システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児

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その頃、王城では…

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「はっ! 今、トールさまの幼女趣味が爆発した気がしましたわ!」

 ここは王城の一画であり、元はメリルの私室であった部屋。
 そこに設えられているベッドは、さすがは王族の寝室に置かれているだけあって、とても大きい物だった。
 少しだけ早い晩餐なのは、国王陛下とその妃達、そしてアルテアン侯爵夫妻がのんびりと酒と歓談を愉しむためであった。
 そうなると、残るのはコルネリアとユリアーネの義姉妹3人。
 なので、メリルの元私室にて、仲良くパジャマパーティを開催しようとしていた。
 もうすぐ母となるメリルと、もうそろそろ周囲が婚約話を大量に持って来そうなコルネリアと、お菓子に夢中なユリアーネ。
 先日まで、アルテアン領のトールの邸で一緒に過ごしてはいたが、遠く離れたこの地での3人だけでのお泊りは初めての事。
 ベッドの上で、メリルと楽しそうにお話をするコルネリアは、時にメリルのお腹に手をやり、時に耳を当てたりしていた。
 いくらなんでも、妊娠初期に胎児がそんなに動くわけも無い事は、自分の母の妊娠でよく知ってはいたのだが、どうしても手や耳をあててみたくなるコルネリアであった。
 いつか自分も誰かに嫁いで子を身籠るかも…と、妄想いっぱいのコルネリア。
 ユリアーネは、王家専属の侍女が持って来てくれた甘いお菓子に夢中だが、だんだんと瞼が重くなる時間が近づいていた。
 ソファーでお菓子を両手にもったまま、たまにこっくりこっくりと船をこぎ始めたユリアーネを、姉と義姉は微笑ましく見ていた。
 
 そんな時、事件は起こったのである。
 ベッドの上で女の子独特の正座の状態からお尻をぺたんとマットレスに落す、いわゆる女の子座りのコルネリアと、お腹を庇ってなのか横座りでおしゃべりしていたメリルであるが、急に黙り込んだかと思うと、急に天井を見上げた。
 そして、何を感じたのか、冒頭の様に叫んだのである。

「この感覚…間違いありませんわ! トールさまに新たな幼女の影が!」
 いきなり何を言い出すんだと、コルネリアはメリルを胡散臭い人を見る様な目で見つめた。
「コルネさん! きっと今頃、お邸でトールさまが幼気な幼女に手を出そうとしてますわ!」
 ストレートに言えば、この人はいきなり何を言い出すんだろう? という目で見つめるコルネリア。
 突然の叫びで、ビクッ! となったユリアーネであったが、叫んだのがメリルであると確認したら、また船をこぎ始めた。
「いきなりどうしたんですか、お義姉さま?」
「私の直感に、ぴーーーん! と来たのですわ!」
 いや、どんな直感だよ…と、思わずツッコミを入れそうになったコルネリア。
「いえ、それは無いでしょう」
「何でそう言い切れるのですか、コルネさん! あの、トールさまなのですよ!?」
 …メリルの言いたい事も分からないでもないが、そこは実の兄であるトールヴァルドに対して、いささか失礼ではないだろうか?
 それよりも、メリルはその実の兄の妻なのである。いや、妻達の筆頭、第1夫人なのである。 
 子まで身籠っているというのに、何を言い出すんだろうか、この義姉は。
「いえ、落ち着いてください。絶対に大丈夫だと思いますよ?」
「え…絶対? その根拠は?」
 コルネリア思った…ああ、我が兄は、そっちの方面では全然信用されてないんだな…と。
「根拠も何も…今はお邸にはお兄さましか男は残っておりません」
「ええ、そうですわ…ね?」
「つまり、あの邸には、お義姉さまが4人、ナディア達が4人いるんです」
 いまいち理解できてないメリルに、
「あの方々が、お兄さまが幼女に手を付けようとしいる事に気付きもしないなど、あり得ますか?」
 コルネリアはとても丁寧に説明を…しようとして、止めた。
「確かに!」
 ここまで言えば、メリルは理解できるだろうと考えて。
「お兄さまが、女性関係で自由に振る舞えるわけが有りませんし、そんな度胸すらないと思います!」
「なるほど!」
 コルネリアも、大概失礼である。
「それに、何かある様でしたら、ドワーフメイド衆から通信が入ってきます」
 あんな兄を持っているからなのか、そつの無いコルネリアであった。
「まあ! さすがコルネさん、如才ないですわね!」
「お褒め頂き、ありがとうございます」
 
 邸ではコルネリアの言う通り、残った女性陣に見張られ連行されたトールヴァルドが、人族の幼女にしか見えない急に気を失い倒れたミヤの様子を見に寝室へと向かっていた。
 無論、幼女趣味など絶対に爆発せぬ様、厳重な監視体制を敷かれた中で。

 船を盛大にこき始めたユリアーネをベッドへ引きずり込み、その左右で横になった2人。
 もうトールの事など忘れて、王城中が静まり返る深夜まで、メリルとコルネリアはお喋りを楽しんだのであった。
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