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どうする?
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さてさて、時はホワイト・オルター号が例の山脈の向こうの土地の調査に乗り出したころまで戻る。
真っ白な飛行船の操縦席にはサラが、副操縦席…は無いのだが、急拵えで操縦席の後ろにくっ付けた席にはリリアが座る。
トールヴァルドの邸の裏、ネス湖の畔から飛び立ったホワイト・オルター号は、一路アルテアン侯爵領の領都、リーカを目指す。
さて、出発地点であるトールヴァルドの領地とヴァルナルの領地の間には、とても高い山脈が聳えている。
商人や旅人などは、この山脈をぶち抜くトンネルを通って行き来をしている。
これはトールヴァルドが精霊さんの不思議パワーをフルに使って造った物だが、飛行船が通れるはずもない。
なので山脈の上を飛んで越える事になる。
さて、このホワイト・オルター号の最高到達高度は、3000m近くまである。
とは言え、これはあくまでも到達できるというだけで、その高度を維持してずっと飛行できるかというと、そうではない。
輪廻転生管理局から大河芳樹がトールヴァルド・デ・アルテアンとしてこの世界に転生した時に渡された便利グッヅの1つであるエネルギー変換玉により生み出されたホワイト・オルター号。
トールヴァルドの想像力は、前世の知識に引きずられているため、必然的に前世の知識にある飛行船の限界を大きく超える様な事は無い。
前世の知識を持っているが故の弊害とも言える。
トールヴァルドがガチャ玉と呼ぶこの変換玉での創造であれば、実は飛行船の性能などは如何様にでも変える事が出来るはずなのに。
そもそもこの飛行船の浮力は、ヘリウムや水素の気嚢が詰まった物でなく、何か良く分からない不思議パワーなのだし…。
とは言え、有人で運用する飛行船として考えると、前世でもかなりの高性能。
ここで問題になるのは、越えるべき山脈の標高だ。
最も高い所は、標高3000mを超えており、日本で考えれば富士山よりも高い。
無論、山脈全てがそんなに高いという事は無い。
低い所では標高500m程度しかない所もある。
無理をしてまで標高が高い場所を越える事も無いので、出来るだけ低い場所を飛んで山脈を越える様に航路をとるのが最も効果的である。
全周がシールドで守られているので、空気抵抗を考えなくても良い事もあり、飛行中の船体は揺れがほとんど無い。
急な加減速や旋回、高度の変更をしない限り、余計なGもかからず、とても快適な空の旅を提供してくれるのだ。
操縦も一度飛行したルートであれば、完全なオートパイロットにお任せできるので、サラとリリアはとてもリラックスしていた。
というか、最初の目的地である、リーカの領主邸前への着陸まで、何もすることが無かった。
いや、何もする事がないというのは言い過ぎかもしれない。
オートパイロット中ではあるが、気温や気候によっては、それが上手く働かない事もあるのだ。
なので、危険かもしれない状況だと判断した場合、いつでもマニュアルに切り替えられるように、誰かが操縦桿を握っている必要があるのは当然の事だろう。
目的地までの飛行時間は精々数十分程度とはいえ、そんな状態でも2人にはお喋るする余裕はあった。
「サラ、しっかりと前を向いて操縦しながら聞いてください。貴女は気付いてますか?」
「何をです?」
「管理局と、完全に連絡が取れないばかりか、あちらに戻る事も出来なくなっている事に…です」
「へっ?」
一見すると、姦しい女子2人によるお喋りに見えなくもないが、会話している内容は結構不穏だ。
「へっ? ではありません。私達は局に戻る事も出来なくなっているのですよ?」
「そんな馬鹿な…」
サラが目を見開き、唖然とした顔でリリアを見つめる。
「こっちを見ないで、前を向きなさい! 危ないでしょうが!」
高度は十分ではあるが、山脈を今まさに越えようとしているのだから、この注意は当然の事である。
「あ、ご、ごめん! んで、戻れないとは?」
「その言葉通りです。私達の本体はあちらに有りますが…接続が切断されてる様なのです」
謝罪を口にしつつ、前方を睨み付けながら操縦桿を握り直したサラは、改めてリリアに問い直したが、その答えは無常だった。
「ちょっと待って。んじゃ、私はずっとここから帰れないって事?」
「ええ、そうなりますね…現状では」
リリアから帰ってくるのは、あまりにも無慈悲な言葉。
「…それって、かなりまずいんじゃ…」
「ええ、もの凄くまずいです」
ヴァルナルは船室に居る為、この場には2人しか居ない。
とはいえ、段々と2人の声のトーンも落ちて行った。
「ど、どうする?」
「どうしましょうかねぇ…」
サラの問いに返せる明確な答えをリリアは持ち合わせていなかった…。
真っ白な飛行船の操縦席にはサラが、副操縦席…は無いのだが、急拵えで操縦席の後ろにくっ付けた席にはリリアが座る。
トールヴァルドの邸の裏、ネス湖の畔から飛び立ったホワイト・オルター号は、一路アルテアン侯爵領の領都、リーカを目指す。
さて、出発地点であるトールヴァルドの領地とヴァルナルの領地の間には、とても高い山脈が聳えている。
商人や旅人などは、この山脈をぶち抜くトンネルを通って行き来をしている。
これはトールヴァルドが精霊さんの不思議パワーをフルに使って造った物だが、飛行船が通れるはずもない。
なので山脈の上を飛んで越える事になる。
さて、このホワイト・オルター号の最高到達高度は、3000m近くまである。
とは言え、これはあくまでも到達できるというだけで、その高度を維持してずっと飛行できるかというと、そうではない。
輪廻転生管理局から大河芳樹がトールヴァルド・デ・アルテアンとしてこの世界に転生した時に渡された便利グッヅの1つであるエネルギー変換玉により生み出されたホワイト・オルター号。
トールヴァルドの想像力は、前世の知識に引きずられているため、必然的に前世の知識にある飛行船の限界を大きく超える様な事は無い。
前世の知識を持っているが故の弊害とも言える。
トールヴァルドがガチャ玉と呼ぶこの変換玉での創造であれば、実は飛行船の性能などは如何様にでも変える事が出来るはずなのに。
そもそもこの飛行船の浮力は、ヘリウムや水素の気嚢が詰まった物でなく、何か良く分からない不思議パワーなのだし…。
とは言え、有人で運用する飛行船として考えると、前世でもかなりの高性能。
ここで問題になるのは、越えるべき山脈の標高だ。
最も高い所は、標高3000mを超えており、日本で考えれば富士山よりも高い。
無論、山脈全てがそんなに高いという事は無い。
低い所では標高500m程度しかない所もある。
無理をしてまで標高が高い場所を越える事も無いので、出来るだけ低い場所を飛んで山脈を越える様に航路をとるのが最も効果的である。
全周がシールドで守られているので、空気抵抗を考えなくても良い事もあり、飛行中の船体は揺れがほとんど無い。
急な加減速や旋回、高度の変更をしない限り、余計なGもかからず、とても快適な空の旅を提供してくれるのだ。
操縦も一度飛行したルートであれば、完全なオートパイロットにお任せできるので、サラとリリアはとてもリラックスしていた。
というか、最初の目的地である、リーカの領主邸前への着陸まで、何もすることが無かった。
いや、何もする事がないというのは言い過ぎかもしれない。
オートパイロット中ではあるが、気温や気候によっては、それが上手く働かない事もあるのだ。
なので、危険かもしれない状況だと判断した場合、いつでもマニュアルに切り替えられるように、誰かが操縦桿を握っている必要があるのは当然の事だろう。
目的地までの飛行時間は精々数十分程度とはいえ、そんな状態でも2人にはお喋るする余裕はあった。
「サラ、しっかりと前を向いて操縦しながら聞いてください。貴女は気付いてますか?」
「何をです?」
「管理局と、完全に連絡が取れないばかりか、あちらに戻る事も出来なくなっている事に…です」
「へっ?」
一見すると、姦しい女子2人によるお喋りに見えなくもないが、会話している内容は結構不穏だ。
「へっ? ではありません。私達は局に戻る事も出来なくなっているのですよ?」
「そんな馬鹿な…」
サラが目を見開き、唖然とした顔でリリアを見つめる。
「こっちを見ないで、前を向きなさい! 危ないでしょうが!」
高度は十分ではあるが、山脈を今まさに越えようとしているのだから、この注意は当然の事である。
「あ、ご、ごめん! んで、戻れないとは?」
「その言葉通りです。私達の本体はあちらに有りますが…接続が切断されてる様なのです」
謝罪を口にしつつ、前方を睨み付けながら操縦桿を握り直したサラは、改めてリリアに問い直したが、その答えは無常だった。
「ちょっと待って。んじゃ、私はずっとここから帰れないって事?」
「ええ、そうなりますね…現状では」
リリアから帰ってくるのは、あまりにも無慈悲な言葉。
「…それって、かなりまずいんじゃ…」
「ええ、もの凄くまずいです」
ヴァルナルは船室に居る為、この場には2人しか居ない。
とはいえ、段々と2人の声のトーンも落ちて行った。
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「どうしましょうかねぇ…」
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