システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

無心にならねば！

　はい、皆様のご想像通り、ゆっくりのんびりの夜なんて儚い夢でした。
　いくらガッチリと寝室の扉を施錠した所で、全くの無駄でしたよ。
　どうやってか俺には全然分からないけど、なぜか全部の錠が解錠されて、しんと寝静まった夜中に襲われました。
　ええ、もちろん嫁達３人です。
　とても映像ではお見せ出来ない様な、激しい乱れっぷりでした。
　え？　お前はそれが嫌いなのかって？
　無論、嫌いではありませんとも。
　ですが、限度という物が有ると思うのですよ。
　いくら若いからといって、何度も求められても困るんです！
　だって、相手は３人ですよ？　分ります？　相手は３人！　対する俺は１人なんです！　
　確かに前は５人も居ましたよ。
　あの時はあの時でかなり苦しい戦いを毎回強いられていました。
　３人と人数的には減りはしましたが、どう考えても運動量と俺のごにょごにょ…の消耗が、以前より激しいんです！
　このままだと、色々と危険なんじゃないかと思うんだよね。
　男だったら分かるよね？　確かにハーレムってのは夢かもしれないけど、現実はそう甘くは無いよ？
　１人をなんとか倒したと思ったら、すぐに次の相手が襲い掛かってくる。
　しかも、その相手を倒しても次が控えているのだ！
　さらに３人目を倒した頃には、最初の対戦相手が復活していて、２度目の対戦を挑んでくるという状況。
　倒しても倒しても果てが見えないという現実に、何度心が折れそうになる事か！
　トリプルノックダウンを取る事が出来る頃には、すでに山の稜線から朝日が昇る寸前って毎日だ。
　君達に問いたい、そんな性活…もとい、生活を送りたいか？
　毎夜、子作りマシーンと化す俺の気持ち、少しはわかってくれる？
　え、うらやまけしからん？　爆発しろ？　タヒね？　謝罪しろ？
　…ごめんなさい……。

　
　朝は誰にでも平等にやってくる。
　いや、夜も平等にやってくるけど、とにかく今は朝です。

　何とか嫁ーず３人を倒した俺は、少しの睡眠をとったあと、昨夜のダンジョンマスター達の言葉に従って、裏庭で鍛錬です。
　彼女達は、俺に覚醒するようにと言い残した。
　現在、俺が覚醒へと至る最も近道は、心を無にして型稽古を行い、この世界と一体化する事だと思う。
　なので、改めて俺は真剣にこの型稽古に取り組もうと思う。
　前世でも子供の頃からずっと続けて来た空手の型稽古。
　空手の先生に子供の頃言われたのは、型を疎かにするな、型にはすべてが詰まっている…だった。
　俺も確かにそう思う。
　型の動きの意味を理解して鍛錬している人って、実戦でも結構強い。
　実戦空手だとかフルコンタクト空手だとかが前世死ぬ直前では流行ってたけど、それって結局は西洋的な考え方なんだよね　　空手の歴史は古く、元は琉球王国で唐手とか言われていた。
　これは、元は中国武術が当時の沖縄に伝わり、その形を変えた武術だ。
　では、その大元の中国武術は、現代では変わっているのか？　実はそう大きく変わってはいない。
　伝承される子弟や解釈の違いによって、多少動きなどが変わったりしているが、根幹として型は未だ重要視されている。
　そこら辺を、子供の頃に空手の先生には耳にタコが出来るぐらい、しつこく教わった。
　だから、俺は型を重視してきた。
　いや、昨今の見せる空手の型とは違うよ？
　国際大会とかで披露される空手の型って、見せるための物であって、実際の型とはちょっと違う。
　ん～～～、中国武術で言えば、功夫って感じかなぁ。
　日々の練習や鍛錬、そしてそれらの積み重ねって感じだね。
　ほんの数年で格好だけ派手でビシッと決めたら金メダル…っていう演武とは違うんだよねぇ。
　なかなか一般の人には理解されない事だけどさ。

　俺がそんな事を考えながら鍛錬していたのがいけなかったんだろうか？
　いや、明らかにこれが原因か…。
　全然、無心になんてなれませんでした！
　だめだ、要らん事を考えてしまう…せいで、動きも悪い…。
　こんなんじゃ駄目なんだ！　そう、無心にならねば！
　だけど、今日はもう終わりね…また明日の朝、無心になれる様に頑張ろう。
　だから、今夜こそはじっくりと睡眠を取らせてください、ミレーラ、マチルダ、イネス…お願いです…マジで…。