システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児

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無言で

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 俺のお願いを聞き入れてくれた様で、精霊さんはゆっくりと巡航速度まで速度を落としてくれた。
 急ブレーキとかじゃなくて良かったよ…飛行船は良いとして、搭乗している俺達がつんのめってしまって、大変な事になる。
 キャビンで俺達がグシャッと潰れたトマトの様になる所でした…ふぅ…危ない危ない。
 いや、ちゃんと身体をシートベルトでシートの固定してるから、潰れたトマトにはならないにしても、頭はシートに固定してないんだから、首から上が持って行かれるかもしれない。
 頸椎に多大な損傷をきたして死亡とかもあり得る。
 例え生き残ったとしても、生涯ベッドの上とかになるかもしれない。
 ふよふよ浮遊している精霊さん達には理解できないかもしれないが、音速近くから何百Km/hもの減速ってのはとんでもない事なんだからな。
 それを考えたら、ジェット戦闘機のパイロットって凄げえよなぁ。
 何度か見たことがあるけど、航空自衛隊のブルーインパルスの変態的な機動とか、絶対にあの人達って頭おかしいとしか思えない。
 俺、変身してても耐えられる自身ねぇよ…。
 ましてや、嫁ーずなんて絶対に耐えられねえよ。
 さっきの加速の時なんて、ブレンダー吹っ飛んでたし…あいつ、大丈夫か?
 蜂達だけだな、頑張って踏ん張ってたのは。
 色々とハチ達やクイーンも思うところが有るんだろうな。

 さて、そろそろ目的の座標近くまで来たので、海面近くまで降下しナディア達を探しながら旋回する。
 嫁-ずも、海面を直接見ることが出来るキャビンと船窓にへばりつき、海面を睨みつけている。
 とは言っても、夜の海。
 多分、カプセル状に全周シールドを張っているとは思うのだが、この広い海の中でそれを探し出すのは困難だ。
 蜂達も漂流時に離れたはずなんで、波で流されたりしていたら、現在地がどこになるのか分からない。
 それにこの外洋では波も高く、夜の波の合間に漂っているのだから、本当に発券するのは難しい。
 前世だって、海での船舶事故などで遭難した場合、発見出来ない事も多かった記憶が有る。
 そんな事を何となくこの場にいる皆に話したからだろうか、夜の海を見つめる皆の目は真剣だった。
 もちろん、俺だって真剣だ。

 ん? 蜂達どうした? え、外に出て探す?
 天候は荒れてないけど、大丈夫なのか? 
 任せてくれ? そっか…では任せた! 窓開けるから全員で捜索にあたってくれ!  
 手近な窓にへばりついていたミレーラに、窓を開けるように頼むと、不思議そうな顔をして丸い窓を開けてくれた。
 すると、そこから蜂達がするりとすり抜けるように外へと飛び出した。
 目の前の窓の隙間から次々と飛び出していく蜂達に驚いていたミレーラだったが、それも捜索の為と気付くと、「み、みなさん…頑張ってださい!」と、今まで聞いた事が無いほどの声を、窓の外に向かて掛けていた。
 気づくとブレンダーも戦闘形態になってキャビンから外を睨んでいた。
 ブレンダー…戦闘形態の方が視力が上がるのかもしれないけれど…でかくてちょっと邪魔…。
 この船の全員が全身全霊をもって、夜の海を睨みつけていた。

 時間と海流を計算するような知識も技能も俺には無い。
 ただただ己の目を信じ、仲間を信じて、この暗い海を目を皿にして見つめるだけ。
 ナディア達を助けたい、その一心で波うつ海の隅々まで目をやり、ただただ無言で彼女達の痕跡を探す。
 嫁ーずも言葉一つ発する事なく、窓からそれぞれが海を見続けた。
 誰もがナディア達の姿を、この海を見つめ続けた。
 誰もが集中力を切らさぬ様に、誰もがただ無言で外を見つめるキャビンの中からは、呼吸する音すらも消えた。

 極度の緊張感漂う中、その静寂を破ったのは、クイーンの五月蠅いぐらいの羽ばたきだった。
「どうした、クイーン! 見つけたのか!?」
 俺のその声に反応したのか、窓の外を見つめ続けていた全員の視線がクイーンに集中する。
 クイーンは激しく、ブーンブーンと羽ばたきながら、海の中の一点を前足で指示した。
 窓の外には蜂達が一直線に並び、ナディアまでの道筋を示している。
「良くやった、クイーン!」
 操縦桿を握りしめた俺は、そうクイーンに声を掛け、続けて叫んだ。
「蜂達に先導させろ! 今すぐ迎えに行くぞ!」
 俺の言葉が聞こえたのか、それともクイーンが命じたのかは分からない。
 だが、キャビンの外の蜂達は、暗い大海原で救助を待つナディア達へと、俺達…ホワイト・オルター号を先導する様に飛んだ。

「待ってろよ! すぐに行くからな!」
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