システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

自然体で！

　一晩中おかしな思考がぐるぐると頭の中を渦巻いていて、まんじりともしない夜を過ごした俺は。
　当たり前だけど、そんな調子で熟睡なんて出来るわけもなく、翌朝は目覚めも悪かった。
　覚醒して解脱をするという大目標があるにもかかわらず、こんなんでは全然鍛錬に身なんて入らない。
　はぁ…覚醒への道は遠いなぁ…。

　そんな俺の苦悩などどこ吹く風。
　今日も元気な嫁ーずと妖精達、それに母さんとラブリーな妹達、おまけでユズユズ夫妻にドワーフメイド衆が元気に食堂に顔を出した。
　我が家では、全員揃ってご飯を食べるのだ。
　この世界の統治制度はフューダリズムが主なので、使用人が食事を共にするなど他の貴族達が見たら発狂物だろう。
　俺も転生してこの世界で貴族家の長子として生きて来、自らも爵位を持つ貴族だから、そんな事は重々承知している。　
　だけど、前世ではそんな制度は表面上だけではあるかも知れないが、とうに崩壊していた世界。
　その記憶がしっかりと（なのかなぁ？）あるので、どうしても使用人を蔑ろにする様な事はしたくない。
　食事は全員一緒に、揃って食べるのが、一番楽しいし美味しいと思ってる。
　まあ、他の貴族とかと無駄な衝突を避けるため、パーティとかに行くときは別々にするんだけどね。
　
　和やかな食事も終わったタイミングで、コルネちゃんが俺に向かって、結構重要な事を告げた。
「お兄さま。先程お父さまより通信がありまして、本日の夕刻ぐらいには、こちらへお戻りになるそうです」
「何故に飯食ったあとに報告した！？」
「何故にと言われましても…別にさして重要では無いから？」
「何故に疑問形！？」
　う～～～む…何故何故と変な会話になってしまった。
「トールちゃん。そんなに騒ぐんじゃありません。ヴァルナルが帰還する事ぐらい、大した問題じではないでしょう？」
　…一応、あんたの旦那なんだけど…。
「それよりも、もっと気にするべき事があるのではないですか？」
「父さんが戻るよりも大事な事…？」
　そんなのあったっけ？
「あの人が帰ってくると言う事は、サラとリリアも帰ってくると言う事なのですよ？」
「あっ！」
　確かに確かに、言われてみれば当然だ！
　最近は、静かでいいなぁ…なんて思ってたけど、そういやあの２人が居なかったからだ。
「別にあの２人が帰って来たからといって、すでに対策を済ませた私達には何の問題も無いとは思いますが…」
　じっと黙って聞いていたメリルが口を挟んだ。
「確かにそうですね。ですが、居ると居ないのとでは、やはり色々と違うのではないでしょうか」
　続いてマチルダも、口を挟む。
「なるほど、確かにメリルとマチルダの言う事はもっともだ。対策済みの俺達が必要以上にあの２人を気にする必要は無いし、気にしすぎると色々と問題が発生する可能性が高い。いつと同じように過ごせばいい」
　俺の言葉に、この場の全員（ユリアちゃん除く）が頷いた。
「ただ、多少の警戒は必要かもしれない。まあ、無理に誤魔化そうとせず、自然体で行こう、自然体で！」
『はいっ！』
　俺の言葉に、全員の声が揃った。