システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児

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残念で馬鹿な子

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「俺なわけが無いだろうが!」
 思わず大声で怒鳴ってしまったが、大人気なかったか?
 いやいや、無実の俺を犯人扱いしたんだから、当然の反応だよな? な?
「いえ、おおか…伯爵様、間違いなくあなたが犯人ですけど?」
 そう断言するサラの言葉に嘘や迷いは感じられなかった…はっ、まさか! 
「さ、サラ…まさか、お前…マインドコントロールされてるのか?」
「んなわけあるか!」
 目が濁ってない…操られている様子も見えない…だが、俺を犯人だと断定…しかも全員が…。
 ま、まさか…!
「まさか、俺がマインドコントロールされているのか! それで知らず知らずのうちに愛する嫁に毒を盛ったというのか!? くっ…いつのまに俺の事を洗脳したんだ? 一体誰が何のために! しかし、いつ俺はメリルとミルシェが口にした物に毒を? そう言えば、さっき2人のお茶に砂糖を入れてあげた気が…『砂糖いくつ?』って言ったら、『2杯』って言ったから、確かに俺が砂糖を入れた…まさか、その瞬間にマインドコントロールの効果が発揮されて、毒を? って事は、俺はまだ毒を盛っているという事か? くっ…どこだ、どこに隠し持ってたんだ! 何て事だ! まさか、俺が敵の術に嵌ってしまうとは……。だが、俺がマインドコントロールされていたとすると、全て辻褄があう! そうか、そうだったのか!」
 全部わかってしまった! 敵の狙いが何なのか分からないが。
 くそ! 姑息な手を使いやがって!
 
「大奥様…アレ、ほっといて良いんですか?」
「何か、1人でエキサイトしてますけど…伯爵様は」
 リリアさんとユズキが母さんと何か話してるが、何をお前達はそんなにのんびりしてるんだよ!
「トールちゃんって、意外と間抜けですからねえ…」
 ああ、確かに母さんの言う様に間抜けだよ! 家長ともあろう者が洗脳なんてされるとは!
「トールは、結構抜けてるからなあ…」
 父さんの言う通りだよ! 抜けてるから洗脳されるんだよ!
「お兄さまって、本当にアレですわねえ…」
 はっきり言えよ、コルネちゃん! どうせ、俺はアレだよ!
「いえ…御義母様…それはちょっと酷いかと…」
「そうですねぇ。きっと混乱しているからだと思うのですが…」
「まあ、最初が2人で良かったじゃないか!」
 ミレーラ、庇ってくれなくていいんだ。
 そりゃマインドコントロールされてた事実に気付いたんだ、マチルダの言う様に混乱はしてるさ。 
 イネス、それは聞き捨てならないぞ! 被害者があの2人で著かったとは、どういう意味だ!
「イネス様の言う通りですね。私達も、ほっとしています」「「「ほっとしてます!」」」
 ナディア、どういう意味だ? ってか、天鬼族3人娘まで!?
「ちょっと見てて面白いですけどねぇ!」
 ユズカ、何が面白いんだよ! 緊急事態なんだぞ!?
「おにいちゃんって、ばかなの?」
 ユリアちゃんが、頭の上に盛大に疑問符を浮かべまくってメリルに尋ねた。
 ん? メリル、もう大丈夫なのか? あ、ミルシェも?
 何でここに? 寝て無くても良いのか??
「ふ、2人共! もう身体は大丈夫なのか!?」
 2人の顔は、まだ少し赤い…毒の影響で熱でもあるのか? それなら、やっぱり寝てなきゃ駄目だろ!
 お医者さーん! 2人はここでーーす!
 
「えっと、まだ分りませんか?」
「何だよサラ! 敵の目的なんて分かるわけ無いだろう! だが、我が家へ攻撃を仕掛けてきた事だけは分かってるぞ!」
「え~~っと…」
 何だよ、何が言いたいんだよ、サラ!
「「トール様…」」
 その可哀相な奴を見る様な、憐れみに満ちた目はなんだ、メリルにミルシェ?
「おおか…伯爵様」
「何だ、サラ?」
「この場の全員だけでなく、もう読者も完全に気づいてますよ?」
「読者ってなんだよ! 何に気付いてんだよ!」
「答えに…ですけど」
「答えって、敵の事か!?」
 俺がそう怒鳴ると、またもや全員から可哀相な奴を見る様な視線が俺に突き刺さった。何なんだよ、その目は! 
 そうだよ、どうせ俺がマインドコントロールされた憐れな男だよ! 
 惨めで憐れな男と罵るがいいさ!
「大奥様…やっぱり馬鹿みたいですから、はっきり言った方が良いのでは?」
「そうねえ。トールは残念で馬鹿な子ですから、もうはっきりと言ってあげて頂戴」
 サラに母さん、どういう意味だそれは? 
「トールよ…お前って、本当に馬鹿だったんだなあ…」
「お兄さまは、馬鹿でしたのね…」
「おにいちゃん、やっぱりばかなの?」
 父さん、コルネちゃん! ユリアちゃんの前で何を言うんだ!
 見ろ! ユリアちゃん、すっかり俺が馬鹿だって信じちゃったじゃないか!
 あ、いや…俺は馬鹿じゃないつもりだったけど、馬鹿だった様だ…まさか洗脳されて家族に毒を盛るという失態を犯したんだから…。
 敵の術に嵌って嫁に毒を盛る様な馬鹿な男だったんだな、俺って…。 

「みなさんお待ちください。伯爵様に真実を告げるのは、あのお2人からの方が良ろしいかと」
 そ、そうだな、リリアさん…仰る通りだ。
 俺を本当の意味で責める事が出来るのは、メリルとミルシェの被害者2人だよな…何を言われても仕方ない。さあ、俺を罵ってくれ! 
「千の誓〇いるか、万〇誓が欲しいか、それとも北〇剛掌波が欲しいか?」
 リリアさん、それ…最初はベルばらの台詞で最後は北斗の…いや、何でもない!
 俺も男だ、腹を括った! さあ、殴ってくれ! 蹴ってくれ!
 俺はそれだけの事をしてしまったんだ!
「さあ、何時でもいいぞ!」
 俺は目を瞑り、やがて来るであろう衝撃を覚悟して身体に力を入れた。
「えっと、トール様?」「メリル…どうする?」
 俺の前に、2人が立っているのを感じる。
 いや、声と息遣いと甘い匂いと衣擦れの音で、目を閉じていても2人を感じる。
「さあ、どんとこい!」
 俺がそう言ったとほぼ同時、俺の両の頬に、『ちゅ』っという少し湿った音と、微かにあたたかな感触が…ん?
「「…せ~の! トール様、私達、妊娠しました!」」
 へっ? 
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