システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児

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何故かしっくりくる

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「まあ、今回だけは許してやろうかのぉ…。おい、モフレンダや、廃棄は一旦保留じゃ」
 お笑い担当が誰かはさておき、腰にサラをくっ付け引きずり歩むモフリーナをボーディは取りあえず止めた。
「イエス…マム…」
 その命令に、どことなく納得出来ないという雰囲気を漏れ出させながらも、モフレンダは歩みを止める。
「ふぅ…じゃ無くて! 保留? 保留なんですか!?」
 歩みを止めたモフレンダに少しだけほっとした様な顔をしたサラダが、よくよく考えてみればボーディの指示は、あくまでも一旦だ。
「うむ、一旦は、保留じゃな。お主の今後の言動次第では、再度は息を実行するやもしれぬぞ?」
 真剣な目をしたボーディの言葉には、もの凄い迫力があった。
「は…はいぃぃ! 気をつけまっする!」
「じゃから、その物言いを止めろと言っとるんじゃ! さっさと廃棄してお主もダンジョンの最下層に放り出すぞ!?」
 どうにもお笑い体質の抜けないサラに、イライラを爆発させるボーディ。
「き、気を付けますんで、どうかそれだけはご勘弁をぉぉぉぉぉ(お代官様~~)!!!」
「何やら最後に余計な文言が入りそうな叫びじゃのぉ…」
 サラの言動に大分慣れて来たのだろう。ボーディはこのアホの叫びの最後には、絶対何かがくっつくと正確に理解していた。
 そんなボーディの言葉に、首をブンブンと振るサラ。
「貴女、よくもこんな状況でぎりぎりを攻めようとしますね…呆れます。やっぱり馬鹿なんですか?」
 もう呆れを通り越して極度の頭痛に襲われ、頭を抱えるリリア。  
「ちょ、違うってば! この場を和ませようかと思っただけじゃんか! でも、言ったらダメかなぁ~って我慢したんですから!」
 言い訳がもう何というか…。
「はぁ…もう良いわ。モフレンダ、席に付け。そこの馬鹿は放っておいて良いぞ。さて、話しの続きをしようかのぉ…」
 ボーディも頭痛がするのか、額に手をやった。
「…Ja…」
 モフレンダの返事を聞いたサラは、『何でドイツ語!?』と、微妙にずれた感想を抱いていたのだが、それを口には出さなかった。

 何とか落ち着きを取り戻した場を見回したボーディは、先程までの話を再開した。 
「さて、先程の話の続きなのじゃが…。妾が言った事を覚えておるかや?」
 ボーディの視線は真っすぐリリアへ向いていた。
 まあ、特段サラと話そうとも思わなかっただけとも言うが。
「確か、太陽系の第3惑星の地球などという惑星はこの次元世界には無いと言う事でしたか?」
「まあ、そうじゃ。あ奴が生きておった太陽系の第3惑星の地球などという惑星はこの次元世界には無い…が正しいのぉ」
 リリアの答えに満足しつつも、そう語るボーディ。
「正しいと言う事は、第3惑星地球自体はあるのですか?」
 その問いに簡潔に答えるボーディ。
「ああ、あるぞ。ただし、今の時点での地球は、誕生から60億年程経っておる」
「「えっ?」」
 その答えに、驚くサラとリリア。

 いや、驚くのも当然かもしれない。
 トールヴァルド=大河芳樹が住んでいた地球とは、その誕生より約45億年ほどだったはずである。
 いくら転生が弛緩を越える事が多々あるとは言っても、これはあり得ない事だ。
 転移であれば、こういった事例もごく稀には存在するのだが、転生とは当たり前ではあるが輪廻転生システムを通して行われる、いわば人為的現象のはず。
 15億年も先の事象に干渉する事はほぼ不可能だからある。
 不可能…と言うのは、15億年も先の事に関してであり、少しばかり先の世界に干渉する事は可能だ。
 ただし、予測できる範囲に限る…という但し書きが付くが。
 どういう事かというと、現在の人や国、文明や文化といった事柄を勘案し、その結果導き出される魂が新たに宿る可能性を持った生物の誕生を予測し、そこに転生させるという事であり、その干渉は精々100~150年ほどの未来まで。
 事実、トールヴァルドの前世である大河芳樹は、死後かなりの年月が過ぎてこの惑星に転生した。
 だが、それに掛かった年月は数十億年レベルの未来の話ではない。
 転生とは、数ヶ月~数十年程度の未来へと魂を送り込む事に他ならないのだ。 
 ちなみに過去に転生する事は出来ない。
 時の流れは常に一方向にしか流れない。
 それを遡る事が出来るのは、時間も次元を超える事が出来る転移だけだ。
 輪廻転生システムを通った魂は、等しく同じ次元の同じ時間軸の世界の未来にしか転生できなくなっている。
 ユズキとユズカが遥かな過去から時間を超越して転移して来たのは、あくまでもこの法則に則っているからである。
 まあ、転移などというおかしな現象が起きるのかは、輪廻転生局ではシステムのバグだと管理局では考えている様だが、実は原因は全く不明である。
 対して大河芳樹の魂が、15億年も未来の世界に転生することなどあり得ない。
 いくら超高性能なコンピューターを駆使した所で、そんな未来の世界の生まれる前の一個人の情報など予測も特定できない。
 輪廻転生システムという超高性能なシステムでもってしても、そんな芸当は不可能。
 なのに、15億年の未来に転生したと考えるよりは、別次元の世界の地球から転生をしたと考えた方が自然だ。
 そう、その方が自然なのである。
 だが、魂を別の次元世界に送る機能など、管理局にある輪廻転生システムには無い。


「と言う事は…彼は輪廻転生システムを介さずに転生した…?」
 リリアが驚くのも当然の事。
「そんな馬鹿な事は…でも、そう考えるのが自然…と言う事は、私が知らない機能をシステムは保有している?」
 1人で何事がブツブツと呟きながら、考えを纏めるリリア。
 往々として、何事かを深く思考する時、人は独り言を呟いたりするものである。
「いえ、そんな事はないはず…。では、システム以外で…? まさか…いえ、そう考えれば、何故かしっくりくる…。ボーディさん、彼は局長が自らこの星へと転生させたんですね!?」
「その通りじゃ」
 リリアが辿り着いた答えに、即座に肯定の言葉を掛けたボーディであった。
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