システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児

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言ってなかったっけ?

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「さすがは、トールヴァルド家の頭脳であるな、マチルダよ」
 ボーディからの思わぬ誉め言葉に、マチルダは一瞬驚きはしたものの、そっと立ち上がって優雅に礼をした。
「確かにそなたの言う通り、こ奴の思考は誘導されておったのは、まず間違いない」
 マチルダの言葉をボーディが肯定した事で、食堂にいる一同が小さく『おぉ~…』と声をあげた。
「かなりうまい思考誘導ではあるが、こ奴が創り出したい物の性能や機能を制限する事で、自らの可能性の幅を管理局がコントロールしておったという事じゃ。例えばお主等全員が所持しておる神具…何と言ったかのぉ…変身する奴じゃ」
 ボーディの問いに答えたのはミルシェだ。
「ジェムファイターですか?」
「おお、そうじゃったの。そのじぇむふぁいたーとやらの能力なのじゃが、本当にこ奴の想像した通りに創造されていれば、1人でこの世界を統べる事ができる程の能力になっておったはずじゃ」
 いや、そんな悪の帝王みたいな能力は、そもそも望まんぞ?
「世界を…統べる…」
 おいおい、何で考え込んでんだ、ミレーラさんよ? え、もしかして世界征服したかったの?
「じゃが、能力や性能や機能の全てを管理局が制限しせいで、精々が常人の10倍ほどの力を手に入れたにすぎん」
 十倍って十分じゃね? それにそれぞれに合った能力も付いてるし…。
「あと、ホワイト・オルター号も、管理局の制限が無ければ、この国の王都まで一息で飛べるのじゃぞ?」
 これには俺もが吃驚仰天! モデルは飛行船だよ? 今だってかなり速度が出てるけど、これ以上いけたのか?
 モデルになった前世の物なんて比較にならない性能を与える事が出来たのか!?
 あ、よく考えたら前世で知ってる飛行船には、シールド機能なんて無いし、そもそもホワイト・オルター号の船体は気嚢になって無いから、どうやって浮力を得てるのか分からん。
 不思議パワーで浮いてるんだろうけど、これって前世の物と比較してもかなりの能力付加だよな…。
「まあ、こ奴の想像力が貧相だったからかも知れぬがな…」
 うるせーよ!

「まぁ、そういう訳で管理局によって、こ奴の思考は管理局の都合の良い方へと誘導されておったのじゃ」
 うん、もう好きに俺を虐めておくれ…。
「あのぉ…」
 言い難そうにミレーラが小さく手を上げ、発言の許可を求めた。
「何か質問かや?」
 ボーディがミレーラに言葉を続ける様に手でどうぞどうぞとすると、
「そのぉ…何で今になってそんな話を…?」
 ああ、そっか…確かに、皆には急な話だったな。
「うむ、良い質問じゃ。それは、管理局が明らかに敵であると、漸く確定したからじゃ」
 
 そこからのボーディの話は、全員が黙って聞き入った。
 トールヴァルドという人を生み出すために、管理局が過去に戦争を起こした事。
 大いなる神にも等しい存在の一部がトールヴァルドの本質である事。
 トールヴァルドの思考は全て管理局に筒抜けであり、管理局に都合の悪い事を考えたら、それを消し去っていた事。
 俺を生み出すために起こした戦争を終結させたのは、トールヴァルドと元を正せば同じ神にも等しい存在の一部である事。
 そして、ダンジョンマスター達は、実は管理局よりも上位の組織である事。
 管理局の腐敗っを正すため、今後はトールヴァルドと力を合わせて戦う事。
 そして、管理局に思考を読み取らせない様に、あの薬を関係者全員に飲ませた事。
 その他、etc…etc…。

 長い長いボーディの説明であったが、それらの全て余す事無く聞き逃さない様、誰もが黙って聞き入っていた。
 やがて、ボーディの話も終り、目の前に置かれていた冷めてしまった茶で唇を湿らせ、小さくため息をつく。
 その頃には、食堂はしんと静まり返り、それぞれテーブルをじっと見つめたり、目を閉じ天を仰いだりしていた。
 突拍子もない話ではあるが、これが紛れも無い事実だという事は理解してくれた様だ。
 俺が心の中で小さくうんうんと頷いていると、ミルシェがはっ! と何かに気付いた。
「た、大変です! こんな大事な話を、御義母さまや御義父さま、コルネちゃんやユリアちゃんに、メリルさんが居ない時にしていいんでしょうか…皆にも知ってもらった方が…」
 ああ、それね。
「ああ、うん。それは大丈夫かな。実は出発前にこっそりと簡単にだけど話をしてるから。ちなみに、ユズキとユズカにもね」
「あ、そうだったんですね…良かった…」
 ほっとした顔のミルシェ。でも、君は完全にユズユズ夫妻を忘れたね。
「ま、ユズキとユズカは、俺の前世の記憶にある世界からやって来たんだから、軽く話しただけで理解してくれたよ」
『えーーーー!?』
 あれ、ユズユズの事って、言ってなかったっけ?
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