システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児

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きちんと挨拶

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 あの怪しい管理局副局長が、突如我が家にやって来た翌日のお昼過ぎ。
 人数も人数なので、何時もの如く食堂に全員集まってもらった。

「さて、本日は足元もお悪い中、様御足労頂き誠にありがとうございます」

 親しき中にも礼儀あり。
 会合の第一声は、まずはきちんと挨拶だよね。
「あのぉ…大河さん、今日はめっちゃ天気良いんですけれど?」
 やかましいぞ、サラ! 定型句だよ定型句!
「それを言うのでしたら、本日はお日柄も良く…では無いでしょうか?」
「ふっ…リリアさん。この世界に六燿の概念など無いのだよ。したがって、その挨拶では意味が伝わらないのだ」
「ろくよう?」
 メリル筆頭に、初めて聞く言葉に嫁ーずは首を傾げた。
「メリル達には難しい話になるのだが…」 
「とある古い国の占いが元となった者で、その日の吉凶や運勢を表すしたものですよ。先勝、友引、先負、仏滅、大安、赤口って6つの歴注があります。だから六の燿で『ろくよう』って言います。『りくよう』とも呼ばれてたりもしますね」
 あ…。
「こ、こらユズキ! 俺が今説明しようとしてた所なんだぞ!」
「伯爵様~、柚希ってこういうのめっちゃ得意なんですよ!」
 いや、知らんがな! 駄嫁のユズカは黙っとけ!
 俺の見せ場なんだぞ!
「六燿は毎月の初日は決まっていて、6カ月でリセットされてるとか知ってます?」
 え、何それ? 初耳なんだけど?
「諸葛亮が考案したって説があるのは?」
 …それって、孔明さんの事? いや、全然知らんかった!
「ああ、伯爵様が知っているのは、カレンダーに書かれている歴注だけですか?」
 …はい、そうです。
「さっすが、マイ・ダーリン!」
「ふっ…歴史は得意だからね。特に中国史は!」
 じぐじょー! ユズキの頭が良いのは分かってたが、まさかこれ程とは!
 地団駄踏みまくってやる!
「で、その『ろくよう』というのが、今回集まったこの会合の議題ですか?」
 俺が悔しがっていると、マチルダがそう問いかけて来た。
 あ、そうだ、こんな話をしてる場合じゃない!
「あ、いや…全然本日集まってもらった事とは関係ない…すまん」
 脱線しまくりだよな。
 まあ、線路が無いから脱線の意味も通じるか怪しいんで言わないけど。(※注)

「実は、とある男が昨日この邸にやって来てな。そいつとの話の中で幾つか疑問に感じた事があって、今日はダンジョンマスターにお越しいただいたのだ…けど」
 えっと、人数が足りませんが?
「モフレンダともふりんとカジマギーは?」
 俺の目の前にいるのは、モフリーナとボーディだけ。
「ああ、あ奴らは地下で新兵装の調整中じゃ」
 …………えっと、ボーディさん?
「もふりんとカジマギーは良いとして、何でモフレンダまで?」
「いや、あ奴がこの場に居っても居らんでも、大差無いじゃろう? あ奴に答えられる事は、ほぼ我らだけで答える事ができるぞよ?」
 そうですか…。
「んじゃ、まぁそれは一旦おいとくか。んで本日来てもらったのは、実は昨日やって来た男ってのは、自らを管理局副局長のコクマーと名乗ったんだよ」
 俺がそう言った瞬間、ガタンッ! と大きめな音をたてながら、モフリーナとボーディがその場で立ち上がった。
「んなっ! あ奴がここまで来たじゃとぉ!?」
「ま、まさか…この場所を嗅ぎつけた…と…?」
 ボーディとモフリーナは、ちょっと違う方向だったが、驚きを隠せない様子だ。
「ああ、来た。んで、俺とサラとリリアさんで対応した」
 そう言うと、2人は何か言いたそうではあったが、一旦椅子に腰を下ろした。
「その話の中で色々と疑問に感じた事があって、今日は来てもらったんだ」
 昨夜じっくり考えたんだが、2人が全部答えられるかは分からないし、知ってても正直に話すがどうかも分からない。
 もちろん、俺が2人の話を理解できない可能性も否めないが…。


※注
 『六燿』の様にこの世界にその概念そのものが存在しない名詞の場合は、自動翻訳であってもただの名詞としてしか伝わりませんが、『脱線』の場合であれば『話などが本筋から外れる』という概念自体は存在しますので、言葉の意味だけであれば、実は自動翻訳で意味だけは正確に相手に通じたりします。線路が無いので電車が脱線すると言う本来の意味では通じませんが。
 異世界言語スキルだと言って何でもかんでも相手に伝わる様な無茶苦茶な世界ではありませんので、トールが危惧する事もわかりますが、実はトール君がその辺りをきちんと理解出来てないだけだったりします。
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