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少し汗ばむ陽気の午後。
日差しを受けて咲誇る花々が取り囲む庭園の一画で、ウルリーカは娘2人と優雅にお茶を嗜んでいた。
ウルリーカの背後には、壮年の執事と成人して間もない程に見える使用人の少女が静かに控えていた。
そんな静かで穏やかな場に、執事見習いのまだ若い少年がそっと近寄り、壮年の執事へと何事かをそっと耳うちした。
そして、それを伝え聞いた壮年の執事は、
「奥様。お寛ぎの所、誠に申し訳ございませんが、例のお荷物が届いた様です」
落ち着いた声で、そうウルリーカへと声を掛けた。
「あら、注文の品が届いたのかしら?」
そう言いながら、手にしていたティーカップゆっくりとソーサーへと音も無く置くと、ウルリーカは表情も変えずに執事…セルバスへと視線を向けた。
「はい、今しがたアルテアン商家の運輸部の者が。こちらにお持ちしてもよろしいでしょうか?」
「ええ、運ばせて頂戴な」
そう伝えると、カップに残った香茶でそっと唇を湿らせた。
「お母様、例のお荷物とは?」
長女であるコルネリアがそう訊ねると、
「ちょっとトールちゃん経由で、ドワーフの方に頼んでいた物が完成したらしいわ」
「お兄ちゃん!? なになに? なにをたのんだの!?」
最近は、少し貴族令嬢らしく振る舞える様になってきた次女のユリアーネだが、なかなか顔を合わす事が出来ない兄のトールの名を聞けば、途端に年齢相応の少女に戻ってしまう。
「とっても良いものですよ? ああ、そうそう。ナディアさん達も居るかしら?」
誰も居ない方へとウルリーカが声を掛けると、空間が不規則に捩れる様に曲がり、そこから妖精族筆頭であるナディアと、額に小さな2本の角を生やした3人の天鬼族の3人娘が姿を現した。
「はい、ここに」「「「奥様、ここに」」」
4人が控えめな声で小さく頭を下げながらそう言うと、
「貴方達の荷物も一緒に届いているはずですからね」
何が…とは言わないが、ウルリーカはそう4人に向かって微笑んだ。
妖精達は少しだけ驚いたような表情をしたが、それはほんの一瞬だけの事。
表情を引き締め、何事も無かったかのような澄まし顔へと戻した。
「もちろん、コルネリアとユリアーネにもありますからね」
「やったーー!」「………」
それを聞いたユリアーネは全身で喜びを表し、コルネリアは小さく頷くのだった。
「それで、何が届いたんですか?」
美しい庭園に無骨な印象の男達が運び込んで来た荷物を前に、コルネリアがウルリーカへと問いかけた。
ユリアーネは、ただただそれらを目を輝かせて見ているだけ。
運び込まれてきた荷物が何なのか、全く分からない代物ばかりだ。
どれも何重にも布が巻かれていてはいるが、どれも細長いであろう事は分かるのだが、長さがまちまちである。
「ええと…、これがコルネリアので、これがユリアーネのだわ。2人共包みを解いてみなさい」
そう言われて、いの一番に自分宛だという荷物に飛びついたのはユリアーネ。
「なにかな、なにかな~♪」
機嫌よく妙なリズムの歌を口ずさみながら、巻いてある布を解いたユリアーネは、
「わぁ~~……って、なにこれ?」
出て来た物を見て、盛大に首を傾げた。
同じようにコルネリアも包みを解くと、
「なるほど…。これは新たな武器ですね?」
そう言って、出て来た物を太陽に向かって持ち上げてた。
「そうよ、2人専用の新しい武器よ。2人には神具があるけれど、普段持ち歩く武器が無いでしょう? いくら護衛が付いているとはいえ、無手では何があるか分からないもの。だから、コルネリアにはKODATIというらしい片刃の剣で、ユリアーネにはSAIという武器ね。どちらもトールちゃんが考案したそうよ。使い方は一緒に入ってる神に合勝てるそうだから、きちんと読んで使える様に練習しなさいね」
「分かりました、お母さま」「は~~い!」
どうやらこの荷物は、トールが2人のために前世の知識を総動員して造り上げた武器らしい。
「さあ、ナディアさん達も開けてみて」
そう言われて妖精達が開けた荷物は、どれも同じ物。
長さは片腕程度程で、片側に大きな宝石の様な者が付いている、所謂魔法使いのロッドである。
当然であるが、宝石に見える物は、エネルギーを溜めておく事が出来る代物で、トールがエネルギーを充填済みだ。
4人はあまり表情に出さないが、どこか嬉しそうである。
「そして私には、やっぱりこれよね」
そう言ってウルリーカ宛の荷物は、この中で最も長い代物で、娘達や妖精達の物とは明らかに雰囲気が違う装飾が施された物だった。
長い柄の先に幅広で湾曲した長い刃を取り付けられたそれは、まさしく青龍偃月刀と呼ぶにふさわしい代物。
しかも、葉の付け根にはドラゴンの装飾がされており、まるで開いた顎から刃が飛び出している様である。
「うん、長さも重さも注文通りね」
嬉しそうに笑顔でその長大な槍をブンブンと振り回している姿を見た娘達や妖精族、使用人や荷物を運び込んだ男達は、皆同じ事を心に誓った。
絶対にこの人を怒らせてはいけない…っと。
これらの武器は、トールが来るべく決戦に向けて用意していた物らしいが、まあ実際に使う機会などそうそう無いだろう。
管理局長相手に、そんなドワーフが作り上げた武器が効くとも思えないのだが、それでも普段の護身用には丁度いいかもしれない。
ウルリーカの武器を除いて…だが。
ちなみに、荷解きされてない荷物がもう一つあるのだが、それはヴァルナル宛の物で、中身は当然だが巨大な両手剣。
だが、全員が届いた荷物を弄ったり振り回すのに夢中になりすぎて、当のヴァルナルが帰宅した後も、その荷物の事を誰も彼に伝えなかったらしい。
翌朝、その存在をコルネリアが思い出すまで、美しい庭園の芝生の上に放り出されていたとか何とか……。
日差しを受けて咲誇る花々が取り囲む庭園の一画で、ウルリーカは娘2人と優雅にお茶を嗜んでいた。
ウルリーカの背後には、壮年の執事と成人して間もない程に見える使用人の少女が静かに控えていた。
そんな静かで穏やかな場に、執事見習いのまだ若い少年がそっと近寄り、壮年の執事へと何事かをそっと耳うちした。
そして、それを伝え聞いた壮年の執事は、
「奥様。お寛ぎの所、誠に申し訳ございませんが、例のお荷物が届いた様です」
落ち着いた声で、そうウルリーカへと声を掛けた。
「あら、注文の品が届いたのかしら?」
そう言いながら、手にしていたティーカップゆっくりとソーサーへと音も無く置くと、ウルリーカは表情も変えずに執事…セルバスへと視線を向けた。
「はい、今しがたアルテアン商家の運輸部の者が。こちらにお持ちしてもよろしいでしょうか?」
「ええ、運ばせて頂戴な」
そう伝えると、カップに残った香茶でそっと唇を湿らせた。
「お母様、例のお荷物とは?」
長女であるコルネリアがそう訊ねると、
「ちょっとトールちゃん経由で、ドワーフの方に頼んでいた物が完成したらしいわ」
「お兄ちゃん!? なになに? なにをたのんだの!?」
最近は、少し貴族令嬢らしく振る舞える様になってきた次女のユリアーネだが、なかなか顔を合わす事が出来ない兄のトールの名を聞けば、途端に年齢相応の少女に戻ってしまう。
「とっても良いものですよ? ああ、そうそう。ナディアさん達も居るかしら?」
誰も居ない方へとウルリーカが声を掛けると、空間が不規則に捩れる様に曲がり、そこから妖精族筆頭であるナディアと、額に小さな2本の角を生やした3人の天鬼族の3人娘が姿を現した。
「はい、ここに」「「「奥様、ここに」」」
4人が控えめな声で小さく頭を下げながらそう言うと、
「貴方達の荷物も一緒に届いているはずですからね」
何が…とは言わないが、ウルリーカはそう4人に向かって微笑んだ。
妖精達は少しだけ驚いたような表情をしたが、それはほんの一瞬だけの事。
表情を引き締め、何事も無かったかのような澄まし顔へと戻した。
「もちろん、コルネリアとユリアーネにもありますからね」
「やったーー!」「………」
それを聞いたユリアーネは全身で喜びを表し、コルネリアは小さく頷くのだった。
「それで、何が届いたんですか?」
美しい庭園に無骨な印象の男達が運び込んで来た荷物を前に、コルネリアがウルリーカへと問いかけた。
ユリアーネは、ただただそれらを目を輝かせて見ているだけ。
運び込まれてきた荷物が何なのか、全く分からない代物ばかりだ。
どれも何重にも布が巻かれていてはいるが、どれも細長いであろう事は分かるのだが、長さがまちまちである。
「ええと…、これがコルネリアので、これがユリアーネのだわ。2人共包みを解いてみなさい」
そう言われて、いの一番に自分宛だという荷物に飛びついたのはユリアーネ。
「なにかな、なにかな~♪」
機嫌よく妙なリズムの歌を口ずさみながら、巻いてある布を解いたユリアーネは、
「わぁ~~……って、なにこれ?」
出て来た物を見て、盛大に首を傾げた。
同じようにコルネリアも包みを解くと、
「なるほど…。これは新たな武器ですね?」
そう言って、出て来た物を太陽に向かって持ち上げてた。
「そうよ、2人専用の新しい武器よ。2人には神具があるけれど、普段持ち歩く武器が無いでしょう? いくら護衛が付いているとはいえ、無手では何があるか分からないもの。だから、コルネリアにはKODATIというらしい片刃の剣で、ユリアーネにはSAIという武器ね。どちらもトールちゃんが考案したそうよ。使い方は一緒に入ってる神に合勝てるそうだから、きちんと読んで使える様に練習しなさいね」
「分かりました、お母さま」「は~~い!」
どうやらこの荷物は、トールが2人のために前世の知識を総動員して造り上げた武器らしい。
「さあ、ナディアさん達も開けてみて」
そう言われて妖精達が開けた荷物は、どれも同じ物。
長さは片腕程度程で、片側に大きな宝石の様な者が付いている、所謂魔法使いのロッドである。
当然であるが、宝石に見える物は、エネルギーを溜めておく事が出来る代物で、トールがエネルギーを充填済みだ。
4人はあまり表情に出さないが、どこか嬉しそうである。
「そして私には、やっぱりこれよね」
そう言ってウルリーカ宛の荷物は、この中で最も長い代物で、娘達や妖精達の物とは明らかに雰囲気が違う装飾が施された物だった。
長い柄の先に幅広で湾曲した長い刃を取り付けられたそれは、まさしく青龍偃月刀と呼ぶにふさわしい代物。
しかも、葉の付け根にはドラゴンの装飾がされており、まるで開いた顎から刃が飛び出している様である。
「うん、長さも重さも注文通りね」
嬉しそうに笑顔でその長大な槍をブンブンと振り回している姿を見た娘達や妖精族、使用人や荷物を運び込んだ男達は、皆同じ事を心に誓った。
絶対にこの人を怒らせてはいけない…っと。
これらの武器は、トールが来るべく決戦に向けて用意していた物らしいが、まあ実際に使う機会などそうそう無いだろう。
管理局長相手に、そんなドワーフが作り上げた武器が効くとも思えないのだが、それでも普段の護身用には丁度いいかもしれない。
ウルリーカの武器を除いて…だが。
ちなみに、荷解きされてない荷物がもう一つあるのだが、それはヴァルナル宛の物で、中身は当然だが巨大な両手剣。
だが、全員が届いた荷物を弄ったり振り回すのに夢中になりすぎて、当のヴァルナルが帰宅した後も、その荷物の事を誰も彼に伝えなかったらしい。
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