システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児

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ゆっくりと、ゆっくりと

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 嫁ーずが手加減してくれたのだろうか?
 夜の運動会は結構あっさりと終わった…ほっとする。
 おかげで睡眠もそこそこしっかりと取ることが出来たので、朝の目覚めはばっちりだ。
  俺…5人と結婚してから、こんなに気持ちよく目覚めたのって…もしかして、初めてかも知れない…。

 毎朝の日課となっている鍛錬のため、俺は着替えると裏庭へと向かった。
 ここの所、なかなか集中できなかったから何かは分からないが、覚醒に到る道はまだ見えない。
 俺はゆっくりと静謐な朝の空気を肺いっぱいに吸い込んで、ゆっくりと両足の踵を揃えた。
 そう…道場でも、冬の冷たい板張りの床を素足で踏みしめた時も、夏の肺の中まで焼けそうな道場の空気を吸った時も、こうして気持ちを落ち着けながら。ゆっくりと両の踵を揃えて、型に入る前の気持ちを落ちつけたもんだ。

 この世界は、年がら年中過ごしやすい気温だが、それでも少しは気温の変化はある。
 サラ達が言うには、地殻の運動での気温変化ではなく、管理局が最初にこの星をデザインした時に、海流の流れをプログラムしたためだとか。
 確かにこの星には元々俺達が住む大陸しかなかったわけで、大半が海水で覆われた星だ。
 南北の極点は気温も低く、海水も凍った場所もあるらしい。
 その近海の海水温は低いそうだが、月も無いこの星では、潮の満ち引きもあまり大きくない。
 つまりは、海にはあんまり波が無いのだ。
 原因は、海底に大きな起伏が無い事や、月の引力の影響が無い事などの複数の複雑な要因が絡み合っているからで、そのせいで海流そのものがとても穏やかなのだそうだ。
 とは言っても、パンゲア大陸を創り出してしまったせいで、その海流にも変化はあるそうだが、一がこの星の真裏なのが幸いして、俺達の住むこの大陸には大きな影響はない。
 だが、今まで海水温の高い海流と低い海流が、管理局のプログラムに従って俺達の住む大陸を中心にして複雑に絡み合い、流れを変えたりしていたために微妙に変化していた気温も、少し変わってきている様だ。
 俺がこの星に転生して来てから感じてた時よりも、夏の気温はちょっと高く、逆に冬の気温はちょっと下がった。
 それでも、年中薄手の服で過ごせるんだから、気候的には地球の太平洋にあるマリアナ諸島と日本の沖縄の中間ぐらい?
 陸地に住んでいる俺達には、あまり気温の変化を感じる事は出来ないな。
 まあ、思いっきり実感しているのは人魚さん達で、『最近捕れる魚の種類が増えた』らしい。
 きっと少しだけ海流に変化があり、回遊してくる魚の種類が変わったんだろう。
 サメみたいなのがやって来ないといいなぁ…なんて、その話を聞いた時に思ったりした。

 ん? 何の話をしてたんだっけ?
 あ、そうだ気温だ気温!
 海流のせいで、ちょことおだけ変化した気温。
 微妙に季節ってもが出来た気もするが、長々話したけれども、結局大して気になるほどには変わってない。
 もしも植生とか変わったら、農業に大打撃を受けるかもしれないけど、今のところその心配は無い様で安心だ。
 うん、今日の空気も美味いなぁ。

 すぅーーーー…はぁーーーー………。
 横隔膜を下げる様に意識し、胸腔を広げる様に肺いっぱいに息を吸う。
 吐く時は逆に、横隔膜を上げる様に、胸腔を狭める様にして息を吐く。
 どちらもゆっくりと、ゆっくりと。
 数時には、腹が突き出るぐらいまで横隔膜を下げて、吐く時は思いっきり腹がへこむぐらいに。
 大きく横隔膜と胸腔を動かしながら、段々とその動きを小さく小さく…だけど同じだけの空気を吸って吐いて…。
 自然に腹式呼吸が出来るようになるまで、目を閉じて続ける。
 意識を呼吸に集中…集中…集中…。
 やがて湖の畔の鳥の鳴き声も、裏庭を吹き抜ける風が樹々を揺らす音も、キッチンから聞こえる微かな喧騒も、全てがゆっくりと遠のいて行き、俺の自分の息吹だけが俺の耳と意識を覆い尽くしていった。
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