システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児

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常識知らずのダンジョン産 

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 時は少し遡る。
 それは、トールヴァルドがミヤをおんぶし、空高く舞い上がった時。

「えっ?」
 その姿を目にしたリリアが、思わずと言った感じで声を漏らした。
 ほぼ同時に、サラ、ナディア、アーデ、アーム、アーフェンも、その姿を見た瞬間、目を見開いた。
 そして、ネス湖湖畔にあるトールヴァルド邸の裏に集まったアルテアン家の人々が、一瞬で豆粒よりも小さくなったトールヴァルドの姿を目で追っていた時、その6人はその姿に驚愕していた。 
 この6人に共通しているのは、普段から結界やシールドを使っている者、または使える者達である。

「り、リーダーには…あれと同じ事が出来ます?」
 最近のアーデ達は、何故かナディアの事をリーダーと呼ぶようになっていた。
「無理ですね。あの結界の展開速度と規模は驚異です」
 ミヤが目の前で使った結界の展開速度と展開規模に驚いていた。
 一瞬で大空の果てまで筒状の結界を張るその速度と規模は、とてもこの妖精達に真似出来る物ではなかった。

 そして、少し離れた所では、サラとリリアがその様子に目を丸くしている。
「ちょ、リリア…あのシールドの使い方って!?」
「シールドにあんな使い方があったなんて…」
「何言ってんすか! あの規模のシールドって、エネルギー量どんだけ!?」
「いえ、サラ…それも驚きですが、あの飛び方もおかしいです…」
 無論、ナディア達同様にその速度にも驚いていたが、何より驚いたのが筒状のシールドの中で自らを更に縦長の三角錐をもう一枚張って、空気抵抗を極限まで減らしたその使い方。
 さらに、その規模のシールドを使用するためのエネルギー量。
 とどめに飛行角度と速度も、科学的知識のあるサラとリリアには非常識にしか見えなかった。
 大気圏を脱出する時は、突入時と逆に惑星の重力を振り切る為の速度が必要。
 この惑星が地球よりも小さいとはいえ、その速度は秒速7km以上は必要となる。
 そして大気圏脱出は、普通では発射地点から真っすぐ垂直に飛んで行くことなどほぼ不可能だ。
 普通であれば、惑星の重力を振り切るために、一旦大気の薄い高度まで垂直で飛び上がり、その後第一宇宙速度まで加速をするために、自転方向へとロケットなどは機体を徐々に横向きに飛行方向を変えていく。
 ところが、ミヤは真っすぐ大気圏を突き抜けて宇宙まで垂直に、しかも初速から秒速7kmを出していたのだ。
 身近な所で説明すると、野球の投手が投げたボールってのは、どんなに早く投げたとしても緩やかに弧を描き、投げた瞬間のボールの初速よりキャッチャーが受ける速度の方が格段に遅くなるものだ。
 無論、空気抵抗もあるのだが、地球の重力にボールが幾分引かるためだ。
 ところが、ミヤは投手が投げたボールの速度を全く落とさずしかも一直線にキャッチャーミットまで届けた様な物。
 これは、もはや物理法則を無視していると言っても、まったく過言では無い。

「あのミヤって子の性能って、一体…」
 サラがそう言うのも無理も無い事だろう。
「流石は常識知らずのダンジョン産って事でしょうか…」
 その呟きに反応したのかは分からないが、リリアも空を呆然と見上げながら、そう呟いた。

 そして、トールヴァルド達が大空に舞い上がってから数分後、遥か高空から光が真っすぐに遠く洋上へと真っすぐ突き刺さるのを全員が目にし、さらに居並ぶ面々が驚いたりもしたが、撃ち込まれた場所がどうなっているのかなど知らない面々にはあまりミヤの銃の威力は分らなかった。

 その後さらに数分たった頃、空の彼方から眩い光の尾を引いた流星が降って来るのが見え、やがてそれがトールであるとマチルダが気付き、目の前にそれが着陸するまで空を見上げ続けた一同は、その日は全員が首と肩に痛みを訴えたのだが、それはまた別のお話だ。
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