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笑いごっちゃねぇよ!
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『やはり…か…』
カジマギーからの連絡を受けたボーディは、パンゲア大陸で自身が支配する地下のダンジョにある私室でため息を付いた。
『はい。まだ1個体しか発見できておりませんが、あれは正しく…』
調査は芳しくない様である。
『うむ。それが確定すればやりようもある。良いか、くれぐれも慎重に事を運ぶのじゃぞ』
『はい、仰せのままに…』
とは言え、危険な場所に赴けとは命令し辛い事も確かで、危険を冒してまで手に入れた情報は、トールヴァルドも喜ばぬであろう事も重々承知しているボーディは、もしもの時は強制的に送還する事も思考の片隅に置くのであった。
同時刻、やはりパンゲア大陸のダンジョンの一画で、モフリーナは何故かモフレンダを膝枕しながら、もふりんと連絡していた。
『なので、まだはっきりとは、わからないでち!』
『そうですか。どこかの言葉で【虎穴に入らずんば虎子を得ず】という、有名な言葉があるそうです』
『おけつにはいって、もらえるのがこじ? こじいんはぎゃくたいちてるでちゅか!?』
馬鹿である。
『虎穴と虎子よ、このお馬鹿さん! 危険な所に行かなきゃ金目の物は手に入らない…っていう意味らしいわよ』
『なんだ、そうでちたか…ほっとちまちた』
微妙にモフリーナの説明も違うのだが、ここでは誰も突っ込んでくれない。
『そ、それはたちかにしんじつでちゅね…わかりまちた! このもふりん、いのちをかけてやりとげまちゅ!』
『ええ、お願いするわね。でも、これだけは絶対に守りなさい。本当に危険と感じたら、私の元へと戻る様に!』
『あいあいさー!』
意外と大胆なモフリーナは、ボーディとは違い、もふりんにもう少し踏み込んで来いと命じた。
本当に危険な時は助けるつもりではあったが、それでもこのまま調査が膠着してしまうのであれば、多少の変化を求めるべきではないかと考えて。
まあ、最近の馬鹿なもふりんに飽きたので、使い潰して新たな分け身を造ろうとか考えているわけでは無い…きっと…。
トール達の住む大陸とは遠く遠く離れた、実際にこの星の真裏にある大陸では、こんな事になっていたそうな。
とは言え、着々と調査は進んでいる様ではあった。
ただ1人、惰眠を貪る真っ白でふわふわ総パーマの髪を持つモフレンダを除いては…だが。
さて、そんな遠い大陸の事は今は置いておこう。
我が家は、只今絶賛大事件…いや、事件じゃないな。
どっちかというと目出度くなるかも知れない事ではあるが、正に今この瞬間、命がけの女の戦いが行われている最中なのだ。
そう、女の命がけの一大イベント…とは言っても、お祭りとかじゃないぞ。
ここまで言えば誰もが気付くであろう、母さんとユズカがいよいよ出産へと臨むのだ!
ダンジョンマスター達が帰った後、暫くの間、魔族の女医さんを囲んで食堂でわいのわいのと姦しく談笑していた我が家の女性陣ではあったのだが、不意にメリルとミルシェがまたトイレに駆け込んだのだ。
何が悪阻の引き金となるのかは分からないが、魔族の女医さんはニコニコしながらメリルとミルシェの後を追いかけてトイレへ。
今頃、トイレで2人共げーげーやってるのだろう。
女性が多いこの邸。トイレは複数増設しておいたのだが、それが役立ったようだ。
今後も必要になるかもしれないから、あと1~2個は増設するべきか?
などと考えていたら、突然ユズカが腹痛を訴えた。
俺と父さんとユズキの3人が、毒の心配は無くなったはずなのに何でだ!? っと、驚きあたふたしていると、ほぼ同時に母さんまでもが、お腹を押さえ顔をしかめて痛みをこらえていた。
俺達男性陣は、『食中りか!?』っと慌てて立ち上がろうとした瞬間、
「貴方達…落ち着きなさい…ぐっ…これは陣痛です…」
っと、母さんがユズカの背中をさすりながら、そう言った。
何だ、陣痛かか~はははは、慌てちゃったよ~。
と、俺と父さんとユズキが肩を抱き合い笑って…いやいや、笑いごっちゃねぇよ!
誰か医者を持って来い! すぐに治療院をよべ!
「マスター…お医者様は物ではありません」
ナディアに怒られた…そういや、女医さん居たんだった。
「「「マスター、治療院は呼んでも来ませんよ?」
確かに、アーデ、アーム、アーフェンの言う通りです、ごめんなさい。
確かに治療院を呼んだって来るわけないですね…呼ぶのは救急車でした。
まあ、この世界に救急車なんて無いわけで…。
そうだ! これは間違いなく必要だ!
誰か、出産のため部屋の準備だ!
ベッドは2床…じゃ病院みたいだな、2台だ! いや、2基だっけ?
取りあえず2人分の準備だ、急げ!
えっと、清潔な布とお湯も要るんだっけ? ああ、こんな時の知識が乏しい!
現代日本だったら、全部産婦人科にお任せだから、知識なんてねぇんだよ!
えっと、確か時代劇では何してたっけ…ああ、駄目だ!
時代劇でも10分もしたら生まれた後だよ! 生れてくれて、ありがとうだよ!
どうすべどうすべ、父さん、ユズキどうしたらいいんだ?
え、経験ないから分からない? そりゃ、ユズキだったらそっか。
だったら父さんは!? あ、さっき肩を抱き合った時のまんま固まってら…。
くっ…うちの嫁ーずも妖精達も、出産に関する知識なんて持ち合わせていねえ…。
クソッ! 一体、俺はどうしたらいいんだ!
「まんず、お任せくれのぉ」「そうだそうなんやさな。慌てなさんな」「ちゃんど準備はしとるべ」「気ぃ楽にせ」
何と、ドワーフメイド衆が、妙に堂々と落ち着いた様子で俺達に声をかけて来た。
「村だばしぐある事だでよ!」
ドワーフさん達の村では、どうやらよくある事なのか?
「それだばがんばんべや!」「「「おぉー!」」」
小さなドワーフさん達が、とても大きく頼もしく見えた瞬間だった。
ドワーフメイド衆の言葉に従って、俺達は食堂から廊下へ。
母さん達は、残る嫁ーずと妖精達に支えられ、ドワーフさんが分娩の為に用意してくれた部屋へと運ばれて行った。
ちなみに、食堂の中では、まだ父さんは固まったままだったけどね。
カジマギーからの連絡を受けたボーディは、パンゲア大陸で自身が支配する地下のダンジョにある私室でため息を付いた。
『はい。まだ1個体しか発見できておりませんが、あれは正しく…』
調査は芳しくない様である。
『うむ。それが確定すればやりようもある。良いか、くれぐれも慎重に事を運ぶのじゃぞ』
『はい、仰せのままに…』
とは言え、危険な場所に赴けとは命令し辛い事も確かで、危険を冒してまで手に入れた情報は、トールヴァルドも喜ばぬであろう事も重々承知しているボーディは、もしもの時は強制的に送還する事も思考の片隅に置くのであった。
同時刻、やはりパンゲア大陸のダンジョンの一画で、モフリーナは何故かモフレンダを膝枕しながら、もふりんと連絡していた。
『なので、まだはっきりとは、わからないでち!』
『そうですか。どこかの言葉で【虎穴に入らずんば虎子を得ず】という、有名な言葉があるそうです』
『おけつにはいって、もらえるのがこじ? こじいんはぎゃくたいちてるでちゅか!?』
馬鹿である。
『虎穴と虎子よ、このお馬鹿さん! 危険な所に行かなきゃ金目の物は手に入らない…っていう意味らしいわよ』
『なんだ、そうでちたか…ほっとちまちた』
微妙にモフリーナの説明も違うのだが、ここでは誰も突っ込んでくれない。
『そ、それはたちかにしんじつでちゅね…わかりまちた! このもふりん、いのちをかけてやりとげまちゅ!』
『ええ、お願いするわね。でも、これだけは絶対に守りなさい。本当に危険と感じたら、私の元へと戻る様に!』
『あいあいさー!』
意外と大胆なモフリーナは、ボーディとは違い、もふりんにもう少し踏み込んで来いと命じた。
本当に危険な時は助けるつもりではあったが、それでもこのまま調査が膠着してしまうのであれば、多少の変化を求めるべきではないかと考えて。
まあ、最近の馬鹿なもふりんに飽きたので、使い潰して新たな分け身を造ろうとか考えているわけでは無い…きっと…。
トール達の住む大陸とは遠く遠く離れた、実際にこの星の真裏にある大陸では、こんな事になっていたそうな。
とは言え、着々と調査は進んでいる様ではあった。
ただ1人、惰眠を貪る真っ白でふわふわ総パーマの髪を持つモフレンダを除いては…だが。
さて、そんな遠い大陸の事は今は置いておこう。
我が家は、只今絶賛大事件…いや、事件じゃないな。
どっちかというと目出度くなるかも知れない事ではあるが、正に今この瞬間、命がけの女の戦いが行われている最中なのだ。
そう、女の命がけの一大イベント…とは言っても、お祭りとかじゃないぞ。
ここまで言えば誰もが気付くであろう、母さんとユズカがいよいよ出産へと臨むのだ!
ダンジョンマスター達が帰った後、暫くの間、魔族の女医さんを囲んで食堂でわいのわいのと姦しく談笑していた我が家の女性陣ではあったのだが、不意にメリルとミルシェがまたトイレに駆け込んだのだ。
何が悪阻の引き金となるのかは分からないが、魔族の女医さんはニコニコしながらメリルとミルシェの後を追いかけてトイレへ。
今頃、トイレで2人共げーげーやってるのだろう。
女性が多いこの邸。トイレは複数増設しておいたのだが、それが役立ったようだ。
今後も必要になるかもしれないから、あと1~2個は増設するべきか?
などと考えていたら、突然ユズカが腹痛を訴えた。
俺と父さんとユズキの3人が、毒の心配は無くなったはずなのに何でだ!? っと、驚きあたふたしていると、ほぼ同時に母さんまでもが、お腹を押さえ顔をしかめて痛みをこらえていた。
俺達男性陣は、『食中りか!?』っと慌てて立ち上がろうとした瞬間、
「貴方達…落ち着きなさい…ぐっ…これは陣痛です…」
っと、母さんがユズカの背中をさすりながら、そう言った。
何だ、陣痛かか~はははは、慌てちゃったよ~。
と、俺と父さんとユズキが肩を抱き合い笑って…いやいや、笑いごっちゃねぇよ!
誰か医者を持って来い! すぐに治療院をよべ!
「マスター…お医者様は物ではありません」
ナディアに怒られた…そういや、女医さん居たんだった。
「「「マスター、治療院は呼んでも来ませんよ?」
確かに、アーデ、アーム、アーフェンの言う通りです、ごめんなさい。
確かに治療院を呼んだって来るわけないですね…呼ぶのは救急車でした。
まあ、この世界に救急車なんて無いわけで…。
そうだ! これは間違いなく必要だ!
誰か、出産のため部屋の準備だ!
ベッドは2床…じゃ病院みたいだな、2台だ! いや、2基だっけ?
取りあえず2人分の準備だ、急げ!
えっと、清潔な布とお湯も要るんだっけ? ああ、こんな時の知識が乏しい!
現代日本だったら、全部産婦人科にお任せだから、知識なんてねぇんだよ!
えっと、確か時代劇では何してたっけ…ああ、駄目だ!
時代劇でも10分もしたら生まれた後だよ! 生れてくれて、ありがとうだよ!
どうすべどうすべ、父さん、ユズキどうしたらいいんだ?
え、経験ないから分からない? そりゃ、ユズキだったらそっか。
だったら父さんは!? あ、さっき肩を抱き合った時のまんま固まってら…。
くっ…うちの嫁ーずも妖精達も、出産に関する知識なんて持ち合わせていねえ…。
クソッ! 一体、俺はどうしたらいいんだ!
「まんず、お任せくれのぉ」「そうだそうなんやさな。慌てなさんな」「ちゃんど準備はしとるべ」「気ぃ楽にせ」
何と、ドワーフメイド衆が、妙に堂々と落ち着いた様子で俺達に声をかけて来た。
「村だばしぐある事だでよ!」
ドワーフさん達の村では、どうやらよくある事なのか?
「それだばがんばんべや!」「「「おぉー!」」」
小さなドワーフさん達が、とても大きく頼もしく見えた瞬間だった。
ドワーフメイド衆の言葉に従って、俺達は食堂から廊下へ。
母さん達は、残る嫁ーずと妖精達に支えられ、ドワーフさんが分娩の為に用意してくれた部屋へと運ばれて行った。
ちなみに、食堂の中では、まだ父さんは固まったままだったけどね。
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