システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児

文字の大きさ
上 下
956 / 1,466

ちょびっとゴタゴタ

しおりを挟む
「奥様、アンまリ激シく動ク、ダメね。あト、腹スするヨ。わカたネ?」
 妊娠初期…なのかな? の注意事項と説明を、魔族の女医さんより真剣な表情で聞くメリルとミルシェ…だけでなく、なぜか残る嫁ーず&妖精ず&コルネちゃん。
 いや嫁ーずは良いとして、妖精ずとコルネちゃんは聞かなくても良いんじゃないかなあ?
 え、後学の為、将来の為の知識は必要? 男は黙っとけ?
 そですか、申し訳ありませんです…。
 その後、女医さんの細やかな注意事項を手分けしてメモに取ったり、各自疑問に感じた事などを質問していた様だ。
 無論、その輪の中に俺や父さん、ユズキが入れるはずも無く、3人で隅っこでお茶しておりました。

 静かに誰の邪魔にもならない様に、細心の注意を払って、そっと男3人でお茶をしていると、ドワーフさんが、
「伯爵様さ~、通信はっとぉべゃ」
 うん、もうどこの方言か全然分からないが、どうやら俺に通信が入ったと言いたいらしいという事は分かった。
「ああ、ありがとう」
 父さんとユズキに、中座する断りを入れて、俺は通信の呪法具が置いてある小部屋へと向かった。
 そして小部屋に入った俺は、固定式の我が家だけの特製呪法具を手にした。
「もしも~し!」
 そう声を掛けると、呪法具から聞きなれた声が聞こえた。
『なんじゃ、気の抜ける呼びかけじゃのぉ…』
 この言葉から、通信相手が誰であるかはすぐにわかった。 
「何だ、ボーディか。何かわかったか?」
 こいつ相手に、長々とした前置きも挨拶も不要だ。
 さっさと本題に入るのが吉ってもんだろう。
『少しは言葉のやり取りってものをじゃなぁ…まあ、良いわ。例の場所の件で話がある。今から少々時間を取れるかや?』
 言葉のキャッチボールなんて時間の無駄だ。
 さっきまでの俺と家族のキャッチボールの様に、ちょっとボールを受け損ねたら、飛んでも無い事になるし、ストレートに行こう。
「ああ、大丈夫だが…家族が一緒でも大丈夫か?」
『いや、お主だけの方が良いじゃろう…今の所は…の…』
 何か奥歯に物が挟まった様な言い回しだなあ。
「まあ、そっちの方が良いなら。だが、ちょっと今は家を離れる事が出来ないんだよなあ…」
『ん? 何かあったのかや?』
 ま、そりゃ疑問にも思うか。
「ああ、実はちょどさっき嫁さん2人の妊娠が発覚してな。ちょびっとゴタゴタしてるんだ」
 そう言うと、何やら呪法具の向こうでゴニョゴニョと誰かと話をするボーディ。
 まあ、相手はモフリーナとモフレンダだろうが。
『そうか、それは目出度い事じゃ。お主への話のついでに、ちょっと祝辞でも述べに行こう。じゃから、少しだけ時間を作れ』
「そうか、それは嫁さんも喜ぶ。どうせすぐに来るんだろ?」
『ああ、すぐに行くぞ』
 ま、あいつらって基本は暇人だからな。
「んじゃ待ってるから、裏口から入って来てくれ。ドワーフさんを待たせておくよ」
『うむ、すまぬが宜しく頼む』
 そう言って、ボーディは通信を切った。
 廊下ですれ違ったドワーフメイドさんに、ダンジョンマスター達が裏口に来るから、案内してくれるように頼んだ俺は、姦しいであろう食堂へと、何だか重く感じる足を引きずる様に交互に踏み出しながら向かった。

 未だワイワイと魔族の女医さんを囲んで色々な話で盛り上がっている食堂に戻ると、俺は真っすぐにその輪に向かった。
「えっと、今からちょっと仕事の話とかでダンジョンマスター達が来るから、そのつもりで」
 俺が女だらけの輪に向かって言葉を掛けると、
『は~い』
 誰も俺の顔も見ないで返事だけ返して来た。
 うん、今は俺の事なんでどうでも良いのね…そんなに女医さんとのお話が大切ですか、そうですか。
「んじゃ、来たら声かけるから…」
 女性陣の輪に向かって、そうぼそっと呟いた俺は、小さくなってお茶を啜る父さんとユズキの元へ戻り席に着いた。
「トール、誰からの通信だ?」
 着席すると、すぐに父さんから質問が飛んで来た。
 同じ部屋で女性だけで盛り上がる話の輪が出来てしまうと、どうしても男だけの集まりってのは話題が乏しくなる。
 俺への通信という、せっかくの話の切っ掛けを父さんが見逃すはずも無い。
「ああ、うん。ダンジョンマスター達からだよ。ちょっと大切な話があるってんで、また少し中座するけど、ごめんね」
「そうか…」
 だけど、ダンジョンマスターが来るってだけじゃ、大した話題にもならないなあ。
 もう話が途切れちゃったよ。
 まあ、女性陣が飽きるまでは、男だけでこのまま寂しくお茶でもしようよ。

 そう思い、冷めたお茶をずずずっと啜ると、食堂の扉が開き、ドワーフメイドさんが俺の元に小走りでやって来た。
 ドワーフさんって大人でも結構小柄なので、その彼女が小走りになると何となく小型犬が一生懸命走ってるのと似てて、ちょっと可愛く見える。
 そんなドワーフさんが俺の元にやって来て、ぺこりと頭を下げると、一言。
「ダンジョンマスター達が到着しますたぁー」
 これって方言? それとも駄洒落?
しおりを挟む
感想 725

あなたにおすすめの小説

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

死んだのに異世界に転生しました!

drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。 この物語は異世界テンプレ要素が多いです。 主人公最強&チートですね 主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください! 初めて書くので 読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。 それでもいいという方はどうぞ! (本編は完結しました)

『転生したら「村」だった件 〜最強の移動要塞で世界を救います〜』

ソコニ
ファンタジー
29歳の過労死サラリーマン・御影要が目覚めたのは、なんと「村」として転生した姿だった。 誰もいない村の守護者となった要は、偶然迷い込んできた少年リオを最初の住民として迎え入れ、徐々に「村」としての力を開花させていく。【村レベル:1】【住民数:0】【スキル:基本生活機能】から始まった異世界生活。

こちらの異世界で頑張ります

kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で 魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。 様々の事が起こり解決していく

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~

春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。 冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。 しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。 パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。 そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。

成長促進と願望チートで、異世界転生スローライフ?

後藤蓮
ファンタジー
20年生きてきて不幸なことしかなかった青年は、無職となったその日に、女子高生二人を助けた代償として、トラックに轢かれて死んでしまう。 目が覚めたと思ったら、そこは知らない場所。そこでいきなり神様とか名乗る爺さんと出会い、流れで俺は異世界転生することになった。 日本で20年生きた人生は運が悪い人生だった。来世は運が良くて幸せな人生になるといいな..........。 そんな思いを胸に、神様からもらった成長促進と願望というチートスキルを持って青年は異世界転生する。 さて、新しい人生はどんな人生になるのかな? ※ 第11回ファンタジー小説大賞参加してます 。投票よろしくお願いします! ◇◇◇◇◇◇◇◇ お気に入り、感想貰えると作者がとても喜びますので、是非お願いします。 執筆スピードは、ゆるーくまったりとやっていきます。 ◇◇◇◇◇◇◇◇ 9/3 0時 HOTランキング一位頂きました!ありがとうございます! 9/4 7時 24hランキング人気・ファンタジー部門、一位頂きました!ありがとうございます!

くじ引きで決められた転生者 ~スローライフを楽しんでって言ったのに邪神を討伐してほしいってどゆこと!?~

はなとすず
ファンタジー
僕の名前は高橋 悠真(たかはし ゆうま) 神々がくじ引きで決めた転生者。 「あなたは通り魔に襲われた7歳の女の子を庇い、亡くなりました。我々はその魂の清らかさに惹かれました。あなたはこの先どのような選択をし、どのように生きるのか知りたくなってしまったのです。ですがあなたは地球では消えてしまった存在。ですので異世界へ転生してください。我々はあなたに試練など与える気はありません。どうぞ、スローライフを楽しんで下さい」 って言ったのに!なんで邪神を討伐しないといけなくなったんだろう… まぁ、早く邪神を討伐して残りの人生はスローライフを楽しめばいいか

処理中です...