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番外)そして帰宅
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妹に指示された子供の頃に良く通っていた駄菓子屋まで車を走らせた青年は、ハザードを点けて車を停めて辺りを見回す。
すると、そう遠くない電柱の根元に座り込んだ妹を見つけた。
「おい、どうした? 傘忘れたのか?」
青年が黒い傘をさしながら近づくと、妹が傘を忘れたわけでは無いとすぐ気づく。
彼女愛用の薄ピンク色の雨傘は、電柱の根元に開いて置かれていたのだから。
何故か雨降る中で、傘をささずにずぶ濡れになった妹。
「どうした、何があったんだ!?」
慌てて青年が声を掛けると、少女はゆっくりと振り返った。
今にも泣き出しそうな程に…いや、実際にはもう涙を流しているのかもしれない。
ただ一日中降り続けている雨のせいで、その頬を伝う水が涙か雨か分からないが。
「お兄ちゃん…猫…動かなくなった…」
少女が兄を振り返りながら指さした先にあるのは、薄ピンク色の傘と、その下に置かれているミカン箱。
たったその一言で、青年は全てを察した。
「ちょっと待ってろ! すぐに運んでやるからな!」
その言葉は誰に向けた物だろうか。
青年はミカン箱にさしかけられた傘を妹に押し付け、足元が悪いのも構わず車へと段ボール箱を抱えて揺らさぬ様に慎重に歩いた。
そして後部座席にミカン箱を置くと、
「早くお前も乗れ! 帰ってすぐに暖めるぞ!」
暖めるのは子猫だろうか、それとも妹だろうか。
「う、うん!」
少女は兄に向かって走った。
そしてミカン箱の置いてある後部座席に滑り込み、箱をしっかり抱えた。
「行くぞ!」
青年はそう一言だけ告げると、ゆっくりと車を発進した。
家に到着すると、青年はすぐさまミカン箱を玄関に運び入れた。
ずぶ濡れのままの段ボール箱など、すぐに壊れてしまう。
普段は靴をきちんと揃えて脱ぐ青年ではあるが、この時ばかりは乱暴に脱ぎ捨てて部屋へと駆けあがった。
その時、振り返りもせずに少女へと、
「お前はすぐに身体を拭いて着替えろ! 俺が猫の面倒見といてやる!」
少女の返事も聞かず、ドタドタと自室へ続く階段を駆け上がる青年。
後ろ髪を引かれる思いではあったが、確かに自分はずぶ濡れだと少女はスカートや髪の毛から滴る水が、足元に水溜まりを作り始めているのを見て思った。
歩くとグチュグチュと音を立てる靴をノロノロと脱いでいると、またドタバタと青年が階段を駆け下りて来た。
「まだ居たのか! さっさと身体を拭いてこい!」
青年はタオルやTシャツを両手に山の様に抱えていた。
「う、うん…分かった…」
そう言って、少女は青年が駆け下りた階段を、ゆっくりと一段一段踏みしめる様にして昇って行った。
「おう、着替えたか?」
少女が階下に降りると、青年は大量のタオルで子猫たちを包んでいた。
「うん…。猫ちゃん、大丈夫?」
先程までずぶ濡れで力なく鳴いていた子猫達。
「残念だが…2匹はすでに死んでいたよ」
「そっか…」
青年が3匹の子猫達をタオルの上から更にTシャツで包む。
「死んでた2匹は他の箱に入れてる。晴れたら埋葬してやろうな」
「うん…」
青年が残る3匹の子猫達の命を繋ぎ止めるため、一生懸命に温めようとしている姿を、少女はぼんやりと眺めていた。
「本当は駄目なんだが、牛乳を飲ませよう。ちょっと温めて来るから、見ててくれ」
青年はそう言うと、台所へと向かった。
助けると決めたはいいが、何も手伝う事も出来ない無料さを感じつつ、少女はただ無言でじっとタオルやTシャツにくるまれた子猫達を見つめていた。
すると、そう遠くない電柱の根元に座り込んだ妹を見つけた。
「おい、どうした? 傘忘れたのか?」
青年が黒い傘をさしながら近づくと、妹が傘を忘れたわけでは無いとすぐ気づく。
彼女愛用の薄ピンク色の雨傘は、電柱の根元に開いて置かれていたのだから。
何故か雨降る中で、傘をささずにずぶ濡れになった妹。
「どうした、何があったんだ!?」
慌てて青年が声を掛けると、少女はゆっくりと振り返った。
今にも泣き出しそうな程に…いや、実際にはもう涙を流しているのかもしれない。
ただ一日中降り続けている雨のせいで、その頬を伝う水が涙か雨か分からないが。
「お兄ちゃん…猫…動かなくなった…」
少女が兄を振り返りながら指さした先にあるのは、薄ピンク色の傘と、その下に置かれているミカン箱。
たったその一言で、青年は全てを察した。
「ちょっと待ってろ! すぐに運んでやるからな!」
その言葉は誰に向けた物だろうか。
青年はミカン箱にさしかけられた傘を妹に押し付け、足元が悪いのも構わず車へと段ボール箱を抱えて揺らさぬ様に慎重に歩いた。
そして後部座席にミカン箱を置くと、
「早くお前も乗れ! 帰ってすぐに暖めるぞ!」
暖めるのは子猫だろうか、それとも妹だろうか。
「う、うん!」
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そしてミカン箱の置いてある後部座席に滑り込み、箱をしっかり抱えた。
「行くぞ!」
青年はそう一言だけ告げると、ゆっくりと車を発進した。
家に到着すると、青年はすぐさまミカン箱を玄関に運び入れた。
ずぶ濡れのままの段ボール箱など、すぐに壊れてしまう。
普段は靴をきちんと揃えて脱ぐ青年ではあるが、この時ばかりは乱暴に脱ぎ捨てて部屋へと駆けあがった。
その時、振り返りもせずに少女へと、
「お前はすぐに身体を拭いて着替えろ! 俺が猫の面倒見といてやる!」
少女の返事も聞かず、ドタドタと自室へ続く階段を駆け上がる青年。
後ろ髪を引かれる思いではあったが、確かに自分はずぶ濡れだと少女はスカートや髪の毛から滴る水が、足元に水溜まりを作り始めているのを見て思った。
歩くとグチュグチュと音を立てる靴をノロノロと脱いでいると、またドタバタと青年が階段を駆け下りて来た。
「まだ居たのか! さっさと身体を拭いてこい!」
青年はタオルやTシャツを両手に山の様に抱えていた。
「う、うん…分かった…」
そう言って、少女は青年が駆け下りた階段を、ゆっくりと一段一段踏みしめる様にして昇って行った。
「おう、着替えたか?」
少女が階下に降りると、青年は大量のタオルで子猫たちを包んでいた。
「うん…。猫ちゃん、大丈夫?」
先程までずぶ濡れで力なく鳴いていた子猫達。
「残念だが…2匹はすでに死んでいたよ」
「そっか…」
青年が3匹の子猫達をタオルの上から更にTシャツで包む。
「死んでた2匹は他の箱に入れてる。晴れたら埋葬してやろうな」
「うん…」
青年が残る3匹の子猫達の命を繋ぎ止めるため、一生懸命に温めようとしている姿を、少女はぼんやりと眺めていた。
「本当は駄目なんだが、牛乳を飲ませよう。ちょっと温めて来るから、見ててくれ」
青年はそう言うと、台所へと向かった。
助けると決めたはいいが、何も手伝う事も出来ない無料さを感じつつ、少女はただ無言でじっとタオルやTシャツにくるまれた子猫達を見つめていた。
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