システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

番外）内密のお話はこそこそと １

　ここは、グーダイド王国の王都。王都に特に名は無い。
　この国の国民にとって、王都と言えばそれはすなわちグーダイドの王城が存在するこの場所が王都であるから、特に名など必要としていないのだ。
　
　そんな王都で、ここ数年の間に驚異的な売り上げを叩きだし、勢力を拡大している商会がある。
　それがアルテアン商会だ。
　この商会の主たる収入源…それは輸送業である。
　従来から多くの商会が輸送業を営んで来た。
　だが、それは馬と馬車を使ったものであり、運べる物資の量も人員の数も限られており、またその輸送に掛かる時間はかなり時間が掛かり、また輸送料もかなり高い。
　別にぼった食っているわけでは無い。
　馬車を使った陸上輸送しか手段がなかった世界では、これは致し方ない事だと言える。
　主だった輸送ルートには、要所と呼ばれる場所が存在する　
　そこは切り立った崖であったり、雨が降ったらすぐに決壊する様な河川の近くであったり、そこに架かる橋であったり…そして、危険な獣や野盗などが出没する地域であったり。
　なので、その対策として幾人もの人足や護衛を雇う事を余儀なくされる為、経費が掛かる。
　また、当然だが馬車を牽く馬だって、何時までも元気なわけじゃない。
　病や怪我もすれば、年老いて動けなくなることもある。
　そういった事も勘案して、少々割高かも知れないが、料金は設定されているのだ。
　なので、輸送業を営む商会は、その売り上げこそ高いものの、収入的にはそう多く無いのが実情だ。
　
　さて、そんな輸送業に突如として参入して来た新進気鋭の商会、それが先に紹介したアルテアン商会だ。
　アルテアン商会は、今までの馬車による陸上輸送という概念を覆す引きを携ての参入だ。
　それが魔石を燃料とする魔道具を組み込んだ、大型の蒸気自動車だ。
　トールヴァルドの前世の記憶を元に、ドワーフ達の技術の粋を集めて造り上げられたこの蒸気自動車は、馬車の数倍から十倍の荷物を積むことが可能で、しかも馬車で使われている馬の様に休憩はいらない。
　そのうえ、速度も倍以上は出ている。
　とどめに輸送費は今までの馬車に比べてかなりお安いとなれば、これに飛びつかない者は居ない。
　直ぐに今まで馬車輸送を頼りに商売していた者達が、輸送業者を替える事となった。
　しかし、アルテアン商会は既存の馬車輸送の業者達からは、一時は恨まれもしたがそれはすぐに収まった。
　何故なら、危険な場所を擁する長距離ルートのみを運行する事で、既存の業者との住み分けを図ったのだ。
　なので、安全な近距離輸送は馬車で、危険な長距離輸送はアルテアン商会と、今では認識されている。

　さてさて長々と説明をしたが、こんなアルテアン商会が新たなる事業を王都で始めた。
　その事業は、蒸気自動車による輸送業とは、全く別の事業だ。
　しかもその事業の音頭を執っているいるのは、何とウルリーカ侯爵夫人…商会代表の奥様である。
　侯爵夫人が始めたの事業とは、女性の美容に特化したエステ事業だ。
　その名も、女性向け会員制 ビューティーサロン・ウル。
　そして、男性向けマッサージ店・ヴァル 。

　男性向けのマッサージ店は…まぁ、筋肉質の男性エルフさんが施術する、まぁトールヴァルドの前世の記憶にある按摩がベースとなっているので、特筆すべきことはそう多くない。
　まあ、叩いたり揉んだり時には押したりすることで、肩こりに首や腰の痛みなどを和らげる効果があるそうで、意外と男性客のリピーターが出ている。
　ちなみに、一切性的なサービスは行っていない。
　対して女性向けのビューティーサロンは、一度施術を受けたら絶対にリピーターとなる。
　しかも、その店舗数は数年で驚異の10店舗にまで増えている。
　現在、第１号店 ビューティーサロン・ウルは、他の会員制の店舗よりも数ランク上の施術とおもてなしを受ける事が出来る、超VIP店となっており、その会員数と会員名は超極秘事項。
　普通はそんな超VIP専用店であれば、客の名など誰も知る事は出来無いはずなのだが…会員名は誰もが知っている。
　その超VIP会員とは、このサロンの代表者であるアルテアンの一族と王族ご一行様や、この国でも誰もが認めるステータスと資産を持つ富裕層のみ。
　VIP会員証は、その会員が退会しない限り、空きは絶対に出ない。
　
　まあ、どのビューティー・サロンでも、女性を輝かせることに関しては超一流のプロの手技と髪や肌を美しく装うための数々の商品により、女性は来店した時よりも美しくなれる。
　 ビューティーサロン・ウルに通わない女性は王都に居ないとまで言われる程であり、真似をしようとする他の商会の追随を許さない、ぶっちぎりの地位を確立していた。


　この ビューティーサロン・ウル　（王都）第一号店の中で、とある女性達がこそこそと密談をしていた。
　その密談の内容とは………。