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第1347話 番外)とある青年のお話
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ジリリリリリリン…ジリリリリリリン…
大学が夏季休暇に入った青年は、実家の2階にある自室で惰眠を貪っていた。
普段は朝早くから電車に乗って大学まで通っている。
通学時間は、およそ2時間半。
そして授業が終わると、毎日の様にアルバイトをしていた。
アルバイト先は、実家の最寄りの駅近くにあるカラオケ屋さんだ。
出来るだけ遅くまで働きたいと思って選んだアルバイト先だ。
大学の近くでアルバイトをすると、帰宅のための時間を考えると、どうしても働ける時間は短くなってしまう。
そんなに裕福な家庭ではないので、青年の両親は共働きをしている
まだ中学生の弟と高校生の妹の進学の事を考えると、少しでも多く働いて家に給料を入れたい…っと考えての事だ。
毎日必死に勉学に励み、夜遅くまでバイトに勤しみ、土日の昼間は青年が子供の頃から通っている空手道場で指導もしている。
さらに、バイトから帰宅したら、すぐに着替えて走り込みをし、近所の公園で1人黙々と空手の型練習をする日々。
そんな青年を両親は良く知っているので、彼の給料を受け取ろうとはしなかった。
それならばと、青年は将来の妹弟の学費の為と、必死に給料を貯金した。
今日は、そんな日々忙しい青年にたまたま訪れた、何の予定も無い一日だった。
特に趣味とよべる物も無い青年は、取り溜めしていたビデオを朝からずっと観続けていたのだが、昼食後に睡魔に襲われてベッドで惰眠を貪っていた。
そんな怠惰な一日を過ごしていた時、階下で電話の呼び出し音が鳴り響いた。
ジリリリリリリン…ジリリリリリリン…
半分寝ぼけつつ時計を見ると、まだ18時前。
まだ弟も妹も帰宅していないらしい。
電話は相変わらず、周囲に騒音を振り撒いている。
「仕方ない…」
青年はそう独りごちると、「はいはい…」と言いながら、頭をボリボリと掻きながら階段をおりて、玄関脇の電話代の上で、今も着信を知らせるベルの音をけたたましく響かせる電話代の受話器を取った。
「あ~…もしもし?」
青年がそう受話器に向かって気だるげな声を掛けると、
「もしもし…お兄ちゃん!? 今すぐ車で迎えに来て! 場所は神社の横の駄菓子屋さんの近く!」
電話の相手は、現在高校に通っている青年の妹だった。
「…何で俺が迎えにいかにゃならんのだ?」
「可愛い妹の頼みなんだから、さっさと着替えて迎えに来て!」
妹を可愛いと思っているかどうかを、電話口の相手に向かって訊ねる勇気は、青年には無かった。
「はぁ…仕方ねぇな…。傘でも忘れたか?」
「傘はあるけど、そうじゃ無いの! もう10円玉無くなるから切るよ? 早く迎えに来てよね!」
一方的に用件を言うだけ言って、妹は電話を切った。
ガチャン…ツー、ツー、ツー、ツー、ツー…。
「何だってんだ、まったく…」
手にした受話器を電話の上に戻すと、
「はぁ…仕方ねぇな…」
そうブツブツ言いながらも、サンダルを履いた青年は、下駄箱の上に置いてある父親の車の鍵を持って玄関を出た。
外はまだしとしとと雨が降っていた。
傘立てに突っ込んでいた黒い傘を手にした青年は、裏庭に置いてある父親の車に向かった。
ドアを開けて車に乗り込むと、青年は車のエンジンを掛ける。
そしてクラッチを踏み込むと、ギアを2速に入れて、ゆっくりと車を発進させた。
フロントガラスに付く雨粒をワイパーは右に左にと掻き分ける。
曇天の空を見るに、まだ雨が止む気配は無い。
青年は車のヘッドライトを点灯し、妹が言っていた駄菓子屋を目指した。
大学が夏季休暇に入った青年は、実家の2階にある自室で惰眠を貪っていた。
普段は朝早くから電車に乗って大学まで通っている。
通学時間は、およそ2時間半。
そして授業が終わると、毎日の様にアルバイトをしていた。
アルバイト先は、実家の最寄りの駅近くにあるカラオケ屋さんだ。
出来るだけ遅くまで働きたいと思って選んだアルバイト先だ。
大学の近くでアルバイトをすると、帰宅のための時間を考えると、どうしても働ける時間は短くなってしまう。
そんなに裕福な家庭ではないので、青年の両親は共働きをしている
まだ中学生の弟と高校生の妹の進学の事を考えると、少しでも多く働いて家に給料を入れたい…っと考えての事だ。
毎日必死に勉学に励み、夜遅くまでバイトに勤しみ、土日の昼間は青年が子供の頃から通っている空手道場で指導もしている。
さらに、バイトから帰宅したら、すぐに着替えて走り込みをし、近所の公園で1人黙々と空手の型練習をする日々。
そんな青年を両親は良く知っているので、彼の給料を受け取ろうとはしなかった。
それならばと、青年は将来の妹弟の学費の為と、必死に給料を貯金した。
今日は、そんな日々忙しい青年にたまたま訪れた、何の予定も無い一日だった。
特に趣味とよべる物も無い青年は、取り溜めしていたビデオを朝からずっと観続けていたのだが、昼食後に睡魔に襲われてベッドで惰眠を貪っていた。
そんな怠惰な一日を過ごしていた時、階下で電話の呼び出し音が鳴り響いた。
ジリリリリリリン…ジリリリリリリン…
半分寝ぼけつつ時計を見ると、まだ18時前。
まだ弟も妹も帰宅していないらしい。
電話は相変わらず、周囲に騒音を振り撒いている。
「仕方ない…」
青年はそう独りごちると、「はいはい…」と言いながら、頭をボリボリと掻きながら階段をおりて、玄関脇の電話代の上で、今も着信を知らせるベルの音をけたたましく響かせる電話代の受話器を取った。
「あ~…もしもし?」
青年がそう受話器に向かって気だるげな声を掛けると、
「もしもし…お兄ちゃん!? 今すぐ車で迎えに来て! 場所は神社の横の駄菓子屋さんの近く!」
電話の相手は、現在高校に通っている青年の妹だった。
「…何で俺が迎えにいかにゃならんのだ?」
「可愛い妹の頼みなんだから、さっさと着替えて迎えに来て!」
妹を可愛いと思っているかどうかを、電話口の相手に向かって訊ねる勇気は、青年には無かった。
「はぁ…仕方ねぇな…。傘でも忘れたか?」
「傘はあるけど、そうじゃ無いの! もう10円玉無くなるから切るよ? 早く迎えに来てよね!」
一方的に用件を言うだけ言って、妹は電話を切った。
ガチャン…ツー、ツー、ツー、ツー、ツー…。
「何だってんだ、まったく…」
手にした受話器を電話の上に戻すと、
「はぁ…仕方ねぇな…」
そうブツブツ言いながらも、サンダルを履いた青年は、下駄箱の上に置いてある父親の車の鍵を持って玄関を出た。
外はまだしとしとと雨が降っていた。
傘立てに突っ込んでいた黒い傘を手にした青年は、裏庭に置いてある父親の車に向かった。
ドアを開けて車に乗り込むと、青年は車のエンジンを掛ける。
そしてクラッチを踏み込むと、ギアを2速に入れて、ゆっくりと車を発進させた。
フロントガラスに付く雨粒をワイパーは右に左にと掻き分ける。
曇天の空を見るに、まだ雨が止む気配は無い。
青年は車のヘッドライトを点灯し、妹が言っていた駄菓子屋を目指した。
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