システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児

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お礼参り?

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 本来ありえないはずの男の子の出産。
 それを見た周囲の繁殖欲旺盛な人魚さんがどう思うか…そりゃ、次は自分も…と思うだろう。
 ならば、喧嘩が起こらない様に、男の子を生んだ人魚さんも…お見合い大会を希望する…そりゃそうか…。

「えっと…おめでとう…とだけ伝える事にするよ…出来れば遠くから…」
「ええ、それが賢明かと、私も思います」

 床に散らばった書類を拾いあげて積み上げ直し、俺はまたコツコツと書類と睨めっこするお仕事へと戻った。
 君子危うきに近寄らず? 触らぬ神に祟りなし? どっちにしても、あんなサバトの手伝いは御免被る。
 …きっといつかはしなきゃいけないけど、自分からそのきっかけを作りに行くつもりは、毛頭ございませんから。



 どうしてだろう? 
 俺は絶対に誰にも喋ってない!
 なのに、翌日には、何故か町中で人魚さんが男の子を生んだとお祭り騒ぎになっていた。
 いや、確かに目出度いんだけど…そこまでする程の事なの?
 ってか、誰が情報をリークしたんだ?
 あ…街には人魚さんの娼館があったっけ…そこからか…。

「伯爵様…人魚さん達が、全員でネス様に祈りを奉げたいと申しております」
 …俺は静かにランチを愉しみたいだけなのに、何て事を言い出すんだ、ユズキよ!
「本当です、トールさま。先ほど人魚の女王からエルフを通じて連絡が入りました。この度の男児出産を大層お喜びで、これは紛れもなく女神様のお力による物だと、人魚族全員が口を揃えて言っているそうです」
 ユズキの言葉を後押しするかのように、メリルが言葉を継いだ。
「その通りです。ですので、その礼を込めて参拝したいと…全員で…」
 メリルの跡をついで、またユズキがそう言った。
「…人魚さんが?」
「ええ」
「全員で?」
「ええ」
「いっぺんに?」
「ええ」
 俺の問いに、ユズキが答える。
「…いや、そんなの無理に決まってるだろう! 今、あの入江に何人の人魚さんがいるんだよ!」
「聞いてみましたが、どんどん増え続けて、今では1000人近いとか…ぷっ」
 ユズキが、笑いを堪えながら人数を教えてくれた。
 1000人!? まさか、この大陸中の人魚さんが集まって来てたりしないよな?
 って、ユズキ…お前まさか面白がってないか? 
「さて、どうしまようねぇ? …ぷぷぷっ!」
 絶対に、面白がってるよねぇ、ユズキ君!
「…全員は無理! あ、いや…いっぺんには無理! そもそも、森を突っ切るトラバスには定員があるんだから!」 
 というか、今でも森の中の村からエルフさんやドワーフさん、人魚さんだって通勤で毎日の様に使ってるんだから、人魚さん達の貸し切りで何往復も出来るわけない。
「大丈夫ですよ。人魚さん達は全員自力で川を遡って、すぐ近くまで来るそうです…あのホテルの近くまで」
 ……そっすか、ユズキ君。
「そこからは、馬車と蒸気自動車を私が手配しますので、何の心配もいりません」
 ……そっすか、メリルさん。
「なので、伯爵様が許可を出すだけですよ……ぶわっはっはっは!」
 ……面白いですか、そうですか…後で覚えとけよ、ユズキめ!
「それで、どういたしましょう?」
「えっと、メリル…それってどういう意味?」
「もちろん、人魚の女王への返事ですよ」 
 いや、もう全部君達で手配済みなんだよね?
 これで俺が反対したりしたら、めっちゃ恨まれるよね、人魚さん達に!
「…と、当然、大歓迎…と伝えて…ちょうだい?」
 これ以外の返事なんて出来ようか? いや、出来まい!
「分かりました。では、その様にお返事をお願いしますね、ユズキ」
「はい、奥様…」
 絶対にこの2人で仕組んでるよね?
 まあ、俺抜きで出来るんだったら、これ以上は何も言うまい。
「あ、人魚さん達が集まりましたら、トールさまから一言お願いしますね」
 ……俺抜きじゃないのね…………。
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