システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児

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ここがお前の終着点だぁぁぁぁっ!

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 夜の闇に支配された森の中を、男はひた走る。
「はぁはぁはぁはぁはぁ…」
 男は、ただただ前へ前へとひたすら走り続けていた。 
 枯れ葉積もる樹々の合間を盛大に音を立て、普段から日の当たらない苔むしたい岩場で足を滑らせ、時折張り出した根で足を取られようと、ただひたすらに前へ前へと突き進んでいた。
 きっとその走りは、足場の良い街道であれば、それは素晴らしい速度が出ているだろうが、生憎とここは昼でも陽の光届かぬ深い森の中。
 走る本人が思う程に速度は出ていない。
 むしろ、真っすぐに進んでいないので、大した距離すら走って無い。
 周囲の気配などまるで警戒もせず、いや警戒する余裕など無いのかもしれない。
 いや、それすらも間違いか。
 何故なら、本当にきわめて短い時間、男は背後へと視線を向けたのだ。
 それはまるで、背後から迫り来るであろう、何かから逃げている様に見える。
 こんな一寸先が闇に包まれている様な森の中を、一体、なぜ何かから逃げる様な事になったのだろうか。
 男の顔には明らかに恐怖が浮かんでいる。
「はぁはぁはぁはぁはぁ…」
 まるで背後の闇の中から何かが迫って来る幻でも見ているのだろうか。

 やがて、背丈ほども高さのある草むらへと駆けんだ男の姿は見えなくなった。
 暫しの間、ガサガサと男が草を掻き分ける音がしていた。
 が、やがて…男は気付いてしまった。
『ごくり…』
 男の背後から、もの凄い勢いで草を掻き分ける音が近づいて来ている事に。
「あ、ああぁぁぁぁぁぁぁ…」
 半狂乱になった男が、行く手を遮る草を掻き分け、もっと前へと踏み出した瞬間、
『……どきどき…』
 目の前の草叢をかき分けた瞬間、そこには血で染まった無数の手のひらが…。
「ここがお前の終着点だぁぁぁぁっ!」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
『きゃぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』

「どう、どう? ぞくっとした?」
 とっても嬉しそうな顔でユズカが皆を見回す。
 ここは、何故か突然開催が決まったパジャマ・パーティの会場。
 参加者は、トールの嫁ーず一同で、ここはミレーラの部屋。
 何でミレーラの部屋かというと、単に余計な物が少なく広々としているから。
 そして本日のゲストは、若い身空で幼馴染とこの世界に転移してきたユズカと、、この邸で働くドワーフメイドの4人衆だ。
 全員がパジャマ…寝間着である。
 そして、何故か始まる百物語。
 言い出しっぺはユズカ。
 なぜそうなったのか? それはドワーフメイド衆の寝間着が何故か長袖のジャージっぽい服だったったから。
 小中学校の修学旅行を思い出したユズカが、確かあの時は女子部屋で、同室の全員で布団をかぶって、携帯の明かりだけしかない暗い部屋で怖い話をしたなぁ…などと前世での懐かしい思い出を語ったところから始まったのだ。
 もちろん、怖い話が百もあるはずも無く、100本もの蝋燭も用意していない。
 ただ単に、ちょっと怖い話をしてみたりして、全員でドキドキしてみよう…っという、なんだかふわっとした内容のイベントなのだ。

「でも、この話のオチって、憶えて無いんですよねぇ…」
 どうやら、転移前の世界で見たDVDなる物でみた物語をユズカは語った様だ。
「え、ここまで覚えているのに、最後がどうなるかは忘れてしまったのですか?」
 その言葉に疑問を呈するマチルダ。
「えっと…柚希と一緒に見てたんだけど…ここからは怖くて、耳を塞いで柚希に抱きついて…それから先は…忘れました…」
 めっちゃラブラブしてたようで、ドワーフメイド衆は分からないが、普段しっかりラブラブしている嫁ーずも、思わず砂糖を口から吐き出しそうになった。

 一瞬白けた感じになった場であったが、パンパンと小さく音を立て手を鳴らしたドワーフの1人が、
「はいはい、ごっつぉさま。んでは、次はわっちがしましょうかねぇ」
 そう言うと、長い髪を振り乱し、その髪の合間から上目気味にみんなを見回す。
 見るからに恐怖を覚えるその姿に、一同がゴクリ…と唾を飲み込み、続いて始まるであろう怪談に小さく身構えた。
「そんなだばぁ…、そっれわぁちっちぇ飯処ばぁ切り盛りしてだぁ、とある夫婦の話じゃったぁ…」
 普段とは違い、低く押し殺した声で語り始めたドワーフメイドに、全員の緊張感は一気に高まった。
 
 どうやら、ドキドキの夜は、まだまだ続く様だ…。
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