消えて行った。
そして俺の視界には、美しいネス湖の煌めきだけが残った。
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