システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児

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未来は分からない

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 ここはトール達の住まう王国の北にある、非常に高く長く連なる連峰を越えた先の森の中。
 先のアルテアン侯爵率いる調査隊が、あえて素通りしたあのひよこ達が守る魔方陣が隠された場所。
 そこに、仄かに白く光っているせいで輪郭がはっきりとは見えないが、何者かが唐突に現れた。
『おーい、居るんだろう?』 
 その何者かは、木々の生い茂る森へ向かって、非常に軽い調子で声を掛けた。
 何者かが声を掛けて暫くは木々の枝葉を揺らす風の音だけがその場を支配していたが、やがて茂みをかき分けるガサガサという音がしたかと思うと、大きなひよこが何匹か森の奥からのそりと出てきた。
『ああ、やっぱり居るじゃないか。何ですぐに出てきてくれないんだよ…俺、ちょっと寂しいぞ』
 光る何者かは、やはり軽い調子で話しかけるが、
『お前はここに居てはだめだろう? 何をしに来た?』
 ひよこの1匹が、意外と野太い声でその何者かに問いかけた。
『いや、お前たちも見ただろう、あの次元世界の衝突の前触れを? もう、計画がどうのこうのと言ってる場合じゃないぞ?』
 先程までの口調とは打って変わって静かだが力強い声が、何者かから発せられた。
『確かに見たな…。あれは間違いなく俺達が存在していた地球だ。まあ、どの次元の地球化は分からぬが』
 それに対して、ひよこは鷹揚に頷く。
『だろ? だから、さっさと計画を進めよう。ああ、そうそう。この魔方陣はもう用済みだ。あいつは、新世界創造の事しか今は頭にないから、もうこの世界に危機が及ぶことは無いはずだぞ? …次元衝突の可能性を除いて…だけどな』
『なるほどな…あいつを間近で見てきたお前が言うなら確かなんだろう』
 ひよこがそう言うと、
『信じてくれていいぞ、俺よ』
『ああ、信じているとも、俺よ』 
 何だかよくわからない意味深な言葉を残し、仄かに光る何者かとひよこ達は、木々の生い茂る暗い森の中へと共に姿を消したのであった。

 
「アルテアン侯爵よ。それでは以前にアルテアン伯爵が女神ネス様より宣託を受けたというあれは…」
 先程まで、大勢の文官・武官達で喧騒に包まれていた謁見の間は、今は数名の騎士達と国王とヴァルナルだけとなっていた。
 威風堂々と、国王陛下に先程上空に出現した青い星について話をしたウルリーカは、ナディア達を引き連れて王族専用の応接室へと引っ込み、王妃達とお茶を飲みながら今後の事について話をしている。
 そして、無残にウルリーカによって謁見の間の入り口付近に放り投げられたヴァルナルは、程なく立ち直りこうして国王陛下と対面で話をしていた。
「はい、陛下。そう遠くない未来、この大陸全土を大災害が襲う事でしょう。それは、先ほど上空に現れた星がこの大地に落ちて来るような災害かも知れませぬし、もしかするとさらに酷い厄災なのかは、未だネス様より宣託は無いそうですが…」
 実は女神ネスと言う存在をトールがでっち上げた物であると聞いているヴァルナルであったが、それを言ってしまえばこの一時の平穏は即座に崩れてしまうだろう。
 なので、あえてヴァルナルは女神ネスという超常の存在を確かに存在する神であるという体を崩さずにこう告げたのだ。
「そうか…。時期もまだはっきりとは分からぬのか…」
 ヴァルナルの言葉を疑う事なく、サランデール国王は特段痛むわけでも無いのだが、頭を抱えた。
 実際、これからどの様に対処すればいいのか、頭を痛めなくてはならない事が目白押しとなるのだからこれは仕方ない事だ。
「仰る通りでございます、陛下。トールヴァルドが神託がを賜った時には、すぐに上奏いたしましょう」
 実際、ヴァルナルにもこの先、どうなるかなど分からない。
 いや、ヴァルナルだけでなく、トールでさえはっきりと未来は分からないのだ。
 なので、こう言うしか無いだろう! …と、心の中でヴァルナルは叫んでいた。
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