システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児

文字の大きさ
上 下
897 / 1,466

2割り増しぐらい

しおりを挟む
 今回の捜索について来てくれた精霊さんのほとんどは、風の精霊さん。
 どうしてもスピードを重視した結果なので、それは仕方ない。
 ただ、少数だけどついて来てくれた火の精霊さん達は、この捜索では大活躍だった
 ホワイト・オルター号には離着陸用にキャビンの下部に、下方を照らすための照明が有る。
 だが、あくまでも真下を見る為だけの照明なので、真下だけしか照らさないので捜索にはあまり役立たってはない。
 何せ捜索するここは、真っ暗な大海原。
 山の捜索と違い、対象は常に海流に流され、波に翻弄されている為、捜索範囲は広大な物になる。
 なのに飛行船の真下しか照らさない照明なんぞ、大して役に立つはずもない。
 数少ない火の精霊さん達は、飛行船の周囲に散らばり、煌々と燃え上がる事で海面を照らしてくれた。
 もちろん、充分な数では無かったが、それでも役立つことは間違いない。
 しかも、漂流しているナディア達を蜂達が見つけ出し、方向を示す為に一直線に並んだ蜂達の両サイドに、綺麗に並んで飛行船の行く先を示してくれた。
 まるで飛行場の様に、規則正しく等間隔で並んだ日の精霊さん達…本当にありがとう。
 君たちのおかげで、迷わず夜の海を進むことが出来る。
 嫁ーずも綺麗に左右に並んだ火の精霊さんの明かりに、こんな時だがその美しい光景に感動していた。
 前世で見た、夜間の滑走路の様なその光景は、不謹慎だが俺でもちょっと見入ってしまった。

 そんな火の精霊さんが並ぶ空の滑走路をまっすぐ進むと、波間にきらりとその明かりを受けて光る物が微かに見えた。
「トール様、あそこ!」
 俺が見つけるとほぼ同時に、ミルシェも見つけた様だ。
 ブレンダーも『ウォーーーン!』と吠えて、発見した事を俺に知らせた。
「ああ、俺にも見えた!」
 叫ぶように俺もそう言いつつ、ホワイト・オルター号をその物体へと近づけた。
 見つけたソレの真上へと飛行船を近づけ、海面近くまで降下すると、そこには半透明の球体の中に身を寄せ合うようにしてナディア達4人がいるのを確認した。
 俺はホワイト・オルター号を自動操縦モードに切り替え、ダッシュで支柱と船体を繋いでいる支柱へと駆け込み、梯子を使ってカーゴルームへと移動。
「全員、変身しておくように!」
 後に嫁ーずもついて来ている様なので、全員に支柱内に反響するほどの大声で告げた。
 カーゴルームにたどり着いた入れは、即座に飛行船本体の横やや後方にある搬出入用のクレーンに駆け寄り、銀ピカヒーローに変身してからクレーンを操作する。
 ジェムファイターに変身をしたイネスとミルシェも乗り込んできたが、そのままクレーンを下げる。
 変身してれば、多少の波風など問題にならないだろう。
 クレーンが徐々に海面に近づき、シールドの中でぐったりとしているナディア達の姿がはっきりと見えてくると、居てもたってもいられなくなる。
 だが、ここで海に飛び込んだところで意味はない。
 大人しく船体の一部がゲート状になっているクレーンで降りると、目の前には波間を漂う球体。
 蜂達と精霊さん達が協力して俺たちの方へとそれを押してくれたので、イネスとミルシェと協力してゲートに引き上げ、そのままリフトを上げた。
 どうやら、見た感じでは大きな怪我などはない様だが、シールドのせいではっきりとは分からない。
 船体に開いたクレーンの穴からは、残る嫁ーず達もこちらを覗き込んでいた。
 心配なのだろう…仮面で顔は見えないけど、皆の姿が如実にそう語っていた。
 やがてクレーンが船体横まで持ち上がると、すぐさまシールドで包まれた4人をカーゴルームに移動させ、ゲートを元の位置に戻した。

 何とか救助出来た…そう思った時、俺の膝から力が一気に抜けたが、まだ安心は出来ないと、気合を入れ直す。
 さて、この球状のシールドなのでが、解く事が出来るのは本来はシールドを張った本人だけ。
 もちろん、強力な物理的な衝撃を与えれば、強制的に破壊することも可能ではある。  
 だが、彼女たちは俺の眷属。
 俺の力でシールドの解除は出来るのだ。
 そんな分けで、俺は両手をシールドにあてて、心の中で『解除!』と命じた。
 目いっぱい膨らんだ風船が破裂したかのように、一瞬で消えてなくなるシールド。
 微かにシールドのおかげで宙に浮いていたナディア達が床へと落下しそうになるが、変身していた嫁ーずが瞬時に彼女たちを抱えこみ、頭が床に衝突するのを防いだ。
 よほ俺も慌てていたんだな…こうなるのは分かってたはずなのに、配慮出来てなかった。
「トール様、全員息が有ります!」
 メリルが少しだけほっとしたような、喜んでいる様な声で、そう告げた。
「分かった。では、カーゴルーム内の休憩スペースに横にしよう。見た感じ大きな怪我とかはないけれども、見えない場所に怪我があるかもしれないから、十分に注意するように」
 それを受けて、俺は心を静めつつ、指示を出す。
『はいっ!』
「あと、身体の確認ついでに出来たら服も替えてやって欲しい。同性の皆にしか頼めない事だから、宜しく頼んだ」
『任せてください!』
「俺は、急ぎ邸へとホワイト・オルター号を飛ばす。落ち着いたら状況を教えてくれ」
 皆にそう伝えた俺は、変身を解きながらキャビンへと支柱の中の梯子を伝って降りた。
 降りるまで変身してたらよかった…しんどい…俺って、馬鹿だなあ。

 いや、そんな事はどうだっていい。
 今は暗い海を漂って辛く不安な思いをしていた4人を、早く邸のあったかいベッドで寝かせねば!
 さあ、精霊さんも蜂達も全員撤収!
 全速力で邸に戻ろう!
 あ、でも風の精霊さんはちょっと抑え気味にね…怪我人が乗ってるから。
 流石に布団に縛り付ける訳には行かないから、普段の2割り増しぐらいの速度でお願いしまっす!
しおりを挟む
感想 725

あなたにおすすめの小説

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

死んだのに異世界に転生しました!

drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。 この物語は異世界テンプレ要素が多いです。 主人公最強&チートですね 主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください! 初めて書くので 読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。 それでもいいという方はどうぞ! (本編は完結しました)

『転生したら「村」だった件 〜最強の移動要塞で世界を救います〜』

ソコニ
ファンタジー
29歳の過労死サラリーマン・御影要が目覚めたのは、なんと「村」として転生した姿だった。 誰もいない村の守護者となった要は、偶然迷い込んできた少年リオを最初の住民として迎え入れ、徐々に「村」としての力を開花させていく。【村レベル:1】【住民数:0】【スキル:基本生活機能】から始まった異世界生活。

こちらの異世界で頑張ります

kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で 魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。 様々の事が起こり解決していく

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~

春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。 冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。 しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。 パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。 そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。

成長促進と願望チートで、異世界転生スローライフ?

後藤蓮
ファンタジー
20年生きてきて不幸なことしかなかった青年は、無職となったその日に、女子高生二人を助けた代償として、トラックに轢かれて死んでしまう。 目が覚めたと思ったら、そこは知らない場所。そこでいきなり神様とか名乗る爺さんと出会い、流れで俺は異世界転生することになった。 日本で20年生きた人生は運が悪い人生だった。来世は運が良くて幸せな人生になるといいな..........。 そんな思いを胸に、神様からもらった成長促進と願望というチートスキルを持って青年は異世界転生する。 さて、新しい人生はどんな人生になるのかな? ※ 第11回ファンタジー小説大賞参加してます 。投票よろしくお願いします! ◇◇◇◇◇◇◇◇ お気に入り、感想貰えると作者がとても喜びますので、是非お願いします。 執筆スピードは、ゆるーくまったりとやっていきます。 ◇◇◇◇◇◇◇◇ 9/3 0時 HOTランキング一位頂きました!ありがとうございます! 9/4 7時 24hランキング人気・ファンタジー部門、一位頂きました!ありがとうございます!

くじ引きで決められた転生者 ~スローライフを楽しんでって言ったのに邪神を討伐してほしいってどゆこと!?~

はなとすず
ファンタジー
僕の名前は高橋 悠真(たかはし ゆうま) 神々がくじ引きで決めた転生者。 「あなたは通り魔に襲われた7歳の女の子を庇い、亡くなりました。我々はその魂の清らかさに惹かれました。あなたはこの先どのような選択をし、どのように生きるのか知りたくなってしまったのです。ですがあなたは地球では消えてしまった存在。ですので異世界へ転生してください。我々はあなたに試練など与える気はありません。どうぞ、スローライフを楽しんで下さい」 って言ったのに!なんで邪神を討伐しないといけなくなったんだろう… まぁ、早く邪神を討伐して残りの人生はスローライフを楽しめばいいか

処理中です...