1,310 / 1,466
おおおおお!
しおりを挟む
さてさて、少しだけ時は進み、とある日の午後…。
「いだいいだいいだいだいいだだだだだだだだだだだ…!」
精緻な彫刻で飾られた扉の向こうから、ミルシェの叫び声が聞こえる。
「…んぐっ! …がっ! …んんんんんんん!」
ミルシェの叫び声の合間合間に、何かを我慢する様なメリルのくぐもる様な声も微かに聞こえる。
「メリルさん、ミルシェさん、頑張って!」
「息を大きく吸うんだ!」
「お、お水を飲みますか?」
マチルダとイネスの声も聞こえる中、ちょっと気が抜けそうなミレーラの声も。
「いてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
そんな周りの声の中、叫び過ぎたためか少し掠れた様なミルシェの絶叫が響き渡った。
「んんんんんんんん!!!!」
ほぼ同時にメリルの声も大きくなる。
「ミルシェさん、もう少しだけ我慢して! メリルさんが先だから!」
「メリルさん、今だ今! 息め!」
「ミルシェさん、魔法使いますから我慢して!」
マチルダがミルシェに我慢しろといい、イネスがメリルに指示を出し、ミレーラが…変身してんのかな?
そんな慌ただしくも騒がしい扉の向こうの声を聞きながら、俺は薄暗い廊下で手に汗を握り祈っていた。
どうか無事に生まれてくれ…っと。
まあ、賢明な方であればここまでの皆の声を聞けば、メリルとミルシェが出産に挑んでいる事など容易に察せたであろう。
無論、それは間違いなどではなく、大正解である。
ダンジョンマスター達から、サラとリリアさんが最終決戦兵器? 巨大ロボのテストを繰り返し、洗い出された問題点の改善を繰り返しているため、まだ帰宅には時間が掛かるかもと連絡を受けたとある日の朝、それは突然起きたのだ。
それと言うのは先にも述べた通り、メリルとミルシェの陣痛だ。
実は年末年始も、大きなおなかを抱えた滅入るとミルシェの事を考え、あまり派手な催し物はしなかった。
領地の温泉街の住民達も、静かにその時を待っている様で、年末年始なのに街は静かだった。
父さんの領地からは、昨年度の税収や支出などに関する書類を携えた巨乳メイドさん達がやって来たが、出産間近な2人に気をつかってやはり軽く挨拶するだけに留めて、すぐに邸を辞去した。
巨乳メイドさん達が持ってきた書類と、俺の領地の昨年度の書類を持って、年明けの貴族会議にそろそろ向かおうか…と思った翌朝に2人の陣痛が始まったので、もうてんやわんやとなったのだ。
こんな状態で王都の会議などに出るわけにも行かない。
貴族が立ち合い出産…という程ではないけど、とにかく夫が妻の出産を同じ邸で待つという事は珍しいらしい。
先だっての母さんの出産に父さんが扉1枚隔てじっと待っているなど、貴族では考えられないそうだ。
貴族の男は子供をつくったら、あとは産まれるまでほっとくらしい。
まあ、何代も続く貴族家の男子ほど、そういった傾向が酷くなるとか。
出産ってのは女性にが命懸けで挑む一大イベントだ。
それを知らん顔できる夫って、どうなん?
女性が命を懸ける事態の原因の一端は、確実に男である夫にもあるはずなのに、やるだけやったら知らん顔って。
元々が平民だった父さんいそんな事が出来るはずも無く、当然命懸けの母さんを扉越しではあるが応援していた。
んで、そんな父さんの子供である俺も、ほっといて会議に向かうなど出来るはずも無い。
とは言え、妻の出産という理由での貴族会議への欠席は許されない。
まあ、俺にはホワイト・オルター号があるし、夜通し全速飛行すれば朝には着くんだから、まだ3日程余裕がある。
だから、こうして俺は両手を組んで神に祈ってるんだ…母子共に無事でありますように…って。
え、どの神様に祈ってるのかって? 知らんよ、そんな事。
元無神論者の日本人なんだから、特定の神様に祈ってるってわけじゃない。
どこの神様でも良いから、何とかしてくれって祈ってるだけだよ!
ネス様でも天照様でもお釈迦様でもキリスト様でも何でもいい!
とにかくメリルとミルシェと子供達を頼みますーーーー!
「ん…んぎゃ…んぎゃぁぁ…んぎゃぁぁぁぁ!」
………あっ?
「ぉ…ぉぎゃぁぁぁぁ!」
…………ああっ!?
「「おんぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」
……………あああああああああああああああ!!
呆然として扉へとフラフラと近寄ると、バンッ! と、木製の扉が勢いよく開かれ、
「トールさま、生まれました! メリルさんとミルシェさんがやりました!」
汗びっしょりのマチルダがもの凄い大きな声で叫びながら俺へと駆け寄った。
「おぉ…おおおおお!」
そんな歓喜の声をあげながら駆け寄るマチルダに抱きつかれた俺の口からは、すでに意味ある言葉が出る事はなかった。
「いだいいだいいだいだいいだだだだだだだだだだだ…!」
精緻な彫刻で飾られた扉の向こうから、ミルシェの叫び声が聞こえる。
「…んぐっ! …がっ! …んんんんんんん!」
ミルシェの叫び声の合間合間に、何かを我慢する様なメリルのくぐもる様な声も微かに聞こえる。
「メリルさん、ミルシェさん、頑張って!」
「息を大きく吸うんだ!」
「お、お水を飲みますか?」
マチルダとイネスの声も聞こえる中、ちょっと気が抜けそうなミレーラの声も。
「いてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
そんな周りの声の中、叫び過ぎたためか少し掠れた様なミルシェの絶叫が響き渡った。
「んんんんんんんん!!!!」
ほぼ同時にメリルの声も大きくなる。
「ミルシェさん、もう少しだけ我慢して! メリルさんが先だから!」
「メリルさん、今だ今! 息め!」
「ミルシェさん、魔法使いますから我慢して!」
マチルダがミルシェに我慢しろといい、イネスがメリルに指示を出し、ミレーラが…変身してんのかな?
そんな慌ただしくも騒がしい扉の向こうの声を聞きながら、俺は薄暗い廊下で手に汗を握り祈っていた。
どうか無事に生まれてくれ…っと。
まあ、賢明な方であればここまでの皆の声を聞けば、メリルとミルシェが出産に挑んでいる事など容易に察せたであろう。
無論、それは間違いなどではなく、大正解である。
ダンジョンマスター達から、サラとリリアさんが最終決戦兵器? 巨大ロボのテストを繰り返し、洗い出された問題点の改善を繰り返しているため、まだ帰宅には時間が掛かるかもと連絡を受けたとある日の朝、それは突然起きたのだ。
それと言うのは先にも述べた通り、メリルとミルシェの陣痛だ。
実は年末年始も、大きなおなかを抱えた滅入るとミルシェの事を考え、あまり派手な催し物はしなかった。
領地の温泉街の住民達も、静かにその時を待っている様で、年末年始なのに街は静かだった。
父さんの領地からは、昨年度の税収や支出などに関する書類を携えた巨乳メイドさん達がやって来たが、出産間近な2人に気をつかってやはり軽く挨拶するだけに留めて、すぐに邸を辞去した。
巨乳メイドさん達が持ってきた書類と、俺の領地の昨年度の書類を持って、年明けの貴族会議にそろそろ向かおうか…と思った翌朝に2人の陣痛が始まったので、もうてんやわんやとなったのだ。
こんな状態で王都の会議などに出るわけにも行かない。
貴族が立ち合い出産…という程ではないけど、とにかく夫が妻の出産を同じ邸で待つという事は珍しいらしい。
先だっての母さんの出産に父さんが扉1枚隔てじっと待っているなど、貴族では考えられないそうだ。
貴族の男は子供をつくったら、あとは産まれるまでほっとくらしい。
まあ、何代も続く貴族家の男子ほど、そういった傾向が酷くなるとか。
出産ってのは女性にが命懸けで挑む一大イベントだ。
それを知らん顔できる夫って、どうなん?
女性が命を懸ける事態の原因の一端は、確実に男である夫にもあるはずなのに、やるだけやったら知らん顔って。
元々が平民だった父さんいそんな事が出来るはずも無く、当然命懸けの母さんを扉越しではあるが応援していた。
んで、そんな父さんの子供である俺も、ほっといて会議に向かうなど出来るはずも無い。
とは言え、妻の出産という理由での貴族会議への欠席は許されない。
まあ、俺にはホワイト・オルター号があるし、夜通し全速飛行すれば朝には着くんだから、まだ3日程余裕がある。
だから、こうして俺は両手を組んで神に祈ってるんだ…母子共に無事でありますように…って。
え、どの神様に祈ってるのかって? 知らんよ、そんな事。
元無神論者の日本人なんだから、特定の神様に祈ってるってわけじゃない。
どこの神様でも良いから、何とかしてくれって祈ってるだけだよ!
ネス様でも天照様でもお釈迦様でもキリスト様でも何でもいい!
とにかくメリルとミルシェと子供達を頼みますーーーー!
「ん…んぎゃ…んぎゃぁぁ…んぎゃぁぁぁぁ!」
………あっ?
「ぉ…ぉぎゃぁぁぁぁ!」
…………ああっ!?
「「おんぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」
……………あああああああああああああああ!!
呆然として扉へとフラフラと近寄ると、バンッ! と、木製の扉が勢いよく開かれ、
「トールさま、生まれました! メリルさんとミルシェさんがやりました!」
汗びっしょりのマチルダがもの凄い大きな声で叫びながら俺へと駆け寄った。
「おぉ…おおおおお!」
そんな歓喜の声をあげながら駆け寄るマチルダに抱きつかれた俺の口からは、すでに意味ある言葉が出る事はなかった。
0
お気に入りに追加
1,833
あなたにおすすめの小説
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。

死んだのに異世界に転生しました!
drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。
この物語は異世界テンプレ要素が多いです。
主人公最強&チートですね
主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください!
初めて書くので
読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。
それでもいいという方はどうぞ!
(本編は完結しました)

こちらの異世界で頑張ります
kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で
魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。
様々の事が起こり解決していく

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが
倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、
どちらが良い?……ですか。」
「異世界転生で。」
即答。
転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。
なろうにも数話遅れてますが投稿しております。
誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。
自分でも見直しますが、ご協力お願いします。
感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~
春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。
冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。
しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。
パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。
そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。
成長促進と願望チートで、異世界転生スローライフ?
後藤蓮
ファンタジー
20年生きてきて不幸なことしかなかった青年は、無職となったその日に、女子高生二人を助けた代償として、トラックに轢かれて死んでしまう。
目が覚めたと思ったら、そこは知らない場所。そこでいきなり神様とか名乗る爺さんと出会い、流れで俺は異世界転生することになった。
日本で20年生きた人生は運が悪い人生だった。来世は運が良くて幸せな人生になるといいな..........。
そんな思いを胸に、神様からもらった成長促進と願望というチートスキルを持って青年は異世界転生する。
さて、新しい人生はどんな人生になるのかな?
※ 第11回ファンタジー小説大賞参加してます 。投票よろしくお願いします!
◇◇◇◇◇◇◇◇
お気に入り、感想貰えると作者がとても喜びますので、是非お願いします。
執筆スピードは、ゆるーくまったりとやっていきます。
◇◇◇◇◇◇◇◇
9/3 0時 HOTランキング一位頂きました!ありがとうございます!
9/4 7時 24hランキング人気・ファンタジー部門、一位頂きました!ありがとうございます!

くじ引きで決められた転生者 ~スローライフを楽しんでって言ったのに邪神を討伐してほしいってどゆこと!?~
はなとすず
ファンタジー
僕の名前は高橋 悠真(たかはし ゆうま)
神々がくじ引きで決めた転生者。
「あなたは通り魔に襲われた7歳の女の子を庇い、亡くなりました。我々はその魂の清らかさに惹かれました。あなたはこの先どのような選択をし、どのように生きるのか知りたくなってしまったのです。ですがあなたは地球では消えてしまった存在。ですので異世界へ転生してください。我々はあなたに試練など与える気はありません。どうぞ、スローライフを楽しんで下さい」
って言ったのに!なんで邪神を討伐しないといけなくなったんだろう…
まぁ、早く邪神を討伐して残りの人生はスローライフを楽しめばいいか
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる