システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児

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自然の摂理

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 何だか微妙に湿気っぽくなっちゃたが、俺の話を黙って最後まで聞いていた家族。
 話が終っても、暫く…多分、1分ぐらいだったかな? 誰も口を開かなかった。
 話の中心であるエド君も、ただ黙って…って、もしかして寝てる? 

「それが前世で飼われてた猫ちゃんなんですね?」
 まあ、何時までも無言なわけも無く、ミルシェが俺に声を掛けて来た。
「ああ」
 懐かしさと寂しさで口数が減ってしまった俺は、ぶっきらぼうに答えた。
 そう言や、妹や弟、両親の名前も顔も何故か思い出せなかったなぁ…。
「あの、お話の中で出て来た言葉で理解できない物があったのですけれど」
 ん? 何か分からなかったか、マチルダ?
 そうか、学校とかバイトの事か!? 確かにこの世界では無い言葉だからなぁ。
「『きょせい』とか『ひにん』とか『えりざべすからー』って、何ですか?」
「ぶふぉ!」
 話疲れてお茶で唇を湿らそうとしていた俺にマチルダが放った刺客は強烈だった。
「確かに私もそれは気になってました」
「何かすごく背筋が寒くなる言葉でしたねぇ」
「私が知らないだけかと…」
「はっはっは! 私も気にはなってたのだ!」
 メリルが気になり、ミルシェが寒気を覚えていた言葉はそれか!
 心配しなくてもこの世界には無い言葉だよ、ミレーラ。
 ってか、イネスは絶対に気になって無かっただろ?
「確かにさらっと聞き流してたけど、気になる言葉よねぇ」
「はい。私もあとでお兄さまに訊ねようかと思ってました」
 母さんもコルネちゃんもかよ…。
「ユリア、ぜんぜんわかんなかったぁ!」
 うん、ユリアちゃんはそのままで良いからね。
「トール…俺はそれを聞いた瞬間、何だか股間の辺りがヒュンとなったぞ?」
 父さん…本当は意味知ってんじゃねーか?
『一体どういう意味なんですか!?』
 全員にそう迫られては、答えねばなるまい…。
 だけど、コルネちゃんとユリアちゃんは、ちょっと席を外して欲しいかなぁ…。

 えっと、ちゃんと説明しました、去勢・避妊手術の事を。
 退席を促したけど、コルネちゃんとユリアちゃんは断固として同席した…。
 そして説明を聞いたメリルが叫んだ。
「な、なんという恐ろしい処置なんですか、それは!」
 まあ、確かに怖いよな。
「と、トールよ…それは人にも行っていたのか?」
 股間を抑えて父さんがモジモジじながらそう言ったけど、
「いやぁ…人ではあまり一般的じゃ無かったと思うよ。主に猫とか犬…かな」
 自分の意思でタマタマを取っちゃう人も居たけど、それはまた別だろう。
 『また』の話だけに…。
「自然の摂理に反してますね」
 コルネちゃんが静かに怒っていた…何故に?

「この世界では、非常に妊娠・出産率が低いというのを覚えてらっしゃいますか?」
 今までずっと黙っていたリリアさんが、俺の耳元でそう囁く。
「ああ、確かに…それが?」
 俺はリリアさんと、こっそり話を続けた。
「それは何も人種だけに留まりません。あらゆる生物間で子供が出来にくいのです。原因は不明ですが、子を成す事が難しい世界ですので、人口も緩やかにしか増えていないのです」
「ふむふむ」
「つまり、人の都合で犬猫にその様な外科的処置をする事は、この世界では良く思われないという事に他なりません」
「な、なるほど…」
「特に妊娠を望んでおられる3人の奥様方は、かなりその処置には忌避感を持っているかと思われます」
「…妊娠を望んでいるなら、確かにそうだな」
「なので、望まない妊娠をしたら中絶手術をする…などとは絶対に話さない方がよろしいかと。間違いなく激怒されますので」
「……でも、この世界だって望まない妊娠はあるだろう? あの帝国との戦の時、数え切れないほどの女の人が男共に…」
「それはあるかも知れませんが、その時は自ら命を絶つそうです」
 ハードすぎるだろ、この世界!

「トール様!」
 リリアさんとコソコソ話をしていると、メリルの俺を呼ぶ声が。
「どうした?」
「我が家のノワールさんには、絶対にその様な処置はさせませんから!」
「お兄さま、我が家のクロちゃんにもです!」
 メリルとコルネちゃんが、もの凄く真剣な顔で宣言した。
「お、おう…。するつもりも無いけどな…」
 いや、この世界にそんな手術無いだろうし。
「あの二匹には、そもそも雌雄で交わる形の繁殖能力はありませんよ」
 そんな最中、ダンジョン関係猫の話だからか、口を挟んだ。
『えっ?』
 流石にこれには、この場の全員が首を傾げる。
 雌雄で交わる繁殖能力はない…いや、形のって言ったよな?
 って事は、それ例外の形なら繁殖できるのか?
「あの二匹は、十分なエネルギーを溜めこむと、分裂する事で繁殖します」
『分裂するんかーーーーい!』
 これまた全員の心が一つになり、声を揃えたのであった。

 そうか、クロちゃんもノワール君も、実はスライムみたいな生命体だったのか。
 俺はてっきり猫又だとばかり思ってたよ…。
「スライムでは無く、猫又ですよ?」
 カジマギーよ、俺の心をそんなに的確に読むな!
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