1,421 / 1,466
ここがお前の終着点だぁぁぁぁっ!
しおりを挟む
夜の闇に支配された森の中を、男はひた走る。
「はぁはぁはぁはぁはぁ…」
男は、ただただ前へ前へとひたすら走り続けていた。
枯れ葉積もる樹々の合間を盛大に音を立て、普段から日の当たらない苔むしたい岩場で足を滑らせ、時折張り出した根で足を取られようと、ただひたすらに前へ前へと突き進んでいた。
きっとその走りは、足場の良い街道であれば、それは素晴らしい速度が出ているだろうが、生憎とここは昼でも陽の光届かぬ深い森の中。
走る本人が思う程に速度は出ていない。
むしろ、真っすぐに進んでいないので、大した距離すら走って無い。
周囲の気配などまるで警戒もせず、いや警戒する余裕など無いのかもしれない。
いや、それすらも間違いか。
何故なら、本当にきわめて短い時間、男は背後へと視線を向けたのだ。
それはまるで、背後から迫り来るであろう、何かから逃げている様に見える。
こんな一寸先が闇に包まれている様な森の中を、一体、なぜ何かから逃げる様な事になったのだろうか。
男の顔には明らかに恐怖が浮かんでいる。
「はぁはぁはぁはぁはぁ…」
まるで背後の闇の中から何かが迫って来る幻でも見ているのだろうか。
やがて、背丈ほども高さのある草むらへと駆けんだ男の姿は見えなくなった。
暫しの間、ガサガサと男が草を掻き分ける音がしていた。
が、やがて…男は気付いてしまった。
『ごくり…』
男の背後から、もの凄い勢いで草を掻き分ける音が近づいて来ている事に。
「あ、ああぁぁぁぁぁぁぁ…」
半狂乱になった男が、行く手を遮る草を掻き分け、もっと前へと踏み出した瞬間、
『……どきどき…』
目の前の草叢をかき分けた瞬間、そこには血で染まった無数の手のひらが…。
「ここがお前の終着点だぁぁぁぁっ!」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
『きゃぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』
「どう、どう? ぞくっとした?」
とっても嬉しそうな顔でユズカが皆を見回す。
ここは、何故か突然開催が決まったパジャマ・パーティの会場。
参加者は、トールの嫁ーず一同で、ここはミレーラの部屋。
何でミレーラの部屋かというと、単に余計な物が少なく広々としているから。
そして本日のゲストは、若い身空で幼馴染とこの世界に転移してきたユズカと、、この邸で働くドワーフメイドの4人衆だ。
全員がパジャマ…寝間着である。
そして、何故か始まる百物語。
言い出しっぺはユズカ。
なぜそうなったのか? それはドワーフメイド衆の寝間着が何故か長袖のジャージっぽい服だったったから。
小中学校の修学旅行を思い出したユズカが、確かあの時は女子部屋で、同室の全員で布団をかぶって、携帯の明かりだけしかない暗い部屋で怖い話をしたなぁ…などと前世での懐かしい思い出を語ったところから始まったのだ。
もちろん、怖い話が百もあるはずも無く、100本もの蝋燭も用意していない。
ただ単に、ちょっと怖い話をしてみたりして、全員でドキドキしてみよう…っという、なんだかふわっとした内容のイベントなのだ。
「でも、この話のオチって、憶えて無いんですよねぇ…」
どうやら、転移前の世界で見たDVDなる物でみた物語をユズカは語った様だ。
「え、ここまで覚えているのに、最後がどうなるかは忘れてしまったのですか?」
その言葉に疑問を呈するマチルダ。
「えっと…柚希と一緒に見てたんだけど…ここからは怖くて、耳を塞いで柚希に抱きついて…それから先は…忘れました…」
めっちゃラブラブしてたようで、ドワーフメイド衆は分からないが、普段しっかりラブラブしている嫁ーずも、思わず砂糖を口から吐き出しそうになった。
一瞬白けた感じになった場であったが、パンパンと小さく音を立て手を鳴らしたドワーフの1人が、
「はいはい、ごっつぉさま。んでは、次はわっちがしましょうかねぇ」
そう言うと、長い髪を振り乱し、その髪の合間から上目気味にみんなを見回す。
見るからに恐怖を覚えるその姿に、一同がゴクリ…と唾を飲み込み、続いて始まるであろう怪談に小さく身構えた。
「そんなだばぁ…、そっれわぁちっちぇ飯処ばぁ切り盛りしてだぁ、とある夫婦の話じゃったぁ…」
普段とは違い、低く押し殺した声で語り始めたドワーフメイドに、全員の緊張感は一気に高まった。
どうやら、ドキドキの夜は、まだまだ続く様だ…。
「はぁはぁはぁはぁはぁ…」
男は、ただただ前へ前へとひたすら走り続けていた。
枯れ葉積もる樹々の合間を盛大に音を立て、普段から日の当たらない苔むしたい岩場で足を滑らせ、時折張り出した根で足を取られようと、ただひたすらに前へ前へと突き進んでいた。
きっとその走りは、足場の良い街道であれば、それは素晴らしい速度が出ているだろうが、生憎とここは昼でも陽の光届かぬ深い森の中。
走る本人が思う程に速度は出ていない。
むしろ、真っすぐに進んでいないので、大した距離すら走って無い。
周囲の気配などまるで警戒もせず、いや警戒する余裕など無いのかもしれない。
いや、それすらも間違いか。
何故なら、本当にきわめて短い時間、男は背後へと視線を向けたのだ。
それはまるで、背後から迫り来るであろう、何かから逃げている様に見える。
こんな一寸先が闇に包まれている様な森の中を、一体、なぜ何かから逃げる様な事になったのだろうか。
男の顔には明らかに恐怖が浮かんでいる。
「はぁはぁはぁはぁはぁ…」
まるで背後の闇の中から何かが迫って来る幻でも見ているのだろうか。
やがて、背丈ほども高さのある草むらへと駆けんだ男の姿は見えなくなった。
暫しの間、ガサガサと男が草を掻き分ける音がしていた。
が、やがて…男は気付いてしまった。
『ごくり…』
男の背後から、もの凄い勢いで草を掻き分ける音が近づいて来ている事に。
「あ、ああぁぁぁぁぁぁぁ…」
半狂乱になった男が、行く手を遮る草を掻き分け、もっと前へと踏み出した瞬間、
『……どきどき…』
目の前の草叢をかき分けた瞬間、そこには血で染まった無数の手のひらが…。
「ここがお前の終着点だぁぁぁぁっ!」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
『きゃぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』
「どう、どう? ぞくっとした?」
とっても嬉しそうな顔でユズカが皆を見回す。
ここは、何故か突然開催が決まったパジャマ・パーティの会場。
参加者は、トールの嫁ーず一同で、ここはミレーラの部屋。
何でミレーラの部屋かというと、単に余計な物が少なく広々としているから。
そして本日のゲストは、若い身空で幼馴染とこの世界に転移してきたユズカと、、この邸で働くドワーフメイドの4人衆だ。
全員がパジャマ…寝間着である。
そして、何故か始まる百物語。
言い出しっぺはユズカ。
なぜそうなったのか? それはドワーフメイド衆の寝間着が何故か長袖のジャージっぽい服だったったから。
小中学校の修学旅行を思い出したユズカが、確かあの時は女子部屋で、同室の全員で布団をかぶって、携帯の明かりだけしかない暗い部屋で怖い話をしたなぁ…などと前世での懐かしい思い出を語ったところから始まったのだ。
もちろん、怖い話が百もあるはずも無く、100本もの蝋燭も用意していない。
ただ単に、ちょっと怖い話をしてみたりして、全員でドキドキしてみよう…っという、なんだかふわっとした内容のイベントなのだ。
「でも、この話のオチって、憶えて無いんですよねぇ…」
どうやら、転移前の世界で見たDVDなる物でみた物語をユズカは語った様だ。
「え、ここまで覚えているのに、最後がどうなるかは忘れてしまったのですか?」
その言葉に疑問を呈するマチルダ。
「えっと…柚希と一緒に見てたんだけど…ここからは怖くて、耳を塞いで柚希に抱きついて…それから先は…忘れました…」
めっちゃラブラブしてたようで、ドワーフメイド衆は分からないが、普段しっかりラブラブしている嫁ーずも、思わず砂糖を口から吐き出しそうになった。
一瞬白けた感じになった場であったが、パンパンと小さく音を立て手を鳴らしたドワーフの1人が、
「はいはい、ごっつぉさま。んでは、次はわっちがしましょうかねぇ」
そう言うと、長い髪を振り乱し、その髪の合間から上目気味にみんなを見回す。
見るからに恐怖を覚えるその姿に、一同がゴクリ…と唾を飲み込み、続いて始まるであろう怪談に小さく身構えた。
「そんなだばぁ…、そっれわぁちっちぇ飯処ばぁ切り盛りしてだぁ、とある夫婦の話じゃったぁ…」
普段とは違い、低く押し殺した声で語り始めたドワーフメイドに、全員の緊張感は一気に高まった。
どうやら、ドキドキの夜は、まだまだ続く様だ…。
7
お気に入りに追加
1,833
あなたにおすすめの小説
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。

死んだのに異世界に転生しました!
drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。
この物語は異世界テンプレ要素が多いです。
主人公最強&チートですね
主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください!
初めて書くので
読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。
それでもいいという方はどうぞ!
(本編は完結しました)

『転生したら「村」だった件 〜最強の移動要塞で世界を救います〜』
ソコニ
ファンタジー
29歳の過労死サラリーマン・御影要が目覚めたのは、なんと「村」として転生した姿だった。
誰もいない村の守護者となった要は、偶然迷い込んできた少年リオを最初の住民として迎え入れ、徐々に「村」としての力を開花させていく。【村レベル:1】【住民数:0】【スキル:基本生活機能】から始まった異世界生活。

こちらの異世界で頑張ります
kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で
魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。
様々の事が起こり解決していく

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが
倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、
どちらが良い?……ですか。」
「異世界転生で。」
即答。
転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。
なろうにも数話遅れてますが投稿しております。
誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。
自分でも見直しますが、ご協力お願いします。
感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~
春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。
冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。
しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。
パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。
そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。
成長促進と願望チートで、異世界転生スローライフ?
後藤蓮
ファンタジー
20年生きてきて不幸なことしかなかった青年は、無職となったその日に、女子高生二人を助けた代償として、トラックに轢かれて死んでしまう。
目が覚めたと思ったら、そこは知らない場所。そこでいきなり神様とか名乗る爺さんと出会い、流れで俺は異世界転生することになった。
日本で20年生きた人生は運が悪い人生だった。来世は運が良くて幸せな人生になるといいな..........。
そんな思いを胸に、神様からもらった成長促進と願望というチートスキルを持って青年は異世界転生する。
さて、新しい人生はどんな人生になるのかな?
※ 第11回ファンタジー小説大賞参加してます 。投票よろしくお願いします!
◇◇◇◇◇◇◇◇
お気に入り、感想貰えると作者がとても喜びますので、是非お願いします。
執筆スピードは、ゆるーくまったりとやっていきます。
◇◇◇◇◇◇◇◇
9/3 0時 HOTランキング一位頂きました!ありがとうございます!
9/4 7時 24hランキング人気・ファンタジー部門、一位頂きました!ありがとうございます!

くじ引きで決められた転生者 ~スローライフを楽しんでって言ったのに邪神を討伐してほしいってどゆこと!?~
はなとすず
ファンタジー
僕の名前は高橋 悠真(たかはし ゆうま)
神々がくじ引きで決めた転生者。
「あなたは通り魔に襲われた7歳の女の子を庇い、亡くなりました。我々はその魂の清らかさに惹かれました。あなたはこの先どのような選択をし、どのように生きるのか知りたくなってしまったのです。ですがあなたは地球では消えてしまった存在。ですので異世界へ転生してください。我々はあなたに試練など与える気はありません。どうぞ、スローライフを楽しんで下さい」
って言ったのに!なんで邪神を討伐しないといけなくなったんだろう…
まぁ、早く邪神を討伐して残りの人生はスローライフを楽しめばいいか
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる