システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児

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番外1) 出産

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 トールヴァルドの生きるこの世界は、元居た世界…地球と比べるまでもなく、文化は大きく遅れている。
 と言っても、それをこの世界に住む人々は知らない。
 だが、その違いを重く受け止めつつも、この世界で生きている者…いや、元日本人の夫婦が居る。
 それが、トールヴァルド邸で執事(見習いは取れた)をしているユズキであり、メイド(らしい仕事はしてないが)のユズカだ。
 
 高校入試を無事に乗り切り、2人で揃って春からのワクワクのハイスクールライフを満喫するべく、電車で街へと買い物に仲良く出かけたこの幼馴染の2人であったが、何がどうなったのか分からないうちに、この世界に転移…というか、。飛ばされてきた。
 元から互いに恋心を持っていたのだから、この世界で共に生活をしていたら、そりゃぁまぁ…くっつくのも当然である。
 この世界では考えられない様な斬新で特殊な最新技術をてんこ盛りにした結婚式を経て、2人は晴れて夫婦となった。
 念のため、はっきりと断っておくが、決してできちゃった婚ではない。
 周囲が口から砂糖をトン単位で吐きそうな程に何かといちゃつく2人ではあるのだが、意外にも貞操観念はしっかりしている。
 結婚した翌年に、ユズカが妊娠をし、その翌年に愛娘を産んだのだが…日本ではまだ年齢的には女子高生。
 無論、この世界では成人年齢であり、結婚し子供がいてもおかしくない世界なのだが。

 地球でいう所の中世ヨーロッパの世界では、女性は平均して4~5人の子供を産んでいたらしい。
 安全に妊娠と出産が出来る期間を出来るだけ多くとるため、まだ若いうちに結婚するのが多かった…っと、いう説もあるらしい。
 まあ、貴族達がただのロリコンであったという可能性も無くは無いが…。
 また、医療技術や公衆衛生という観念が未発達であった時代の特徴でもあるのだが、平均寿命が驚くほどに短い。
 せっかく産んだ子供も、無事に成人できるのは半数近かったそうで、子供を成人させ血を残す事が難しい世界だからこそ、多産であったとも言えよう。
 これは中世ヨーロッパだけに限った事ではない。
 日本であっても七五三の様に、子供が3歳・5歳・7歳まで無事生き残れたことを祝う習慣が現代でも残っているほどなのだ。
 とは言え、このトールヴァルド達の住む世界では、妊娠確率がかなり低い。
 なので、実際には妊活を長く行える様にと、早期の結婚が多いというのが実情だ。

 さて、そんな世界へ事前準備も知識持たずにやって来たユズキとユズカ。
 日本名は、白須柚希と瀬尾柚夏。
 結婚したので、日本で多くの既婚女性が戸籍に登録しているのを参考にすれば、瀬尾は旧姓と言う事になる。
 そんな2人だが、無事結婚した後のイチャラブ期間の間に、見事に妊娠した。
 まあ、元々がこの世界とは違う世界殻やって来たのだから、この世界の妊娠率など当てはまるはずもない。

 しかしここで2人には大きな問題がのしかかった。
 日本の産婦人科での充実した施設や、総合病院のNICUの様な高度な医療技術を知っている2人としては、この世界での出産に対して不安に思う気持ちが、日々非常に大きくなっていったのだ。
 だがしかし! この世界には日本…いや、地球には無かった物が存在する!
 それが魔法だ。
 とは言っても、魔法を実用レベルで使いこなせる人族は、世界中を探してもほんの一握りの人数しか居ない。
 そして、そんな貴重な技術を持つ物を、権力者たちが見逃すはずもなく、ほぼほぼ国や高位につくものに囲われている。
 しかし例外もある。
 人族との容姿や見た目、生活習慣の違いなどから、亜人として迫害を受け続けて来た魔族達は、この魔法という技術を実用レベルでほぼ全ての者が使用できる。
 元来、争い事などを好まず、のんびりと牧畜などをしながら生活してきた彼らは、医療や治癒に関連する魔法と創薬技術をコツコツと歴代磨き続けてきた。
 
 そんな魔族達が、何の因果かサラという規格外のおかしな奴の口車に乗って、トールヴァルドの元に身を寄せたのは、もう随分と前の事になるのだが、そのおかげでトールヴァルドの領地には、他の地域では見られない程に立派な治癒院が開院した。
 それ以外にも、トールが用意した広大な牧草地などを無料で彼らに開放し、魔族達を篤く保護もした。
 現在でも魔族を迫害しようとする者は居るのだが、そんな輩は街を見まわる屈強な筋肉エルフ達によってどっかに消えている。
 どこに消えているのかは、怖いので考えない様にするのが良いだろう。
  
 そんなこの世界では高度な医療技術をもった魔族さん達の治癒院。
 この存在は、実はあまり広まっていない。
 いや、別に隠しているわけでは無いのだが、あえて広めてないだけだ。
 何故か? 
 それは魔族達の有用さに気付いた権力者たちが、その魔手を伸ばさない為。
 まあ、水と生命の女神ネスの聖地であるこの地をどうにかしようという者も居ないので、秘匿まではしていない。
 ましてや、トールヴァルドの領地の目玉であるスパ・リゾートや、娼館街などの従業員や客達が、度々この魔族達の治療院のお世話になるのだから、口コミで彼等の事が広まるのだから、隠しようもないのだが…。

 そんな魔族達を囲い込もうなどと全く考えもせず、ただその高度な医療技術の恩恵にあやかりたいからと、遠路はるばるやってきた権力者が居る。
 名をウルリーカ・デ・アルテアン侯爵夫人と言い、トールヴァルドの実母である。
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