システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児

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サラの頭が残念だった (呼び出し前夜)

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「えっと…私の考えを聞いてもらえるっすか?」
 色々と考えている内に、何が正しくて何が正しくないのか、自分一人では答えが出せなくなったサラは、リリアに向かって言った。
「勿論です。それで、何を聞かせてくれるのですか?」
 まるでそれが想定内だとでも言う様に、リリアは落ちついた声音でそう問い返した。
「えっとぉ…この世界の始まりって、『無』の世界ってのは正しいんすよね?」
「ええ、正しいわ」
「んで、その世界を動かし始めたのが、私達も含めた原始のエネルギー生命体…でしたっけ?」
「まあ、色々と呼び名があるので、エネルギー生命体というのが正しい呼称かどうかは何とも言えませんけれども、その通りです」
「って事は、エネルギー生命体って呼ばれてるのに、魂は無かったんすよね?」
「ええ、不思議な事に生命体なのに魂は無かったそうよ」
 サラの疑問に、淡々と答えるリリア。
「この世界って、魂が最初は1つも無かった?」
「それも間違いでは無いわ」
「なのに、今では輪廻転生システムの前には、無数の魂が列をなしている…」
「それは貴女も見た事があるでしょう?」
 無表情で応えるリリアに対して、だんだんと表情が暗くなってゆくサラ。
「んじゃ、どっから魂って来たんすか? 精神体って、何なんすか?」
 我慢の限界が来たかの様に、サラがいきなり大声でリリアに詰め寄った。
「落ち着きなさい、サラ。私もそれが最大の疑問でした」
 いくらサラが大声で詰め寄ろうとも、リリアの表情は小動もしない。
「…リリア…も?」
「ええ、私もです」
 サラのこの疑問は、リリアがそう考える様に仕向けた結果なのかは分からない。
 だが、リリアはニヤリと笑った。

「私は思うのですが、この世界の始まりからすぐに生まれたのは、解放魂魄統轄庁なのでは無いかと思うのです」
 妙に自信満々な顔で語るリリア。
「そりゃぁ、輪廻転生管理局よりも上位組織なんすから、当然なんじゃないんすか?」
 何言ってんだこいつ? と言う顔もサラであったが、
「まあ、表面上はそうでしょう」
 ここでリリアは、ゆっくりと深呼吸をしたあと、静かに語り出した。
「解放魂魄統轄庁…私は、どうにもこのネーミングに違和感を覚えていたんです。何故輪廻転生の輪から外れた覚醒した魂だけを管理するのか? そして、管理されているはずの魂が、どうしてこの地にひよこの姿で自由に活動しているのか」
「言われてみれば…確かに、ネーミングセンスねーっすよね?」
「貴女が気にするのはそこですか? まあ、いいです。解放魂魄統轄庁…解放魂魄…魂魄を解放する…。魂の存在しない世界で、何故最初にこの組織が出来たのでしょうか。おかしく無いですか? 覚醒する魂すら無いというのに」
「あっ!」
「輪廻転生管理局が次に生れた組織ですが、覚醒した魂を管理するという組織が、何故輪廻転生の輪を管理する組織よりも先に出来たのです? 順番が逆では無いでしょうか?」
「確かに…」
「輪廻転生の輪を解脱した魂を管理する。確かにそう言った一面もあるでしょうが、明らかに何かが矛盾しています」
「してる…」
「では、解放魂魄統轄庁という組織は、本当は何のためにあるのでしょうか?」
「…はい、先生! わかりません!」
 ここまで話して、何も考えつかないのか…っと、リリアは頭痛が押し寄せて来るような気がして、大きくため息をついた。

「解放魂魄統轄庁…つまり、魂魄を解放すると考えたらどうでしょう?」
「ん? それって名前が逆になったって事?」
 思ったよりもサラの頭が残念だった事を再認識しつつ、リリアはそんなサラを無視して話を続けた。
「魂の存在しない世界で、魂を何かから解放する組織。解放とは言い換えれば放出と同じ意味を持ちます。では、一体何から放出するのでしょうか?」
「えっと…何から?」
「その答えが、ダンジョンマスター達なのですよ」
 リリアがそう言いはしたが、サラの脳ミソはすでにオーバーヒート気味であった。 
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