1,257 / 1,466
例の落書き
しおりを挟む
我が家のメンバー全員を引き連れ、俺は裏庭にある門を通り抜けた。
ここはネス湖に面した裏門であり、邸が遮っているため街から見る事は出来ない。
ちょくちょくホワイト・オルター号を横付けして俺達が乗り降りしているので、ここに門があるという事は広く知れ渡っているが、ここに来るためには湖を船などで渡るか、それとも湖に突き出した出島に建つ俺の邸を囲っている塀をぐるっと周るしかない。
どっちにせよ、かなり人目に付く事となる。
暗闇に紛れれば…と考える人も居るだろうが、そこはきちんとマッチョ・エルフの警備員がばっちり巡回警備していて難しい。
まあ、この出島に俺に無断で侵入すれば、確実に極刑は免れない。
だって、俺ってば一応は伯爵様だし、嫁の1人はこの国の元第3王女様。
貴族に逆らう平民め、不敬罪で打ち首獄門だー! とかやる気は全然無いけど、一応は王国の法律ではそうなるそうだ。
なので、誰も俺の邸周辺には近寄らない。
メリル曰く、そもそもこの領地の住民は俺への忠誠心が高いので、そう言った不埒な事は一切しないし考えない…だそうだ。
まあ俺が領民の立場だったら、領主であり伯爵様、しかも女神の使徒様の家に何かしようなんて、考えもしないしね。
さてさて、そんな俺の邸の裏手の門から湖の畔に出ると、ようやく誰の目にも塀いっぱいに描かれた落書きが飛び込んで来る。
「これが…例の落書き…ですか?」
それらを目にしたマチルダが驚いて…とは違うな、感嘆の方がしっくりくるか? とにかく、思わずと言った風に呟いた。
「ああ、これがそうだよ」
俺の作品では無いのだが、ちょっと自慢げに皆に向かって両手を広げ、この落書きを披露した。
『おぉ~~!』
ミヤとヒナの落書きを見に来た我が家のメンバー全員が、2人の作品を称嘆した。
皆が発した言葉は、たったそれだけだ。
以降は少しの間、湖を渡る風の音、遠く街での喧騒、そして全員が呼吸の音だけしか聞こえてこなかった。
全員がただただその落書きに見入っていたからだ。
ミヤとヒナの2人は、毎晩の様に待機次元を抜け出し、この湖に面した塀に向かって行ていた火力調整。
調整とは言え、最大出力に関しては問題無く出せる事は分かっていたので、今はどこまで威力を落とす事が出来るか…を調整していた。
最初の内は、フォノン量子砲での威力調整をしていたようだが、元より質量を持たないフォノン量子での調整は困難であった。
振動数と量子量の調整は、確かに難しいかもしれない。
何故ならフォノンとは、大まかに音響フォノンと光学フォノンとに分けられる。
ミヤもヒナも、感覚的にフォノン自体は理解しているらしいのだが、音響か光学かを分けて考えてはいないらしく、2つをまとめてフォノンと考えているらしい。
どうしてそうなったかというと、2人は俺の頭の中の前世の知識かを参照して、色々と自らをアップデートして行っているたしいのだが、俺がそもそもフォノンに関して詳しくないのが原因だ。
難しい説明は省略するが、この2つのフォノンは、実は振動数と効果が相反する量子らしい。
らしいというのは、それが俺の知識の言かいだから…かな。
前世で聞きかじった程度の知識なんて物は、実際には大して役に立たない物だと実感した。
そもそもフォノン自体、あのワイバーン討伐戦の時まで完全に忘れてたんだしさ。
まあ、それでも何とか自分達が扱える攻撃手段として実用化したミヤとヒナが凄いのは確かだが、しっかりとした原理とか仕組みとか知らずに使った物だから、そりゃ細かな威力調整なんて出来ないだろう。
ならばいっそうの事、あの宇宙から海に撃ち込んだ熱線…いやさエネルギー砲の威力調整でもしてれば良い様なものの、どうにもあっちの威力調整は難しいらしい。
なので、自分達の手で実用化にこぎつけたフォノン砲の方を何とかしたい…って事なんだそうだ。
さて、そんなどうでも良い事(も無いかな?)の為に落書きされてしまった、我が邸の裏の塀。
俺が自慢げに鼻高々に皆に披露したその落書きなのだが、それは白い塀と焦げた様な焦げ茶で描かれた、墨画とも水墨画とも呼ばれる見事な絵画なのである。。
俺の知っている有名どころだと、雪舟とか尾形光琳の作品だけど、ミヤとヒナのこの落書きも負けてない出来だと思う。
何たって、目の前に広がる塀一面にそれらが描かれているのだが、こんな墨絵の大作なんて、俺は前世で見た事無い。
うん、見事だ…落書きだけど…。
全員がその出来に息を飲んで絵画鑑賞をしているのだが、あっちの方に描かれてる、いや書かれてるのって…どう見たって日本語だよな。
寿限無寿限無、五劫のすりきれって、なんであいつらは古典落語なんて知ってんだろう?
いや、俺の知識から引っ張って来たんだろうけど、何故にそこをピンポイントで引っ張ったんだ?
ここはネス湖に面した裏門であり、邸が遮っているため街から見る事は出来ない。
ちょくちょくホワイト・オルター号を横付けして俺達が乗り降りしているので、ここに門があるという事は広く知れ渡っているが、ここに来るためには湖を船などで渡るか、それとも湖に突き出した出島に建つ俺の邸を囲っている塀をぐるっと周るしかない。
どっちにせよ、かなり人目に付く事となる。
暗闇に紛れれば…と考える人も居るだろうが、そこはきちんとマッチョ・エルフの警備員がばっちり巡回警備していて難しい。
まあ、この出島に俺に無断で侵入すれば、確実に極刑は免れない。
だって、俺ってば一応は伯爵様だし、嫁の1人はこの国の元第3王女様。
貴族に逆らう平民め、不敬罪で打ち首獄門だー! とかやる気は全然無いけど、一応は王国の法律ではそうなるそうだ。
なので、誰も俺の邸周辺には近寄らない。
メリル曰く、そもそもこの領地の住民は俺への忠誠心が高いので、そう言った不埒な事は一切しないし考えない…だそうだ。
まあ俺が領民の立場だったら、領主であり伯爵様、しかも女神の使徒様の家に何かしようなんて、考えもしないしね。
さてさて、そんな俺の邸の裏手の門から湖の畔に出ると、ようやく誰の目にも塀いっぱいに描かれた落書きが飛び込んで来る。
「これが…例の落書き…ですか?」
それらを目にしたマチルダが驚いて…とは違うな、感嘆の方がしっくりくるか? とにかく、思わずと言った風に呟いた。
「ああ、これがそうだよ」
俺の作品では無いのだが、ちょっと自慢げに皆に向かって両手を広げ、この落書きを披露した。
『おぉ~~!』
ミヤとヒナの落書きを見に来た我が家のメンバー全員が、2人の作品を称嘆した。
皆が発した言葉は、たったそれだけだ。
以降は少しの間、湖を渡る風の音、遠く街での喧騒、そして全員が呼吸の音だけしか聞こえてこなかった。
全員がただただその落書きに見入っていたからだ。
ミヤとヒナの2人は、毎晩の様に待機次元を抜け出し、この湖に面した塀に向かって行ていた火力調整。
調整とは言え、最大出力に関しては問題無く出せる事は分かっていたので、今はどこまで威力を落とす事が出来るか…を調整していた。
最初の内は、フォノン量子砲での威力調整をしていたようだが、元より質量を持たないフォノン量子での調整は困難であった。
振動数と量子量の調整は、確かに難しいかもしれない。
何故ならフォノンとは、大まかに音響フォノンと光学フォノンとに分けられる。
ミヤもヒナも、感覚的にフォノン自体は理解しているらしいのだが、音響か光学かを分けて考えてはいないらしく、2つをまとめてフォノンと考えているらしい。
どうしてそうなったかというと、2人は俺の頭の中の前世の知識かを参照して、色々と自らをアップデートして行っているたしいのだが、俺がそもそもフォノンに関して詳しくないのが原因だ。
難しい説明は省略するが、この2つのフォノンは、実は振動数と効果が相反する量子らしい。
らしいというのは、それが俺の知識の言かいだから…かな。
前世で聞きかじった程度の知識なんて物は、実際には大して役に立たない物だと実感した。
そもそもフォノン自体、あのワイバーン討伐戦の時まで完全に忘れてたんだしさ。
まあ、それでも何とか自分達が扱える攻撃手段として実用化したミヤとヒナが凄いのは確かだが、しっかりとした原理とか仕組みとか知らずに使った物だから、そりゃ細かな威力調整なんて出来ないだろう。
ならばいっそうの事、あの宇宙から海に撃ち込んだ熱線…いやさエネルギー砲の威力調整でもしてれば良い様なものの、どうにもあっちの威力調整は難しいらしい。
なので、自分達の手で実用化にこぎつけたフォノン砲の方を何とかしたい…って事なんだそうだ。
さて、そんなどうでも良い事(も無いかな?)の為に落書きされてしまった、我が邸の裏の塀。
俺が自慢げに鼻高々に皆に披露したその落書きなのだが、それは白い塀と焦げた様な焦げ茶で描かれた、墨画とも水墨画とも呼ばれる見事な絵画なのである。。
俺の知っている有名どころだと、雪舟とか尾形光琳の作品だけど、ミヤとヒナのこの落書きも負けてない出来だと思う。
何たって、目の前に広がる塀一面にそれらが描かれているのだが、こんな墨絵の大作なんて、俺は前世で見た事無い。
うん、見事だ…落書きだけど…。
全員がその出来に息を飲んで絵画鑑賞をしているのだが、あっちの方に描かれてる、いや書かれてるのって…どう見たって日本語だよな。
寿限無寿限無、五劫のすりきれって、なんであいつらは古典落語なんて知ってんだろう?
いや、俺の知識から引っ張って来たんだろうけど、何故にそこをピンポイントで引っ張ったんだ?
0
お気に入りに追加
1,833
あなたにおすすめの小説
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。

死んだのに異世界に転生しました!
drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。
この物語は異世界テンプレ要素が多いです。
主人公最強&チートですね
主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください!
初めて書くので
読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。
それでもいいという方はどうぞ!
(本編は完結しました)

『転生したら「村」だった件 〜最強の移動要塞で世界を救います〜』
ソコニ
ファンタジー
29歳の過労死サラリーマン・御影要が目覚めたのは、なんと「村」として転生した姿だった。
誰もいない村の守護者となった要は、偶然迷い込んできた少年リオを最初の住民として迎え入れ、徐々に「村」としての力を開花させていく。【村レベル:1】【住民数:0】【スキル:基本生活機能】から始まった異世界生活。

こちらの異世界で頑張ります
kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で
魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。
様々の事が起こり解決していく

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが
倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、
どちらが良い?……ですか。」
「異世界転生で。」
即答。
転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。
なろうにも数話遅れてますが投稿しております。
誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。
自分でも見直しますが、ご協力お願いします。
感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~
春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。
冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。
しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。
パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。
そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。
成長促進と願望チートで、異世界転生スローライフ?
後藤蓮
ファンタジー
20年生きてきて不幸なことしかなかった青年は、無職となったその日に、女子高生二人を助けた代償として、トラックに轢かれて死んでしまう。
目が覚めたと思ったら、そこは知らない場所。そこでいきなり神様とか名乗る爺さんと出会い、流れで俺は異世界転生することになった。
日本で20年生きた人生は運が悪い人生だった。来世は運が良くて幸せな人生になるといいな..........。
そんな思いを胸に、神様からもらった成長促進と願望というチートスキルを持って青年は異世界転生する。
さて、新しい人生はどんな人生になるのかな?
※ 第11回ファンタジー小説大賞参加してます 。投票よろしくお願いします!
◇◇◇◇◇◇◇◇
お気に入り、感想貰えると作者がとても喜びますので、是非お願いします。
執筆スピードは、ゆるーくまったりとやっていきます。
◇◇◇◇◇◇◇◇
9/3 0時 HOTランキング一位頂きました!ありがとうございます!
9/4 7時 24hランキング人気・ファンタジー部門、一位頂きました!ありがとうございます!

くじ引きで決められた転生者 ~スローライフを楽しんでって言ったのに邪神を討伐してほしいってどゆこと!?~
はなとすず
ファンタジー
僕の名前は高橋 悠真(たかはし ゆうま)
神々がくじ引きで決めた転生者。
「あなたは通り魔に襲われた7歳の女の子を庇い、亡くなりました。我々はその魂の清らかさに惹かれました。あなたはこの先どのような選択をし、どのように生きるのか知りたくなってしまったのです。ですがあなたは地球では消えてしまった存在。ですので異世界へ転生してください。我々はあなたに試練など与える気はありません。どうぞ、スローライフを楽しんで下さい」
って言ったのに!なんで邪神を討伐しないといけなくなったんだろう…
まぁ、早く邪神を討伐して残りの人生はスローライフを楽しめばいいか
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる