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超越した存在
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「そう…ですね。今となっては、私達が管理局に監視されてたって事は間違い無いでしょうし、もしもの時は切り捨てられるのも…間違い無い事でしょうね…」
分ってはいた事だが、いざ誰かに言われるのは、かなり精神的にダメージは大きいものだ。
何とかそのダメージを乗り越え、リリアはなんとか平静を取り戻す事が出来た…のだが、少しだけ疑問が残った。
「でも、確かさっき…神経伝達速度をもう少し上げる必要があるとか言ってた気がしますが…」
「うむ、そう言ったが?」
何を言ってるんだ? といった様相のボーディ。
「えっと…ちなみに今の状態だと、どれぐらいの速度なんでしょうか…?」
あまりに平然としているボーディに、思わずそう聞いてしまうリリア。
「どのぐらい…と言われてものぉ? まあ、お主のそのボディの大体ざっと1.2倍ってところかのぉ?」
「1.2倍!?」
あまり公言などするつもりは無いが、そもそもリリアもサラも常人の肉体よりも遥かに高い身体能力を持っている。
しかも、情報処理能力に至っては、高性能な超小型ポジトロン電子頭脳を持っているのだから、神経伝達速度はそもそも常人の数倍近く速いのだ。
そうしないと、管理局との通信を処理しながらその他の行動など出来ないからと言うだけの事なのだが。
その元より常人よりも高い神経伝達速度のさらに1.2倍というだけでも驚きなのに、それでもボーディは満足してはいないらしい。
「せめてその身体の倍は速くしたいのぉ」
「えっと…何故に?」
そんな高い能力が何故に必要なのか、リリアがその答えを求めるのも無理も無いのかも知れない。
「ああ、その答えは簡単じゃ。色々と細かい事情をしっておるお主等に、はあのトールヴァルドの補佐をして欲しいからじゃ」
「補佐…ですか?」
ボーディの答えを聞いても、今いリリアにはピンと来ない。
「そうじゃ、補佐じゃ。あ奴の事じゃから、きっと近いうちに覚醒するじゃろうからのぉ」
「あ奴? まさか、トールヴァルド様の事ですか?」
「うむ、その通りじゃ。あ奴が覚醒したら、その程度の能力では、本当に補佐程度しか出来ぬじゃろうがのぉ…まぁ妾もじゃが」
何やらボーディが最後に小声で呟いていたが、そんな声が届かない程にリリアは衝撃を受けていた。
トールヴァルドがいずれ覚醒するであろうことは、管理局長も随分前から確信していたし、だからこそサラをこの世界に送り込んでいたのだ。
そのサラのボディのメンテナンスのためにやって来たのがリリア。
ボーディ達もトールヴァルドが覚醒するであろう事を疑いもしていなかったが、彼が覚醒したら今よりも高い身体能力が必要で、それでも補佐しか出来ないとは、どういう事なのだろうか?
「なんじゃ、疑問でもあるのかや?」
何やら黙り込んで考え込んでしまったリリアに、小首を捻る金髪ロリのボーディ。
「何と言うのか…覚醒って一体なんだろうなぁ…って」
「…お主…管理局で聞いて無いのかや?」
「はい…。ただ、輪廻転生システム…いえ、輪から外れるという事ぐらいしか…」
リリアの言葉に、長い長い溜息を吐くボーディ。
「お主等は、何も聞かされてなかったのか…。良くそれで管理局の局員なんぞしておられたもんじゃのぉ」
「返す言葉もございません…」
「覚醒とはのぉ…」
培養水槽が所狭しと並び立つ部屋の一画に、ソファーとテーブルが置かれていた。
2人はそこに場を移し、腰を落ち着けた所で、ボーディが語り始めた。
それによると、ボーディのいう所の覚醒とは、リリア達が知っている覚醒とはかなりの違いがあった。
そもそも人とは生体電流によって外部からの刺激を脳が受け取り、それを脳が処理して肉体の各部に生体電流を使い指示を出し、その指示に従って肉体が動く。
無論、反射反応などの例外も多々あるが、それでも生体電流による指示が必ずどこかで関わって来る。
生体電流とは、微小電流であり、その速度は人が認識出る物ではない。
それほど電気の流れとは速いものだ。
だが、それでもタイムラグは必ず生じる。
しかし覚醒をすると第一段階として、そのタイムラグが無くなるどころか、覚醒者の認識速度はそれを大きく上回る。
次いで第二段階に移行すると、覚醒者は時間すら超越する。
第三段階では、時間だけでなく時空すら覚醒者は超越する。
そして、さらにそれを超越する完全覚醒へと至る道もあるという。
つまり完全に覚醒をすると、時間も次元もそれらを含めた距離すらも超越し、全てを手の内に出来るのだ。
まあ、それを成すためには、莫大な魂のエネルギーを必要とするため、今までに覚醒した者達でも第三段階の覚醒まで至った者はあまり居ない。
ましてや、第三段階を超越した完全なる覚醒へ至った者など皆無だそうだ。
しかし、第三段階の覚醒まで至った者はあまり居ない…つまり第三段階に至った者は居ないわけでは無いという事。
「お主も良く知っておる奴も、第三段階までは覚醒しておる者じゃぞ?」
「…私が知っている…? はっ! もしかして管理局長!?」
確かに管理局長は時空も時間も超越していて、莫大な魂のエネルギーを持ってる。
管理局長その人自身が率いてる管理局員ですら知らなかった真実を、リリアが知った瞬間であった。
「まあ、あ奴もその一人じゃな。他には、トールヴァルドの異次元同位体…」
続くボーディの言葉は、リリアには半分ほどは予想出来ていた。
「例のひよこ達ですね」
「その通りじゃ。あ奴らも次元も時間も超越した存在じゃ」
分ってはいた事だが、いざ誰かに言われるのは、かなり精神的にダメージは大きいものだ。
何とかそのダメージを乗り越え、リリアはなんとか平静を取り戻す事が出来た…のだが、少しだけ疑問が残った。
「でも、確かさっき…神経伝達速度をもう少し上げる必要があるとか言ってた気がしますが…」
「うむ、そう言ったが?」
何を言ってるんだ? といった様相のボーディ。
「えっと…ちなみに今の状態だと、どれぐらいの速度なんでしょうか…?」
あまりに平然としているボーディに、思わずそう聞いてしまうリリア。
「どのぐらい…と言われてものぉ? まあ、お主のそのボディの大体ざっと1.2倍ってところかのぉ?」
「1.2倍!?」
あまり公言などするつもりは無いが、そもそもリリアもサラも常人の肉体よりも遥かに高い身体能力を持っている。
しかも、情報処理能力に至っては、高性能な超小型ポジトロン電子頭脳を持っているのだから、神経伝達速度はそもそも常人の数倍近く速いのだ。
そうしないと、管理局との通信を処理しながらその他の行動など出来ないからと言うだけの事なのだが。
その元より常人よりも高い神経伝達速度のさらに1.2倍というだけでも驚きなのに、それでもボーディは満足してはいないらしい。
「せめてその身体の倍は速くしたいのぉ」
「えっと…何故に?」
そんな高い能力が何故に必要なのか、リリアがその答えを求めるのも無理も無いのかも知れない。
「ああ、その答えは簡単じゃ。色々と細かい事情をしっておるお主等に、はあのトールヴァルドの補佐をして欲しいからじゃ」
「補佐…ですか?」
ボーディの答えを聞いても、今いリリアにはピンと来ない。
「そうじゃ、補佐じゃ。あ奴の事じゃから、きっと近いうちに覚醒するじゃろうからのぉ」
「あ奴? まさか、トールヴァルド様の事ですか?」
「うむ、その通りじゃ。あ奴が覚醒したら、その程度の能力では、本当に補佐程度しか出来ぬじゃろうがのぉ…まぁ妾もじゃが」
何やらボーディが最後に小声で呟いていたが、そんな声が届かない程にリリアは衝撃を受けていた。
トールヴァルドがいずれ覚醒するであろうことは、管理局長も随分前から確信していたし、だからこそサラをこの世界に送り込んでいたのだ。
そのサラのボディのメンテナンスのためにやって来たのがリリア。
ボーディ達もトールヴァルドが覚醒するであろう事を疑いもしていなかったが、彼が覚醒したら今よりも高い身体能力が必要で、それでも補佐しか出来ないとは、どういう事なのだろうか?
「なんじゃ、疑問でもあるのかや?」
何やら黙り込んで考え込んでしまったリリアに、小首を捻る金髪ロリのボーディ。
「何と言うのか…覚醒って一体なんだろうなぁ…って」
「…お主…管理局で聞いて無いのかや?」
「はい…。ただ、輪廻転生システム…いえ、輪から外れるという事ぐらいしか…」
リリアの言葉に、長い長い溜息を吐くボーディ。
「お主等は、何も聞かされてなかったのか…。良くそれで管理局の局員なんぞしておられたもんじゃのぉ」
「返す言葉もございません…」
「覚醒とはのぉ…」
培養水槽が所狭しと並び立つ部屋の一画に、ソファーとテーブルが置かれていた。
2人はそこに場を移し、腰を落ち着けた所で、ボーディが語り始めた。
それによると、ボーディのいう所の覚醒とは、リリア達が知っている覚醒とはかなりの違いがあった。
そもそも人とは生体電流によって外部からの刺激を脳が受け取り、それを脳が処理して肉体の各部に生体電流を使い指示を出し、その指示に従って肉体が動く。
無論、反射反応などの例外も多々あるが、それでも生体電流による指示が必ずどこかで関わって来る。
生体電流とは、微小電流であり、その速度は人が認識出る物ではない。
それほど電気の流れとは速いものだ。
だが、それでもタイムラグは必ず生じる。
しかし覚醒をすると第一段階として、そのタイムラグが無くなるどころか、覚醒者の認識速度はそれを大きく上回る。
次いで第二段階に移行すると、覚醒者は時間すら超越する。
第三段階では、時間だけでなく時空すら覚醒者は超越する。
そして、さらにそれを超越する完全覚醒へと至る道もあるという。
つまり完全に覚醒をすると、時間も次元もそれらを含めた距離すらも超越し、全てを手の内に出来るのだ。
まあ、それを成すためには、莫大な魂のエネルギーを必要とするため、今までに覚醒した者達でも第三段階の覚醒まで至った者はあまり居ない。
ましてや、第三段階を超越した完全なる覚醒へ至った者など皆無だそうだ。
しかし、第三段階の覚醒まで至った者はあまり居ない…つまり第三段階に至った者は居ないわけでは無いという事。
「お主も良く知っておる奴も、第三段階までは覚醒しておる者じゃぞ?」
「…私が知っている…? はっ! もしかして管理局長!?」
確かに管理局長は時空も時間も超越していて、莫大な魂のエネルギーを持ってる。
管理局長その人自身が率いてる管理局員ですら知らなかった真実を、リリアが知った瞬間であった。
「まあ、あ奴もその一人じゃな。他には、トールヴァルドの異次元同位体…」
続くボーディの言葉は、リリアには半分ほどは予想出来ていた。
「例のひよこ達ですね」
「その通りじゃ。あ奴らも次元も時間も超越した存在じゃ」
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