システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児

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未来を

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 唐突に理解した。

 それは、木曜日の茶道の師匠との修行? の時だった。
 陽光をキラキラと反射する静かな湖畔をぼうっと眺めていた時、なぜか唐突にこの世界の全てを理解してしまった。
 いや、この世界の…だけではない。
 宇宙の真理というか、真実というか、道理というか…とにかく、絶対に永遠に不変の理の様な物を、何故か理解してしまった。

 え、何で急に?

 えっと、さっきまでの俺は確か…木曜のひよこ師匠と茶道を通じて自分の周りを、自然を感じろと言われて…んで、湯呑の中のお茶をじっと見つめていたんだっけ?
 俺の手の動きと、時には同調し、時には反発する様に動く湯呑の中のお茶を見つめていて…あれ? あの後、俺…お茶飲んだんだっけ?
 って、あ、あれ? 何時の間に湖畔に俺1人だけ立ってるんだ?
 えと、今日の茶道の時間は、確かメリルとミレーラとイネスもいたはず…?
 ふと空を見上げると、何故かそこには夜空…じゃない、これ宇宙だろ!?
 めちゃくちゃに星がでっかく見える!
 いやいや、おかしいだろ!? 
 確か、まだ昼前だったはずだし、一緒に居たメリルにミレーラにイネスはどこ行ったんだ? って、俺…浮いてる!?
 あ、足元が…あっ? 足元に見えるのって、俺達の星なんじゃね?
 何度かヒナとミヤと一緒に空の上から見た事あるから、間違い無いはず。
 んじゃ、俺って宇宙にいるの? 普段着のままで? どうやって来たんだ?
 待て待て待て、宇宙って空気無いはずだよな。
 宇宙服を着ないで宇宙に放り出されたら、確か体温が徐々に低下するんだったっけ? んで、真空だからって息を止めると、圧力の関係で肺が爆発したり、血液中で酸素とか二酸化炭素とかが泡になって脳で詰まって死ぬとか聞いたことあるぞ?
 いや、ここは薄いとは言っても、まだ空気がある場所なのか?
 遠くに太陽が見えるけど…って、えええええーーー! どんどん太陽に引っ張られて行く! 待って待って、そっちに行ったら、俺死んじゃうよ!
 あ…止まった。どうなってんだ?
 取りあえず元居た場所に戻りたい…って、戻れるんかーーい!
 どんどん星が近づいて…近づいて…って、今度は大気圏突入で燃え尽きちまうわ!
 止まれ止まれ止まれーーーーーーーって、止まった?
 ど、どうなってんだ、こりゃ?
 
 ちょっと落ち着こう。
 俺、本当に宇宙に居るのか?
 いや、正しくは、俺の肉体が宇宙に来ちゃったのか? だな。
 だって、おかしいだろ?
 さっきまで確かにネス湖の湖畔に居たはずなんだ。
 そんで、ひよこ師匠に茶道を通して自然を感じろとか言われて、そんで湯呑の中を見つめてて…で?
 湯呑の中のお茶の動きをコントロールしようとかしてたけど、それが上手くできなくて、なるべく揺らさないようにそっと持って…。
 そうあの時、ダンジョンマスターとか副局長の言葉とかを思い出したんだよな。
 とある場所の1点から巨大なエネルギー体が吸い込まれて爆発して、この宇宙が出来たとか何とか。
 湯呑がこの宇宙の元tなる場所だったなら、そこに注がれたお茶は、エネルギー体みたいだなって…。
 お茶=エネルギー体だったら、出来るだけ静かな状態で維持しようとするだけで難しいのに、思った様にコントロールしようとして強い力を加えたって駄目だって。
 形あるものは壊れるって言うけれど、お茶を包み込んでいる湯呑も、またいつか壊れるかもしれない…。
 そして、その湯呑は俺達の世界に存在する物であって、この湯呑の外にさらに新たな湯呑を作ったとしても、それはやはり俺達の世界に存在する物の1つでしかない。
 この宇宙の外側に新たな宇宙を創り出したとしても、それはこの宇宙を包む大いなる何かに内包されているだけの存在でしかない…とか、考えた気がする。
 
 ああ、そうだ。
 俺は確かにあの時、この宇宙の真理に気付いて理解したんだ。
 知識では知ってはいたが、本当の意味でそれを理解出来た。
 俺は、この世界の1つの存在でしか無く、でもそれは世界を構成する1つであり、この世界全てが俺自身でもあるという事に。
 それがどんなに遠く離れていようとも、どれほど近くにあろうとも、それは関係ない事であり、望めばそれと物理的な距離は関係ないんだと。
 過去も現在も未来も、どんな次元であろうとも、それはいつでも手が届く場所にあるんだが、手が届かない場所でもあるという事に。

 ああ、なんだ…こんなに簡単な事だったのか。
 この宇宙って、こんなにも間違いや矛盾だらけなのに調和がとれた世界なんだ。
 ああ、そうなんだ…俺は今、心だけが宇宙を漂っているんだ。
 距離も時間も全てを飛び越え、精神だけがこの広い宇宙を彷徨っているんだ。
 ならば、次にすべきことはこの宇宙が始まった瞬間に決まっていた事。
 俺が生まれる前から決まっていた、矛盾する予定。
 俺が俺を倒すのではなく、俺が俺を取り戻すために。
 遥かな世界を飛び越えて、あいつに会いに行かねばならないという予定。

 未来は一方向に流れているが、その流れは幾らでも変える事が出来る。
 だから、変えに行こう…未来を。

 さしあたっては、俺が元居た場所へ戻らなきゃな。
 あの美しい、ネス湖の湖畔の邸へと。
 嫁ーずの元へと。
 
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