システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児

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そんなものは無い

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「ふぅ…完成…」
 ここは薄暗い室内の隅っこ。
 その床にぺたんと座り込みながら、何やら先程から一心不乱に作業をしていた女性が、額の汗を拭いつつ、そうぽつりと呟いたぬぐった。
 モニターの様な物の光によって照らし出されたその女性…モフレンダの顔は、実に満足気であった。
「ついに完成したのかや?」
 そんなモフレンダの背後から音もなく近づき、そのモニターの様な物をのぞき込むボーディ。
 振り返りもせず、モフレンダはコクリと頷くことでそれに応えた。
「ふむ…なるほど。確かに妾の出した要求と定義の仕様は全て満たされておるな。流石じゃ」
 ボーディの称賛を聞いても、表情をピクリとも動かさないモフレンダ。
「ん? じゃが、ここは少々妾の要求に対して過剰では?」
 手にした紙の束と、覗き込んだモニターの様な物の中を上から下へと流れる文字列の中の一点を指さし、ボーディがモフレンダに問いかけた。
「ん…ここは強化した方が良い。裏切りは許さない」
 ちょっとモフレンダの目つきがおかしい。
「し、しかしじゃな…これはやりすぎ…じゃないか…のぉ…?」
 そんなモフレンダの様子に戸惑いを見せるボーディ。
「これぐらいがいい。裏切った場合、肉体が跡形も残らず爆散。ついでに魂はブラックホールに吸い込まれる。転生も出来ずに永遠に闇の中をさ迷えばいい」
「か、過激すぎやせんか」
「大丈夫。裏切らなきゃいいだけの事」
 瞳孔全開なうえ、恍惚とした表情のモフレンダ。
 完全にヤバい薬でもキメてるようだ。
「う、あ、お…おぅ…それはそうじゃが…もちっと要件を緩くしてやらぬか? ちと可哀そうじゃぞ?」
 モフレンダが強化した部分…ダンジョンマスター及びトールヴァルド関係者に対し、全ての命令を完全無条件で受け入れる事。返事は『イエス』と『はい』しか認めない…。
 これではどこぞの小説やら漫画に出てくる隷属の契約と大差ないのではないだろうか。
 しかも、もしこれを破る事があれば、5秒後に肉体は内部から爆散する…。
 一子相伝の暗殺拳で秘孔を突かれた敵じゃないんだから、ボーディでもこれは酷いと感じた様だ。
「…そう? それじゃ10秒後に調整」 
 それでは、寿命が5秒伸びただけである。  
「えっと…10秒以内に何らかの方法で爆…散を止める方法はあるんじゃよな?」
「そんなものは無い。爆発はロマン! ゆえに起爆装置に停止スイッチなど無い!」

 あかん…これはあかんヤツや…ボーディは心の中でそう呟いた。
 あの2人の魂を、この肉体に移しかえさせてはいけない!
 こんな薄暗い空間で、毎日ずっと休みも無く作業していたモフレンダの気が狂ったに違いない!
 モフレンダと仲が良いモフリーナに説得してもらおう!
 そうしよう、そう決めた!
 ボーディが心の中でそう決めた時、
「さて、それじゃ2人を呼んでこようかな…」
 モフレンダが立ち上がった。
「ちょっと待て! 待つのじゃモフレンダ! そ、そうじゃ、完成したボディの最終チェックを、モフリーナにもしてもらおうぞ! きっとモフリーナも満足して、お主を褒めてくれると思うぞ!」
 ボーディ必死である。
「…頭…なでなでしてくれる?」
「お、おぉ…おお! もちろんじゃ! 頭だけでなく、全身わしゃわしゃしてくれるぞい!」

 サラとリリアは元は敵とはいえ、今は管理局にも切り捨てられ、こちらに協力してくれているのだ。
 まさか、そんな一言言い間違えただけで10秒後に絶対に爆散するような、超危険なボディを使わすなんて、あまりにも良心が痛む。
 ここでモフレンダのご機嫌を取り、何としてでもモフリーナの口からこの恐ろしい仕様を変更するように
モフレンダを言いくるめ…言い含め…説得してもらわねば!
 ボーディは、ダラダラと滝のように流れ落ちる汗を拭いもせず、必死にモフレンダのご機嫌を取りつつ、この後の段取りを必死になって考えるのであった。
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