システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児

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誰か来た

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 それはとある金曜日の午後。
 ひよこ師匠との修練を終え、ゆったりとした雰囲気で昼食を頂き、嫁ーずと談笑しながら食後のお茶を頂いた後に、俺が執務室で書類と格闘している時の事であった。

 いつも俺の補助をしてくれていたマチルダが、妊娠初期という事もあって安静の為、自室でゆっくりしてもらうおうと、その役割をリリアさんが買って出てくれ手伝ってくれていた最中の出来事であった。

 執務室の扉から控えめなノックの音が響く。
 入室を許可すると、ドワーフのメイドさん(未だに名前は教えてもらえない)が、そっと扉を開けて俺に声を掛けた。
「お客様が来やったんだども、何んぼする?」
 …多分、客が来たけど、どうするかって聞いてるのかな?
「えっと、誰が来たの?」
「サラはんの知り合いじゃぁて、言っとりやすゎ」
 何か起こってる様に聞こえるけど、別に彼女は怒ってなど無い。
 ドワーフの言葉って難しい。
「んじゃ、応接室に通してくれる? ちょっと待たせるかもしれないから、お茶とお茶菓子も出してあげて」
「わがた。応接室さぁ通しておきま!」
 そう言ってドワーフメイドさんは退室した。
 言ってる意味は何となく通じてはいるんだけど、方言きついなぁ。

 そう言えば、あの方言を俺以外の人にはどう聞こえてるんだろうか。
 確かこの世界では、どんな言語で話したとしても、ちゃんと脳内で聞き手の側が理解出来る言語に自動変換される能力が生まれながらに備わってるという。
 もしかしたら、あのドワーフメイドさんのドギツイ方言も、普通の言葉に変換されているのかもしれない。
 どう聞こえてるのか…って誰かに聞いた所で、その回答すらも俺の頭の中で自動翻訳されてしまったら、確認のしようも無いんだけど…。

「んじゃ、リリアさんはサラを応接室まで呼んで来てくれる?」
 すぐ横で何やら難しい顔をしていたリリアさんにそうお願いすると、
「サラの知り合い…ですか? あのアホにこの世界で知り合い?」
 唸る様にリリアさんがそう言うが、
「いや、一時期は王城でメイドしてたんだし、そこでの知り合いでは?」
 昔、俺が王城行った時、おしっこしてたのを覗いてたぞ、あいつ?
「その可能性も無くは無いですが、それよりも管理局の方が知り合いは多いと思います…。でも、管理局とは色々と切れているはずなんで、そうそうここに辿り着く事が出来るとも思えませんが…」
 無論、俺だって最初に管理局の誰かが訪ねて来たのかもとは考えたさ。
 それでもリリアさんが言った様に、管理局とは完全に通信も途絶しているのは間違い無い事なので、ピンポイントでこの場所にやって来る事なんて出来ないはずだ。
「そうかもしれないけど、あいつだってこの世界での知り合いの1人や2人居てもおかしくないだろう? まあ、その知り合いが俺に何の用かってのは気になるけど」
 まさか、サラに対するクレームか? それならあり得るな…。
「まあ、それもそうですね。ですが念のため私も同行しますので、サラを呼んで来るまで暫しお待ちください」
 俺の事を心配しての言葉なんだろうから、ここは素直に従っておこう。
「ああ、わかった。んじゃ、ここで仕事でもしながら待ってるよ」
 俺の言葉を聞いたリリアさんは満足そうに頷くと、どっかでさぼっているであろうサラを探しに執務室を出て行った。

 1人になった執務室で、カリカリと確認した書類にサインを書いていると、弾む様に何度も何度もしつこくドアをノックする音がした。
 こんな叩き方をするのは我が家ではサラだけ…いや、ユズカもするな…。
 だが、今回は間違い無くサラだろう。
「はいはい、さっさと入って来いサラ」
 入室を促す俺の言葉が終るか終わらないかで、扉が勢いよくバーーン! と開いて顔を出したのは、予想通り寝ぐせ頭のサラであった。
「呼ばれて飛び出てジャジ〇ジャジ〇ーン!」
「お前はくしゃみをすると壺から出て来るどこぞの大魔王かよ!」
 こう突っ込むのは昭和生まれのお約束では無いだろうか?
「失礼な! こんな可愛いサラちゃんに向かって大魔王なんて…よよよ…」
 もの凄い嘘泣きだな、このアホは…。
「裏庭の木陰でさぼって昼寝していたので、たたき起こして連れてきました」
 サラの後ろから入室してきたリリアさんが俺にそう告げた。
「ってか、またさぼって昼寝してたのかよ! お約束だな! ってか寝ぐせ酷いぞ」
「うにゅ?」
 そう言うと、ぺっぺっぺっ! と両手に唾を付けて寝ぐせを撫でつけるサラ。
 きちゃない…。
「直った…かにゃ?」
 何だ、そのあざとい語尾は? 全然可愛くないぞ。
「もうそれでいいや。とにかく客人が待ってるみたいだから、応接室に行くぞ」
 俺がそう言って席を立つと、
「了解にゃん!」
 サラが今度はポーズ付きでそう返事するが…全く可愛くねーな…。
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