システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児

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後でもいいか

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 ふと感じた手の中の微かな動き。
 それが気のせいではないのは、続く指先のはっきりとした動きで分った。
 包み込む俺の手を確かに掴もうとしている。
 いや、はっきりと握り込もうとしていたのだ。
「ナディア?」
 意識が戻ったのかと、小さな声で呼びかけてみたが、その瞼は閉じられたままだ。
 だが、閉じられた瞼の下で眼球が動いているのがはっきりと見て取れた。 
 今まで何の反応も見られなかったこれまでとは、全く違った反応だ 
 今まで以上に慎重にゆっくりと少しずつエネルギーを注ぎ込んで行くと、やがて眼球の動きが止まる。
 少しだけ呼吸が荒くなったのが俺にもはっきりと分かる。
 これは…苦しんでいる? エネルギーを入れ過ぎたか?
 エネルギー注入をストップし、ゆっくりと俺の手の中のナディアの手をさすっていると、やがてナディアの瞼がゆっくりと開いた。
「ナディア!」
 大樹を見つめていたその瞳が、俺の叫びを受て、ゆっくりと俺の方を向く。
「……マス…ター?」
「ナディア…良かった…」
 意識を取り戻したナディアを見て、俺の瞳からは涙が溢れ出していた。

「マ…スター…泣か…ないで…ください」
 そんな俺を見たナディアはそう言うが、これが泣かずにいられようか。
「ぐじゅ…ばか…やろう! 心配させやがって…」
 鼻水が…。
「こ、ここ…は?」
「大樹の元だ…ずずっ…ナディア達の体内エネルギーの損耗が激しかったから、エネルギー補給のために…な」
 ナディアは真っすぐに天を見上げ、生い茂る大樹の枝葉を眺めた。
「あの…山の向こう…側…伝え…」
「それは…今は良い。とにかく休め。全ては元気になってからだ」
 何があったかは、本当は凄く気にはなる。
 だが、そんなのは後回しでいい、回復する事が先だ。 
「アーデ…アーフェン…アームは…無事…ですか?」
 まだ自由に体を動かせるほどには回復していないナディアが、何とか頭を動かして周囲を確認しようとした。
「いや、さっきまでのナディア同様にまだ意識を失ったままだ。だから今からナディア同様の処置を開始する」
「3人…を…お願い…しま…す」
 俺が両手で包み込んでいたナディアの右手に力が入り、ぎゅっと俺の手を握った。
「ああ、任せておけ。今はゆっくり休め…」
 俺の手を握っていたナディアの手を、そっとほどいてベッドに置くと、俺はナディアの頭を一撫でしてアーデ達に向かう。
「………」
 俺の動きを瞳だけで追ったナディアは、安心したのかそのままゆっくりと瞼を閉じた。

 ナディアへのエネルギー注入で要領を得た俺は、その後アーデ、アーム、アーフェンと順にエネルギーを注いでいった。
 それぞれ反応は微妙に違ったが、全員の意識が戻ったのは確認出来た。
 途中で再び目を開けたナディアが、何故か口からエネルギーを注入してくれとせがんだのを聞いたアーデ、アーム、アーフェンはが、『それはずるい! 私も!』と、冗談か本気か分からない事でわちゃわちゃしたりもしたが、まあそんな冗談が言える様になったのだからもう大丈夫かと、俺も一息ついた。
 その後、嫁ーずや巨乳メイドさん達を邸に呼びに行くと、全員が裏口から飛び出してナディア達も元へ。
 4人の意識が戻った事を確認した一同は、涙ながらに喜んだ。
 普段静かな大樹の根元は、今は大勢が涙を流し笑い喜び合って騒がしかったが、俺には何故かそれが心地よかった。
 俺の生み出した妖精族が、間違いなく家族として認められているという事が嬉しかった。
 
 さて、意識を取り戻せば、大樹の元なんて4人を寝かせておけない。
 邸の裏で人目に付かないとはいえ、やはり外だからな。
 見目麗しい乙女を外で寝かせるなんて、とんでもない事だ。
 そう思って、彼女達を邸で休ませなければと俺が言おうとしたその時、何故か嫁ーずが全員変身した。
「へっ?」
 それ、間抜けな声だってでるよ!
「みなさん、彼女達を邸に運びますわよ。メイドさん達は、ベッドの準備を!」
 アルテアン伯爵家第一夫人であるメリルの一声で、全員がテキパキと動き始める。
 メイドさんは屋敷へと駆け込み、ミレーラ、イネス、マチルダ、ミレーラが、それぞれ妖精達の元へ。
 イネスがナディアを、ミルシェ、ミレーラ、マチルダは、それぞれアーデ、アーム、アーフェンを抱きかかえる。
 え、そういう割り振りなの?
 確か、銀の髪の空のアーフェンはメリル専属で、黒い髪の大地のアーデってミレーラ専属で、蒼い髪の海のアームってばミルシェ専属の護衛というか側仕えって事で創りだしたはずなんだけど?
 何かいつの間にか担当違ってない?
「さあ、行きましょう! 一刻も早く彼女達をゆっくりと休める場所へ!」
 メリルが音頭を取り、邸の扉を開く。
 変身した嫁ーずは、しっかりと妖精達を抱きかかえると、静かに大樹の根元から邸の中へと順に入って行った。

「えっと…俺も行って良いんだろうか?」
 何事も無かったかのように、風に葉を揺らしている大樹を見上げ、俺がそう呟いていると、
「トール様、何をしているんですか! 早く邸の中に入ってください!」
 メリルが扉から顔だけ出してそう言った。
 変身してるから表情は分からないんだが…絶対に怒ってる&呆れてる&こいつアホか? って感じの声。
「あ、ああ…今行くよ」 
 ま、メリルも元気でた様だし、嫁ーずもさっき確かに笑顔だったし、ナディア達も回復できたし。
 今は、それを喜ぼう。
 色々と確かめなきゃならん事や問題は山積みだが、それは後でもいいか。

 いつの間にかやって来ていた、ブレンダーにクイーンに蜂達が、大樹の根元で気持ちよさそうに横になっていた。
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