システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児

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まだ内緒の事

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 場所は変わって、ここはとある次元のとある場所。
 そこは真っ白な空間であった。
『う~ん…上手く行かないなあ。もう少し、こっちからエネルギーを引っ張れないかなあ』
 この空間では異様に目立つ、真っ黒…そう、文字通り光すら飲み込んでしまう様な真っ黒な球体のような物を前にした、これまたぼんやりと光る何かがそう呟いた。
『何を悩んでる?』
 すると、姿こそ見えないが、何処からともなく声がした。
『ん? ああ、お前か。いや、何故か上手く新世界を創造出来ないな…と』
『新世界って、つまりは今存在する世界とは完全に隔離された新たな世界を創るって事だろ?』
 半ば呆れたような声。
『そうだね。今の全次元全宇宙を内包するこの世界とは全く別の新世界。私は新世界の神になるのだ!』
 何やら真っ白な存在が、力強く主張したように感じた。
『新世界って聞くと、どっかの次元世界の惑星にある食いだおれの街を想像してしまうなあ』
 これだけの存在は、何でそんな事をしっているのだろうか。
『ジャンジャン横丁! 通天閣! ビリケンさん!』
『おまえ、知りすぎだろう! まさか、その新世界の神になる気かよ!』
 あまりにもコアな固有名称を叫ぶ白い奴に思わず突っ込む声だけの存在。
 白い奴といっても、連邦の新型ではない。
『いや、神はビリケンさんだぞ?』
 まあ、その通りなのだが、ボケる白い奴。
『そういう意味じゃねーわー--!』
 真っ白な空間に、声だけの存在の絶叫が響きわたった。


 グーダイド王国の北部に横たわる、高い峰が連なる山脈。
 その山脈を越えてはるか北の地にある巨大な湖の畔では、はるばる王国からやってきた調査隊が、予定通りの調査を終えて帰路につくところであった。
 調査隊が逗留したのは、この湖のすぐ近くにある村。
 村の総人口は、調査隊の人数よりも少ない。
 一般的に、総人口以上の騎士や兵士が村にやって来る…それも、見た事も聞いた事も無い様な国から…であれば、まず最初に考えられるのは、自分達を暴力で支配しようと、侵略しようと来たと考えるのが普通である。
 しかし、調査隊がこの村へとやって来る前に、ダンジョンマスター達によるしっかりとした事前説明のおかげで、そういった考えを持つ村人は皆無であった。
 むしろ、この大人数の調査隊が村へともたらした、食料や数多くの物資のおかげで、調査隊を歓迎していた。
 なので、調査隊が予定していた所定の調査が終了し、村を離れる事になっている本日、村人たちは別れを惜しみ全員が揃って見送りに来ていた。

 村人達が心から騎士や兵士達との別れを惜しんでいるのでは無いのかもしれない。
 そんな村人達を見ていたヴァルナルは、内心そう考えている。
 調査隊が滞在中に大盤振る舞いした食料や酒類などが、調査隊との別れと同時に口に入れる事が出来ない事こそ、村人たちが惜しんでいる事なんだと考えていたからだ。
 まあ、ヴァルナルの考えは半分正解で半分間違っていたのだが。
 調査隊が去った後、ダンジョンマスター達により、衣食住に困る事無い生活が出来る、天国の様な土地へ移住する事が決まっていたのだから、別に調査隊の持ち込んだ食料だけを狙っていたのではないのだ。
 無論、それも少しはある。
 移住先では、無償で衣食住が提供されるわけでは無い事は、先に説明を受けていた。
 だが、調査隊は無償で食料を村人達の胃袋がはち切れるまで満たしてくれた。
 しかし、狭い社会であった村ではお気に召す相手が居なかった村の若人達にとって、若い男性女性の騎士や兵士達は、かなりの優良物件に見えた。
 そう、結婚相手として狙っていたのである。
 それは、調査隊の面々にも言える事。
 事前にダンジョンマスターから、そんな可能性も少しはあるかもしれないと聞いていたヴァルナルだが、実際にそんな事が起こるなどとは毛ほども考えていなかった。
「この度の我々グーダイド王国の調査に協力してくれたおかげで、昨日まででこの地での全ての予定の調査は完了した。よって、本日これより我々はこの地を去る。礼を言う」
 なので、かなりドライで短い別れの挨拶を一言すると、さっと湖の畔に停めてあるホワイト・オルター号のキャビンへと続くタラップを一段一段上がった。
 タラップの最上段まで上がったヴァルナルは、村人たちを振り返り、数度手を振ると、キャビンへと入って行く。
 そんなヴァルナルの後姿を、熱狂的に村人たちは盛大に見送ったのだった。

 ダンジョンマスターと村人達が交わした約定は、パンゲア大陸への移住だけではない。
 某湖を擁するどこぞの伯爵領への移住も約定には含まれていたのだ。
 恋仲となった騎士や兵士が居る国…そこへの移住も。
 だが、ゆっくりと閉まってゆくカーゴルームから身を乗り出して村人達へと手を振る若い騎士や兵士達には、それはまだ内緒の事であった。
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