システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児

文字の大きさ
上 下
1,235 / 1,466

いきなりクライマックス!?

しおりを挟む
 銀色に輝く鎧を身に纏った者が振るった剣が、魔王の胸を切り裂いた。
「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! よ、よくもやってくれたな、小僧!」
 その真っ暗な空間では、今まさに魔王とトールヴァルドとの戦闘がクライマックスを迎えようとしていた。

 魔王は、見上げる程の巨躯を持ち、頭には6本の角を生やし、その前身の異常なまでに発達した筋肉は、今にもはち切れんばかりだ。
 浅黒い肌に、裂けた口からは鋭い牙が何本も顔を覗かせ、ぎらつく瞳はまるで血の様に赤黒い。
 対する銀色に輝く鎧を着た青年トールヴァルドは、青白く光る剣をゆったりと構えながら、魔王を挑発する様に声を発した。
「ふっ…別の世界の創造なんてとんでもない事をやらかそうとしている奴の戦闘力がこの程度とはね」
 切り裂かれた魔王の胸から溢れ出るのは血ではなく、まるでガスの様な物。
 そしてそれは、銀色の鎧をまとった青年の元へと流れてゆき、青年の身体へと吸い込まれて行った。
「ぐっ…まさかこの私のエネルギーを奪っているのか!?」
「ご名答! お前の本体は精神体…貴様は魂すら持たない。この世界全ての宇宙の始まり、ビッグバンを引き起こした知性と精神を持つ存在の欠片…そしてこの俺と同等の存在。お前を吸収する事に、何の問題がある?」
 魔王は切り裂かれた胸に、鋭い爪を持つ手を添えた。
 すると、見る間にその傷は塞がり、青年に流れるエネルギーもそれに伴い目に見える程に減ってゆき…やがて止まった。 
「ぐははははは! 貴様に流れたエネルギーなど、私の持つエネルギーのほんの1%にも満たんわ!」
「ふんっ! 俺の攻撃を避ける事すら出来ない貴様が、いつまで強がっていられるか見ものだな。!」
 高笑いする魔王に対峙した青年は、その光る剣を握り直して、切っ先を魔王に向けた。
「それにな、俺にはまだ切り札があるんだよ…来い! ミヤ、ヒナ!」
 剣を構えた青年の左右の空間が歪み、その中から黒地の着物を着た少女と白地の着物を着た少女が現れた。
 2人の少女は、長いマスケット銃を手に持ち、学生の様なランドセルを背負っている。
「そ、そいつらは…!」
 表情からは読み取れないが、魔王の声は動揺を抑えられていない。
「ミヤ、ヒナ! 好きに暴れろ! この空間でなら、全力全開の攻撃OKだ!」
 青年の言葉に、少女達はただ黙って頷く。
「何故だ! 貴様だけをこの空間に引き込んだというのに、そいつらは何なのだ!」
 もはや魔王のその顔からも動揺が見て取れた。
「嫁ーずやユズユズ、妖精達にブレンダーにクイーン…。俺の家族から引き離せば勝てると思ったか?」
「ぐっ…」
「だがな、この2人は、常に俺の居る空間を起点として召喚できるんだよ」
 ヘルムで青年の表情を窺う事は出来ないが、今この瞬間、きっともの凄いドヤ顔をしている事だろう。
「…た、たかが少女が2人増えた所で…」
 確かに魔王の言う様に、たかが少女2人が増えただけである。
 動き辛そうな着物を纏い、慎重の倍ほどにもなろうかというマスケット銃を持つ少女は、防具の類は一切身に付けていない。
 どう考えても速度を生かした戦法を取れようはずもなく、また単発式のマスケット銃など、役に立とうはずもない。
「この2人を見くびるなよ? 解放魂魄統轄庁の技術の粋を集めたこの最高にして最恐、そして最高傑作のガールずだ!」
 最高傑作の辺りでて鼻の穴を膨らませ、ふんすふんすと鼻息荒く、胸を張るミヤとヒナ。

「仕方ない…ならば私も奥の手を使うしかない…か」
「奥の手だと!?」
 魔王の言葉に、怪訝な様子の青年。
「グフフフフフフフフフフ…見せてやろう、これが私の最終形態だ!」
 その声と共に、魔王の周囲に黒い霧現れ、それが絡みつき、やがてその姿を完全に飲み込んだ。
 そしてその黒い霧のカーテンが、徐々に晴れていくと、そこには……



「って夢を昨夜見まして」
 トールヴァルドの妻達がミルシェの部屋に集まって、車座になって何やら話し合っていた。
「ミルシェさん、貴女…何て無駄に複雑な夢を…」
 どこか呆れた様に、メリルがため息交じりに感想を述べた。 
しおりを挟む
感想 725

あなたにおすすめの小説

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

死んだのに異世界に転生しました!

drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。 この物語は異世界テンプレ要素が多いです。 主人公最強&チートですね 主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください! 初めて書くので 読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。 それでもいいという方はどうぞ! (本編は完結しました)

『転生したら「村」だった件 〜最強の移動要塞で世界を救います〜』

ソコニ
ファンタジー
29歳の過労死サラリーマン・御影要が目覚めたのは、なんと「村」として転生した姿だった。 誰もいない村の守護者となった要は、偶然迷い込んできた少年リオを最初の住民として迎え入れ、徐々に「村」としての力を開花させていく。【村レベル:1】【住民数:0】【スキル:基本生活機能】から始まった異世界生活。

こちらの異世界で頑張ります

kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で 魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。 様々の事が起こり解決していく

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~

春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。 冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。 しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。 パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。 そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。

成長促進と願望チートで、異世界転生スローライフ?

後藤蓮
ファンタジー
20年生きてきて不幸なことしかなかった青年は、無職となったその日に、女子高生二人を助けた代償として、トラックに轢かれて死んでしまう。 目が覚めたと思ったら、そこは知らない場所。そこでいきなり神様とか名乗る爺さんと出会い、流れで俺は異世界転生することになった。 日本で20年生きた人生は運が悪い人生だった。来世は運が良くて幸せな人生になるといいな..........。 そんな思いを胸に、神様からもらった成長促進と願望というチートスキルを持って青年は異世界転生する。 さて、新しい人生はどんな人生になるのかな? ※ 第11回ファンタジー小説大賞参加してます 。投票よろしくお願いします! ◇◇◇◇◇◇◇◇ お気に入り、感想貰えると作者がとても喜びますので、是非お願いします。 執筆スピードは、ゆるーくまったりとやっていきます。 ◇◇◇◇◇◇◇◇ 9/3 0時 HOTランキング一位頂きました!ありがとうございます! 9/4 7時 24hランキング人気・ファンタジー部門、一位頂きました!ありがとうございます!

くじ引きで決められた転生者 ~スローライフを楽しんでって言ったのに邪神を討伐してほしいってどゆこと!?~

はなとすず
ファンタジー
僕の名前は高橋 悠真(たかはし ゆうま) 神々がくじ引きで決めた転生者。 「あなたは通り魔に襲われた7歳の女の子を庇い、亡くなりました。我々はその魂の清らかさに惹かれました。あなたはこの先どのような選択をし、どのように生きるのか知りたくなってしまったのです。ですがあなたは地球では消えてしまった存在。ですので異世界へ転生してください。我々はあなたに試練など与える気はありません。どうぞ、スローライフを楽しんで下さい」 って言ったのに!なんで邪神を討伐しないといけなくなったんだろう… まぁ、早く邪神を討伐して残りの人生はスローライフを楽しめばいいか

処理中です...