システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児

文字の大きさ
上 下
1,270 / 1,466

まるでジェットコースター

しおりを挟む
「やれやれ、これで一通りの説明は終わりでいいかのぉ?」
 呆けているサラとリリアをちらりと一瞥したボーディは、一仕事終えたとばかりに肩を叩きながら言うと、
「はっ! ちょ、ちょっとお待ち下さい!」
 今の今まで光を失った目をしていたリリアが、突如として息を吹き返した様に、ガバッと顔を上げた。
「ん、どうしたのじゃ?」
「えっと、確か管理局長も彼と元は同じとか前に言ってませんでしたか?」
 彼とはトールヴァルドの事で、元が同じとは、つまりは元々は同じ精神体から分かれた欠片であるという意味である。
「ああ、その通りじゃ。それが?」
「それでは、何で局長は彼を取り込もうとか一緒になろうとかしないんですか? 今までのお話では、確かにエネルギーを吸い取っろうとあの手この手を尽くして来たようですが、ここ最近はそんな気配もさっぱりありません。何故ですか?」
 リリアは、長い長い溜息を吐いた。

「はぁ~~~~、やっとそこに辿り着いたか。では、一つ話をしてやろう。この世界の始まりとなった巨大な巨大な精神体は、それはそれは多くのエネルギーを持っておった。しかしその巨大な精神体は、自らのエネルギーを使いこの世界の開闢の引き金を引いたのじゃ。多くの文明でビッグバンと呼ばれておる現象がこれじゃ。精神体が粉々に砕けちり、次元や時間を越えてあらゆる方面へと飛び散ったのじゃ。それら欠片達の多くは知的生命体が生まれるまで眠っておったのじゃが、ごく一部の大きな欠片達は各々が考えて行動した結果、とある集まりとなった」
 ボーディが一息ついた時、すかさずリリアが言葉を挟む。
「その集まりというのは、もしかして…管理局…ですか?」
 少々しゃべり続けて乾いた唇を、冷めてしまった茶で湿らせたボーディは、
「うむ、その通りじゃ。そして解放魂魄統轄庁もその一つじゃ」
 そのボーディの言葉に、ごくりと唾を飲み込んだのは、一体誰だろうか。
「解放魂魄統轄庁と輪廻転生管理局、この二つの組織がこの全てを内包する世界で初めての組織となった。まあ、名称は随分と時が経ってから決まったらしいがのぉ」
 遠くを見る様な目でそう語るボーディ。
「その二つの組織の創始者? の1人が局長なんですね?」
 慎重に言葉を選びつつ、リリアが訊ねた。
「理解が早くて助かるぞ。まあ、つまりはそのごく一部の大きな欠片達は、知的生命体に宿ることを望まず、それらを管理する事を自ら望んだ故、この様な組織を造り上げたのじゃ。片や欠片が宿った知的生命体が覚醒し解脱する時を待ち、片や分割に分割を重ねた精神体や、妾達が造り上げた新たなる魂を幾度も転生させる道を選んだのじゃ」

「何となくわかってきました…つまり、局長は彼を輪廻転生システムを通さずに転生させた…と」
 リリアは、一言一句確かめる様にボーディへと言葉を向けた。
「そうじゃ。お主、まさか忘れてはおらぬじゃろうな…ここがあ奴の実験星じゃと言う事を?」
「あっ!」
 頭脳派を自称するリリアなのだが、何故かこんな重要な事を忘れてしまっていた。
「そうでした…ここは実験星…局長が造った…あれ? でも、もっと何か大切な事を…あれ? あれ?」
「やはりのぉ。お主達の記憶…ではなく、思考がコントロールされておる様じゃの」
 混乱するリリアをじっと見ていたボーディが、吐き捨てる様にそう言った。
「まさか…局員である私を…洗脳? 一体何のために?」
 その事実に困惑するリリアに向かい、
「簡単な事じゃ。お主もまた、精神体の欠片の1つなのじゃからのぉ」
 とんでもない爆弾を、ボーディは落とすのであった。

 まるでジェットコースターの様に、右に左に上に下に、時にはグルグルと二転三転するこの様な事態について行けないサラは、痛む頭を抱えながら目をグルグル回していたのであった。
しおりを挟む
感想 725

あなたにおすすめの小説

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

死んだのに異世界に転生しました!

drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。 この物語は異世界テンプレ要素が多いです。 主人公最強&チートですね 主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください! 初めて書くので 読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。 それでもいいという方はどうぞ! (本編は完結しました)

『転生したら「村」だった件 〜最強の移動要塞で世界を救います〜』

ソコニ
ファンタジー
29歳の過労死サラリーマン・御影要が目覚めたのは、なんと「村」として転生した姿だった。 誰もいない村の守護者となった要は、偶然迷い込んできた少年リオを最初の住民として迎え入れ、徐々に「村」としての力を開花させていく。【村レベル:1】【住民数:0】【スキル:基本生活機能】から始まった異世界生活。

こちらの異世界で頑張ります

kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で 魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。 様々の事が起こり解決していく

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~

春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。 冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。 しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。 パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。 そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。

成長促進と願望チートで、異世界転生スローライフ?

後藤蓮
ファンタジー
20年生きてきて不幸なことしかなかった青年は、無職となったその日に、女子高生二人を助けた代償として、トラックに轢かれて死んでしまう。 目が覚めたと思ったら、そこは知らない場所。そこでいきなり神様とか名乗る爺さんと出会い、流れで俺は異世界転生することになった。 日本で20年生きた人生は運が悪い人生だった。来世は運が良くて幸せな人生になるといいな..........。 そんな思いを胸に、神様からもらった成長促進と願望というチートスキルを持って青年は異世界転生する。 さて、新しい人生はどんな人生になるのかな? ※ 第11回ファンタジー小説大賞参加してます 。投票よろしくお願いします! ◇◇◇◇◇◇◇◇ お気に入り、感想貰えると作者がとても喜びますので、是非お願いします。 執筆スピードは、ゆるーくまったりとやっていきます。 ◇◇◇◇◇◇◇◇ 9/3 0時 HOTランキング一位頂きました!ありがとうございます! 9/4 7時 24hランキング人気・ファンタジー部門、一位頂きました!ありがとうございます!

くじ引きで決められた転生者 ~スローライフを楽しんでって言ったのに邪神を討伐してほしいってどゆこと!?~

はなとすず
ファンタジー
僕の名前は高橋 悠真(たかはし ゆうま) 神々がくじ引きで決めた転生者。 「あなたは通り魔に襲われた7歳の女の子を庇い、亡くなりました。我々はその魂の清らかさに惹かれました。あなたはこの先どのような選択をし、どのように生きるのか知りたくなってしまったのです。ですがあなたは地球では消えてしまった存在。ですので異世界へ転生してください。我々はあなたに試練など与える気はありません。どうぞ、スローライフを楽しんで下さい」 って言ったのに!なんで邪神を討伐しないといけなくなったんだろう… まぁ、早く邪神を討伐して残りの人生はスローライフを楽しめばいいか

処理中です...