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無駄に暑苦しい
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実はイネスがこんなことを言い出したのには、色々と少々焦っていたという心情も少なからずあった。
少女の頃から付き従っていた元王女のメリルは、誰の目から見ても美しく育っていたし、夫であるトールの幼馴染のミルシェはとても快活でスタイルも良い。
ミレーラは強く触れると折れてしまいそうな程に華奢で可憐。
マチルダは頭脳明晰で胸もかなり大きく、夫よりも年上なだけあり頼れる存在。
こうしてトールの妻達を並べると、イネス自身の欠点が自然に浮き彫りとなる。
日々剣を振り続けていた手は豆だらけだし、女性らしい柔らかな身体とは程遠く、筋肉質で固く引き締まっている。
女性の象徴ともいえる胸の大きさも、なぜだか最近心なしか小さくなってきている気がする。
もっと言えば、イネス以外の4人の妻たちは、出産もしくは妊娠する事で、その存在感は明らかにイネスよりも上だ。
無論、第5夫人のイネスの立場が一番下であるのは言葉にせずとも当然である。
イネス以外の妻たちは、決してそんな事ないと言ってはくれるが、それでも現状を鑑みれば、イネス自身が立場が一番下であると思ってしまうのも仕方のない事なのかもしれない
「せめて…この命と体の全てを懸けてトールさまの盾となります!」
そう力強く宣言するイネスに対し、メリルは静かに、
「駄目です!」
もっと力強く言い返した。
「へっ?」
自分達の夫であるトールヴァルド・デ・アルテアンの盾になる事こそが、自分に与えられた使命だと思っていた。
第一夫人であるメリル元王女ならば、元王女付きで会った騎士であり、最もトールの妻達の中で立場が下の自分に、見事夫の盾となり散れと言うだろうと思っていた。
だからこそ、メリルの口から出た言葉に間抜けな声でしか応えられなかった。
「貴女の命もトールさまと同じく尊い物です。きっとトールさまも、貴女を盾にしてまで生き延びたいなどと葉思わないでしょう。そんな事ぐらい、貴女ならば分かるはずです!」
メリルの言葉に、目が覚めた…いや、まるで頭をハンマーで殴られたかのような途轍もない衝撃をイネスは受けた気がした。
確かにあのトールならば、自分の妻を盾として生き延びようなど思うはずが無い。
むしろ、自分の命を投げ出してでも、イネスを生還させようとするだろう。
「あ、あ…ああ…」
何故こんな簡単な事に気付かなかったのだろうか…あまりの自分の考えの無さに、イネスの口からは言葉も出ない。
「そうですよ、イネスさん! トールさまもそうですが、貴女が生きていなければ、トールさまはどう考えるでしょうか? 考えてみてください!」
ミルシェの言う事も、尤もな事だ。
もしも私を犠牲にして生き残ったら、きっと心優しい旦那様であるトールさまは、自責の念で心を病んで、しまいにはその心が壊れてしまうかもしれない。
「し、死んでは駄目…です! 貴女は、まだ…トールさまの子を…成してません…」
ミルシェの言葉に、心の奥底が揺さぶられる。
騎士一筋、女としての幸せは捨てたと思い剣を振るって生きて来た自分に、女の悦びを思い出させてくれた愛する旦那様。
彼の子供を産みたいと、心から願っていた事をまだ成し遂げていない。
「イネスさん、いいですか? 貴女をトールさまと共に死地へと送るのは、貴女に死んで来いと言っているわけでは無いのですよ? トールさまと共に、私達の元へと生きて帰って来なさいと言っているのです。それをはき違えてはいけません!」
マチルダが強い口調でそう言った。
私は馬鹿だ…とイネスは項垂れた。最終決戦の地へと送り出そうとしてくれているる、みんなの気持ちを理解していなかった…と。
必ずトールをみんなの元へと生きて返すために死地へと赴くのが自分の使命だと、きっとみんなもそう考えているのだと、勝手に思い込んでしまっていた。
「そ、そう…だ…。私は…何を勘違い…して…いたんだろう…」
イネスはぽつりと呟いた。
「トールさまと共に…ここに、みんなの元へと戻って来る…。覚悟が間違っていた…。必ず愛する旦那様と共に、生きて再びこの地を踏むために、この世界を破壊しようとする最強の敵を打ち滅ぼして、ここに戻ってくるのだという、覚悟が出来て無かったという事なのか! そして子作りするんだ!」
間違ってはいないけど、イネスの言葉に『何かちょっと違う気がする』と嫁ーずは思ったが、この雰囲気で下手な事は言わない様に口を閉じていた。
「みんな、気付かせてくれてありがとう! 私は、眩しい空も輝く海も、絶対に悪魔の手には渡さない! みんなの願いを身体に受けて、愛する旦那様と共に、悪を倒しに決戦の地へと行こうでは無いか!」
どっかの勇者ライデ〇ーンの主題歌みたいな事を言いながら天井を見上げて、
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
雄たけびをあげる、勇者…じゃなかった、イネス。
無駄に暑苦しいその姿に、嫁ーず一同、『別にトールさまの盾になって散っても良いかも?』などと、きっと思ってはいないはずだ。
いくら巨人軍の星を目指した熱血主人公の様に、イネスの両目にメラメラと燃える炎が暑苦しい程に浮かぼうとも、きっとそんな酷い事は誰も思って無いはず…。
無いよね?
少女の頃から付き従っていた元王女のメリルは、誰の目から見ても美しく育っていたし、夫であるトールの幼馴染のミルシェはとても快活でスタイルも良い。
ミレーラは強く触れると折れてしまいそうな程に華奢で可憐。
マチルダは頭脳明晰で胸もかなり大きく、夫よりも年上なだけあり頼れる存在。
こうしてトールの妻達を並べると、イネス自身の欠点が自然に浮き彫りとなる。
日々剣を振り続けていた手は豆だらけだし、女性らしい柔らかな身体とは程遠く、筋肉質で固く引き締まっている。
女性の象徴ともいえる胸の大きさも、なぜだか最近心なしか小さくなってきている気がする。
もっと言えば、イネス以外の4人の妻たちは、出産もしくは妊娠する事で、その存在感は明らかにイネスよりも上だ。
無論、第5夫人のイネスの立場が一番下であるのは言葉にせずとも当然である。
イネス以外の妻たちは、決してそんな事ないと言ってはくれるが、それでも現状を鑑みれば、イネス自身が立場が一番下であると思ってしまうのも仕方のない事なのかもしれない
「せめて…この命と体の全てを懸けてトールさまの盾となります!」
そう力強く宣言するイネスに対し、メリルは静かに、
「駄目です!」
もっと力強く言い返した。
「へっ?」
自分達の夫であるトールヴァルド・デ・アルテアンの盾になる事こそが、自分に与えられた使命だと思っていた。
第一夫人であるメリル元王女ならば、元王女付きで会った騎士であり、最もトールの妻達の中で立場が下の自分に、見事夫の盾となり散れと言うだろうと思っていた。
だからこそ、メリルの口から出た言葉に間抜けな声でしか応えられなかった。
「貴女の命もトールさまと同じく尊い物です。きっとトールさまも、貴女を盾にしてまで生き延びたいなどと葉思わないでしょう。そんな事ぐらい、貴女ならば分かるはずです!」
メリルの言葉に、目が覚めた…いや、まるで頭をハンマーで殴られたかのような途轍もない衝撃をイネスは受けた気がした。
確かにあのトールならば、自分の妻を盾として生き延びようなど思うはずが無い。
むしろ、自分の命を投げ出してでも、イネスを生還させようとするだろう。
「あ、あ…ああ…」
何故こんな簡単な事に気付かなかったのだろうか…あまりの自分の考えの無さに、イネスの口からは言葉も出ない。
「そうですよ、イネスさん! トールさまもそうですが、貴女が生きていなければ、トールさまはどう考えるでしょうか? 考えてみてください!」
ミルシェの言う事も、尤もな事だ。
もしも私を犠牲にして生き残ったら、きっと心優しい旦那様であるトールさまは、自責の念で心を病んで、しまいにはその心が壊れてしまうかもしれない。
「し、死んでは駄目…です! 貴女は、まだ…トールさまの子を…成してません…」
ミルシェの言葉に、心の奥底が揺さぶられる。
騎士一筋、女としての幸せは捨てたと思い剣を振るって生きて来た自分に、女の悦びを思い出させてくれた愛する旦那様。
彼の子供を産みたいと、心から願っていた事をまだ成し遂げていない。
「イネスさん、いいですか? 貴女をトールさまと共に死地へと送るのは、貴女に死んで来いと言っているわけでは無いのですよ? トールさまと共に、私達の元へと生きて帰って来なさいと言っているのです。それをはき違えてはいけません!」
マチルダが強い口調でそう言った。
私は馬鹿だ…とイネスは項垂れた。最終決戦の地へと送り出そうとしてくれているる、みんなの気持ちを理解していなかった…と。
必ずトールをみんなの元へと生きて返すために死地へと赴くのが自分の使命だと、きっとみんなもそう考えているのだと、勝手に思い込んでしまっていた。
「そ、そう…だ…。私は…何を勘違い…して…いたんだろう…」
イネスはぽつりと呟いた。
「トールさまと共に…ここに、みんなの元へと戻って来る…。覚悟が間違っていた…。必ず愛する旦那様と共に、生きて再びこの地を踏むために、この世界を破壊しようとする最強の敵を打ち滅ぼして、ここに戻ってくるのだという、覚悟が出来て無かったという事なのか! そして子作りするんだ!」
間違ってはいないけど、イネスの言葉に『何かちょっと違う気がする』と嫁ーずは思ったが、この雰囲気で下手な事は言わない様に口を閉じていた。
「みんな、気付かせてくれてありがとう! 私は、眩しい空も輝く海も、絶対に悪魔の手には渡さない! みんなの願いを身体に受けて、愛する旦那様と共に、悪を倒しに決戦の地へと行こうでは無いか!」
どっかの勇者ライデ〇ーンの主題歌みたいな事を言いながら天井を見上げて、
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
雄たけびをあげる、勇者…じゃなかった、イネス。
無駄に暑苦しいその姿に、嫁ーず一同、『別にトールさまの盾になって散っても良いかも?』などと、きっと思ってはいないはずだ。
いくら巨人軍の星を目指した熱血主人公の様に、イネスの両目にメラメラと燃える炎が暑苦しい程に浮かぼうとも、きっとそんな酷い事は誰も思って無いはず…。
無いよね?
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