システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児

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山脈の向こう側って…

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  ※ 明けましておめでとうございます。
   本年もよろしくお願いいたします。 <(_ _)> 大国 鹿児


 盛大にズッコケた俺とコルネちゃんではあったが、すぐに持ち直して、何事も無かったかのように座り直した。
 もちろんコルネちゃんは、空になったユリアちゃんのお皿にクッキーをそっと盛っていた。
 そのクッキー、今…どこから出した? 
 俺の見間違えでなければ、カエルの形の財布の様な形してなかった?
「これですか? リリアから借りて来た、『ヨジゲンガマグチ』という便利道具らしいです」
「はぁ~!?」
 俺ですら貸してもらえなかったってのに、何てものをコルネちゃんに貸し出すんだ、リリアさんよ!
「スペアーだから容量が小さいとか言ってましたが、それでも色々と入ってとっても便利です」
 そりゃそうだろうよ!
「わ~い! おねえちゃん、ありがとう~!」
 万歳して喜んでいるユリアちゃんを見てると、コルネちゃんに文句を言うのも何か違う気がしたんで、ここは俺がグッと堪えた。
 帰ってから、リリアさんに文句言おう…絶対に。
 ちくそう! 俺もあの四次元ガマグチ欲しいなあ…。

 さて、クッキーを嬉しそうに食べていたユリアちゃんも、お昼寝の時間なのかうとうとし始めた。
 ユリアちゃんの瞼が完全に落ち、コルネちゃんが膝枕でユリアちゃんを寝かしたのを見届けたところで、俺は再度ユリアちゃんと話をすることにした。
 頼むから、もう暴走しないでくれよ、コルネちゃん…。
「昨夜の父さんの話の中で、疑問に感じている事があるんだ」
「疑問…ですか?」
 どうやらコルネちゃんは感じなかったらしい。
 まあ、サラとリリアさんの本当の正体だとか、管理局の事だとか、俺が転生者で地球での記憶を持っている事だって知らないんだから、何も疑問に感じないのも当然かもしれないな。
「ああ、疑問だ。俺がこの星の真裏にダンジョン大陸を創ったのを、コルネちゃんも覚えてるだろう?」
「ええ覚えてますよ」
 良かった…忘れたとか言われたら、話が進まないところだった。
「あの時、ナディアとアーデ、アーム、アーフェンと、大量のハチさん達によって、この大陸の隅々まで測量して地図を作った事は?」
「ええ、覚えてます。この前の戦争でも、とても役に立ったとか。流石です、お兄さまは」
 さす兄は気持ちいいなあ…じゃなくて、
「うん、ありがとう。んで、本題なんだけど…父さんの話だと、王国の北の山脈の向こう側の国…アルコーン国が、この国に攻め入って来たって言ってたろ?」
「ええ、そう話されてましたわね」
 うん、俺の聞き間違いじゃなかったな。 
「あと、魔法としか思えない火を噴く筒とか投げたら爆発する物…もうはっきり言っていいか。全員がそういった武器を持っていたって言ってたよな」
「言われてみれば、確かにそう仰ってました」
 うん、間違いない。
 この世界独特の変ちくりんな言語翻訳のせいかとも考えたが、そうじゃなかった。
「そして、全員が羽の生えた種族だった…」
「はい、間違いなくそう聞きました」
 よし、確認はここまでかな。
「実はな、ナディア達がこの大陸のあらゆる場所を測量して作り上げたあの地図では、山脈の向こう側って…実は未開の森しかなかったんだよ」
「えっ!?」
 そりゃコルネちゃんだって驚くよな。
「恐ろしい武器を作り出し、それを大量に生産できるほどの文化を築き上げた種族の国が、俺たちの国との争いに敗れたからと言って、そう簡単に消滅するんだろうか?」
「それは…先の戦争の時の様に、消えてしまう国もあるかもしれませんが…」
 ああ、暗黒馬鹿厨二病な奴との戦争ね。
 確かにあの時はいくつもの国が亡んだり消滅したりしたけれども…。
「でも、それってネス様の神具を纏った俺達や、3人のダンジョンマスター、ひいてはダンジョン大陸があってこそだろ? 実際のところ、国が消滅しても多くの人がダンジョン…いやパンゲア大陸に移住してるわけだし」
「確かに…」
 そう言って、コルネちゃんも何かを考えこむかのように、テーブルの一点を見つめて動かなくなった。

「そもそも、本当にアルコーン国って、あの山脈の向こうにあったのか?」
 しんと静まり返ったコックピットがあるこの部屋。
 安らかなユリアちゃんの寝息だけが漏れ聞こえていた。
「それは、どういう事でしょうか…」
「ホワイト・オルター号でも超えるのが難しいほどに高い山脈を、どうやって大勢の兵士が山脈を越えてこの国に攻め入る事が出来たんだろう…しかも武器を持って…」
 俺のその言葉に対するコルネちゃんからの返事はなかった。

 キャビンから見える遠くの空は、だんだんと茜色に染まり始めていた。
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