システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児

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例の落書き

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 我が家のメンバー全員を引き連れ、俺は裏庭にある門を通り抜けた。

 ここはネス湖に面した裏門であり、邸が遮っているため街から見る事は出来ない。
 ちょくちょくホワイト・オルター号を横付けして俺達が乗り降りしているので、ここに門があるという事は広く知れ渡っているが、ここに来るためには湖を船などで渡るか、それとも湖に突き出した出島に建つ俺の邸を囲っている塀をぐるっと周るしかない。
 どっちにせよ、かなり人目に付く事となる。
 暗闇に紛れれば…と考える人も居るだろうが、そこはきちんとマッチョ・エルフの警備員がばっちり巡回警備していて難しい。 
 まあ、この出島に俺に無断で侵入すれば、確実に極刑は免れない。
 だって、俺ってば一応は伯爵様だし、嫁の1人はこの国の元第3王女様。
 貴族に逆らう平民め、不敬罪で打ち首獄門だー! とかやる気は全然無いけど、一応は王国の法律ではそうなるそうだ。
 なので、誰も俺の邸周辺には近寄らない。
 メリル曰く、そもそもこの領地の住民は俺への忠誠心が高いので、そう言った不埒な事は一切しないし考えない…だそうだ。
 まあ俺が領民の立場だったら、領主であり伯爵様、しかも女神の使徒様の家に何かしようなんて、考えもしないしね。
 
 さてさて、そんな俺の邸の裏手の門から湖の畔に出ると、ようやく誰の目にも塀いっぱいに描かれた落書きが飛び込んで来る。
「これが…例の落書き…ですか?」
 それらを目にしたマチルダが驚いて…とは違うな、感嘆の方がしっくりくるか? とにかく、思わずと言った風に呟いた。
「ああ、これがそうだよ」
 俺の作品では無いのだが、ちょっと自慢げに皆に向かって両手を広げ、この落書きを披露した。
『おぉ~~!』
 ミヤとヒナの落書きを見に来た我が家のメンバー全員が、2人の作品を称嘆した。
 皆が発した言葉は、たったそれだけだ。
 以降は少しの間、湖を渡る風の音、遠く街での喧騒、そして全員が呼吸の音だけしか聞こえてこなかった。
 全員がただただその落書きに見入っていたからだ。

 ミヤとヒナの2人は、毎晩の様に待機次元を抜け出し、この湖に面した塀に向かって行ていた火力調整。
 調整とは言え、最大出力に関しては問題無く出せる事は分かっていたので、今はどこまで威力を落とす事が出来るか…を調整していた。
 最初の内は、フォノン量子砲での威力調整をしていたようだが、元より質量を持たないフォノン量子での調整は困難であった。
 振動数と量子量の調整は、確かに難しいかもしれない。
 何故ならフォノンとは、大まかに音響フォノンと光学フォノンとに分けられる。
 ミヤもヒナも、感覚的にフォノン自体は理解しているらしいのだが、音響か光学かを分けて考えてはいないらしく、2つをまとめてフォノンと考えているらしい。
 どうしてそうなったかというと、2人は俺の頭の中の前世の知識かを参照して、色々と自らをアップデートして行っているたしいのだが、俺がそもそもフォノンに関して詳しくないのが原因だ。
 難しい説明は省略するが、この2つのフォノンは、実は振動数と効果が相反する量子らしい。
 らしいというのは、それが俺の知識の言かいだから…かな。
 前世で聞きかじった程度の知識なんて物は、実際には大して役に立たない物だと実感した。
 そもそもフォノン自体、あのワイバーン討伐戦の時まで完全に忘れてたんだしさ。
 まあ、それでも何とか自分達が扱える攻撃手段として実用化したミヤとヒナが凄いのは確かだが、しっかりとした原理とか仕組みとか知らずに使った物だから、そりゃ細かな威力調整なんて出来ないだろう。
 ならばいっそうの事、あの宇宙から海に撃ち込んだ熱線…いやさエネルギー砲の威力調整でもしてれば良い様なものの、どうにもあっちの威力調整は難しいらしい。
 なので、自分達の手で実用化にこぎつけたフォノン砲の方を何とかしたい…って事なんだそうだ。
 
 さて、そんなどうでも良い事(も無いかな?)の為に落書きされてしまった、我が邸の裏の塀。
 俺が自慢げに鼻高々に皆に披露したその落書きなのだが、それは白い塀と焦げた様な焦げ茶で描かれた、墨画とも水墨画とも呼ばれる見事な絵画なのである。。
 俺の知っている有名どころだと、雪舟とか尾形光琳の作品だけど、ミヤとヒナのこの落書きも負けてない出来だと思う。
 何たって、目の前に広がる塀一面にそれらが描かれているのだが、こんな墨絵の大作なんて、俺は前世で見た事無い。
 うん、見事だ…落書きだけど…。
 
 全員がその出来に息を飲んで絵画鑑賞をしているのだが、あっちの方に描かれてる、いや書かれてるのって…どう見たって日本語だよな。
 寿限無寿限無、五劫のすりきれって、なんであいつらは古典落語なんて知ってんだろう?
 いや、俺の知識から引っ張って来たんだろうけど、何故にそこをピンポイントで引っ張ったんだ? 
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